超幸運≠平穏 ~神様のご都合主義~   作:紅月 煌

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初めての人

 車が故障して動かなくなるとか、何か事件が起きて有耶無耶になるとか、そういうのを期待して願ったのがどうやら良くなかったらしい。

 なんせ、道は進めば進むだけどんどん空いていき、信号までもがタイミング良くばんばん青に変わり、あっという間に警察署に着いてしまった。逆に警察官達が何かあったのかと不安になるくらいのスムーズさで、無線で確認するほど。予想できた応答はまさに、近年まれに見る平穏な日であるそうで。

 こっちは不穏である。安心できる要素がなんにもない。

 

 祈りは神に捧げるもの。そりゃあ順調過ぎるほど順調に進むはずである。くそ。祈ったから余計にかよ、くそが。

 今日は良い日だよ、天気もいいしね。なんて無線相手ののんびりしたのほほん具合が凄く羨ましい。ちょっとその余裕を分けてほしい。

 

 現実は無常で、一切の問題なく着いた警察署の中に案内されるまま着いて行くと、会議室のような場所だった。まずは座って下さいと三人の警察官が着席したので、対面の席に家族で並んで腰掛けた。

 穏やかに微笑むメインで話す警察官は、おもむろに何も緊張する事はありませんよと笑みを深めた。サポートの警察官も似た笑みを浮かべて、その通りとばかりに軽く何度も頷く。無言の観察担当も形だけ続くが、微妙な真顔なのでやらされてる感が半端ない。

 だが、それが逆におかしくて両親も軽く笑って肩の力を抜いた。

 こうなると見越して打ち合わせた茶番だとすると侮れない。茶番もそうだが、前回より本気度が違う。

 

 ゆるい空気のまま切り出された話を簡潔にまとめるとこうだ。

 宝くじの連続当選で一度話をして、その時に嫌疑は晴れた。しかし、間を置かず三回目の当選、しかも十億近い額なのでまた嫌疑を晴らす為に、今日は警察署まで来てもらった。

 両親はそういうものなのかと顔を見合わせ、前と同じような感じですかと気軽に聞き返す。

 警戒が解けたと思った警察官の顔は少し緩んだが、両親は気にも留めない。

 

 無実なのは分かっているが、きっちり嫌疑を晴らす為に。なんて前置きをわざわざして、個別に話を聞き、個性を試す。それが狙いか。

 まあ、個性で一番取り調べられるのは私だろう。母の育成や、父と兄の金属生成や成形は珍しくないし。

 それに比べて私の場合、何かを出現させるタイプはよくあっても、ピンポイントに肉まんを出すなんて珍しい部類に入る。たまにバナナだし。肉まんとバナナは共通点が食べ物ってだけだから余計に。こうなるとアタリとハズレ、どっちがどっちかも分からなくなる。

 

 続く説明は、兄と私の、子供達について。『きっちり』の為に一応子供達も取り調べを受けてもらう。一般的に、口裏を合わせないよう個別で行うが形式的なもので、子供用にジュースとお菓子も用意してあるそうだ。もし寝てしまったらソファと毛布も準備してあると至り尽くせりな対応に、そういうものと丸め込まれた両親はあっさりと受け入れた。

 

 少しは疑って欲しい。寝かせる気ないよ、これ。兄はまだしも、私は絶対に。

 けれど、両親は私の体質を知らないのだから、この反応も仕方ない。……溜息を我慢しつつ、はたと気付く。

 両親は私が買えば当たると分かってはいるはず。三回目の時を振り返ればそうだ。そこだけは確実に分かってやっていた。実際三回目は当たったのだから、確信しただろう。例え、なんで当選したかの理由や原因は分からなくても、結果は分かっていた。

 そこを嘘判別の個性で知られたらマズいかもしれない。

 ただ、本人が嘘を真実と思い込んでいる、勘違いしている場合、嘘の判定は出ない。嘘判別は世界にとってではなく、本人の認識上の嘘かどうかだ。これは以前、神とサンタの存在で試した結果で分かっている。唯一の抜け道だ。

