調べた所、現在の時間軸くらいで超常黎明期が来て、オールマイトが第四世代だそうなので、原作は2100年くらいが濃厚だそうです。作中で個性が発現しなければ今頃人類は恒星間旅行を楽しんでいたと言われています。
うっかり頭を抱えそうになった所で、おばちゃん婦警達が帰ってきた。やっぱり小言だったのかげんなりしていたが、室内を見て不思議そうにしていたので携帯固形栄養食を見せびらすように駆け寄った。後ろでホッと息をついて安心してるようだが、甘い。
「しょーちゃんに、もらったー!」
「あらあら、仲良くなった、のね……?」
にこやかな顔が怪訝そうに変わっていくのは、その貰った物が何か分かったからだ。告げ口として、聞いたまま言ってる風に片言で、腹は膨れないが合理的だから良い物なんだと伝えれば、笑顔のお怒り再びだ。察知した警察官は刺激しないように距離を取って逃げたが、しょーちゃんに逃げ場は無い。雲行きがマズいのは気付けたが、なんでかは分かってない。
予想通り落ちた雷は、私に配慮して静かに優しい声ではあるが、内容は耳に痛い説教だ。その中の、子供にあげるのにこれはどうなのか、こんなのばっかり食べてちゃ身体を壊す、ヒーローじゃなくたって身体が資本なのに、などのお言葉につい頷きたくなるのを抑える。
そうして、ぱちくりして二人を交互に見て、頃合いを見計らって庇う。言いたい事は言ってくれたので、もういい。おばちゃん婦警の息子の食生活はどうでもいい。分かりやすい例として出したのだろうが、愚痴に入りかけてたので止める。
「いじめちゃダメー!」
「虐めじゃないのよ、この子の為なの」
おおう、この子ときたか。私と扱い一緒じゃん。しょーちゃんも、ええって顔してるよ。自覚が無いから世話が焼けるね。息子と年近いのかな、だから余計にかな。でも、後にしてくれ。
それより、開けたままのドアと、そこから中を窺う人が気になる。服からヒーローっぽい、成人前後の女の人。
顔の全体が見えた時、またうっすら見えたのだ。今よりも年を重ねた、山の中の何かの施設の前でポージングを決めるシーンが。今度は少なかった。それが意味する事を考えるのは後。
これまで探しても居なかったのに、今日だけで原作キャラ二人目である。警察署への連行も含めて、濃くて疲れる日だ。
「ああ、彼女はラグドールってヒーローさんでね。たまたま近くに居るって分かったから来てもらって、さっき到着したのよ」
だから、なぜ? 首を傾げる事で伝えれば、おばちゃん婦警が答える前にラグドールという人が動いた。
「猫の手手助けやって来る!! ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!! あちきだけ参上!!」
両手を合わせて頭上で合わせ、身体を右に大きく曲げたまま叫ぶのはさっき見たのと同じポージング。実際やられても微妙なポーズだ。他の人も戸惑ってて、それに気付いた彼女は一人じゃキマらないとぶーたれた。本来は四人らしく、四人揃えばバッチリと言われても分からない。むしろ、一人称の“あちき”の方が気になる。どうしてその一人称なのか、いつから使っているのか謎だ。
「あちきの個性はサーチ! この目で見た人の居場所も弱点も、100人まで情報丸わかり!」
対応に困って沈黙が落ちていたら、ラグドールはすかさず来た理由を教えてくれた。またポーズをキメて。意味あるのかそれ。
って、そういえば、それが知りたかったんだ。なるほど、それで呼ばれたのか。え、情報丸わかり?! ヤバくない!?
ヒーロー以外でだって、特に悪事にも活躍しそうな、パワーはないが強個性。有ると無いのじゃ、まるで違ってくる有用個性だ。幼児には分からないから反応しないが、これめっちゃ希少な個性じゃないか? 流石原作キャラ。濃い。
「ふむふむ」
そんな彼女にガン見されて、内心で焦る。え、これ、どこまでの情報が分かるの。精神年齢とか転生とか、神由来の超幸運体質は分からないよね。分からないと言って。早くなんとか言ってくれ!
