超幸運≠平穏 ~神様のご都合主義~   作:紅月 煌

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バナナの皮はあまり滑らないらしいですが、滑らないと始まらないので見逃してください。
初投稿です、宜しくお願いします。



肉まんに罪はない

 日が暮れてまもなく、仕事帰り。

 通りかかったコンビニに何となく寄ったら、中華まんのセールPOPが貼られていた。

 寒くなってきたし、今年ももう美味しい時期かあ。なんて。学生時代より時間の進みが早くなったと間食予防に思考を逸らそうとしたが、割引の文字に心が揺れる。

 タイミングが良いのか悪いのか、今日が最終日。

 セール中は売り切れている事も多いのに、こちらもまた運が良いのか悪いのか、蒸し器の中には一番大好きな肉まんが、ぽつんと一つだけ寂しそうに残っている。

 更に他意はないのだろうが、ちょうど会計終わりの男性が肉まんを取り出して、これ見よがしに私の目の前で大きな口を開けてがぶり。すれ違う際にふわりとジューシーな肉まんの香りが、それはそれは美味しそうで。ごくり。これは、買うしかないな。

 

 そう、幸運だったのだ。神の、買え、食べるのだ、という思し召しである。

 一個くらいなら夕飯にも体重にもそんな影響しないだろうし、ちょっと遠回りして帰ればカロリーも、きっと大丈夫。言い訳完了。神には逆らえない。うん。売り切れる前に即座にレジへ急いだ。

 

 先程の男性はすぐ食べるからとレジ袋は貰わなかったみたいだが、私にはちょっと恥ずかしい。一応は小さな袋に入れてもらい外に出たが、家まで待てば冷めてしまう。こういうのはすぐが美味しいのだ。というか、我慢できない。

 表に出てからすぐに取り出し、ほっかほかの肉まんにかぶりつけば、もふっと温かく、柔らかく迎え入れてくれて、噛めば肉の旨味が広がり、タケノコの歯ごたえもいい感じで。

 そこまで寒くはなかった筈だが、微かに立ち上る湯気に、ホゥとつい出てしまった白い吐息が混じる。

 

 寒い方が美味しく感じるが、寒い方が早く冷めてしまう。

 冷めたら美味しさ半減だが、寒ければ寒いほど美味しさは増す。

 一気にがつがつ食べるのは勿体ないが、あんまりちびちび食べるともっと食べたい欲求が我慢できない。ちなみに、どっちも下手するとコンビニへ引き返して二個目に突入する。たまの贅沢だ、バチは当たるまい。

 口いっぱいに頬張れば幸せだがあっという間に終わり、セーブし過ぎるとイライラが募る。かと言って、たくさん噛んで少しでも伸ばそうとしても味が薄くなる前に勝手に嚥下してしまう。

 

 なんて悩ましい。君は天使か悪魔か。

 しかし、美味い。あぁ、幸せ。毎年の楽しみである。

 もぐもぐしていたが、コンビニ前で食べているのもなんなので歩き出した。

 夕飯は野菜にしよう。肉はなし。あと、いつもより少なめにしないと。冷蔵庫に何があったろうか。ヘルシーメニューを思い浮かべる。

 

 

 よくある日常である。

 何の変哲もない、後にはすっかり忘れてしまうような一場面。

 いや、誘惑に弱いとか、毎年夏にダイエットをしようと思うくせに気を付けてないとか、そういうので思い出すのかもしれないが。それは置いておく。

 とにかく、何の変哲もない、いつも通りの日常だったのだ。

 

 それがまさか、こんな事が私の人生を大きく変えるなんて、この時点では神様でさえ分からなかった事だろう。

 

 

 てくてくと歩いて、ゴミ捨て場の前に差し掛かった時、黒くて小さな素早い動くものが視界の端に映った。

 驚いて反射的に見れば、青いポリバケツから飛び降りたらしい黒猫が着地した所で、ダッシュで逃げて行く。揺れる尻尾の先だけが見えた所為で、勘違いしたようだ。臭くないけどゴミ捨て場だし。

