超幸運≠平穏 ~神様のご都合主義~   作:紅月 煌

11 / 13
遅くなってすみません。
読んでくださる方がいる、楽しみにしてくださってると思うと、やる気出ます! ありがとうございます!
言い訳すると、ちょっと相澤先生愛が爆発し、そっちに流れまくったので落ち着けるようにもう一つ書いたら、見切り発車すぎて調べて直して繰り返してたら根本からひっくり返って、やる気なくしてました……。いつかそっちも上げます。


ヒーローについて、これからのこと

 ヒーローになると、決めはした。

 したけど、気は進まない。

 

 前世はヒーローという職業こそ無かったが、警察や医者など、助けを請われやすい職業はあった。

 時と状況によっては、それ以外でも、例え通りすがりの普通の一般人だろうが関係なく、助けを求められる事はある。

 

 でも、助けてと呼んだって、必ずしも助けてくれるとは限らない。

 私が、そうだった。誰も助けてはくれなかったのだ。喉が切れて血が出るほど叫んでも、なりふり構わず縋りついても。一心不乱に求め、人にも神にも全身全霊で願ったのに。

 それでも、誰も、何も、助けてくれなかった。

 誰しもが目をそらすか、首を振って、無理だと口にした。

 

 自分ではどうしようもない事を願うからこそ、他人にとっても簡単ではないのだと、身をもって知らされた。

 本当に自分を助けられるのは自分しか居ないのだと、否応なく理解するしかなかった。

 

 なのに、なんで他人を助けようと、それが仕事のヒーローになろうなんて思えるのか。

 転んだ人に手を貸すくらいならいい。でも、ヒーローはその程度では済まされない。死ぬかもしれないのに、死なずとも身体を欠損するかもしれないのに、それでもどうして他人を助けようだなんて思えるのか。そんな仕事をしたいだなんて思えるのか。

 私は思えない。だから実際に、そちら側に立とうなんて思えなかった。思う事すら、しなかった。

 

 今世で助けを呼べるのに呼ばなかったのは、前世の経験と、身勝手にも敵と見做したから。改心して呼べば良かったと思い直したのは、命の危険が無いからでもあった。

 助けを求めたら死ぬかもしれないのに、それでも助けてほしいなんて、私には思えない。私なんかの為に命を懸けられる素晴らしい人が、私なんかの為に死んではならない。

 いや、そもそも優しいからといって、命の危険があっても助けてくれるとは限らない。優しい人は多くても、全員が命を懸けられるとは限らないから。

 

 それが普通だ。

 皆、基本的には自分が一番大事。自分より優先できる失いたくない人なんて、そう簡単には得られない。

 そして、そんな人にならば命を懸けられても、見知らぬその他大勢に普通は命なんて大切なものは懸けられない。

 でも、それができるから、英雄(ヒーロー)なのだ。

 なのに、この世界にはヒーローと呼ばれる者が多すぎる。

 

 そもそも、ヒーローという職業名がいけない。

 このヒーローが当たり前の世界で生まれ育ち、常識や価値観を刷り込まれたならまだしも、そうでない私にはそこから引っ掛かった。

 

 名前の由来自体は、少し調べれば分かった。

 個性によって超常黎明期が始まり、その混乱で政府は法整備や自国の方針だけでなく、世界規模の変革だから他国との協議やすり合わせなどで手一杯で、なおかつ国だから決定すら年単位。そんな中でも個性なんて前例も無い不思議な力を使う者がどんどん生まれては育ち、悪意は無くとも暴走させたり手に負えない者達もいて、上の混乱に足を引っ張れた警察も対応を決めらないし手も足りない状態が続いた。そうなればこれを好機と見た無個性の犯罪者も増えるが、原因の個性自体を悪用する犯罪者(ヴィラン)まで増加し、治安は一気に悪化する。そうして自衛をするしかなくなった一般人は、国も警察も当てにはならないから自分達でなんとかするしかないと自警団(ヴィジランテ)を結成し、こちらも個性で対抗し始めた。

 その、自警団(ヴィジランテ)として、誰かを守る為に個性を使った者達が現在のヒーローの原型だ。役立たずとされ、信頼を失い弱った国が、民衆の勢いに押される形で追認せざるを得なくなり、素行や功績を考慮して一部の人が公認され、生まれた職がヒーロー。だから、公務員なのである。

 

 ヒーローという職業名も、初めはなんて名をつけるんだバカかと思ったが、歴史を知れば納得だ。

 当時の助けられた人達が、アメコミ映画のようだと錯覚するのも無理はない。既に娯楽作品で下地ができていたからこそ、彼らはヒーロー以外の何者でもなく、ただ単に分かりやすいから名付けられただけだ。他国も同じ。