 ちなみに、神様は信じているのにサンタは信じていない幼女に、嘘判別個性持ちは微妙な顔をしていた。

 

 ではこちらにと会議室を出れば、外には女性警察官、婦警が二人いた。優しそうなお姉さんと、柔和なおばちゃん。

 不安がる私に、両親は婦警達を見て安心した笑顔を浮かべたまま、すぐ終わるからと言って頭を撫でた。兄には迷惑掛けないよう大人しくしているよう注意して、あっさりとメインとサポートの警察官二人に着いて行った。振り返る事もなく、角を曲がって見えなくなる。本当にあっさりしすぎである。

 そんな私の注意を引くように、婦警二人がわざわざしゃがんで目線を合わせ、挨拶してくれる。兄は元気よく返し、私は兄の後ろに隠れつつ、控え目に返した。

 婦警達は人当たりの良い、優しそうな感じだった。取り調べがスムーズに進むような人選だろう。

 

 それよりも気になったのは、観察担当である嘘判別個性持ちが会議室から出て来ない事だ。てっきり私の取り調べ担当かと思ったが、婦警達でその線は消えた。

 動向を知りたいが、両親のいない部屋に入って逃げるほど婦警達は怖くないから難しい。逆に、男性・高身長筋肉質・寡黙・基本無表情・強面と、子供受けしない要素しかない人が居る部屋に戻れば変に思われる。

 どうしようもないまま、兄と婦警達に着いて行った。当然、部屋は別だ。両親は既に部屋に入ったか、距離が離れているのか、見掛けなかった。

 

 取調室と思われる部屋は刑事ドラマと大差ない、まさに取調室としか言いようがなかった。

 こじんまりとした狭さに、正面上に鉄格子付きなのに金網も入った曇りガラスの窓。灰色の机に、ドアに背を向けた椅子と、その対面にももう一つの椅子。一番目を引くのは、右手側の大きな鏡。マジックミラーだろう。廊下にドアがあったのを見たから、そこにも狭い部屋があるはずだ。

 違いといえば、今回取り調べるのが子供だからか、机の上にはジュースとお菓子、窓に背を向けた椅子の横に踏み台があった。

 それを除けばよくテレビなんかで見る、イメージそのままだ。と思った途端に、兄のはしゃぐ声が聞こえてきた。

 はあ、裸電球を押し付けられないし、カツ丼は出ないよ、お兄ちゃん。

 でも、一応チャンスではある。ので。

 おにいちゃん? と勢いよく顔を上げ、声の方へ走って行こうとした。失敗。知ってた。

 やんわりと、しかし絶対に逃がさないと言わんばかりの笑ってない目で、おばちゃん婦警は行く手を阻んだ。

 分かってる、ただの悪あがきである。でも、このおばちゃん婦警も侮れない事が分かったのだから良しとする。やっぱりただのおばちゃんじゃない。

 

 それと、マジックミラーを見て色々と腑に落ちた。推測ではあるが警察の意向も、嘘判別個性持ちが私担当でもないのも、会議室から出て来なかった理由もだ。

 

 警察は今回の連続当選を両親の故意であると断定し、逮捕する気でいる。

 この個性社会なら、もしかして個性で判明した事も証拠となるのかもしれない。 もしも証拠にならなくとも、嘘を見抜くという有用な個性を最大限行使し、追い詰めて自白を引き出す気だ。

 私が当選自体に絡んでるのは確実でも、年齢が年齢だから善悪の区別がついてないとか、両親に洗脳か強制されていると思っている可能性が高い。

 

 嘘の判別をしたいのが三人、判別できるのは一人。だから、嘘判別個性持ちは誰も担当せず、さり気なく目立たず、会議室に残る事でフェードアウトした。後は事前に時間を決めているか連絡を待ち、タイミングを見計らって各部屋のマジックミラーの向こうを移動して嘘を判別する。

