「はぁぁぁ……くそっ……」
ゴロリと寝返りをうって、窓から外の景色を伺う。
目を背けたくなるほどの眩しい光が、まだ眠る時間ではないということを証明していた。
「あつい…」
モゾモゾと布団をかぶり直しながらボソリと呟いた言葉と共に吐き出された吐息が、心無しかいつもより熱を帯びているように感じた。
重い瞼をだるさに任せて閉じながら、俺は今朝の出来事を思い出す。
…嫌な予感は朝のうちからしていた。
体の疲れがとれていないような気だるい感覚。
最初は気のせいだろと自分の身体に言い聞かせて、朝食を食べるべく既に起きているであろうみんなの元へと向かったのだが…
まず最初に俺の異変に気がついたのは、せっせとテーブルに皿を並べていたアクアだった。
「どうしたのカズマ!?あんた、大好きだったアニメの最終回を寝落ちして見逃した挙句、翌日うっかりSNSでネタバレ見ちゃった時ぐらい死んだ魚のような目をしてるわよ!?」
…確かこんな感じのことを言っていたと思う。
「…声がでかすぎて頭に響く…もうちょっと静かにしゃべってくれ」
そう言って力なく椅子に座り込む俺にズカズカとアイツは遠慮なく近づいてきて、額に手を押し当ててきた。
「ちょっ!熱すごい!めぐみん!ダクネス!こっち来て!カズマが大変なの!」
まるで腫れ物でも触ったみたいに手を引っ込めたアクアがパーティーメンバーの2人を呼んでいる間、ぐらつく視界の中で俺はこのだるさがやっぱり気のせいでは無いことを察していた。
「カズマ!大丈夫ですか!どうしたんですか!?」
次に声をかけてくれたのは、アクアから呼ばれてすっ飛んできたくれたのであろう料理当番のめぐみんだった。
慌てて来てくれたのは、エプロンを着たままであった事からすぐ分かる。
「いやちょっと…風邪かも」
「本当にただの風邪なのですか?それにしてはとても顔色が悪いのですが…」
「そうだぞカズマ。無理はしない方がいい。病気ほど恐ろしいものは無いからな」
心配そうに眉を顰めオロオロするめぐみんの背後から、普段の変態性はどこへやら。
険しい真剣な表情を浮かべたダクネスが現れた。
みてくれだけならトップクラスの俺のパーティーメンバー美女3人が、じっとこちらを見ながらちょっと過剰に心配するという一見羨ましい状況になっているのも無理はない。
…この世界の病気には回復魔法が効かないのだ。
それだけじゃなく、病気が原因の死は寿命扱いとなりリザレクションでも蘇生不可能。
つまり[病死=ゲームオーバー]ってわけだ。
既に天界規定とやらを破って何度も蘇生させてもらってる身としては、万が一何かしらズルで生き返れるような方法があっても頼みにくい。
というかこれ以上エリス様に迷惑かけられない。
「とにかく医者を連れてくるのよ!あと念のため薬も!」
「そ、そうですね!ではその間カズマには安静にしてもらわないと!」
「では私がカズマを部屋まで運ぶ!アクアとめぐみんは医者と薬を!」
何か大騒ぎになってきたな。
慌てて屋敷を飛び出して行くめぐみんとアクアを見て、めぐみんのエプロン姿は他の奴に見せたくないから脱いでから行ってくれないかなとか、医者ってやっぱりあの呪術師のおっさんのことだよなとかぼんやりしながら考えていたら、ぐわんと視点が一転して…
「おいダメネス。お前病人を運ぶのにこのやり方はどうなんだ?」
なすすべなく肩に担がれ、まるで馬小屋に敷く藁のような運び方をする力自慢のクルセイダーに俺は思わずツッコミをいれてしまった。
「文句をいうな。これが一番楽でいい。あとこれ以上変な呼び名をつけるのはやめろ」
自分たちだってカスマだのクズマだの好き勝手に散々言ってるくせに…
「お前は楽かもしれないけど俺は結構きついからなこれ。せめて腰の辺りを持ってくれない?後ろに比率が偏ってでかいケツがおでこにバンバン当たるから痛いんだよ。お尻の筋肉まで鍛えてるのかよお前は。女の子の柔らかさじゃねーんだよ」
