超幸運≠平穏 ~神様のご都合主義~   作:紅月 煌

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誕生と成長

 神への文句やら憤りやら叫んでいたが、いつの間にか生ぬるい水の中にいた。

 

 見えない。よく聞こえない。ほぼ動けない。でも、なんか楽しそうだったり、誰かが優しく撫でてくれてるような感じがして、不安も恐怖もなかった。

 妙に安心するというか、なんにも心配はない。そんな、謎の絶対の信頼があった。

 

 なるほど、胎児からか。凄い体験だ。二度目だが前回を覚えてる人は普通いないだろうし、やりたくてもできない貴重な体験だ。

 って、やりたくもないわ。スキップして物心ついた頃からなんて贅沢を言ってごめんなさい、せめて産まれてからにしよう神様。マジでなんにもできないし、なんにも分からない。

 嫌だって言ったのに、胎児からなんて考えたからやられたのか。くそぅ、これ誰得なの?

 

 とは思ったが、とっても眠い。そして、二度寝や日向ぼっこのうたたねレベルで気持ちがいい。起きてられず、うとうと寝たり、意識がぷつぷつ途切れる。振動だったり、温かい手や声を感じては起きて。

 

 だんだん動けるようになって、胎児らしく腹を蹴ったりして応えると、外が騒がしくなる。楽しそうで、幸せそうな、そこ。

 おぼろ気な家族の記憶が思い出される。そう、こんな柔らかく、あったかい、ものだったはず。まさに幸せそのもの。

 待っていてくれている。私を、待っている。早く行きたい。うずうずする。心がざわめく。くすぐったい。そして、少しだけ、照れくさい。

 

 心地良くて、また同じ事を繰り返す。繰り返して、何度も幸せに溺れる。

 

 確か、前世も同じだった。少ししか覚えてない前世の両親。事故が起こるまではこうやって、愛情をくれた。慈しんで、愛して、幸せになってほしいと、大切にしてくれていた。はず。

 それを、私は少ししか、覚えてないのだ。両親は覚えていてほしくないだろう、最期しか、覚えていない。

 神に願った。今度はもっと一緒にいたい、と。きちんと、覚えていられるように。

 笑顔も、優しい声も、日常の思い出も、体温も、香りも、全部全部。今度は忘れたくない。きちんと覚えていたい。前世の分も覚えていたい。

 

 涙が流れた気がしたけど、羊水に混ざってしまった。

 それでいい。前世の両親の記憶は、後悔は、キズは、ここに置いていく。忘れた方がいい、本来は覚えてない記憶だから───

 

 

 

 産まれて、母が私を見て。

 産道を通る痛みで自然と泣いていたけれど、おぼろげながらも目が合って体が固まった。出産で疲れたその顔に涙が流れて、笑った。

 とっても嬉しそうに笑ってくれた。私を、私が産まれた事を、私の存在を、喜んでくれている。

 私はここにいていいんだ。いや、ここにいてほしいと思ってくれてるんだ。私は泣いた。ぎゃん泣きを再開した。

 

 産声だと思われたそれは、今世の、今の母を想って泣いた最初の涙。嬉し涙だ。

 

 その後に、父と初対面して、父も母と同じく泣き笑いで嬉しそうにはしゃいでて、どうやら似たもの夫婦のようだった。

 産まれてきてくれて、ありがとう。

 涙ながらに、言っても分からないのに伝えてくれた。

 それはこっちのセリフ。ありがとう、喜んでくれて。私を受け入れてくれて。

 

 父も、私を望んでくれている。喜んでくれている。ああ、嬉しい。

 

 兄もいて、一言目が「さる?」だった事にショックを受けた。

 産まれたばかりの赤ちゃんは猿なんだけど、猿に見えるけど、それを言っちゃダメだ。父よ、笑うな。

 前世はひとりっ子だったから、兄がいるのは純粋に嬉しい。猿発言は微妙だったが、それでも妹ができたと喜んでくれている。

 テレビか何かで、先に産まれた兄姉は両親を取られるからと弟妹を嫌がるとか聞いたけど、そんな事はなかったようだ。

 「おにいちゃんは、いもうとをまもるんだよ!」と、誰かに吹き込まれたっぽいセリフを、意気込んで伝えてくれた。仕方ないなあ、猿発言は許してあげる。父もついでに。

 

 初めての兄だから戸惑うが、好感触なのは良かった。家族が多いのも嬉しい。よろしくね、お兄ちゃん!