 本命幼女は家族大好きの人見知りというのが向こうの持ってる情報だから、まずは質問に答えてもらう為の懐柔にどうしても時間が掛かる。それまで両親一人ずつを片付け、終わり次第こちらに来る手筈だろう。

 

 現に、怖がらなくていいのよと人の良さそうなおばちゃん婦警は私を椅子に座らせてから机にお菓子とジュースを並べた。ご丁寧に用意されたお菓子とジュース各三種類を、どれがいいかしらと聞いて給仕しながら時間を稼ぎつつ、こちらの警戒心を解きにきている。本題に入る気配はない。

 

 まあ、多少の違いはあれ、大筋は合っていると思う。

 問題は両親に知らせる術はなく、術があっても実娘の幼さに信じてくれるか不明な事。更に軽く見れないおばちゃん婦警に不審を抱かれない事と、あの幼稚園のベテランさんと似た感じがする事。

 前途多難だが、怪しまれないようにこの場を切り抜けなくてはならない。

 なにせ、両親が罠に掛かったとしても、私の超幸運体質はあくまでも体質で、何の罪にもならない。なんかよくわからないが宝くじに何回も当選したから有罪なんて、そんな馬鹿な理由で警察は逮捕できないのだから。

 そして、私の超幸運体質はなんでもかんでも当たらないし、私や家族に有利に働く訳ではない。

 私に残された手段は、何も知らない、ただの幼女である事を相手に信じ込ませる事。演技して擬態して装って、猫を被るしかない。

 

 だから、いつまでも同じ態度は不自然で。でも、すぐ打ち解けるのも不自然。いい塩梅で保たなければならないから、気さくに話し掛けられた本題と関係ない話題で徐々に警戒心を抑えていく。

 後を考えて、質問にただ返答するだけでなく、質問に質問を返したり、全く違う話に飛ばす。どうしてなんでの質問攻撃も、突拍子ない話題変換も、幼児にはよくある。当然、相手の機微など気にしない。空気も吸うものでしかない。

 

 まだ切り札もある。機嫌良く飲食しているからとお替わりをすかさず出し、私の状態をキープしようとしているおばちゃん婦警は気付いていないようだが。

 嘘でなければいいのだ。多少の恥は掻き捨てる。

 

 それに、同じ品はお替わりをすんなり出し、たくさんのとっておきだと嘯くジュースやお菓子達を景品に、運勝負のくじやらジャンケンやらなんやらで調べられているので止める訳にはいかないのだ。

 賄賂だのなんだのとあるのだろう、オモチャなどを与える訳にはいかないから事情聴取に必要な物として用意可能な範囲の品と、記念品的なマスコットキャラのぬいぐるみなどでは私の超幸運体質は反応しない。貰えなくてしょんぼりして、情けのもう一回だけを何回もして勝負は続くが、そんなにやれば勝つ確率も上がるからなんの不思議もない。

 だんだん表情を曇らせていくおばちゃん婦警と対照に、内心で満面の笑みを浮かべる。

 

 そうしている内、遠回りしつつ核心をつかれても、もぐもぐごくごくで間を持たせる事もできたので、余裕で嘘を使わずに納得させた。幼女に細かい事を聞いても分からないのだから、おばちゃん婦警の負けである。

 

 個性も、お替わりを貰ったり、勝負の景品を貰う度に、心を開いたと勘違いさせる為にもと、あげると可愛く渡して試させた。

 おばちゃん婦警は食べ過ぎて苦しそうにしていたが、そんな事は知ったこっちゃない。後でと言われて、冷めちゃうよと涙目になったのは仕返しでも八つ当たりでもない。ないったらない。

 