「ぶっ殺すぞ貴様!体調が悪いからって言いたい放題か!」
「お?なんだ?病人に手を出すんですか?え?ララティーナお嬢様!」
「こ、このっ…!…はぁ…もういい」
一瞬動きを止めて俺を投げ飛ばそうとでもしたのか、妙な浮遊感を感じてやばい言いすぎたかと血の気が引いたが、どうやら寸前で思いとどまってくれたようだ。
「まったく…アクアも前に言っていたが、めぐみんは本当にどうしてこんな男を…」
「お前人のこと言えるの?」
俺の言葉を無視して、相変わらずブラブラと病人の身体を肩に担ぎながらダクネスがガチャリと扉を開く音と共に、逆さになっていても見慣れていると感じられる部屋の景色が視界に飛び込んだ。
うん。俺の部屋だ。
「よし。じゃー二人が戻ってくるまで横になっておくとするか。ダクネスありがt」
「もう…お前だけの身体じゃないんだ。めぐみんの為にもしっかり休んでおくんだぞ」
どっかりとベッドに俺の身体を下ろしてくれたダクネスに感謝の言葉の一つでも言ってやるかと口を開こうとしたら、なんだかとんでもない発言が聞こえてぶわっと全身に汗が噴き出してきた。
「おい…え…お前何?俺とめぐみんがどこまでいったか知ってるの?なんで?めぐみんが言ったの?『私とカズマは大人の階段登りましたけどダクネスはまだなんですか?』とかドSな事言ったの?あいつが?」
「は?…いや…私はただカズマとめぐみんが付き合ってるということは知っていたからそれで…え?その言い方だともしや…」
うわぁぁぁ!!!
しまった早とちりしたぁぁぁ!!!
なんだコイツお前だけの身体じゃないとか紛らわしいこと言いやがって!
慌てて寝がえりをうってダクネスに背を向け掛け布団に全身すっぽり隠れてみたが、一瞬でそんなものは剥ぎ取られた。
「お、お前とうとうめぐみんに手を出したのか!ヘタレのお前が一線を越えたんだな!カズマ!どうなんだ!ん!?どんな鬼畜なプレイでめぐみんの小さな身体を苦しめたんだ!言ってみろ!」
「ちょ!なにとんでもないこと口走ってんだこのド変態が!顔赤くしてはぁはぁして、その世間知らずなドM思考脳味噌でお前こそいったいどれだけ卑猥な姿になってるめぐみんを妄想してんだ!俺にもちょっと教えてください!」
「お前もだいぶひどいことを言ってるぞ!?だが私の事をド変態と罵ってくれたことには感謝する!さぁ!もっと罵倒してくれて構わないぞ!」
「…二人とも仲良く元気そうで何よりですね」
「「あ」」
わーわーぎゃーぎゃーと具合が悪いことも忘れていつの間にか取っ組み合いながらベッドの上でじたばたしていたら、走っていたせいか頬を汗で光らせためぐみんが大きなため息とともに、呆れたような視線で俺たちを部屋の入口から交互に見ていた。
「扉も閉めずに何をやっているのですか?それだけ大騒ぎできるなら平気でしょうけど、一応カズマは体調悪いん…ですよね?」
「ああああ当たり前だろ!見てわかる通り、俺は病気で弱ってるところを発情したダクネスに襲われる寸前だったところだ!」
「あーっ!貴様はまたそうやって…!」
疑わしそうにジト目で睨むめぐみんに慌てて弁解しながらダクネスに胸倉を掴まれていたら、身体が不調であることを思い出したかのように視界が歪み始めてきた。
「うっ…やば」
上半身を起こしているだけでも辛くなり、どさりと枕に向かって倒れこむ。
「お、おいカズマ!?大丈夫か!めぐみん医者は?」
「じ、実はその件で報告に来たんですけど、あの人今遠くに出かけているらしいのです!数日の間帰ってこないと…」
「なんだと!?」
マジかよあのおっさん。
こんな時に限って…
「では薬は?」
「それならもうすぐアクアが持ってくるはずですが…」
そう呟いて廊下まで様子を見に行っためぐみんが、こちらに向かってグーサインを出した。
どうやらもうすぐそこまで来ているようだ。