 

 

 母からおっぱ……ご飯を貰い。新生児室でガラス越しに、小さくて見えないらしい兄を片手で抱える父達に手を振られる。

 流石に振りかえしたらおかしいから、きゃっきゃっと笑うと顔を見合わせて、何か話してから今度は兄だけがブンブンと両手どころか両足までも振り回し、父は暴れる兄を落とさないように慌ててた。

 

 どうやら兄はやんちゃなようだ。

 でも守ると宣言してくれたし、立てるようになったらたくさん遊んでもらおう。前世の記憶がある分、おままごととかの女の子の遊びに執着はない。かけっこでも冒険でも、危ない事は止めるが、それ以外は一緒に遊びたい。

 母は女の子の遊びをしないと心配するかもしれないから、そこは配慮しよう。面白いかは別にして、やりたくない訳でもないし。着せ替えだって構わない。ふりふりなのは微妙だが、母とお揃いなんてのもいい。

 父親はキャッチボールをしたがるみたいな事を聞いたが、やった事はないし、やりたいなら付き合おう。兄とやっているのに混ざってもいい。

 

 

 ああ、幸せだ。これからもっと、幸せになれる。今度は家族と一緒の、幸せが待っている。

 

 だって、神は『しない』とは言わなかった。面倒そうでも『図太く生き残りそうな』と言った。この幸せは、突然に奪われる事は、きっと、ない。

 

 神様、一生のお願いです。

 

 今度は、家族で、一緒にいたい。老衰するまで、決して、失われないようにしてほしい。

 

 その為に、心を無にしないから。肉体に精神が引っ張られて、引っ張られなくたって、どんな醜態晒しても、心の中ですったもんだするから。

 

 お望みの、面白い喜劇を見せてあげるから。

 

 

 だから。ぶっちゃけ語りたくはないが、避けては通れぬ道。頑張る。

 神が望む精神的拷問改め、おむつにおっぱい、ぎゃん泣きに夜泣き。まあ一通りやられた、やった。

 リアルタイムで事前事後にどう思うか思ったか、きちんとコメントしてやった。最中は大体、無我の境地に達したり、内心だけで絶叫したりと、おおむね勝手にじったんばったんしているから、まあ多分満足しているだろう。

 

 だとしても。例え無駄な事だと分かってはいても、人間やらずにはいられないもので。

 

 まあ、努力はした。したんだ。

 しかし、腹が減るとどうしても泣きたくなる。下半身が気持ち悪くても同じ。

 少しでも醜態を減らそうと、せめて泣くのをなんとかしようとするが、かなりキツい。勝手に涙が出るし、出れば喉が震えて叫び出す。

 泣く前に気付いてほしいが、そんな気持ちは届かない。

 乳児は泣いて知らせるものだし、なんにもなくても泣く生き物。泣くのが仕事。泣く事だけが意思表示で、それにより対応対処してもらう。

 お嬢様生活、もといお姫様対応と表現したって、私の精神やらなんならがゴリゴリ削られていく。

 

 ある事では、いっそ殺してくれ、捨て置いてほしい、などと毎日追い込まれる。シモだ。汚くてごめん。でも、だだ漏れの度に、つい口走ってしまう。口から出るのはよだれと言葉にならない鳴き声なのだが。

 上も下も全く我慢できない。こんなん我慢しすぎて病院行きとか迷惑かけたくないから、もう垂れ流しだ。

 毎回死んだ目をしてしまい、母に不思議がられてからは無心を心掛けている。爆笑の幻聴が聞こえてからは、殺意でなかなか上手くいかないけど。

 おいてめー、楽しそうで何よりですよ。面白いだろぉ?