 バレないよう勝ち誇りつつ、おばちゃん婦警が微妙な顔で言ってくる。諦めと、悔しさと、幼子になんの罪もないと知って嬉しそうな、ごちゃ混ぜの表情で、躊躇いがちに。

 首を傾げながら内心ビビるが、内容は最後の確認だった。おそらく、自分を、自分達警察が納得する為の。

 とっても美味しかったから他の人にも食べさせてあげたい。普通に聞けば図々しくも優しい言葉だろう。が、実際は確認だ。

 貰いすぎだから、と。おばちゃんがジャンケンで勝ったら肉まんを。私が勝てば家族に会わせてくれる。

 運を味方に付けられるなら私が勝つ。でも今更だ。今までの勝敗はイーブン。悪足掻きでしかない。それでも諦め切れないのはなぜなのか。たまたま宝くじに三回当選しただけじゃないか。

 開き直ってる気もする。でも、ここまできたらそれでも私には家族の方が大切だ。誰を傷付けた訳でもない、悪い事はしていない。

 それでも、おばちゃん婦警の表情が気に掛かって。

 

 ジャンケーン、ポン!

 

 唖然とした顔に、やっぱり止めれば良かったと後悔した。

 私が出したのは、兄直伝のムテキのグーチョキパー。三つの意味を持つサイキョーの技。

 お兄ちゃんが教えてくれたの、絶対勝てる奥の手! なんて万歳して喜ぶ私に、おばちゃん婦警はホッとしたような微笑みでちょっと待っててねと出て行った。

 

 あちらも仕事。超幸運体質が出るかは不明。それでもなんだか罪悪感を感じて、つい逃げてしまった。

 ここで勝っても負けても結果は変わらないとしても、勝負できなかった。

 残ったジュースを飲みながら、ご機嫌なまま足をブラつかせる幼女に見せ掛けても、中には後悔と溜息しかない。

 

 少ししてドアがノックされた。開いたドアに家族は居ない。きっと案内されるだけだからおばちゃん婦警と分かってはいても、幼女には分からないんだからと用意していた、家族が来たと花が咲くほどの喜びの笑顔を浮かべた顔を向けた先。居たのは知らない人だった。

 最低限梳かした黒い短髪に、顎にちょび髭。上下黒のツナギに、首に白っぽい大量のマフラー。男性と呼ぶにはまだ早い、少年さを残した男。

 瞬間、脳裏に映像が一気に流れた。走馬灯のようなそれ。いきなりの事に呆然としたまま、音の無いそれを見る。

 

 寝袋に入った、手入れをしていないのが一目瞭然の無精髭を生やした浮浪者か不審者。ぼさぼさで伸ばしっぱなしの長髪で隠れがちの顔に、ニンマリと悪人みたいな笑い。充血した目でギロリと音のつきそうな睨み。面倒臭さを前面に出した顔から、威圧するような睨む瞳が赤く光って髪が重力に逆らう。真剣に前を見据え、ゴーグルをかける姿。地面に叩きつけられる血だらけでボロボロの痛ましい姿。ヴィランのように愉しそうな嘲笑う顔。

 

 なんだこれは……。

 目の前の人物に似た、誰かの映像。父親だろうか。……いや、服装がほぼ同じ。これは、目の前の人物の未来か?

 もしやこれが、神が言っていた“うっすら見える”ってやつか!? うっすらじゃないじゃん!

 漫画に主人公と同い年しか出ない訳が無いから、この人は原作キャラだ! マジで、こんなとこで、いま?!

 

 すぅ、っと細められる目に心臓を掴まれる。ああ、私は今は幼女だ。幼女。家族大好きの人見知り。家族だと思ったのに家族じゃなかった。走馬灯を見ていたのはどれくらいだ。男を追っていた視線をドアに戻せば三人目が入って閉めようとしている。そんなに経ってない、多分一瞬だ。おかしな反応だったか。三人の顔を見ても分からない。分からないなら考えても無駄。私はどんな顔をしていたのか。これも無駄。では今どんな顔をしている。まだ間に合うか。ああもうくそっ!