「待たせたわねカズマ!私が来たからにはもう大丈夫よ!安心しなさい!」
なんて言葉だけなら頼りになる事を言いながら、足音と鼻息を荒くしたアクアが無遠慮に部屋に飛び込んで来たと思ったら、フンっと枕元に紙袋を置いてきた。
「買ってきてくれたことには感謝するし、お前が1人で無事にお使いを果たせた事に感激もする。けど残念だったな。もう少し静かにしてくれたら満点だったのに」
「やーねーカズマさんたら可愛げ無いこと言って照れちゃって。まぁこんな美人3人に囲まれてチヤホヤされてちゃ無理もないけどね!」
「3人…めぐみんとダクネスに…あとひとりはどこだろう?」
無言でもみあげをひっぱって抗議してくるアクアから俺が視線を逸らしている間に、めぐみんが紙袋の中身をゴソゴソと確認する。
「とりあえず解熱剤でも飲んで、しばらく横になっていましょう。症状が悪化するようでしたら、あのお医者様をどんな手を使ってでも連れてきますので」
ポンポンと優しく頭を撫でながら言ってくれる彼女は確かに心強くはあるのだが、あまり無茶はしないで欲しい。
めぐみんは爆裂魔法で脅して強制連行ぐらいの事は平気でしそうだからな。
「カズマが何を考えてるか、手に取るようにわかりますよ。ホントに分かりやすい表情をする人ですね」
「ほー。じゃー言ってみろ」
「どうせ私が爆裂魔法で脅して無理やり医者を連れてこようとするのではと心配していたのでしょう」
「ブッブー。ゼンゼンチガウヨ」
ドヤ顔で自信満々に言い放っためぐみんに何を言おうが間髪無く否定の言葉を差し込むつもりだったので言ってやったら、瞳をキラリと輝かせてノシノシと大股で接近してきた。
「なんですかその棒読みは!図星でしょう!あなたの考えていることなんて、私にはまるっと全てお見通しなんですよ!」
そんな胸の大きさと実家の懐事情が共通してるどこかのマジシャンみたいなことを言いながら、めぐみんがもう片方のもみあげをグイグイと引っ張って…!
「おぉぉい!お前らそれ地味に痛いからやめろ!分かった!分かったから!お前らの言い分は認めるから!ダクネスもさっきから何黙ってハァハァしながら見守ってんだ!ちょっと手伝ってくれ!ぬ、抜けるっ!髪の毛が抜けるからぁぁぁぁぁっ!」
…ってな感じで、いつもとそう大差なくドタバタした朝だった。
という所で話は冒頭に戻るわけだ。
わざわざ体調不良でも食べやすいよう俺の分だけ朝ごはんをアレンジしてくれためぐみんに多大な感謝をしつつ、みんなが俺の部屋で食事をしていってくれたあと。
彼女達にずっと見守っててもらうわけにもいかず、かと言って今日は特にやるべき事があるわけでもなかったので、解散して自由に過ごしてもらっている。
アクアは『カズマが動けないあいだにたくさんお金でも稼いで驚かせてあげるわね!私、実はとてもいい方法を思いついちゃったの!上手くいけば明日には別荘ができてるかも!というわけで行ってくるわ!』とかなんとか言っていたかもしれないが、多分気のせいだ。
俺は何も聞いてない知らない大丈夫。
自分の金は自分でしっかり管理してあるしな。
もし翌日あいつにお金貸してと言われても絶対に貸さないようにしようと胸に誓い、瞳を閉じてさぁ夢の世界に行って身体を休めるぞって時だった。
コンコンッ
「…あい?」
扉を軽くノックする音。
閉じかけていた瞼でパチパチと何度か瞬きをして、俺は気のこもっていない声で返事をする。
「わ、私です。入ってもいいですか?」
まぁ実は何となく予想はついていたのだが、めぐみんの声だった。
「あぁ、めぐみんか。いいよ」
布団から頭だけすっぽり出して、おずおずと部屋に入ってきた彼女の姿を確認する。
「どうした?俺がいなくて寂しくなっちまったか?」
はははと乾いた笑い声をあげながら半分冗談で聞いてみたのだが、彼女は無言でコクリと頷きながら部屋にある椅子をベッドに横たわる俺の目の前まで運んできて、そこに腰掛けた。