 

 夜泣きに関しては暗く静かな中、ぽつんと世界に自分しかいないのではないかという恐れが私を掻き立てたのだと、強く、強く主張したい。

 起こしてすまんね、でもできたら近くで寝てくれれば泣かないよ。母が来たら泣き止み、いなくなったら泣く。何度か繰り返して、母が気付いて近くで寝て。泣く理由が分かって大丈夫と思ったらしく、夫婦の寝室にベビーベッドが置かれるようになり、夜泣きはしなくなった。

 ちなみに、兄は五歳上で『ひとりでできるもん』が始まっているようで、もう子供部屋で一人で寝てる。

 

 両親、特に父親からのファーストキスは阻止した。これ、虫歯菌移るんだよ。中の人、成人してるから止めてお父さん。お母さんもお兄ちゃんもお断り。

 額や頬は、恥ずかしいが我慢した。

 愛してるチュッは、こっちが居たたまれない。これも、内心で悶絶した。が、外に漏れたらしく、恥ずかしがり屋と盛り上がってた。はずい、やめて。

 どや、神よ、面白いかぁ? ああん?

 

 乳児からしてみれば巨人(大人)の高い高いは、ただの恐怖体験でしかない事を知った。

 兄も頑張ってくれたが、よろよろぷるぷると頼りない高い高いも違った意味で恐怖だった。落とさないよう気を付けてくれた分、兄が後ろに倒れて頭を強打して死なないか、という意味で。

 世の中の乳児は、あれをどうして喜ぶのか凄く不思議だ。

 うちでは、喜ばない私に次第にやらなくなっていった。我が家で一番の力持ちだからと頑張ってた父がしょんぼりしてて、若干の罪悪感を抱いた。なんか、ごめん。でも、恐いものは恐い、無理。

 「きっと喜んでるんだ、夢でお告げを聞いた」とか父が言っていたが、お前なんかした? やめろよ。マジで。色んな意味で恐いから。

 

 いないいないばぁなんて、両親の黒歴史ではないだろうか、と遠い目で考えていたら心配させてしまった事もあった。

 ほぼ喜ばない私に、手を変え品を変えとしていた父が変顔でやった時に面白くて笑ったら、喜んだと勘違いされたのだ。それから、可愛いなあとデレデレの顔でやられ、笑い。母も真似して。その内、笑ったのを後悔する顔で毎回やられるようになり、私を撮ってるのだろうが一緒に撮られていて。将来、それを見て注目するのは、両親の変顔だなと思った。

 これ、両親の方も楽しまれてないかと疑念が尽きないんだが。もしかして、探す条件に面白いを追加してたり……してそうだな。

 

 

 そんな訳で、乳児時代前半は色々大変だった。喋れない動けない、そんな意志疎通が全くできない状態は、結構なストレスが溜まる。我慢できないない体では、それが癇癪となって表れ、家族に余計な手間を取らせてしまった。

 弁解はしたい。肉体に引っ張られて、どうやっても身体年齢相応の反応をしてしまうのだ。

 

 例えば、大きな音にびっくりして泣いたり、大袈裟にビクつく。泣いている子がいると、なんでか泣けてくる。我慢がきかずに泣いたり喚いたり。

 感情を線グラフにすると乳児というものは急上昇急降下すぎるのだ。自分の事ながら、なんで? と聞きたいくらいに。

 とにかく、前世、大人なら我慢できる事ができない。泣く、怒る、悲しむなど、感情が爆発するラインが低すぎて、前なら難なく愛想笑いでやり過ごしていたのに今はそれが全くできない。

 

 しかし、泣かない乳児は変だし、いつでも好きな時に泣くなんて特技は前世では無理だった。

 逆に「泣いたってどうにもならない」と施設で言われていたし、実感もしていた。

 施設自体、泣いたって良い事はなかった。大人は放っとくと面倒だから泣き止ませようとするし、その前に他の子達に伝染して五月蠅くなればその子達以外も嫌な顔をする。泣いた理由はもちろん解決もなんもしないし、平気で暴力を振る子達にも媚を売ってるだのなんだのとイチャモンをつけられ、大人からは疎まれてその現場を無視される。

 そうしてマイナスでしかないから泣かないように気をつけすぎて、大人になる頃には全米が泣いたって私の目は潤みもしなかった。

 

 だから、肉体に引っ張られなかったら全く泣かないと変に思われて病院に連れていかれたり、家族に心配や迷惑をかけただろう。黒歴史は増えたし、色々げんなりした事も多かったが、これはこれで良かったのかもしれない。

 