 詳しくは分からないが、混乱の最中だったから名前なんかに構ってられず、分かりやすすぎる名前に反対は出なかったのかもしれない。

 それが現在まで変更されないのも、誰も疑問に思わないのも、これが普通だから。後から政府がお得意の長ったらしい正式名称をつけないのも、世界共通だからが理由だろう。

 

 経緯を知っても、納得はできても、どうしても違和感は拭えない。兄が好きだったから、ヒーローという職業がどういうものか、何をしているか知っている。

 前世と今世での一番の違いは個性の有無でも、個性は自分も家族も持っているし、異形型など人間から逸脱した形を持つ人達が普通に歩いている世の中だからいつしか慣れてしまった。

 初めて見た時は驚いたが、無から有だったから個性に馴染むのは早かった。けれどヒーローは、有を有のまま、認識を大きく変えるのはとても難しい。

 

 あの時に居たならばもしかして、と。英雄(ヒーロー)に対しての期待値が高すぎる事も、この世界のヒーローを受け入れがたくしている。

 記憶を持ったまま転生した私にとって、英雄(ヒーロー)とはアメコミなどか、滅多に居ない凄い人だ。

 創作なら、所詮は作り物の娯楽。空想は空想でしか無い。

 前世では、ごく稀に勇敢な人が命を省みず救い、テレビや新聞で持て囃した時くらいしか話題に上がらなかった。それほどに、遠い存在で、無縁なものだった。創作物を除き、普段の生活には欠片も無く、身近でも無い存在だった。

 その程度でしかなったのに、今世では身近な存在で、しかもたくさん居て、単語も話も聞かない日は無い。その事自体が違和感でしかなく、いつもなんだか据わりが悪かった。

 親類・友人・知り合いがデビューした、ヒーローだ。失敗の無い人間も、完璧な人間も居ないから、何かしらマイナス面もセットで話題に上げられた。そんな話を耳にする度に、そんな人が英雄(ヒーロー)なのかと思い、いや職業の方かと思い違いを知らしめられた。

 

 英雄(ヒーロー)とは、命を懸けて人々を救う。

 だが、職業ヒーローはただ仕事として行うだけ。百歩譲っても英雄候補でしかない。必ずしも命を懸けなくていいし、なんなら逃げたっていい。マスコミにもネットでも叩かれ、職を失うかもしれないが、被害結果によっては挽回のチャンスはあるし、辞めてもほとぼりが冷めるか都会でなければ普通の人として生きてはいける。

 

 そう理解してはいても、本来のイメージが強すぎるから躊躇われる。偉大な称号だから、抵抗があり、そんな大層なものにはなれないと思ってしまう。例えそこまで求められる職業ではないと、この世界ではただの一職業、警察や自衛隊のようなものと分かっていても駄目だった。

 前世では警察でも医者でも一般人だって、誰だろうが絶望から救ってくれる人を、そう呼んだ。

 私も、絶望を知っている。嫌というほど味わった。けれど、誰も救ってはくれなかった。

 自分も助けられないのに、誰かを絶望から救うなんて、私にはできない。応えられないのに、なれる訳が無かった。

 

 

 この世界にも本来の意味での英雄(ヒーロー)が存在し、その人が有名なのも気が重くなる原因だった。

 日本で知らない人は居ないと評されるほどの有名人、オールマイト。

 今まで数多の人を絶望から救い、これからも救うだろう本物の英雄(ヒーロー)。笑顔一つで安心を与え、もう大丈夫だと思わせてくれる本来の意味での英雄(ヒーロー)。深く考えた事の無い人でも無意識下に感じ取り、だからこそヒーロービルボードチャートJP不動の第一位。

 日本のみならず、世界でも通用し、彼が居るだけでヴィラン発生の抑止になる平和の象徴。だから出身国であり、現在住の日本の犯罪率は世界から見ても低いという生きる伝説。

 個性発現前より犯罪率が高く、凶悪犯も多いアメリカで経験を積む為に渡米してからデビューしたそうだが、激戦区でも新人から活躍して注目を集め、将来を期待された天才。日本に戻るなり災害救助で鮮烈な日本デビューを果たし、その動画が今でも再生数を伸ばし続ける話題に事欠かない歴史に名を記す現代の偉人でもある。

 上げればきりが無いが、彼の活躍を知れば知るほど、英雄(ヒーロー)だと思った。彼こそ、まさに英雄(ヒーロー)だった。前世でのイメージ通りの、英雄(ヒーロー)そのもの。

 職業ヒーローのお手本のような人でもあり、目指す目標に掲げられる事が多い、日本で一番の憧憬と尊敬を集める人。

 そんな、ヒーローなら彼だと言われるほどの人だから、どうやったって彼のようにはできないから、比べられるのは分かり切っているから、余計に嫌だった。

 