…パンツ見えそうですとか指摘する空気では無いことぐらい俺にも分かるが、正直目のやりどころに困ります。
「それもありますけど…本当に心配なんです。カズマは今まで何回も死んでますけど、病死だけはアクアのリザレクションでもどうにもならないんですよ?」
膝の上で組まれていためぐみんの手が若干震えていることに気がついて、俺は思わず彼女の顔を見上げる。
めぐみんは…そう、例えるならダクネスが自分の盾になって死の宣告をくらってしまった時や、ウォルバクに爆裂魔法でトドメをさしてしまった直後のそれに匹敵するぐらい顔面蒼白だった。
…こいつ、そんなに心配してくれてたのか。
アクアとダクネスの前では、ここまで態度に出していなかったのに。
「…っ!…ご、ごめんなさいっ!なら早く体調を戻してもらうために寝ててもらった方がいいですよね!私とした事が迷惑をかけてしまいました!」
「ま、まぁ待てよ!お前が俺に迷惑かけてるのは今に始まったことじゃないだろ?」
黙ったままの俺に何を思ったのか、勢いよく立ち上がっためぐみんが回れ右をしたところを慌てて止める。
「え?」
「良いからここにいろって言ってんだ。その方が…その…俺も嬉しいからな」
言ってるうちに恥ずかしくなって天井にぷいっと視線を逸らしてしまったが、頬が熱くなってるのは自覚出来た。
というかマジではずかしい。
何言っちゃってんだ俺。
…いやでもめぐみんとはもう付き合ってる男女って関係なんだし、このぐらい言い合うのは普通なのか…?
んんん!?どうなんだ!?わからん!
「…ぷっ」
「おい。何笑ってんだ」
「いえ。やっぱりカズマとこうして一緒にいると、すごく心地いいなと思いまして」
そんなドキドキさせるようなことを言いながら、そっと手を添えてくるのは本当にずるいと思う。
「で、でもほらあれだ。ずっとここにいたら俺の病気が移るかもよ?無理すんなよ?」
「私こそ、ホントにここにいて良いんですか?眠りたくないですか?」
「本当に寝たかったらお前がこの部屋にいたって俺は眠るぞ。何があろうと自分が眠りたい時に好きなだけ眠る。それがポリシーだからな」
「そのポリシーとやらはあまりかっこよくないですね」
余計なお世話だ。
「「…………」」
めぐみんはそれっきり黙ると、添えた手を握る力だけを強めてじっと俺の瞳を覗き込んでいた。
彼女の紅い瞳にくっきりと俺の顔が移り込んでいて、それを確認したことで初めて自分もめぐみんのことを見つめていたことに気がつく。
「あの…めぐみん?そんなじっと見つめられると、なんか凄く照れくさいというか恥ずかしいんですが…」
そういえば前にもすぐ隣に座っていた彼女に、こうしてじっと見つめられたことがあったなと思い出す。
「そうですか?私は今とても満ち足りた気持ちですけど」
俺ですらめったに拝むことができない見惚れるようなふわりとした柔らかい笑みを浮かべながら、めぐみんは視線をちっとも動かさない。
それどころかグイっと顔を近づけてきて色気溢れるようなことを…
「そういえばカズマ。ちゃんと薬は飲みましたか?」
「あ」
そういうわけではなかったらしい。
だがすっかり忘れてたな。
ちゃんと飯も食わせてもらったんだから、ここはしっかり飲んでおかないと。
「それにしてもめぐみんの料理は本当に美味いよな。こう…家庭的な味って感じで。すごく優しい味がする。実はお前もこっそり料理スキルとかとってたりしないか?」
「今更何を言わせるのですか。私はアークウィザードですし、そもそもスキルポイントは全て爆裂魔法関連の項目に突っ込んでいます。あなたが私の進むべき道を示してくれたあの日から、そのことに迷いを感じたことはありませんよ。つまり私の料理の腕はスキルに頼らない実力ということなのです。でもそんな風に褒めてくれるのはとても嬉しいですね。ありがとうございます」