 ホッとしたのも束の間、何か柔らかい物を踏んで滑った。そのまま後ろへ倒れていく。やばい。腕を突こうとしたら目に激痛が走り、両手で目を押さえれば後頭部に衝撃。

 テレビを消すみたいに、ぷつんとブラックアウト──────

 

「あははははっ!! ひぃーーーー!! ひっ、げほっげほっ……はっ、はっ、ふっ、ぶふぅっ!!」

 

 した筈が、今度は白一面の不思議な場所で、立っているのか浮いているのかも分からない状況である。

 動くのは片手は床を叩き、もう片方は笑い過ぎで痛いのか腹を押さえた白い人のみ。いや、人というか、人の形をした光の塊というべきか。

 

 ふと、笑い声が止んだ。

 この不可思議な状況を聞けるかなと期待するも、下を向いていたような頭らしきものが上がり、私を見て再度噴き出しては悶え転げる。

 

 訳が分からないが、どうも爆笑の原因は私のようだ。

 取り敢えず、いい高さなので踏んづけてやろうかと思ったが、歩いても走っても立っている場所から動けなくて、どうしようもなかった。

 

「あのー、何がそんなに面白いんですか?」

 

 仕方なく投げやりに声を掛けると、息も絶え絶えそうな光の塊が指した方に映像が流れ始めた。

 まさかの私だ。さっきの、歩きながら肉まんを食べている私が様々な角度でいくつも映し出されている。

 盗撮だ、とも思ったが、そういえばあの時一体何が起こったのか。笑ってて話せなさそうでもあるし、気にもなるので大人しく見る事にした。

 

 

 映像は、閑散とした住宅街を歩く私を正面から映す大きな画面と、それを囲むように一回り小さい画面が私の視点の他にも色々な方向から映し出されている。

 そのまま進めば、問題のゴミ捨て場が見えてくる。あの時、ここで何かが起きた。

 

 画面はゴミ捨て場に焦点を移した。私の方からは見えなかったが、どうやら大きなポリバケツの影に小さなポリバケツがあり、その上にバナナの皮が乗っているのが見えた。

 ご丁寧に横に『割引後一房二十円。父蒸発後、頼る人もなく一人で苦労して育てて体を壊してしまった母の為にバイトの掛け持ちで奔走する勤労青少年のポイ捨て』と表示されている。

 食べ盛りなのにバナナで空腹を誤魔化して、食いつつ走ったのか。この詳細情報必要?

 

 猫が私に気付いて素早く逃げた時、後ろ脚に当たったバナナの皮が道に落ちた。

 私は猫を見ていて気付かない。いや、小さな画面の私視点を見て思い出したが、肉まんと包み紙で前方の下は見えていない。電車で吊革に掴まったし、直接触るのは微妙だったのだ。食べづらいが衛生上との妥協の結果、視界はポリバケツ・コンクリート・肉まん・包み紙のみ。黄色いバナナなど完全に隠れてしまっている。なんか嫌な予感がする。

 

 猫とは知らず、黒い何かが動いたからと驚いた拍子に忌避感が働いたのか、踏み出した左足が無意識に前ではなく、ゴミ捨て場から離れてやや右に着地しようとしている。ちょうど、バナナの皮の上に。まさか。マジか。おい、待て。

 

 踏んで、つるーんと芸人のように綺麗にいった。

 左足は地面に全く止まらず、体重を掛けた分、靴先は腰辺りまで上がった。体は後ろへ傾いていく。

 肉まんを持つ手に力が入って潰れてる。咄嗟にたまたま力が入ったのか、爪が白くなっている。離したくないという気持ちの表れではない、たまたまだ。食い意地が張っているわけではないと主張したい。

 

 急に場面が空を飛ぶハトに変わった。珍しい真っ白なハトだが、関係あるのか。フンをした。あ。もしや。

 フンが空中でばらけた。二つに。そしてそれどころではない私の目にクリティカルヒット。

 ハトがいた事も、フンが落ちてきている事にも全く気付かなかった。目にフン。そりゃ痛いわ。

 手で目を押さえても意味はない。そしてもう分かるこの結末。

 