「ん。じゃあ、いっくよー!」
しかし、彼女は私から身体ごと目を離して警察官に向いた。片手を高々と掲げ、何かの宣誓のようだ。
「この子の個性に、宝くじを当てる効果はないよ」
「嘘はありません」
内容に安堵が広がる。そうか、サーチで情報を見て、嘘判別で確定させる。これなら実験は要らない。
だが、まだ手は下がらず、彼女は続ける。
「この子の個性は、宝くじを当てる効果があるよ」
「はい、嘘です」
なるほど、更に逆の意味で言えば、嘘判別個性で真実の判別もできるのか。これで私は無実だ!
じわじわと嬉しくなってきたが、嘘判別の個性は推測であり、誰からも教えてもらってない。だから、ラグドールが言ったから終わったんだと勘違いしたフリをして、彼女にお礼を言う。
だが、念の為にと私もやるそうだ。ラグドールのセリフを真似て、二回宣誓する。“個性”と付ければ嘘じゃない。超幸運は体質であって、個性ではないのだから。
二回目を言い終わって、笑顔の警察官が嘘と判別する。これで無罪決定である。こっちも笑顔で、すんなりとありがとうが口から出た。個性で毛嫌いしてごめんよ。でも、笑えたんだね。あ、ごめんごめん、失礼だったね!
やったねの言葉と共に、横からラグドールが両手を握って振ってくる。私も心のままに合わせて、一緒に小躍りする。来てくれて、ありがとう! 本当にありがとう! ポージング良かったよ、一人でもカッコ良かったよ!
私達を落ち着かせたおばちゃん婦警も、良かったわねと自分の事のように喜んでくれる。取り調べは辛くなかったし、むしろ歓待してくれて楽しかったし、おばちゃん婦警で本当に良かった。もう取り調べも連行も、二度目とごめんだけど。でも、ありがとう。私の味方になってくれて、ありがとう!
頭を撫でていたおばちゃん婦警の手が背に当てられ、家族に会いに行こうと入り口へ促される。
ウキウキしながら入り口を出た所で、しょーちゃんを思い出して振り返った。しょーちゃんはまだ壁際で、小さく笑って、本当に軽く手を振ってくれた。いや、ちょっと手を上げた、かな。なんて、らしい。
湧き上がる笑いのまま、こっちも軽く手を振ってバイバイを告げた。返事はなく、目を閉じて顎を引いた。了承の意だろう。幼児に分からない反応が、やっぱり彼らしい。
案内されて着いた始めの会議室には、家族と警察官二人が待っていた。嫌疑は晴れたと説明するメインの警察官は悔しさを滲ませていたし、サブの警察官は唇を噛んでいた。なんでそんなに拘るのか分からなかったが、帰れる事ばかりに気を取られて考えなかった。
パトカーで送ると提案されたが、全員で遠慮した。兄も行きに乗って満足したし、外見以外はあんまり他の車と変わらないからだろう。
外に出て、解放されたと、終わったんだと肩の力を抜いて、息を吐いた。反応が両親と一緒で焦ったが、解放感から見られてなかったのでセーフ。兄が不思議そうに首を傾げていたので、手を握って誤魔化す。
夕陽が綺麗で、もうこんな時間なのかと驚いた。お腹が減ったと兄と訴え、今日は疲れたから帰り道にどこかで食べようと歩き出す。
警察署近くで夕ご飯を食べ、タクシーに乗って家に帰る。見慣れたマンションの、見慣れた玄関、見慣れた我が家。でも、なんだか久しぶりのような気がして、出てから半日も経ってないのかと感慨深くなった。
ゆっくりして、お風呂に入って、布団に横になって。目を閉じたが、頭が冴えて眠れそうにない。
今日は本当に長かった。まさかの原作キャラに二人も会うし。あ、ラグドールの本名聞き忘れた。でも、そんなヒマもなかったし、オールマイトと違ってネットで調べれば出てくるだろう。そう考えるとしょーちゃんも無理に聞き出す事もなかったかな。あの時は思い付かなかった。でも、呼べなかったし、どちらにしても聞いて良かったのだろう。
それに、宝くじの件も片付いたし、これで明日からは思い悩む事もない。
次に気を付けるのは、小学校だ。きっと同級生に原作キャラがいる。何クラスあるか分からないが、六学年を見て回るのは大変そうだ。幼稚園より多い。