なんだろう。
二人っきりだからだろうか。
普段は恥ずかしすぎて面と向かって言えないようなことでも、ポンポン口に出してしまう。
その空気ですごく幸せな気分になり始めてきてる俺は、もうめぐみん無しじゃ生きていけないのかもしれない。
「そっか。良いお嫁さんになるよお前は」
そんなピンク思考に脳をやられていたからだろう。
思わずラブコメ作品のお約束みたいなセリフを言ってしまった。
流石に照れくさすぎると思って固まってしまったが、ふふんと薄い胸を懸命に反り返らせて私すごいでしょうアピールをしていためぐみんはそのまま得意げに
「それはよかったですねカズマ。そんな良いお嫁さんの旦那さんになれるのですから」
なんてことを恥ずかしげもなく言ってきやがった。
…最近こいつの大胆発言にも少し慣れてきたんじゃないかと思っていたが、それは気のせいだったらしい。
明らかに体調を崩しているのとは別の理由で高まる頬の熱に耐えきれなくなり、ばさりと掛け布団を頭からかぶる。
…やばい顔がニヤケるのも止まらねぇ。
「おや?照れているんですかカズマ?どうしたんですか?カズマの可愛い照れ顔私にしっかりはっきり見せてくださいよ!」
「うるせぇー!見せられるかこんなだらしない顔!余計に体調が悪化するわ!」
「おっと。それは大変ですね。では早く薬を飲みましょう。私が準備してあげますので」
クスクスと小さな笑い声が聞こえてまた一本取られたちくしょーと思いながらも、でもこいつやっぱりかわいいとか感じてしまうあたり、俺はもう本当にダメだな。
「ところでカズマ。こういう時男性は好きな女性に口移しで飲ませてもらうと特に元気になるらしいのですが、本当ですか?」
「お前はたまにとんでもない知識を持っていることがあるけど、そういうのはどこから吸収してきてるの?」
こっそりと目元だけ布団から出して、紙袋の中からいかにもこれは薬ですといわんばかりの液体が入った小型三角フラスコのようなものを取り出すめぐみんの後ろ姿を見ながら、本当にそろそろ教えてもらいたいので聞いてみる。
というか、口移しなんてされたら元気になるのは体調だけじゃすまないからな。
「私だって、カズマに喜んでもらうために日々勉強しているということです」
…勉強ぅ~?
「…なんのだよ。いかがわしい本でも読んでるんじゃないだろうな?」
「は!?ち、違いますから!ただの恋愛指南本ですよ!…あっ」
………
いや、ちょっとからかっただけでそんなすぐに暴露するとは思いませんでした。
とゆうか普通の恋愛指南本に本当にそんなことが書いてあるのか。
俺も後日是非読ませてもらおう。
「そそそそんなことより早く薬を飲みやがれください!」
「待て落ち着け!お前テンパりすぎて言葉遣いおかしくなってるぞ!俺のためにそんな本まで読んでくれていた事は素直に嬉しいから!」
「あああああ!!!言わないで!言わないでくださいっ!恥ずかしすぎて死んでしまいますっ!」
例の三角フラスコを俺の胸元に押し付けて、顔を両手で覆い隠すとめぐみんは俯いてしまった。
…そこまで恥ずかしがる必要はないと思うのだが、どうやら彼女にとっては俺に知られたくない秘密だったらしい。
フム…これはまたからかう材料が出来たぞ。
「何をニヤニヤしてるんですか!そんなに口移しして欲しいんですか!?」
「それは俺が健康な時に薬以外でぜひ頼む。病気を移したくはな…ってお前、なにしてんの?」
やけくそになっているのか、一度は俺に押し付けた薬を再度むんずとひったくると…
「カズマ!先に言っておきますけど、抵抗するとこぼれてしまうので大人しくしていてくださいね!んむっ!」
「は?っておぉぉい!?だから何やってんだお前やめr…むぐっ!?」
いきなりそれを口に含んだめぐみんに手で両頬を抑え込まれたと思ったら勢いよく口づけされた。
というかコイツマジで口移しするつもりかよ!?