 勢い良く後ろに倒れこんで肘をつかなければ、後頭部が地面とごっつんこである。鈍く、重い、嫌悪感を抱かせる音がした。そこから、じわじわと地面を赤く染める。

 

 そうして、広がる血と同じく、事実を、状況を、頭が理解していく。

 

「つまり、私は死んだ……?」

 

「そう」

 

 返答に驚いた。さっきの光の塊が目尻に浮かんだ涙を拭うように動いている、気がする。どうやら爆笑は治まったらしい。

 しかし、声には笑いがにじんでいる。すごく楽しそうに、歌うように続けた。

 

「後頭部が強く地面に叩きつけられて即死。ちなみに、鳥の排泄物が目に入らなくて肘をつけたとしても、肉まんが喉に詰まって窒息死していたよ。その時は両肘にヒビが入って、激痛と窒息でのたうち回りながらしばらくは死ねない。もしくは、たまたま誰かが気付いて何か飲ませてくれたり、人工呼吸の応用で肉まんを吸い出してくれたりとかしたら、今も生きていたかもしれないね?」

 

 なんだそれ、どうやっても助からないじゃないか。

 窒息しているなら声が出せなくて誰かを呼ぶ事もできないし、転倒した音はあったが、鈍い音で誰も気付かない。他に大きな音も悲鳴もない。

 そもそも人はいなかったし、通りかかったとしても息はそんなに続かない。食べ歩きの羞恥と遠回りの為に、コンビニ横の人通りの少ない道を何回か曲がったのは失敗だったか。

 近くに自販機は無かったし、夏場じゃあるまいし飲み物を持っている可能性も低すぎる。

 それに吸い出すにしても、まず頭と肘から出血しているのに窒息しかかってると気付く所から始まって、その上で冷静に状況判断してすぐさま行動に移せる人間だって少数派だ。

 

 そうなると、のたうち回るよりは楽に逝けたのか。

 ただ、鳥の排泄物って……そう表現されるとすごく嫌だな。いやいや、それよりも流してはいけない所が……窒息の原因がなんだって?

 

「……肉まんが詰まって窒息死、ですか」

 

「うん。肉まんが詰まって窒息死もなくはなかった」

 

 再び映像が流れ、目にフンが落ちた所から透視図も併せて解説してくれた。腹の立つ事に所々スロー再生で、悲鳴なんて出ない筈が、テレビでよくある女性の高い声も野太い声に変わるサービス付きで。

 あ゙あ゙あ゙あ゙~、じゃない。やめろ、笑うだろ。笑えるシーンじゃない。実際に死んでるからね?

 

 それはさておき。どうやら手を目に当てる前に、肉まんを落とさないようにと口へ押し込んだ所為で、反射的に咀嚼中のを飲み込もうとするも咀嚼が足りず、更に詰まりやすい外側の皮が多かった為、詰まったようだ。

 しかも、バナナを踏んだ時に肉まんを潰してしまったので、圧で固まった肉まんの皮を無理に口に詰めたから吐き出す事もできないらしい。あの時は目の激痛ばかりに気を取られていて、全く自覚してなかった。

 ついでに、食べ終わる前に冷めないよう、かつ少しでも長く味わえるギリギリを見極めて食べていたが、セーブし過ぎたようだ。

 そんな寒くないからと半分も食べていなかったはず。これも原因だろう。

 

「悲しめばいいのか、嘆けばいいのか、どうしたらいいのか……」

 

 バナナの皮や鳩のフンって……そんな、まさに事実は小説より奇なりを、実際に体験したくなかった……。死んだ事に対してより、肉まんが詰まっているだけでもう笑いそうになるわ……。サービスのせいで噴き出しかけたのも我慢したのに……。

 

「いやいや、笑えばいいと思うよ! 僕は思いっきり噴き出した!」

 

「シャァラッープ!」

 

 笑ったのはアンタだよ! 私を見て噴き出したくせに!