ああ、違う。その前に引っ越しだ。近所にいないか探さないといけない。兄の新しい同級生も要チェックだ。
将来、兄はヒーロー科に行くだろうが、どこの高校に進学するんだろうか。有名なのは雄英と士傑かな。東の雄英、西の士傑って呼ばれるくらいだし。兄は強個性で有用だし、使い勝手もいい。個性は問題ないから、そのどちらかを目指すはず。問題は偏差値、頭の良さ。現状は良くも悪くもないが、殆ど勉強してないから本気になったらどうなるか分からない。有名所には原作キャラがいるだろうし、本音は行ってほしくない。でも、有名所は実績があるから有名になったんだし、それを考えると行ってほしい。自分か、兄か。なら、兄だ。発破を掛けてみよう。早ければ早いほど良い。
つらつら考えて、いつの間にか寝ていた。
翌日からはまったりと過ごし、しょーちゃんとラグドールを検索した。
しょーちゃんは、イレイザーヘッドはほぼ検索に引っかからなかった。
少しはあったが、本名はないし、年齢も分からない。本人の写真や映像に至っては全く無く、かろうじてブレブレの黒い塊の写真しかなかった。本人に会っているのに本物か分からないレベルで、ツチノコかネッシー扱いだ。知名度も人気も全くないけど。
調べたら、どうもアングラ系ヒーローというやつで、露出を嫌ってるようだった。まあ、らしいっちゃらしい。本名聞いといて良かった。
逆にラグドールは結構あった。
複数名義での事務所は長く持たないが、今の所は四人で上手くやっていて、いつ解散するか賭け事になっていた。酷い話だが、それで知名度が上がってもいるので、長く続くほど有名になりそうだ。
本名は
チームは山岳救助を得意としていて、今回町に居たのは運が良かった。ありがとう、超幸運体質。突き落としたのも助けたのも、どっちもこいつの所為だからプラマイゼロだが。もうトラブルメーカーである。
動画で四人揃ったキメポーズがあって見てみたが、確かに揃えば戦隊ヒーロー物っぽくて良かった。背後で爆発して色付きの煙まである辺り、少年をターゲットに狙っているのだろう。もしくはそういうノリが好きなんだろう。横で一緒に見ていた兄が興奮してリピート再生をし始め、一人だけだが会って直にポーズを見た事を羨ましがっていた。
私としては女装しているようにしか見えない虎というヒーローが気になって、性転換手術をする予定だとあって驚いた。そういうのは隠すものじゃないのか。性同一性障害とかなのか。はたして、好きになるのは男性なのか女性なのか。ラグドールの一人称が“あちき“といい、他の人もなんかありそうで、謎の多いチームだった。
あらかた調べ終わったが、情報の少ないイレイザーヘッドだけは定期的に調べる事とした。特に本拠地である、事務所だけは知りたいからだ。
基本的に、ヒーローは自分で事務所を持って一人前だ。オールマイトなんて東京港区という一等地に構えてて、知名度も収入も流石はナンバーワンだと言える。しょーちゃんはそういうの気にしなそうだが、合理的に動くなら自分がメインの方が合理的であるから持てるなら持つだろう。
しかし、当然ながら事務所を持てば賃料に経費、事務員やサイドキックなどの給料と諸々の金が掛かる。だから一般的に、サイドキックから始めて金を貯めてからの独立となる。デビューと同時に持てるのは親やスポンサーから援助を貰うか、なんらかの貯蓄が無いと難しい。
しょーちゃんは年齢も不明で、成人はしていても二十五歳にはなっていないと思うが、そういう背景も分からないので判断がつかない。本人が事務所を持っているのか、それとも独立せずサイドキックとしてどこかに所属しているのかも不明。本拠地も分からず仕舞い。色々と本気で情報隠蔽しにかかってる。勘弁してほしい。
確かに情報の少なさ、なんで露出を嫌ってるのは理解できる。個性を消す個性【抹消】は有用で希少な個性だが、目が光ってたし、警察署で鏡越しだから効果なかったと言ってたので発動条件は視認に関係している可能性が高い。ヒーローは個性が知られているのが当たり前だが、視認されなければいいと分かれば対策を立てられてしまう。だからだ。合理的って言ってたし、ムダを嫌いそうでもある。騒がしいの嫌そうだし、そもそもマスコミ嫌いっぽい。