 この頃は、多少はまあ、神を楽しませる為にもいいか、なんて軽く考えていたのだ。

 

 肉体に引っ張られる。これがどんなに有り難かったか、必要なものだったのか、私は全く理解してなかった。

 

 なにしろ、むしろ邪魔とすら思っていたのだ。成長していくのに比例して、歩いたり掴んだりとだんだんできる事が増え、身体は自由に動かせるのにどうして感情はままならないのかと、なんで我慢できないのかと、無駄にイライラする事もあった。なんとかできないかと頑張った。頑張ってしまった。そうして、努力が実を結んでしまった。

 初めは喜んだ。肉体の欲求を少しずつではあるが抑えられるようになって、爆発するラインを自力で上げられるようになって。感情を理性で制御できるようになったと喜んだのだ。

 早すぎたかもしれないがおむつ卒業、垂れ流しからトイレデビューだと浮かれていた。ニヤニヤしている場合ではなかったのに。

 

 祖父母や親戚に会った時も、肉体に引っ張られてばかりの頃も、制御できるようになっても擬態はバレず、変に思われる事はなかった。

 兄が『一人でできるもん』から『一人でできるから、もう大人だもん』になったのを利用して真似を始めれば、女の子の方が成長が早いのも相まって、大好きな兄の真似をする妹として微笑ましがられた。

 兄もそれを邪険にするのでなく、大人だから妹の面倒を見るんだと遅くても待ってくれたし、できなければ手伝ってくれて、仲良しな兄妹だと見守られるだけだった。

 

 ベビーカーで公園デビューして、母がママ友を増やしている時もまだ良かった。

 大人で盛り上がっている中に入るのは無理だから、暇すぎて普通の幼児がどんな感じなのか、興味本意で観察した。あれを真似るのかとげんなりするものの、あまり逸脱しすぎるのも家族に心配と、下手すれば迷惑をかける。肉体に引っ張られるのと、自らで家族の為にと努力する。当然、後者のが精神的ダメージは低い。

 仕方なく、恥を忍んでもらい泣きとかしたりした。特技にすぐ泣く事と書けるほど、ちょっとした事でも泣けるようになったから楽勝だった。

 諸々の努力の結果、自己主張が苦手な消極的で感受性豊かな子というのが、周りからの印象になった。

 

 兄が大好きでよく引っ付いていたから、自分から動くのではなく兄が主体で、私はおまけ。兄について行くが、そこからは兄の真似やしたい事に便乗していた。

 自己主張や積極的に動くのは、兄か両親の近くに行く事だけ。そこからはお任せだったし、後は幼児の真似やそうした方がいい事を実行していた。

 周囲からは「家族が好きなのね」と何度も言われた。その通りなので笑顔で受け入れた。

 

 それでここまで問題がなかったのは、ベテランがいなかったからだ。

 このベテランは、身近に幼児がたくさんいて、きちんと幼児を見ている経験豊富なベテランさんの事である。

 今までは身近な幼児が少なかったり、きちんと見ていなかったり、私のようなテレビや本の知識メインの人ばかりだったのだろう。多少は個性として見過ごされる程度だったが、ベテランさんは騙されない。

 

 問題が浮上したのは、三歳で幼稚園に通い始めてから。同じ年齢の幼児が集まり、今まで何十人何百人と幼児を面倒見てきた子供好きで仕事熱心なベテランさんによってもたらされた。

 事前に幼稚園自体についての情報を集めなかった事と、それに気付くのが遅れたのが悔やまれる。

 原作キャラと関わり合いになりたくないから、そっちにばかり気を取られたのが失敗だった。

 

 なにせ、原作知識は消されていて、分かっているのはジャンプで連載している『僕のヒーローアカデミア』という漫画だという事のみ。

 まだ生まれたばかりの頃は、ヒーローのアカデミアとは一体なんなのか訳が分からなかったが、この世界でのヒーローとは、ヒーローという職業なのだ。まさかの、国公認の公務員。ヒーローになるには国家資格を得なくちゃいけない。びっくりである。前世の公務員のイメージぶち壊しだ。全然安定してないし、安泰でもない。