 

「あっ! もしかして、爆笑の原因は……」

 

「そう、君だよ! 君は素晴らしい、素晴らしすぎる! あんなに笑ったのは初めてだよ! とても面白いものを見せてくれてありがとう!」

 

「そ、そうですか……? それは、良かった、です……?」

 

 表情は分からないが、声は楽しそうに弾んでいた。

 

 全体的に受け入れがたいし、あんなんで初めてなんて信じたくない。でも、納得のご機嫌さだし、こちらもこんなに称賛されたのは初めてだ。

 情けなくはあるものの、あそこまで爆笑するほど楽しんでくれたなら、羞恥心とか未練とか色々とぶっ飛んだし、まあいいか。うん。もういいや。人生最期の見せ場だったって事で。

 

 少し安堵した表情をしたのだろう。光の塊が首を傾げた。不思議そうな声で聞いてくる。

 

「怒らないんだね。それに、随分あっさりと受け入れるんだ」

 

「だって、今更どうにもならないし……」

 

 言いよどむのは、死後だろうと苦痛があるかもしれないからだ。

 私は死んだ。死んだのに、自我がある。移動はできないが、身体も自由に動かせる。

 不思議すぎる場所。不思議すぎる人型の光の塊。映像も透視図も、どうして見られるのか。他に人がいないのなら、光の塊が指しただけで操作した。

 

 ここはどこ? 光の塊は誰? いや、一体どなたなのか?

 

「すみません、閻魔様でしょうか」

 

「いいえ、違います」

 

「失礼しました。神様でしょうか」

 

「はい、そうです。神様は寛大なのでさっきの笑いで許しましょう」

 

「ありがとうございます」

 

「うん。君、ズレてるね」

 

 光の塊なので、表情が全く分からなくて声で判断するしかないが、面白そうである。

 

 神様って光の塊なんだ、知らなかった。そういえば声も男のような女のような、年齢もいまいち分からない声だ。これがホントの性別年齢不詳か。

 

「それで、私は天国へ行けるのでしょうか?」

 

「行かないよ」

 

「まさか地獄ですか?!」

 

「天国も地獄もないから、どっちでもないよ」

 

 ないのか、良かった。

 大きな病気も怪我もなく、苦痛のない老衰希望だったのだが、ハトの攻撃はちょっとだけだったし、それ以外は苦痛なく死ねた。痛いのも苦しいのも辛いのも、お断りだ。

 

 家族は幼い頃に事故で亡くなってるし、恋人は生まれてこの方できた事ないし、友人は広く浅くだったし。まあ、多少泣くかもしれないが、皆そんなに引きずらないだろう。

 

 心残りは、児童養護施設に恩返しの寄付がもうできない事くらい。でも、私の財産は遺書で施設が受け取る事になっている。少ないかもしれないが、勘弁してもらおう。

 

「やっぱり、面白いね。ちょっと心読んでみたけど、あっさりすぎるくらいだ」

 

「あ。ご年齢お聞きしてもよろしいですか?」

 

「心読まれるからって、ぶっちゃけてきたね。万を超えてからは数えてないよ、めんどくさい」

 

 万年は生きているらしい。亀か。あ、やばい読まれる。ごめんなさい。

 

「かっ、亀! 僕が亀! ぶはっ! 確かに万年は亀! 千って言ったら鶴だったのかよ! 億ならなんなの!?」

 

 知らんがな。

 しかし、笑いの沸点低いな。取り敢えず待ったが、軽いツボだったらしく、数分で復活された。

 

「で。死したら魂を真っ新にして生まれ変わるんだけど、君とっても面白くて勿体ないから違う世界で生きてみない?」

 

 勿体ない精神ですね、分かります。私も施設で培われました。

 

 話を要約すると、生き返らせるのは色々と面倒なので、他の世界で今の記憶を持ったまま生きてみないかとの事。

 ネットの無料小説を少し読んだ程度で詳しくはないが、いわゆる神様転生というやつだろう。って事は、産まれる所からか。

 とっても暇そうだし、歩けるくらいまでスキップして欲しいな。胎児はほぼ動けないし、乳児はおしめとか母乳とか、今の精神のまま受ける事になる。両親、祖父母、兄姉いればその人達に足ぱかーんされて……ご飯は吸うのか、自分で……うわ、キツぅ……