こちらでは犯罪には何かしらの個性を悪用する事が多い。個性を消す個性なんて、まさに対ヴィランとして有用な個性だ。今回は近所にいたが、だからってこの辺が本拠地とは限らない。呼ばれたのかもしれないし、ラグドールみたいに偶然近くに居たからかもしれない。
ラグドールの本拠地は山岳だが、縁はないので何かで行かなければ会わない。しかし、イレイザーヘッドは救助よりヴィラン逮捕がメインだろう。そうすると、町でばったり会う可能性がある。嫌いではないが、原作に巻き込まれたくない。既にデビューしてたからデビュー前の逸話云々はなさそうだが、無いと言い切れない以上、関わり合いになるのは避けたい。その為に本拠地が知りたかったのだが、これは今後の情報次第となる。
分からないものは分からない。ヒーローに詳しい知り合いは居ないので、ネットしか情報源はないから根気が必要ではあるが、そのうち分かるだろうと先送りにした。
それよりも、引っ越し先が決まった。こちらの方が大事だ。
下見にも行ったが、結局豪邸にはなった。けど、父の職場から近い閑静な住宅地で、最寄り駅が繁華街まで乗り継がなきゃならない路線だから、便利な立地の似た物件と比べれば安い。
門から入って玄関はすぐだし、兄が不満そうにしていたがプールもなし。部屋数も必要数の倍はないし、全体的に広すぎる訳でも無く、大変そうだが母一人でもなんとかなりそうだ。
現実感が戻ったのか今後の支出も考えていたし、警察に連行されての取り調べで懲りたのか、宝くじ以外もやらされる事はなかった。収入は以前通り、父の頑張り次第となる。
入居日も決まり、次は家電や家具を選ぶ。
前世で施設を出て一人暮らしを始める時は、金と狭さが問題だった。色んな物を買わなくてはいけないから、できるだけ安く、でもお買い得な物をと奔走するしかなかった。しかし、今は違う。金はある。置く場所も十分。
これが中々楽しい。テレビでやっていたが、家電は日々進化し続けているというのを実感した。前世で選ぶ時には選択肢にも入らず知らなかった高性能さと多機能さに、驚くばかりだ。こちらは個性も関係しているのか、向こうよりも進んでる気がするし、あれもこれも良いと目移りする。ここらは長くなるので割愛するけど。
選び切れそうになかったが、家電に関しての多くは実際に使う母の要望で決めていった。
洗濯機は、乾燥機付きのより大きい物を。冷蔵庫は便利機能が多くて皆好き勝手言って手間取ったが、料理好きな母の意見を中心に決定。テレビは、どこまで大きいのを買おうかと電気屋にも行った。
家具にしても、リビングなどの共用部分は掃除を考慮して、材質や形で母の要望が通る。自室は自分で掃除するなら面倒な物でも良くなったが、私はそこまで拘りもないので母の意見を参考にした。でも、ピンクのフリフリ部屋は阻止した。そんなファンシーな部屋は落ち着かん。木目の茶色と黒を基調としたばかりの、幼児にしては落ち着きすぎた部屋になりそうだが、白は汚れが目立つからいいのだ。
そうして必要な物を購入し、引っ越し当日に届くように手配していた。
荷造り自体は、私は自分のオモチャとかを詰めるだけで、他の服や日用品は母がやってくれる。幼児だし、まずやらせてもらえないのだ。押し付けた訳でも、サボっている訳でもない。
なので邪魔にならないよう応援しつつ、合間に引っ越し先にどんなヒーローが居るかだけ調べておいた。原作キャラかは直接顔を見なければ判明しないので、先に何人居るかだけ調べておく。後はパトロールでうろちょろしているので、買い物などで出掛けた時に確認すればいい。現状はこのくらいしかできない。
ちなみにしょーちゃんは影も形も無かったので、本拠地でない事だけは分かった。
引っ越しは八月の中頃。動かなくても汗が流れて暑い時期だが、小学校の途中で転校する兄の事を考えて、夏休み明けに新しい学校に通えるようにした。父も、お盆休みがあるのでちょうどいいという事になった。