 

 顔はもういい。反応も。

 男を見ていたのは家族じゃなくて驚いて思考停止したからで、他意はない。

 ドアから男に続いて、おばちゃん婦警と観察担当の警察官も入ってきていて、今は最後の警察官によってドアが閉められる所。

 そのドアが完全に閉まるまでは、ドアの向こうを首を伸ばして見ようと動く。

 閉まってからはもう一度、最初に入ってきた男を見て、男の左右を見回し。

 おばちゃん婦警を見て、おばちゃん婦警の左右を見回し。

 警察官を見て、警察官の左右を見回し。

 もう一度ドアの向こうを覗くようにして机に乗り出し、閉められて動かないドアに諦める。

 今度は三人の後ろに居るのかと椅子から降りて、でも初対面の男も居るので近付かず。足の間から見えないかしゃがんだり、距離を変えずに遠回りで後ろを見に行く。

 知らない男の人、おばちゃん婦警、警察官、閉じたドア。視界での確認終了。

 家族が居ないとようやく確認を終えて、涙目になる。震えて掠れる声で呼ぶ。

 おかあさん、おとうさん、おにいちゃん。どこ。どこにいるの。うそつき。あわせてくれるって、いったのに。

 初対面の男と警察官はもちろん、おばちゃん婦警からも離れるように奥へ逃げる。手で目を擦り、涙を流す。

 

 突然の原作キャラである男の登場によって一度は剥がれた幼女の擬態を、家族が居るはずが知らない男の人が居たから固まったとすり替える。予想外は予想外で誤魔化せるはず。

 凝視されたと思ったかもしれないので固まったように見せ掛け、念入りな確認で時間を稼ぎ、逃げて泣く事で更に余裕を持たせる。

 

 これならそんなにおかしくはないだろう。

 現におばちゃん婦警は、一度は心を開いてくれたのに初めより酷くなった対応に罪悪感を抱いたようで、こっちが謝りたくなるくらい気遣った声で謝罪を繰り返す。近寄ろうとしたのを身体をビクつかせて壁にすり寄れば、逆効果と分かって入り口に戻った。これで落ち着いて考えられる。傷口に塩を塗り込んですまんね。

 そうしたら、おばちゃん婦警は怒りだした。これ以上は怖がらせないよう柔らかい笑顔と声をキープしたままで、青筋が浮かびそうなほどの憤慨だ。背後に般若が見える。

 口から出るのは愚痴で、運良く情報ゲット。

 

 だからやりたくなかったのに。この子は何も知らないのに。悪くないのに。と、男達を連れて来るのに反対な事が分かった。

 その男達、特に初対面の方をなんで連れて来たのか知りたいので泣く演技を続行していたら、男達にも飛び火した。そりゃもう、容赦なく。

 

「あんた達も笑顔で挨拶するとかあるでしょう。なんで黙って睨むの」

 

「え。……いえ、睨んではいませんが……」

 

「いつもこの顔です……」

 

「睨んでなくてもそう見えるの。あんたにもいっつも言ってるでしょ。そんなむっつりして黙ってたら、睨んでるような怖い顔なの。ヒーローさんもよ。この子でなくても泣くわ。ギャン泣きよ。あんた達、少しは愛想良くしなさい。そんなんでどうするの。子供泣かせてばっかりじゃ、どっちも仕事上手くいかないでしょ。あたし、間違った事言ってる? それで失敗した事や困った事、周りに一切迷惑掛けてないって言えるの? これからも一生ないの?」

 

「いつもフォローありがとうございます、頑張ります……」

 

「……すいません」

 

 お叱りなんだか忠告なんだか、文句っぽい言葉をぶつけた。私が見てない時を見計らって、要所要所で笑ってない目で二人を睨む。

 警察官は本当にいつもの事なのか始めから縮こまっていたが、先に口答えした男の方は知らなかったようで、不用意な発言は火に油を注いだ。矢継ぎ早に畳み掛けられて、心当たりがあったのか図星だったのか、すぐに大人しくなった。