 

 飛ばせません? こっからハイハイできた辺りまで、こうパッと。

 

「じゃあ、今の肉体で転移にする? 身分証とかもなくて、ほんとにぽんと放り出す感じだけど、お世話されるよりはいいよね?」

 

「いやダメでしょ!?」

 

 なにそれ、いきなり出現した感じはマズイでしょ。住む所に、仕事に病院、もろもろすごく困る。先立つ物以前の問題だ。

 

 まあまあと、ぞんざいにあしらう神様が取り出したのはトランプ大のカードの束。一枚一枚違う肉まんの写真が印刷されている。いや、何枚かはバナナだ。そこはかとなく悪意を感じるような……。

 いや、肉まんに罪はない。美味しいから。

 だが、バナナ。てめーはダメだ。皮が嫌いになった。中身だけこい。

 

 心を読んだらしい神様は笑いを堪えるようにぷるぷる震えながら、絵のある方を私に向けてカードを宙に浮かせた。

 なんだと思いながら窺っても、楽しそうに一枚選ぶように言ってくる。

 何の意味があるのか分からないが、ぷるぷる以外動かない神様に仕方なく一番美味しそうな肉まんを探す。バナナは無視。

 

 さっき食べてた肉まんもあったが、流石に選ぶ気にならなかったので、すぐ除外。

 テレビで見た事あるのと迷ったが味が分からなかった為、横浜で奮発したお高いだけに美味しかった肉まんを取る。

 

 神様を見ると裏返す仕草をするのでその通りにする。

 そこには見覚えのある『僕のヒーローアカデミア』のロゴが。ジャンプは立ち読みしてたし、土曜はヒマでアニメも見てたから知ってるけど。けれども。

 って、え? これ、行き先? 笑ってないで言って? 見なかった事にするけど。

 

「……この肉まん下さい」

 

「あっちにもあるから食べに行きなよ」

 

 あんのかよ、同じ店。びっくりだわ。

 

「店名違うけどね。どの世界も星と一緒で、遠くとも近くとも確かに存在している。一概に距離だけじゃないけど、影響が出る事も多い。感受性の高い人が、他の世界を創作として漫画にしていたり、ね」

 

「なんか壮大な事を言ってますけど、店名違うなら影響とは違くないですか? 材料や作り方を試行錯誤なりアレンジしてたら、美味しくしようとしたら同じようなのとか似たようなのできたりしません?」

 

 少しでも節約しつつ美味しい料理を作ろうと頑張ったのに、それより良いレシピがネットにあって努力が無に帰した事がある。他にも節約レシピあったから、これを見つける為だったとなんとか納得して浮上したが。

 

「んん! 後半もちゃんと聞いて? 結構大事な事を……いやもういいや。さ、行ってらっしゃい」

 

 え? 決定なの? この世界行くの?

 まあでも、原作関わらなきゃヒーロー飽和社会だし、ヒーローが多い場所に住めば今までとあんま変わらないかな。

 通り魔とか事件とか身近にあんまりなかったが、ニュース見れば起こってはいるし。そういうのが全くない世界はないでしょ、人がいれば大なり小なり争いは起こる。

 

「転生ですよね?」

 

「いや、面白そうだから転移。その辺に身一つでポイッ」

 

 ポイ捨て?! あの憎きバナナの皮と一緒?! 勤労青少年は許すけども!!