 オールマイトは実力だけでなく、精神面でも紛れもない英雄(ヒーロー)だ。むしろ、その精神こそが彼を英雄(ヒーロー)たらしめていると言える。

 インタビューで言っていた。

 

『困っている人が、助けを求める人が居るなら助けるのは当たり前!』

『どうしてそんなに頑張れるかって? そんなの皆の笑顔が見たいからさ!』

『応援ありがとう! その笑顔が私の力の源だ!』

 

 本物らしい、らしすぎる言葉だった。

 最初は、ナンバーワンだから維持の為、人気取りも点数稼ぎも大変そうだなと軽く見ていた。キャラ付けにしてもやりすぎで、そうでないなら聖人君子かと呆れた。

 けれど次第に、事件が報道されて、インタビューなどを見て、本物だと確信していった。一回ならまだしも、誰かを救う為に何回も何十回も、怪我を負い、命を懸けていた。言動が嘘や世間体の為では無いと物語り、いつだって一貫性があった。液晶越しでも、本心から言っているのだと疑いようも無かった。

 だから、同時に、だんだんと怖くなっていった。

 

 創作物の英雄そのままの、活躍や人物像。なのに、私と同じ世界に実在する、私と同じ人間。信じられなかった。その精神も思考も受け入れがたく、イカレてるとすら思ってしまった。

 だって、彼なら命懸けの現場に呼ばれる事も多いはず。死ぬかもしれないのに行って、危ない目に遭いながらも助けなくちゃいけない。その助けた数とイコールではなくたって、死地に赴いて死線を越えた事は数知れず。

 それでもそれが、当たり前? その原動力が笑顔? 意味が分からない。

 大多数は見知らぬ人で、その誰しもが心の底から感謝する訳でも無く、逆にヒーローなんだから当然の事だと思い上がりも甚だしい奴らも居て、遅いとかの文句をぶつけられる事だってあるはずだ。

 当然、助けられず、怪我をした人も、後遺症を残す人も。死なせてしまった人だって、いたはずだ。確実に、居て。遺族の行き場のない感情を、筋違いの憤りや恨みを浴びせられたのは、一度や二度じゃないはずだ。

 

 けれど、彼にとっては、自分はどうでも誰かを助けられればそれでいい。その人が生きて、自分に向けなくても笑顔ならそれで。生きているからこそ、幸せになれるから。その手助けができれば、それだけでいい。

 間に合わなかったなら、きっと自分だけを責めるのだろう。本人や遺族の罵倒を全て甘んじて受け、謝るのだろう。そうして、もっと頑張らねばと、更に危険に身を投じ、命を賭す事に躊躇いなどないのだろう。

 

 本気で理解できなかった。

 私は、そんな風には考えられない。世の中に笑顔が溢れているのは良い事だとしても、それはやる気にも力にもならない。

 歩合制給与の他に個人的にお礼が貰えようが、命を賭してまでしたくない。富や名誉より、命の方が大事だ。そんなものの為に命は懸けられない。自分の幸せはどうなる。

 それが仕事と言うなら、そんな仕事は嫌だった。

 

 できるからこそ、オールマイトは本物の英雄(ヒーロー)だが、それは彼の犠牲無しには成り立たないものだ。平和の為と謳っても、それがどんなに素晴らしい事だとしても、その犠牲に加わるなんて嫌だった。

 ヒーローでないから、ヒーローでなければ。危険を見極めて、助けない選択肢を取れる。無責任でも構わず、逃げられる。でも、ヒーローならそんなのは許されない。そうやって柵に囚われて逃げられないのも、嫌だった。

 

 

 それに、ヒーローは活躍すればするだけ、有名人や芸能人と同義になる。オールマイトが良い例だ。

 彼は普通の人のように食事にも買い物にも行けないし、遊園地や電車なども、とにかく人が居る所は無理。どこだって気軽に行けば、余計な混乱を引き起こし、下手すれば怪我人が出る。個性を明かしてはいないが、とんでもない身体能力の強化による移動ができなければ、今よりもっと動きが制限されただろう。

 現に、テレビで見た事がある。プライベートなのに騒がれて、ファンに囲まれる困った顔のオールマイトを。でも、迷惑そうな顔はせず、順番だよと明るく笑って握手やサインをしていた。まるで砂糖に集る蟻か、光に集う羽虫のようだったのに。

 でも、本当に? どこに行ったってそれで、心から笑顔を浮かべられるか? 本人に会った事はないが、少なくとも困ってはいた。

 マスコミにだって執拗に追われる。何かあれば、それが良い事でも悪い事でも、何も無くたって、彼の事ならなんだっていい。他社に勝とうと、より詳しく、誰も知らない何かを求めて、視聴率や売上の為に、自分達の利益の為だけに全てを暴き立てようとする。個性含めて秘密にできている事が奇跡に近い。