 そんなヒーローの主な仕事は、個性不正使用のヴィランを捕まえる事と災害や事故などの救助。

 この捕まえるは取り押さえると同義で、力尽くでだ。つまり、戦う。私が見た限り、戦闘が主だ。災害は頻繁に起こらないし、事故はヴィランが原因のものも多い。

 ひったくりしたヴィランをヒーローが捕まえたなんて軽いのから、銀行強盗や殺人まで、ヴィランが何かすればヒーローが対応する。前世なら警察の出番だが、今世ではヴィラン受け取り係なんて馬鹿にされる事もあるくらいで、警察よりヒーローの方が危険な仕事らしい。

 ジャンプだし、分かっていた事ではあるが、えっちなハーレム学園物で平和な可能性もワンチャンあると希望を捨てたくなかったが、まだ知識のあった私が嫌がったのだ。どう考えてもワンチャンはないし、戦闘物なのは確実である。

 

 『僕』だから男が主人公で、『ヒーロー』が職業なら、『アカデミア』は学校を指しているのだろう。高校にはヒーローを育てる専門科があるらしい。

 ならば、男子高校生がヒーローを目指す学校での物語の可能性が高い。

 

 この前提は分かるが、将来成りたい職業一位がずっとヒーローなので候補が多すぎる。大体皆目指していると言っても過言ではないのだ。身近だと、兄も目指してしまっているのだから。

 兄は流石に原作キャラではない。うっすらとも分からなかったから、多分ではあるが。

 現状、キャラに会ってないから、このうっすらが分からないのが痛い。だが、将来ヒーロー科に行きたいらしいから、そこから巻き込まれるかもしれないのは怖い。兄を見捨てられないから、私も巻き込まれるだろう。ああ、嫌だ。

 

 そう、巻き込まれるのが嫌なのだ。だって私は絶対に、主人公と同い年。あの神の事だから、ここは外さないだろう。むしろ主要キャラに近い人間にすれば、逃げようとしても自動的に巻き込める。

 

 転生前に家族を願ったが、実際ここまで家族愛を爆発させるなんて分からなかっただろうから、兄は主人公の同級生枠には入れられない。私の注文と、家族にも面白さを求めたのなら、余計に。

 五歳差なのも理由だ。これでは先輩枠にも無理なので安心ではある。

 有望な新人ヒーローとして関わるなら、当分先だし、その頃には兄も自衛できるだろうし。なんなら助けてほしい。

 

 その兄がヒーローになりたいからと情報が勝手に集まってきた中だと、ヒーローは、特に上位のヒーローは、ヒーローになる前に逸話を残す人が多いらしい。

 で、これは学園物。主人公のクラス全員が主要キャラなのは確定だ。何なら先輩もかもしれない。

 

 きっとその中に将来有望な、あのオールマイトを継ぐナンバーワンヒーローがいるはずだ。

 オールマイトの年齢は非公開だが、もう中年くらいだし、主人公の年代がデビューする頃には引退していてもおかしくない。身体を使う職業、野球やプロレスも現役時代は短いのだから、より死の危険が高いヒーローならよっぽどの個性じゃなきゃ、生涯現役は無理だ。個性も非公開だが、超パワーが有力で、いくらパワーが強かろうと腰や関節はどうにもならない。ぎっくり腰や四十肩になったら間違いなく引退だろう。

 

 次期ナンバーワンは主人公の可能性が高いが、ライバル的なのは必ずいる。

 クラスメイトはもちろん、資格試験で会う他の学校のヒーロー科、既にデビューしているヒーロー達だって、ナンバーワンを目指して切磋琢磨するのだろう。そいつら全員に関わりたくない。

 

 どこまでが主要キャラか不明だが、全員が明るい過去しかないなんて楽観視はしない。物語を盛り上げる為に、幼い頃に誘拐とか個性でなんかあったとか、なんらかのトラウマを抱えるとか。何か、があるはず。

 逸話が幼い頃に起こらないとは断言できない以上、油断はできない。

 

 だから、原作主要キャラとの幼なじみ枠なのではと探していたのだ。現在も未来も、何に巻まれるか分かったもんじゃない。

 巻き込まれる前に手を切りたい。離れたい。しかし、神は私が逃げると分かっている。

 学校が一緒、クラスが一緒でも、関わらなければいい。学校全体で仲良しは有り得ない。クラスもそう。だが、少人数の仲良しグループは存在する。なら、主要キャラのグループと遠いグループや仲の悪いグループに入れば良い。