 

「いや、それ住所不定無職文無しってヴィランルートまっしぐらじゃないですか! 家族ください!」

 

「ヴィランって個性を使った犯罪者でしょ。しなきゃいい話じゃない?」

 

「ああ、そうか。……って、違う! 転生希望、家族欲しい! 百歩譲っても身分証ないと詰む! あそこ私の世界で個性が発現したらのもしも、平行世界みたいなものだから管理社会!」

 

「管理社会は身分証ないとツラいかー、引き悪いねー」

 

「運の問題ならさっき不運に不運重ねて死んでます! それに家族のくだり、無視しないで! 面白そうなら今の精神でお世話されてる心の声でも十分笑えるでしょ!」

 

「確かにwww超正論wwwぶふっ、想像すると既に笑えるwww」

 

 おい草はやすな。こっちは必死なんですけど、マジで人生かかってる。ここで人生の大半が決まる。

 

 だって今度はきちんとした後ろ盾が欲しい。

 児童養護施設育ちは、就職や人間関係など、偏見が結構あるのだ。

 職場で話の流れから私の境遇を知ってたデリカシーのない上司が口にして、最終的に躾がなってない暴力的な人が多いだの、両親がいないから云々と話してた。

 私は傍観しかできなかった。

 実際、私のいた施設は子供同士で暴力がある。施設にきた理由も、境遇も、人それぞれなので、劣等感からもあれば、ストレスや、子供だけのカースト決めなど、人は上下をつけたがる。施設育ちでそのままひねくれていき、グレたまま道を誤る人もいる。

 否定もできないが、同意して見る目が変わったら嫌だった。

 そんな中でも、私は真っ当な大人になったのだから。

 

 結婚だって、事故で両親を亡くしたのに親世代には忌避される。ちょっとなあ、なんて。老後の世話するの一組でいいじゃないか。貴方達の面倒しか見ないから二世帯住宅でも同居も可。放置しないよ。

 

 だから、長生きして老衰で亡くなる両親と、関係良好な存命している祖父母と親戚も欲しい。

 両親が亡くなってから知ったが、父の両親も事故で亡くなり、祖父母は寿命で既に他界、子供ができにくい家系ばかりで婚姻したらしく親戚もなし。全滅。

 母の両親親戚は存命ではあるものの、良家だった為に結婚を反対された末の駆け落ちだから絶縁状態。孫の引き取りを拒否した本家の意向を汲んで親戚一同もそれに倣った。塩対応。

 創作にあるような親切で情に厚い友人が、なんて現実にある訳がない。良家からの干渉や嫌がらせを気にして知り合いもいない遠くに移住した為、五年程度でそこまでの関係は築けず。以前の友人にとっては、しばらく会わない内に産まれた来年小学校の六歳児だ。これから金がかかる子供を引き取る物好きも現実には存在しない。

 

 その結果の、児童養護施設行きである。元々不幸に不幸が重なってたのに、不運も重なって死亡とか、マジで運ないな私……。

 

「そんなに考えるなら、しょうがないなあ。転生ね、オッケー。面倒だから魂の順番待ちに適当に入れようと思ったけど、図太く生き残りそうで無駄に家系図が大きい家を探してあげるよ」

 

 表現を変えるだけで微妙な家族と親戚だな。

 いえ、文句ではありません。日本語って難しいですね、って話です。

 

「あ、でも……」

 

「うんうん、もう希望あるなら考えるだけ考えなよ。たまに面白いから読んどくし」

 

 では、遠慮なく。

 

 探すならついでに、差別ではないが、異形系個性とかの、外見に特徴が出過ぎていない家系でお願いしたい。

 無個性は生きづらそうで嫌だが、できたら今の私みたいな見た目普通の家系がいい。これから一生付き合っていく体だ、今の精神のままなら今の肉体に近い方が色々と都合がいい。

 

 何故なら、個性は身体機能の一つ、異形系なら産まれた時から当たり前のもの。普通なら違和感も不具合もない。

 しかし、私は今の精神のまま転生するのだ。二十年以上の付き合いのある肉体の形や機能から大幅に変わると、最悪は精神に異常をきたす恐れがある。

 

 それでも、と言うならば、特に虫系は嫌だ。発狂する。死ぬ。

 猫も今はちょっと微妙だが、元々は好きだし。犬とかの哺乳類系は可愛いが、タコとかいたよね。海系もイルカとかならまだしもカニや魚は嫌だ。

 

 そうなると結婚相手探すのも大変だな。見た目が人間と違いすぎる人を愛せるかと言われると答えられない。例え良い人でも、甲殻系は子供産んだらどことは言えないが裂けそうだし。魚系の場合、イクラ的なの産むのか……?