 一般人のSNSやブログでもそう。ここに居た、あそこで見た、何をしていた、こう言っていた。勝手に撮った写真付きのそれらは、彼にはプライベートなど無いと如実に示していた。

 オールマイトほどじゃなくたって、無名じゃないなら同じ。マスコミは、人々は、容赦しない。それを悪い事、迷惑になるなんて微塵にも思わない連中が多すぎる。

 ヒーローは目立ってなんぼ、と思い、思われるのが普通。肖像権なんて無いに等しい。一言一行は、要らない憶測や感想まで添えてどんどん拡散される。有名であればあるほどだ。

 止めてと言っても、訴えたって、それ自体が面白ければ余計に過熱してしまう。しかも最終的には、なんでもかんでもヒーローだろと言われるのがオチ。そんなのも嫌だった。

 

 

 これでどうして、ヒーローになりたいだなんて思えるのか。

 果たして、どれだけのヒーローがその事に気付き、分かった上でやっているのか。痛い目をみて思い知ったヒーローも、引退したヒーローだって、きっと居る。

 にも関わらず、良い面だけ見て、ただ活躍だけを見て、カッコいいからなりたいと簡単に目指す子供が多すぎる。憧れたからなりたいなんて、安易すぎる。

 

 だから、兄も説得する気だった。

 応援していたのは、なんであろうと本気で目指すなら誰が反対しようと私は味方でいたかったし、なによりも子供だったからだ。

 子供というものは意外と頑固なのに、意思も夢も変わりやすい。不要な諍いはしたくなかったから話せば理解でき、手遅れにならない中学生の進路希望提出までは待ち、説得して全て覚悟の上でも決意が変わらないのなら、その時は兄の為にできる事をしようと決めていた。

 ヒーローという縛りの無い自由な一般人のまま、手助けをしようと。

 

 ヒーローとは、ざっくり言えば公的な場所での個性使用免許を持つ者で、個性が戦闘向きでない私には必要無く、緊急時なら消滅させても注意か弁償で済む。立入制限されてても隙はあるし、一般人の家族なら事後に心配でと泣けば見逃してくれる可能性もある。

 個性や免許が無くても、ハイスペックのこの身体なら力になれるはずだった。他者と比較できる彼女達からしても高いらしく妙に思ったが、あいつがヒーローにならせたくて手を加えたと考えれば納得がいく。有り難く、ヒーローにはならず、ヒーローの兄の為に使おうと思った。

 結局はろくに話せず説得できなかったが、その予定ではあったのだ。

 

 

 兄が正義感なり、困ってる人を放っておけないタチなら、それは素敵だと思う。カッコいいお兄ちゃんだ。

 でも、他人はアホだと思う。

 依怙贔屓なのは分かってても、素直な気持ちなんだから仕方ない。

 自分がやるとは考えもしなかったが、私は、手段として利用するだけ。だって、ヒーローしか道が無いのは事実。やるしかない。目指すのは、ツチノコ扱いのしょーちゃんだ。

 外を大手を振って歩くには。兄を見つけるには。ヒーローが最適解。マイナス面ばかり上げたが、現実的に考えると一石二鳥どころではなく、利点がたくさんあった。腹立たしい事に、ありすぎるくらいだった。

 

 私が欲しいのは、安心して暮らせる家と、自衛の方法と、兄を捜す人手や情報網。

 これらを用意するには資金も伝手も、何もかも足りない。資金すら、超幸運体質を多用すれば余計に危険が増えるだけ。

 元々持ってる人に頼るのも一つの手だが、思いつくのは財閥などの金持ちや権力者か、実力のある犯罪者くらい。

 でも、どれもデメリットが大きすぎる。利用悪用されずに、家族で幸せに暮らしたいなら選べない。

 使える子供とその家族をただ保護して安全に暮らしてもらい、いつ狙ってくるか分からない相手を常に警戒する。

 こんなの、警察だってしてくれない。どんな人格者だって、無償で一生なんて無理だ。

 

 それならヒーローの方がよっぽど楽である。

 職業自体、国家試験に受かればなれるお手軽さで、色々と融通が利くのも良い。元々、国家公務員は非が無ければクビにならないが、それよりも上で、資格を取り上げられない限りは自分の意思で自由に働けるのだ。