 慣れた様子で警察官がお礼を言って頭を下げ、それを横目で見た初対面の男は不服そうでも、私の様子に感じる所はあったのか渋々と、頭を下げた。下げたのに、二人が下げるのを見てから、おばちゃん婦警は相手が違うとまた叱る。これは八つ当たりも入ってるな。二人して今度は私に向かって頭を下げるも、幼女には頭を下げただけじゃ伝わらない。不器用過ぎてまた叱られる。言葉が足りない、そんなんじゃダメよと。口は使う為にある、言葉は伝える為にある、なんで分からないの。説教は続く。

 なにこのコント。笑える。笑えないけど。

 

 笑いそうになって噎せたのを泣きすぎたと勘違いしたおばちゃん婦警は、これまでで一番の細心の注意を払って、私に近付いてジュースを渡してくれた。

 噎せた事で気が逸れたと勘違いさせて、初めの頃の警戒心に戻す。それでも少しは安心したらしいおばちゃん婦警は、再び私を椅子に座らせて、男達を私から見えない奥へ追い払った。

 

 犬のように手で、しっしっとするからまた吹き出しそうになる。おいやめろ、笑うだろ。というか、可哀想。二人ともしょんぼりしてたんだけど。警察官はそんなキャラだったか? 初対面の男は走馬灯みたいなのからすると、ギャップ萌えじゃなくてギャップ笑いだわ。

 

 ふざけてみたが、実際、見えないと不安だ。あの男の人はヒーローらしいが、何の為に来たのか。

 もう私の味方とも言えるおばちゃん婦警は、本物のおばあちゃんよりも優しい。一生懸命に私を元気づけ、慰めてくれる。良心は痛むが、この警察署の中では味方は彼女だけ。気は緩められないので、この間も背後を気にしてビクビクしておく。

 どうしても気になる様子に、おばちゃん婦警は幼子でも分かりやすいように噛み砕いて説明してくれた。しなくていい部分も。

 

 長くなるのでまとめると、私に個性不正使用の実行犯としての嫌疑が掛かり、それを両親が行わせた主犯の疑いがある。さっきまでの取り調べで容疑は晴れたが、上がまだ不十分と判断。

 初対面の男はあれでもプロのヒーロー【イレイザーヘッド】で、珍しい個性を消す個性【抹消】の持ち主。

 実は鏡はマジックミラーになっていて、各部屋にある向こうの部屋で嘘判別個性の警察官と二人で個性を使って私も含めた家族全員を試していた。結果は全員無罪で、両親は当たるかもとは思ったが何故かは知らず、供述では二度ある事は三度あると言うからやってみただけと言う。兄妹は何も知らない。

 けれど上のアホ共は受け入れず、鏡越しだからダメなんだと直接個性を使用しての取り調べをしろとゴリ押し。とにかく、実行犯の個性の不正使用が立証されなければ犯罪として立件できないからやれと命令されて来たらしい。

 

 ぶっちゃけた話に、後ろの男達は何度も止めようとしたが、おばちゃん婦警の一睨みで黙らされた。警察官とは元からだろうが、ヒーローとの力関係も決まったようだ。

 おばちゃんって強いよね。うちの母もだが、母は強しって言うし、そこにおばちゃん要素も入ったらこの男達に勝ち目は無い。おばちゃんからすればこの男達もまだ子供扱いだし、端から勝敗は決まってたのだ。

 

 とにかく。話は分かった。幼女には分からないから、拙く、頑張って考えるフリをしながら話す。

 

 家族に会いたい。悪い事してないか分からないと会えないのよ。

 ピーマンもちゃんと食べる。偉いね、でも悪い事はそれじゃないの。

 じゃあなに? もう少し付き合ってくれるかな?