私の幼稚園は、仲の良い子がいないので全く問題ない。言ってて悲しくなるが、相手をしていて幼児にも周りの大人の目にも疲れるのだからしょうがない。ベテランさん、信奉者達よ、さようなら。
しかし、ベテランさんの魔の手がどこまで伸びているか分からないので、新しい幼稚園には行かない事にした。母は驚いていたが、どうせ後半年もすれば私も小学校。新しい家に居たいとワガママを言い、珍しいダダに母は折れた。元々、幼稚園に良い思い出は私にも母にも無い。それに、引っ越した事で手続きや書類提出がたくさんあるのだ。幼稚園に入らない事で少しは減るし、元々私は手間が掛からない一人でも平気な子供だ。半年というのも後押しとなって、父の許可も得て行かない事に決定した。
中古ではあるが、事前にきちんと掃除された新しい我が家はなんだかワクワクして、どこもクーラー完備で素晴らしい。リビングのソファはついついうたた寝をしてしまうほど柔らかく、真夏なのにひんやりする中での日向ぼっこは贅沢に尽き、そこに母お手製のおやつも加われば最高である。
部屋だって一人部屋の鍵付きで、前言通り落ち着いた色味の部屋になった。つまらないとは言われるが、不満な母は自分の部屋で趣味を爆発させてくれ。母は好きだが、これは譲れない。いつも過ごす部屋だから、落ち着かない内装は嫌だ。
そう、天蓋付きベッドなんてもっての外と断ったら、母のベッドがそうなったのには驚いた。父は前も言ったがマッサージが趣味で、自室ができるからそれ用にマットレスを買ったのだが、オイルやクリームなども含めた総計が結構な額になった。それと寝相が悪いからを武器とした母は強く、夫婦用のキングサイズベッドよりは小さいが、同額ほどで母専用ベッドとして天蓋付きの購入を父に認めさせたらしい。部屋は夫婦用と個人用があるから置き場には困らないが、ムダじゃないだろうか。確かに寝相が悪くて、蹴られたのは知ってるけど。
趣味に走ったのは母だけじゃない。父の自室もマッサージ関係の物ばかりで、兄は雑多な印象だ。ゲーム機とソフトにオモチャ、それほど高くはないが種類の多いヒーローグッズと、まるで小学生男子の部屋の見本みたい。特定ヒーローのファンではなく、その時々にハマったヒーローグッズは人も用途もバラバラすぎて、それで特に雑多な印象にしてしまう。誕生日が夏なのでまた増えたヒーローグッズの、プッシーキャッツ各人をイメージした派手なTシャツ四枚組は本当に着るのだろうか。壁に飾るから、一気に目に優しくない部屋になった。どちらにしても、本人がいいならいいんだけど。
そんな兄は夏休み明け、新しい小学校にもすぐ馴染んだようで安心した。新しい家であり、広いから自慢もしたかったらしく、なんと友達を連れてきたのだ。
以前のマンションだとご近所さんの関係で騒げないし、狭いから近くに母や私がいて落ち着けそうもなく、玄関までしか来なかった。でも、今の家なら部屋に籠もれば私達は気にならないし、大きな声でなければリビングまで聞こえない。これなら心置きなく呼べるし、会話から先月発売したばかりのゲームをやりに来たのが分かった。
人見知りを発動してリビングのドアの隙間からこっそりと見た所、連れて来た友達に原作キャラは居なかった。なので、気付いた兄に紹介されても逃げずに挨拶しといた。今日連れて来なかっただけの可能性はあるが、とりあえずは一安心。
でも、帰る前の挨拶にリビングに顔を出した時、友達の一人から今度アイス買いに行こうぜと声を掛けられたのが不思議だった。
雲行きが怪しくなったのは、それからだった。
午前中にやってる情報番組の電話で応募する懸賞の、通話ボタンだけ押した。
母の買った雑誌の懸賞の、希望番号だけ書いた。
そんな、軽いもの。押す? 書く? そう聞かれて、幼児ならやりたがるかなとやった。宝くじほどじゃないしと、軽く考えていた。
おかしいと感じたのは、父が仕事を辞めると夕食の席で言ってから。その時は、金属加工の有用個性を持ってるから、もっと大きな会社に転職するのかと思った。思いたかった。