 サイドキックだと所属先の都合も考えなくてはいけないが、自分で事務所を持つか拠点を持たないフリーならまさに自由。資格さえあれば、休職するのも再開するのも自分次第。

 その分、給料も働き次第にはなるが、軽犯罪者を捕まえて稼げば良い。私、ヴィランホイホイだし、何もしなくても寄ってくる。

 家族の安全も、ヒーローの家族が狙われやすいのは周知の事実だからこそ、逆に手を出しにくくなる。警察だって似た立場で協力的だろうし、周りの理解も得られやすいから、一般人よりも安全を確保できるという算段だ。

 

 それに、ヒーローになる前もなった後も、心強い繋がりを作れるのも良い。

 ヒーローならば、何かしら戦う力を持ってるのは当たり前。しかも、ヒーローなんてものに就いてるんだから正義感溢れるお人好しや、承認欲求が強い目立ちたがり屋ばかり。

 同業なら自ずと仲間と見做してくれるし、知らない人より顔見知り以上なら、親しければ親しいだけ力になってくれる。前者は正道を曲げず、心のまま自分の為に。後者は優越感に浸り、より手柄を立てる為に。

 ただ、どちらにも当てはまらないヒーローも居る。しょーちゃんとか。でも、そういう人達は少数派だ。しょーちゃんなら私が危なかったら助けてくれると思うし、他の人もヒーローなんだから余程の事が無ければ見捨てるなんてできない。

 ヒーローだけでなく警察とも交流を持てば、それだけで抑止力になるし、何かあっても助けてくれる人がもっと増える。

 そう、ヒーローと警察は協力関係だから、嘘判別の警察官とも一緒に働けるかもしれない。今度会ったら名前を聞きたい。メインとサブにも聞いて、三人に謝りたい。きっとあの人達以外にも優しい人は居るから、他のまともな警察官とも是非知り合いたい。

 

 

 学校に通う事自体危険ではあるが、ヒーロー科には行きたい。色々理由はあるが、一番は主人公だ。

 原作知識を消されても、それに伴う印象や感情までは及んでいない。確か、王道ものだったはず。

 なら、オールマイトの歳を考えれば主人公が次代のナンバーワンになるはずだ。しかも、オールマイトと似た考えや価値観を持っていると予想される。

 タイトルから学校卒業までの話という懸念はあるが、それでも卒業時には目指してもおかしくないレベルのはず。そんな未来の強者なら、同級生になって友人になりたい。いっそ結婚して(肉盾)になってほしい。

 なにより、これだけオールマイトが有名なら、ヒーローメインの原作に出ない訳が無い。出るなら、後継者として弟子にしない訳が無い。どう考えても、絡まない訳が無い。

 その二人とお近付きになれるチャンスを、逃す理由は無い。だって、主人公が私と同い年なのは自明の理。あいつは、絶対に、そこは外さない。

 タイトルに『アカデミア』が入るなら、入学時にはそれほど強くはないはず。ジャンプの三大原則に努力があるから、現時点ではきっとまだ未熟。ジャンプ系主人公はおバカな印象が多いし、勉強ができない可能性もある。

 そこら辺に付け込むチャンスがある。独学に近いが武術など色々やってきたし、高校レベルの勉強は既に楽勝。同級生として仲良くなれる隙があるのなら、そこに付け込む。

 どうせ、あいつが何かして主人公と同じクラスにするだろうしな。万が一、他のクラスでも主人公さえ見つければなんとでもなる。

 

 問題は、どの学校か、だが。

 主人公は、タイトルからして必ずヒーロー科に通う。そしてそれは、国立雄英高等学校の可能性がかなり高い。

 まず、オールマイトとの接点として同じ出身校は有りえる話だ。出身校なら何かで訪問した時などにたまたま見かけて、その他大勢の中からナンバーワンに見出され、師弟になるなんて展開も有りえる。王道だ。

 王道だと、衰退した元名門を復興するとかも有りえるが、探した限り該当校は現時点では見当たらない。なら、王道は王道でも有名校や名門校の方だろう。雄英は『東の雄英、西の士傑』と言われるほど有名な名門校でもあるから、この二校に絞られる。

 

 どちらかなら、雄英の方だろう。

 一番の決め手になったのは体育祭だ。学校がメインの話で体育祭編をやらない訳が無い。しかも、一学年ごと行い、ヒーロー科メインの催しだ。もう、出番と見せ場しかない。

 更に、雄英の体育祭はこの世界では超有名。たかが体育祭ではなく、オリンピックに代わると言われるほどで、一学校の体育祭なのにテレビでも放送して高視聴率をキープするレベル。観客も多く、誌面の向こうも盛り上がる。

 時期も良い。普通は体育祭は秋だが、雄英は五月上旬の入学して一ヶ月後で、人物と個性の紹介にちょうど良いのだ。ヒーロー科は二クラスあり、一ヶ月の間に登場した主人公の同級生を深く掘り下げるも良し、もう一クラスを登場させるも良し。メインはヒーロー科だが他の科、サポート科なら道具持ち込み可で企業へのアピールもできるし、特にヒーロー科に落ちて普通科に入っても成績次第では編入有りだから奮起する人も居る。