 

「結婚相手は勝手に探して? そんなとこまで面倒みないよ」

 

 すいません、脱線しました。

 でも、肩震えてますよ。面白かったんっすか?

 

 そもそも、腕や足が倍に増えるとか、尻尾やら触手やらの器官が増えても扱いきれないし、今と形が違うと違和感しかない。

 いつかは慣れるかもしれないが、まっさらな状態ならまだしも、今の精神からでは一体いつ慣れるか想像もつかない。

 

 それも面白そうと思ってるだろうが、どこかで見たか聞いたかしたが、肉体が変わりすぎるとマジで精神に異常きたすんですから止めて下さいよ!

 一話で登場したヘドロの、流体系の個性とか、戻れなくなりそうですし。物理無効は良さげに見えるが、人間の形でない個性は怖くて本当に遠慮したい。

 

「はいはい、分かった分かった。じゃあ、バイバーイ」

 

「軽い!」

 

 視界が、まばたきしても関係なく、徐々に狭まっていく。どうやら本当に終わりらしい。

 

「要望はオッケー。他は好きにしとくね!」

 

 口を開こうとしたが動かない。視界と共にだんだんできる事ができなくなっているようだ。

 

 でも、心はきっと読んでる。だって一気にいかないのはリアクションを見て楽しんでいるからに違いないから!

 

「ん? なに? まだなんかある?」

 

 そりゃあ、まだ……ん? なにか……? あれ、ないかも? 好きにされるのに一抹の不安はあるけれども……

 

「個性は肉まんが出せるのにしとくね! ハズレはバナナ! たまに出るの、ぷぷっ!」

 

 なんだそれ、ちょっと待って!

 

「あと、超幸運体質にしとく! 個性じゃない、ただの体質! 抹消やら奪われたら面白くないし!」

 

 最後だからと、抵抗させずに畳み掛けてきやがってー!

 

「原作知識は消しとくね! 先が分かったら逃げそうだし。面白そうだから、キャラに会ったらうっすら思い出させてあげるけど!」

 

 それ、道端ですれ違ってもきちんと見てなきゃ気付けないじゃん! ニアミス危ない、ニアミス怖い!

 ヴィランだけは分からしてよ! 逃げる気満々なのは確かだけど、それじゃ面白くないんだろっ?! 知ってる! でも嫌だ!!

 

「多分、会うのはこれで最後だよ」

 

 無視されたが、神妙な雰囲気に思考と文句を止めた。

 静かに告げる声に、二度目の人生をくれたお礼と、短いながらも妙にウマがあったし、楽しかったからとお別れを返そうとして。

 

「ちなみに僕は肉まん買えだなんて言ってない。思し召しは君の飽くなき食欲から、だよ! 君の! 欲望! オンリー! 僕のせいにしないで!」

 

 ぷつりと、覚えのある感覚が最後。

 

 でもこれは届け!

 最後の最後がそれかよ! 絶対機会狙ってただろー!




今時の子にしてはあんま詳しくなかったなー。神様転生なんだからチート欲しいとか、そういうの欠片も思わなかったし。ま、困った時はチート無双でなんでも解決! なぁんて、つまらないから要らないよね? 存分に慌てふためいて笑わせてね!

今回は恋愛要素についてアンケートです。かなり悩んでも相手が決まらないので(^^;)次回アンケートはキャラで、次話やります。相手は相澤・緑谷・爆豪・轟・心操の予定で、他に希望がありましたら感想などで教えてほしいのですが、中には書けないキャラも居ますので申し訳ないのですが絶対とは言えません。マイクは好きですが、英語が苦手なのですみません……。

  • 恋愛あり。一人。相手は次回のトップ。
  • 恋愛あり。複数。トップ以外は当て馬。
  • 恋愛なし。逆ハー。投票数で出番増やします
  • 恋愛なし。全員友情。同上。
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