 一番逃げにくいのは、家が近所の場合。年が近ければご近所付き合いで判明するが、今の所はいない。今後引っ越してくる可能性はあるが、母は個性の関係でご近所でも重宝されているので、情報は逐一新鮮なものが手に入る。こちらは常に気にしている。

 

 そうして公園デビューには、ご近所以外にも近場の幼児と親が集まる。もしや原作キャラがいるのではと身構えたが、何もなかったので多分いなかったのだと思う。

 なので、入園してからはとにかく幼児を見て回った。公認で家族大好きだから、家族を探すフリをして園内をうろつけば、結構同じ子がいるらしく、怪しまれもしなかった。

 幼稚園の幼児・保護者・職員、全てクリア。原作キャラはいなかった。

 来年新しい子が入ってきたらまた確認しないといけないが、しばらくは安心だと思っていた矢先の事である。

 

 何かおかしい。そう思い始めて、周りの大人や職員の会話で、この幼稚園には有名な人がいる事を知ったのだ。

 ちょっとした事でも幼児の気持ちや思いを察し、親身に寄り添っては慕われ、個性【結界】で個性を暴走させたりしても暴走させた幼児すら無傷で守る。家庭に幼児に良くない問題があればそれを見抜いて大円満に導き、どんな相談だろうと経験則から解決し、親からの信頼も篤い。

 怒るのではなく正しく叱り、一人一人にあった接し方をし、優しくも厳しく、温かく包み込む。まさに母性の化身。教育者の鑑。それがベテランさんだ。

 噂では、ベテランさんが育てた中にヴィランはいないとの事。もしくは、例え凶悪なヴィランでもベテランさんが説得すれば涙ながらに自首したとの事。どっちやねん。

 

 そんな人だからファンや憧れを持つ人も多く、同じ職場にと希望する者は後を絶たないし、ダメならダメで勉強にとボランティアにまで来る始末。中には第二第三のベテランさんまで来る。やる気のない職員だろうといつしか感化され、子供好きな仕事熱心さんに生まれ変わる。そう、この幼稚園は奴の支配領域である。

 つまり、あの子おかしいな、とベテランさん中心に思われた訳で。ひそひそされる。挙げ句、母に告げ口しやがった。

 

 周りを見てから、周りの真似をする。無理をしている、反応が白々しい感が拭えない。

 周りに同調はするが、周りと違うといけないからやっているように感じられる。危ない事も同じく、大人のように危険を危険ときちんと正しく認識し、他の幼児を止める場合もある。

 幼児同士の筈が、幼児と新人職員っぽい。手がかからない所か、大人側に立っている。

 大人の話している内容を、きちんと理解しているように見受けられる。

 大人達が変に思っている事に気付き、どうしようか悩んでいる。なんとかしようとしている。頑張って取り繕っている。

 

 などなど。最後のはピンポイントすぎだろ、なんだ? ベテランさんはエスパーかよ。いや、聞かせてこっちの反応伺ってるかもしれないから眠いフリで乗り切ったけど。

 

 頭脳系個性を持つ幼児で似た子もいるが、所詮は似た子。知能の高さや理解力はいいとしても、頭で理解しても心が納得できない場合もあるそうで、その方向性が私とは違う。

 頭脳系個性幼児は全裸でも恥ずかしくない。私はいくらつるぺただろうと全裸は恥ずかしい。

 前者はご飯前でもお菓子を食べたいし、ダメと分かってるけど食べたくて泣く。泣いちゃ困らせるから泣きたくないのに止められず、泣いちゃう。泣く事に羞恥はない。後者はご飯前にお菓子を与えられても、ご飯が入らないなら食べないし、お菓子の種類や量によってはご飯含め腹八分になるようにお菓子をセーブして食べる。泣く理由がなにもない。泣いてもいいか、泣いた方が自然な時に泣く。羞恥以前の問題。泣くのは必要だからっぽい。