 メタ視点だが、ただ一気に登場させても読者は読み流すが、体育祭を進めつつ要所要所で目立たせて活躍させた方が覚えてもらいやすい。

 だからの、雄英一択だ。士傑でもここまでではないのだから、これはもう雄英だろう。きっと活躍するに違いない。

 まだ入学まで時間はあるから決定では無いが、とりあえずは情報を集め続ける。なんなら、あいつが誘導とかしてきそうでもあるし、それも含めて待って何も無ければ、最有力の雄英に行く。

 

 

 都合の良い事に、雄英なら登下校以外の問題は無い。

 詳しく調べた所、教える為に教師陣に多くの現役プロヒーローを起用しているから校内に強力な護衛が複数常駐しているようなもので、職員室なんて警察署より安全そう。人間だけでなく最新鋭の警備設備を揃え、各所の監視カメラにAIロボなどが常時稼働し、うちよりよっぽど金と人を使い、研鑽し続けた厳重さを誇る。

 特に惹かれたのが、関係者以外入れないよう校門から校内の至る所にセンサーがあり、通行許可IDがなければ校門すら通れないというのが素晴らしい。雄英なら身辺調査もしっかりしてるし、なんかあってもチクればブランドに傷つかないようすぐ対応してくれるだろう。ここなら周囲を警戒せず、平穏で自由に過ごせる。もう住みたいくらいの安心さだ。

 登下校だけは懸念が残るが、電車ではなく車で送迎してもらえば危険は減るし、もし攫われても生徒であり登下校時なら学校も協力せざるを得ない。プロヒーローの教師陣が動員され、母校のスキャンダルなら有名OBの助力も期待できる。オールマイトもそうだし、ナンバーツーのエンデヴァーも事件解決数史上最多記録保持者だから頼もしい。

 

 そして、将来的に主人公の世代は黄金世代とか呼ばれる可能性が高い。

 次代のナンバーワンが居るなら、その近くや同年代には強くなる為の踏み台もとい、競い合う強力な好敵手達が存在するはずなのだ。主人公の近くに居るだけで、それらとも知り合える。

 そもそも、雄英のヒーロー科に入れた時点で未来の同級生は同年代の中でも飛び抜けた天才・秀才達なのは間違いない。そこに主人公が加われば、元から高い能力は更に上げられる。大なり小なり、上げるしかなくなるような事が起きる。

 これは他校にも当てはまり、そちらも主人公の近くに居れば知り合える機会はあるし、もっと増やせる。

 以前の懸念で避けようとしてきたが、こっちもいつ何があるか分からない身。こうなったら原作に巻き込まれようとも、それらを利用して目標の達成を優先しようと決めた。

 主人公の成長の為、歴代でもトップクラスの資質と才能の持ち主が集まり、切磋琢磨して将来はヒーロービルボードチャートJPトップテンを総ナメするのではないかってほどの頭角を、学生時からでも現し始めるかもしれない実力者達と繋がりを作るのだ。

 

 

 更に、私自身が強くなるのに好都合でもある。強くなるには優れた指導者が必須だが、雄英ならば実績とノウハウまで揃っている。

 将来有望すぎる主人公含む未来の同級生達も、高校入学時にはまだ未熟で実力不足。優秀な教え導く者が必要だ。けれど、強いから、ランキング上位だから指導者としても優秀とは限らず、端から見て分かるものでもない。相性もある。

 現に、雄英教師陣は有名でない人も多い。教師兼任の都合もあるだろうが、これは全員とはいかなくても教えるのが上手な人が居る証明であるし、それだけでなく今まで様々な生徒達をプロヒーローにする為に蓄積されたものもある。

 

 調べたら、二年からインターンという、保護者(プロヒーロー)付きのヒーローとしての郊外活動もあった。

 主人公達の性格や個性によって在学中は複数の指導者に教えを受けるはずだから当然だが、指導者候補はより取り見取り。きっと私に合う指導者も居るはずだ。

 

 私はイレギュラー。

 原作キャラのように必ずしもピッタリな指導者に出会うとは限らない。どういった人が指導者として合うかも分からない。

 

 だが、希望はある。

 まず担任は、本来の意味での個性豊かなキャラ達をまとめて指導し、二年のインターンまでは指導者を代行する、指導能力の高い人のはずなのだ。バトルものなら初期の指導者は最後まで何かしら教える事が多く、弟子に追い越されても助言する事が多々あった。