 分かった、頑張る。ありがとう、一緒に頑張ろうね。

 

 で、やる事は簡単。

 六面のサイコロを振って、赤色の一が連続三回出たら家族に会える。絶対に警察に連れて行かれないから、ずっと家族で一緒に居られる。でも、出なかったら今日は会えない。サイコロを振るのは一日一回。一日は、窓の外が暗くなって、寝て夜が終わるまで終わらない。明るくなったらサイコロを振れる。早く赤色の一が連続三回出ないと、ずぅっと家族とは会えない。

 

 結構シビアな条件だ。でも、警察が私の超幸運体質を個性と勘違いしてるなら納得。本当に幼女で、本当に当たりを出す個性を持つなら、確実に個性を発動させる条件だ。

 絶対連れて行かれないなんて嘘が混じってる所に、黒さを感じるけど。その部分には男達も納得してないのか、苛立ち混じりの舌打ちと、抑えきれず思わず漏れたっぽい悔しそうな低い声が聞こえた。

 こちらも乗り気でない説明をするおばちゃん婦警は苦々しさを隠さず、とっても申し訳なさそうだ。おそらく、内容を考えたのはさっき言ってた上のアホ共なのだろう。連続三回の当たりなんて、今回の件からしてそのまんまだし。

 今頃は監視カメラの前で、そいつらが手ぐすね引いて待ってるんだと思う。この最後の実験で証拠を押さえ、白黒はっきりさせるつもりだろう。

 

 懸念としては、おばちゃん婦警のぶっちゃけ話と個性持ち二人がこちら側に立ってる事だけ。

 内情を暴露された時は情報を得られて喜んだが、今となっては聞きたくなかった。確証を得られたが、推論は合ってたから無くても良かった。幼女でも話を理解したなら個性を使わない方が良いと判断する。暴論を正論に変え、上が突っ走ったら結果がどうあれ終わりだ。

 個性持ち二人だって、私に同情的になっているから個性を使わなかったとか虚偽の報告をしたとか難癖つけられそうだし。

 

 あれ、と不思議に思う。抹消の個性持ちはなんで来た?

 警察の思惑通りなら、今までの取り調べで当たりか勝利を量産し、それを個性不正使用と判断する為に抹消個性を使い、当たりと勝利を止めるのが役目。でも、既に確率的に個性ではないと結論が出ている。

 これから行うのはアホ共のワガママ。悪足掻きでしかないのに。それに協力? 有り得ない。だってさっき、舌打ちと漏れ出た声は二人分。彼もこちらの味方だ。

 まさか、ヤラセか。え、マジ? これ勝ち目なくない? 抹消個性を使われて赤色の一が出ず、やっぱり個性不正使用と判断されたら終わりじゃん。

 私的には、ヒーローなんて目立ちたがり屋か正義感のある人で、芸能人的な側面もある。冤罪や悪事に加担なんて、性格的にも社会生命的にもアウト。マスコミに知れたら炎上して、まともに生きていけなくなる。一気に犯罪者扱いで家族や近しい者皆が打撃を受ける。

 だから、嫌がってる?

 筋が通るから尚嫌だ。これ、どうすんの、どうすればいい。体質だから私にはなんにもできないが、サイコロを振る以外になんか打開策がないとヤバイかもしれない……。




いやー、面白くなってきた! なかなかスリリングでいーねー! 折角の初原作キャラが霞んじゃってるけど、どーしよっかなー?

今回は恋愛要素についてアンケートです。かなり悩んでも相手が決まらないので(^^;)次回アンケートはキャラで、次話やります。相手は相澤・緑谷・爆豪・轟・心操の予定で、他に希望がありましたら感想などで教えてほしいのですが、中には書けないキャラも居ますので申し訳ないのですが絶対とは言えません。マイクは好きですが、英語が苦手なのですみません……。

  • 恋愛あり。一人。相手は次回のトップ。
  • 恋愛あり。複数。トップ以外は当て馬。
  • 恋愛なし。逆ハー。投票数で出番増やします
  • 恋愛なし。全員友情。同上。
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