 お菓子でなく、欲しい玩具ややりたい事に置き換えても同じである。母を困らせたくないのだ。笑っていてほしい。

 その感情制御力や客観的な考え方が大人同等で、特に羞恥心なんて経験からくる反射や刷り込まれた常識からだ。こういうのが幼児らしからぬ行動であり、ベテランさんが変に思った原因だろう。原作キャラ探しで擬態も甘かったのかもしれない。

 聞き耳立ててそれを知り、ちょっと本能を抑えつけすぎたと後悔した。

 

 個性は関しては、基本的に遺伝性で、ごく稀に全く違う個性を発現する突然変異という事例はあるが、これはとても珍しい。

 そして、両親どちらを遡っても頭脳系個性は該当しない。ベテランさんは私に隠れて、わざわざ母に確認していたらしい。そもそも遺伝しても私は頭脳系個性ではないのだから無駄な努力だし、夕方に母が父に私の前でその話をしていたので、ベテランさんの努力は本当に徒労に終わった。

 だって一応は神も考えたのか、まだ発現してないが個性【肉まん】は両親の個性のミックスであるのだから。

 

 まあ、前世の記憶があるとか、成人した精神を持っているなど思い付く訳がない。普通と違うと判断されはしたが、一部は他の子に比べて手がかからないから楽だと、放っておかれる事が多いくらいで支障はない。ベテランさんは疑ってはいても、幼児は幼児なので差別はせず、ちょっと扱いに困ってる程度だし。流石母性の化身。

 ただ、気味が悪いと遠巻きにする職員と、それを感じ取ったのか幼児もあまり近寄らなくなり、その親達も話を聞いたのかなんなのか、母と私に余所余所しくなっていき、そのせいで母をしょんぼりさせてしまった事が問題だ。

 

 ぼっちなのはいい。いいんだ。本人的には。だって話が合わない所か、理解できなくて愛想笑いしてると余計ベテランさんに怪しまれるし。知人以上友達未満でいい。

 でも、母は私に友達がいなくて心配してるし、自分が出しゃばっても友達は作れないしと悩ませてしまった。この状況じゃどうにもならないと私は早々に諦めたのだが、母は諦めきれないらしい。

 私がもっと恥を捨てられれば、と悔やんでも悔やみきれない。

 

 唯一の救いは、その影響が兄に出ず、お前の妹変わってんな程度で友情にヒビが入らず、逆に兄の友達に受け入れられた事だろう。小賢しい子は、やんちゃな子達に多少うざがられてもその知恵を有り難られ、頼りにされるのだ。

 その内、母は兄と同年代でも一応は友達ができたという事で一度は胸をなで下ろしたが、同年代も女の子もいないので再び悩み始めた。ほんと、ごめん……。

 体力のいる遊びや遠出はせず、その時は家で一人で遊ぶか母のお手伝いをしているのだが、こっちをじっと見て唸られると凄く困る。父は平日はあまり遊べないので休みの日に私が家にいると喜んでくれていたのだが、母の話を聞いてからだんだん首を傾げられる回数が増えて、こっちも困る。

 遅くても小学校に行けば友達できるから待ってくれ。これは兄の友達で判明している。そのくらいの知能なら友達になれるから! そしたら友達百人作るから!




うんうん、なかなか面白かったよ。夢枕に立った甲斐もあったし。でも本能を抑えすぎてやらかすなんて、バッカみたいwwwベテランさんがいる幼稚園の倍率はアホみたいに高いし、ランダムな抽選で、当選したらわざわざ引っ越してくる家庭もあるくらいなのに、それも知らないし。一番家から近いからって母親が応募したら当たるなんてとっても幸運な事なのに。それを自らで不運に変えるなんて逆に凄いよwwwほんとwww

今回は恋愛要素についてアンケートです。かなり悩んでも相手が決まらないので(^^;)次回アンケートはキャラで、次話やります。相手は相澤・緑谷・爆豪・轟・心操の予定で、他に希望がありましたら感想などで教えてほしいのですが、中には書けないキャラも居ますので申し訳ないのですが絶対とは言えません。マイクは好きですが、英語が苦手なのですみません……。

  • 恋愛あり。一人。相手は次回のトップ。
  • 恋愛あり。複数。トップ以外は当て馬。
  • 恋愛なし。逆ハー。投票数で出番増やします
  • 恋愛なし。全員友情。同上。
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