 そんな、雄英の教師になれるほど優秀で、主人公達の担任になるほど有能で、ダイヤの原石達をまとめて面倒見れるほどの指導力があれば、合わなくてもなんとかしてくれるかもしれない。

 主人公達が各々ピッタリの指導者に出会ってそちらに行けば、最終的にはマンツーマンで教えてもらえるかもしれないし、教師なのだから拒否される心配も無い。尚且つ、雄英の広い敷地には演習場も複数あって、安全な校内で鍛えられるのも良い。

 

 それがダメでも、元々名門として名高い雄英なら他の教師も高水準ではあるので、その中で合う人に教えてもらえば良い。

 教師だからこそ、チェンジも頼みやすく、早いし楽だ。

 

 これでもダメなら、外で探す。

 インターンは、学校が受け入れ先を多く確保し、基本的にはその中から事務所の方向性などで生徒が選ぶ。しかし、有名所の場合は、人が集まりすぎるのか体育祭の活躍次第で向こうからの指名が無ければ選べない。

 ここが難点だが、上手く教師や主人公達と親交を結べれば、指導を受けるのが難しいヒーローでも紹介してもらうか、便乗できる可能性がある。そうだ、いっそ受け付けてなくも、土下座でもして熱意を見せたり、どうにかして学校側も巻き込めばなんとかなるかも。

 私と家族の安全と兄の行方が懸かっているのだ、手段は選んでいられない。すぐとはいかないし、印象も悪くなるが、変更も可能だし。

 流石にこれだけ居れば、私に合う指導者も見つかるだろう。

 

 

 物語に完結はあるが、現実の、私の完結は死だ。

 原作がどこで終わるか知らないが、例え原作が終わっても私の人生は続く。だから、卒業した後も考えた。

 

 その頃には、今より実力も知識も全て含めた自衛力は格段に上がり、今と比べようもないほど心強い繋がりや伝手も増えている。

 デビューしたら安全な学校に居られなくなるが、もし卒業後に拉致られてもヒーローならメディア露出が多く、アホ共も勝手にSNSなどにアップするから追いやすく、一般人より話は早く進む。

 交流を持った人達も多くなってるし、親しいと言える人も居るだろう。その人達も協力してくれる。

 情報が迅速に広まれば腰が重いとされる警察も、私の強運を知ってるから資金を増やされる前に急いで救出に動いてくれるだろう。

 

 そもそも拉致られないように、卒業後はすぐ上の中以上の、高い戦闘力か防御力と、索敵系の個性が居る事務所でサイドキックになりたい。ヒーローは問答無用で犯罪者に狙われて防衛は必須だから、ついでに私も守ってもらう。

 それにヒーロー活動をしたくなくても戦闘経験は無駄にならないし、色々とノウハウも欲しい。

 

 第一候補の理想としては、エンデヴァーみたいな大きい事務所でたくさんのサイドキック(護衛)が欲しいが、私だって分は弁えている。そんな上の上のような、多数のヒーローが所属し、複数の強い人が居るような事務所に雇ってもらうのは中々難しい。

 在学中に頑張ってはみるが、インターンの最優先は自身の強化。次に、有名大手事務所との伝手。希望的観測はしない。

 その伝手兼、第三候補にもなるのが未来の同年代達だ。

 主人公と同年代の中には、とにかく天才がごろごろしているはず。その天才達と仲良くなれば、その天才ぶりに上の上や中からスカウトが来た時、ついでに私も便乗できる。

 ここでもじゃない、他力本願じゃなくて効率的と言ってくれ。元々、自ら先頭に立ち、引っ張っていく器では無いのだ。

 第二候補はさっきの、上の中。せめて上の下まで。中の上以下は却下。

 これでもダメなら、第三候補で天才達と事務所を立ち上げる。

 事務所設立には金が必要だが、それまで銀行口座に残っていればそれを。無くても、もうここまできたら警察や同年代達に怪しまれない程度で超幸運体質に頼る。人数を集めれば負担も減るし、卒業と同時もいけるかもしれない。

 就職先はまだ考える余地はあるが、詰めすぎても視野を狭めるし、時と場合と相手によっては臨機応変に動くしかないからここまで。

 

 

 結論。ヒーローを目指すだけで、ヒーローになるだけで、こんなにもメリットがある。身近な人間が色んな意味で強いと、それだけで安心だ。

 自分の周囲をヒーローと警察で固め、その人達に実体験も含めた関係者を守る為のノウハウを学び、ヒーローアイテムのサポート会社に頼み込んで家にも万全な警備体制を敷き、ヒーローと警察の情報網で家族や関係者が多く住む地域に住んで近所で守り合う。これで未来に希望が持てる。

 