「んっ!…んんん!!!」
上手く口内に流し込みきれなかった薬が口端からトロリと流れ出すのを感じる。
それでも大半はヌルッと挿し込まれてきためぐみんの舌に乗って、彼女の唾液と共に俺の喉を通過していった。
…なんて冷静に状況判断してる場合じゃねぇ!
あぁくそダメだ!こんなことしてたらめぐみんに病気が移っちまう…!
そう…頭ではわかっているのに…苦みの強い薬だったのにめぐみんの唾液は甘く感じるしでもう…わけわかんねぇ…脳が壊れそうです!
「んっ!…はぁ…っ!」
「ちゅぷっ!んはぁ!はぁ…はぁ…!かず…まぁ…ん!!!」
薬はとっくに飲み干していたが、それでもめぐみんの口付けは止まらず俺の口を蹂躙し続けていた。
やばいやばいって!これは危険すぎるキスだ!この空気に流されちまう…!おおおお落ち着け俺落ち着け落ち着け!!!
「…ちゅっ!」
舌が絡み合い吸いあう快感に頭と視界がぼーっとしてきたところでひときわ大きなリップ音を鳴らしながらやっと解放してくれためぐみんが、てらてらと光る口元をペロリと舐めとる妖艶な姿に心臓が期待と興奮でバクバクと高鳴る。
こんなの無理だ。
こんなことされてそんな姿見せつけられて、我慢なんてできるわけないだろ!
ずるい!女って本当にずるい!
「ごめんなさいカズマ。どうしても試してみたくて…だけどこれ以上は体調を悪化させてしまうかもしれません。今日のところはこの辺で…」
そうやってまた俺の理性を溶かすようなことをめぐみんがいっt…ってあれ?
「え?これでおしまい?」
続きをする意思はないらしいめぐみんの言葉に思わず期待を口にしてしまった。
…いや確かに健康状態とは言えない身体でこれ以上はやめておいた方がいいのかもしれないが…
んんん…でも…えぇぇぇぇ……
「それじゃーカズマ。また元気になったら…続きをしましょう。薬も飲んだことですし、今日はゆっくり休んでいてください」
「へ?あ…お、おぅ…その…今日はありがとな」
「いえいえ。あなたが危ないときは私がいつでも助けに来ますよ」
そんな嬉しい事を言ってくれながら立ち上がると、めぐみんは悶々としている俺に気が付いているのかいないのか、そのままとことこと部屋を退出してしまった。
…………バタンッ
「あああああちくしょうぅぅぅ!!!ほらみろあんな色っぽいキスするから、俺のマイシンボルだけ既に元気いっぱいで大変なことになっちまったじゃねぇか!!!早速ピンチだよ!助けてくれよ!」
めぐみんが部屋の扉を閉じた瞬間。俺はベッドの上をゴロゴロと転げまわりながら文句を言いつつ、この鬱陶しい病原体が死滅したら彼女ですら恥ずかしがっていやいやという凄いことを、それこそいやというほどしてやると誓った。
…結局俺の症状はただの風邪ですぐに直ったのだが…。
まぁ…お約束というかなんというか。
めぐみんに移ってしまっていて看病することになるのはまた別のお話だ。
※薬の口移しは色々危険なので実際にやるのはやめましょう!