日常の中の、今日のご飯なにがいいとか、服の色どっちがいいとか、そういう軽い感じで聞かれた事を、何気なく聞かれたから問いに答えただけだった。いつもの中に紛れた異物に、気付かなかった。母と父から聞かれたそれが、どういう事かも知らず。知ろうとしなかったから。
仕事を辞めた父に、数字を聞かれて。適当に答えた。その時見ていたテレビのチャンネルだったり、朝食のウインナーの数だったり、ふと思い付いたり、その時々で適当に。
たまたま、父が読んでいた物を知った。競馬新聞だった。次の日は競艇新聞だった。出掛けているのは面接とか新しい会社とか、次の仕事の為だと思ってわざわざ聞かなかった。そんな所に行っていたなんて、知らなかった。
ここでようやく、またかと気付けた。けれど、宝くじで痛い目見たよねとは言えなかった。幼児のセリフじゃない。
どうしようかと悩んで、両親に意識を割いていた。政府と家族公認ニート最高と、だらけているヒマは無くなった。
そうして、兄の友達から言われたアイスの真相を知る。友達は、兄から聞いたのだ。私が宝くじを当てたから、この家に住めるようになって、最新ゲーム機を買って貰ったと。宝くじを当てるなら、アタリ付きのアイスも当てられるだろうという意味だったのだ。
あの時、母も一緒に聞いていた。確かにあれからだった。宝くじの一等なんて大きいものから、世の中にありふれた、小さいけどたくさんの当たるものに変わったのは。
あれで母が、話を聞いて父も。知ったのだ。気付いてしまったのだ。大きいから目立つ。目立ったから警察沙汰になったのだと。懸賞も賭け事も、世の中にありふれてる。大きいのを連続でダメなら、小さくて違うのを当てればいい。懸賞なら本やネット、テレビといった媒体。出版社や会社、局といった当選者を控えている場所。食品や金券など、当たる商品も偏らないように。ばらけるように、両親は考えてやっている。
その為に、母はスマホを触っている時間が多くなり、読むのが不思議な本を買い込んでいた。父も毎日のように本を買ってくるし、仕事を辞めたのに以前と同じくらい出掛ける。買い物に行くのかと母に連れられて行ったらパチンコ店で、耳が痛くなる中でスロットのボタンを押した。スリーセブンで大当たりした。両親の、煩い中でも聞こえる喜びの声に、私は喜べなかった。
どうしたらいいのか。兄も異変には気付いてる。なんか変だと言って、前の家に戻ってゲームとか買ってあげられなくなるけどいいのと黙らされた。怖かった。初めて見た、冷たい目と雰囲気だった。
どうしようもないまま、今度は家政婦が来た。お母さん一人じゃ広いの、大変なのと言っていた。私にボディーガードがついた。幼いからだそうだ。専属の女性の使用人が、常に側につくようになった。両親の許可無く、部屋から出られなくなった。兄に会えなくなった。使用人は一人、ボディーガードは二人増えて、両親と会う回数も減っていった。
六歳の誕生日。豪華で、一人じゃ食べきれないケーキとご馳走が並べられた。でも、家族は居ない。居るのは使用人とボディーガードの二人だけ。
家族は忙しいそうだ。使用人が言っていた。両親からだというぬいぐるみを渡された。
好物ばかりだけど、味はしなかった。機械的に口にして、空腹も満腹も感じなかったのである程度で止めた。
聞いても答えてくれないだろうから、何も聞かなかった。伝言も頼まなかった。
あらー、大変だねー。せっかく警察から逃れられたのに、今度は堕落しそうだ。まあ、家族が多い家系ならそれだけ金も掛かる。両親とも裕福でないから、金という悪魔に魅入られて、その先がどうなるかなんて歴史が示してる。さあ、どうする?
今回は恋愛要素についてアンケートです。かなり悩んでも相手が決まらないので(^^;)次回アンケートはキャラで、次話やります。相手は相澤・緑谷・爆豪・轟・心操の予定で、他に希望がありましたら感想などで教えてほしいのですが、中には書けないキャラも居ますので申し訳ないのですが絶対とは言えません。マイクは好きですが、英語が苦手なのですみません……。
-
恋愛あり。一人。相手は次回のトップ。
-
恋愛あり。複数。トップ以外は当て馬。
-
恋愛なし。逆ハー。投票数で出番増やします
-
恋愛なし。全員友情。同上。