 何より、ヒーローなら両親の説得がしやすい。現時点では、これが一番の利点だ。

 例えば、私がオールマイト並に強かったとしても両親は変わらない。実績が無いし、オールマイトの武勇伝全てをやってみせる事ができないのだから信じられない。 まさか連れてきて戦う訳にもいかないし、常に正面から戦うとは限らない。

 しかし、例えば私がオールマイトを圧倒したら、日常生活の中で何度も奇襲向きの様々な個性達に襲われても無傷で撃退できたら、どんな状況だろうとランキング上位をねじ伏せる事ができたなら。

 流石にそこまでは無理だが、どうせ必然的に巻き込まれるなら利用して、実績を積み上げてやればいい。

 安全な場所で学び、プロヒーロー監督下で鍛えて、どんな状況でも大丈夫なように経験を積む。自衛力を上げて心身ともに強くなって、心強い同僚をたくさん作って、色んな繋がりを増やす。

 

 そうすれば、両親も思い直す。

 心配しないとはならないだろうが、自分達が守らなくてもいいのだと安心はできる。

 きっと、考え直してくれる。

 元々、子供はいつかは親の元から離れるもの。その時が来たのだと、自分達がずっと守らなくてはいけない存在ではないと分かってほしい。

 

 

 なにより、ヒーローになる利点はこれだけじゃない。

 家族で幸せになる為の一番の難関、兄を見つけやすくなるのだ。

 兄を捜す為に人手を募らずとも、同僚や警察に伝えておけば普通より気に掛けてもらえるし、ヒーローは必要に応じて出張もするから範囲も広がる。事前に知ってさえいれば、それらしき情報も気に留まりやすい。確定した情報でなくとも、自分で調べに行ける。そうでなくても、独自の情報網もあるはずだ。

 幸い、ヒーローは男性が多く、私は美少女。母に似て胸も大きくなりそうだし、既に膨らみ始めて兆候はあるから期待できる。色目も使える。何系かでやり方は変わるが、前世で引き立て役として幾度となく使われたからこそ、どの系統でも色目のやり方は分かっている。大体の男は、美人に弱い。腹立つくらい、知ってる。から、利用してやる。

 

 まだ十歳だから、順調にヒーローデビューしてもまだ八年はある。だからといって、その間に帰ってくるなんて楽観視はしない。努力は続ける。

 なんなら、さっさとヒーロー免許を取得して、高校に通いながら活動してもいい。知名度が上がればそれだけ兄の目に止まるかもしれない、それで会いに来てくれるかもしれない。

 もしかしたら、家の事情云々で誰かの庇護を受けて警察にも黙認されて、どこかでひっそりとヒーローを目指しているかもしれない。そうしたらヒーローは飽和状態だから、しょーちゃんみたいに見つからない可能性がある。でも、同業なら人伝に見つけられる。

 

 そして、万が一。万が一にも、兄がヴィランに捕まって利用されているなら、その情報も得やすい。

 ヒーローなら自分で兄を迎えに行けるし、兄に酷い事をしたクソどもをこの手でぶちのめせる。協力させられたのに兄が罪を問われても、ヒーローなら発言力をもって兄の助けになれる。

 

 それと、考えたくはないが、あの兄に限って無いとは思うが、万万が一、兄がヴィランになってしまっていたら。ヒーローになって、ヴィランの情報をより詳細に知れて。その中に、兄が居たら。見た目や個性の特徴で、兄だと分かってしまったら。

──そうしたら、私の手で捕まえる。

 間違っていると、言わなくてはならない。私の知っている兄なら、きっとそうする。

 兄が両親に言って、正そうとしたように。

 私も、兄を、正さなくてはいけない──




結構ぼろくそ言うねぇ。もう柵に囚われてるのに、自覚ないし。前世の後悔もキズも、母親の腹に置いてきたんじゃないの? めちゃくちゃこだわってんじゃん。ヒーロー目指してくれるし、雄英行くみたいだから、まあ、いいけどさぁ。ただ、お兄ちゃんに早く会いたいなら選択を間違ってるんだよね。これも前世の記憶と、使用人達と警官の影響か。はてさて、手遅れにならないといーけど。

今回は恋愛要素についてアンケートです。かなり悩んでも相手が決まらないので(^^;)次回アンケートはキャラで、次話やります。相手は相澤・緑谷・爆豪・轟・心操の予定で、他に希望がありましたら感想などで教えてほしいのですが、中には書けないキャラも居ますので申し訳ないのですが絶対とは言えません。マイクは好きですが、英語が苦手なのですみません……。

  • 恋愛あり。一人。相手は次回のトップ。
  • 恋愛あり。複数。トップ以外は当て馬。
  • 恋愛なし。逆ハー。投票数で出番増やします
  • 恋愛なし。全員友情。同上。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。