あれから増える事はなく、女性使用人は二人、男性ボディーガードは三人。各一人ずつが常に側に付き、トイレ以外は必ず一人は私から目を離さない。
トイレと風呂に入る時は確認なく部屋から出れるが、それ以外は両親の許可がなければ出してもらえない。同じ階の兄にも会いにもいかせてもらず、食事は部屋で食べるようになった。
一気に身動きが取れなくなり、使用人達を懐柔しようとしたがダメだった。まずコミュニケーションが取れない。親しくなろうとした所で躓いたのだ。
抑揚のない無表情、“あの”や“えっと”が多い優柔不断、空気を読めない堅物、首と目で示す無口、目を合わせない言葉足らず。と、バラエティ豊かで、名字にも灰・桃・青・黄・赤と入ってて戦隊ヒーローかよと言いたくなる。
コミュ障しかいない上、頑なに両親の指示を遵守する。優柔不断のピンクでも、迷いに迷って涙目になっても悩むので根負けした。
こんな同僚同士で話していると組み合わせによって一見イジメていたり険悪そうに見えるが、本人達はそれが普通で気にならないらしい。レッドも同僚なら少しは目を合わせるし。
本職ではないようで動きやすい私服だし、丁寧語ではあるが尊敬語も謙譲語も使わない。私が健やかに過ごせるようにはしてもお嬢様扱いはせず、別部署の先輩に近い。失礼にならないようにはするが、言いなりにはなってくれないのだ。
そんな彼女らについて、まだ会えた頃に両親に聞けば身の回りの世話と安全の一点張り。
確かに、それは分からなくもない。
両親は私が宝くじを当てたと思ってる。なんでかは分からなくても、三回連続が信憑性を高めてしまった。
警察とヒーローが調べたが不正はなく、捕まる事はない。それが知れれば狙われる。悪人じゃなくたって、誰だって欲しくなる。
両親が親族にどこまで話したが知らないが、あれだけ色々としたのだ。宝くじで大当たりくらいは知られていると思う。家に電話や押し掛けはなかったからそこまで広がってはいないが、今後もそのままなんて楽観視はできない。逆に時間が経つだけ広がり、連続当選まで知られて疑問を持たれれば、いつかは辿り着く。真実を知れば私は狙われる。
だが、私としては危機感は薄い。
悪人に捕まって利用され続ける人生なんて、そんな退屈で面白みも無い、つまらない話で映像でしかないからだ。超幸運体質がいつどこでどう働くかはよく分かっていないが、個性の説明にあった介入から神がどうにかするだろう。
洗脳や支配の個性を一時的に使われても、もし家族に何かあったとしても、私という神が気に入った自我も個性も、失われる事は無い。あいつが起こさせないという、腹立たしくも妙な安心感がある。
けれど、それらを知らない両親は危険と判断した。
不特定多数が出入りするマンションから門扉付きの一戸建てに引っ越し、前より安全性は上がった。それに近所は閑静な住宅街だけあって裕福な家ばかりだから防犯意識をしっかり持っていて、不審人物など居れば勝手に通報してくれるだろう。
高いだけあって家自体のセキュリティも高く、門扉以外は二メールほどの頑丈な塀で囲まれている。門扉と玄関両方オートロックで、カメラ付きインターホンと電子錠付き。虹彩認証か暗証番号で開き、リビングとキッチンにあるモニター親機から解錠も可能で番号もすぐ変更可能。録画と録音機能付きの監視カメラも複数設置され、半年で上書きされるが配線をパソコンに繋いで別途保存可能だし、いつでも遡って見れる。
前世は縁がなかったからここまでするものなのかと驚いたが、それでも両親からしたらまだ足りなかったんだろう。家ではなく、常に私の側に付く事からボディーガードは私だけを守っている。
両親は私には有り難くない方向で、私を必要としていて、決して失いたくない。
だから、幼いからというのも本心だろう。大人より幼児の方が弱くて死にやすい。大人だって私のように転んで頭を打ったり、階段から落ちて呆気なく死ぬ。打ち所が悪くてとはよく聞くが、大人なら助かったが子供だから死んだなんてのも同じ。それだけ弱い。
それに普通の幼児は無知だ。痛い目を見て理解していくもので、その前に危ない事を正しく理解しろなんて無理な話。ハサミだって刃物で皮膚も肉も切れるし、火は人間を焼くが、理解してないから平気で危ない事をする。
私はそんな事しなかったし、言い付けは破らなかった。でも、両親は心配が尽きないのだろう。
部屋から極力出さないのも、私の部屋にクッション性の高いカーペットが敷かれたのも、階段落下と転倒防止の為。使用人が私が動く時に手の届く位置に居るのは世話の為だけじゃなく、そういった普段の生活の中の危険から守る為だ。
家よりも外は交通事故やヴィランなど、更に危険が増える。死にやすさが上がると言い換えてもいい。
周りの目を気にして幼児に擬態しなくていいならその方がいいし、原作キャラにどこで会って何に巻き込まれるか分からない以上、自主的に外出はしない。でも両親はそういう子と認識しているだけで、成長すれば今後もそうとは思えないだろう。
兄とその友達と遊びに行っていた時は子供だけ、時に人気の無い場所にも行った。そうなると誘拐も簡単だ。幼児だから女性にも持ち運べるし、言葉巧みに連れ去る事も可能。私は普通ではないので口先に騙されたりしないが、両親は知らない。
だから、守る為の要員を雇うのは分かる。本職ではないのが気になるが、見た目は屈強そうで抑止力にはなる。
そうやって制限されて、機会を奪われ、だんだん両親に会える事も減っていった。会いたいと使用人に言っても、忙しいそうですと返される。
父は仕事を始めたか知らないが、始めたなら一応は納得する。でも、母は専業主婦。しかも家政婦が居るのに、会えないほど忙しいのは有り得ない。
それを幼児らしく拙いながらも突けば、そう聞いたとばかり。ついには目を閉じて首を振られたり、気まずそうに目を逸らされるだけになった。
兄にも会えていない。何度か来たが、ボディーガードに門前払いされていた。
元々誰が来てもドア越しで用事を聞き、何か受け取る時は最低限しか開けずに身体でブロックする。その時は使用人がドアと私の間に立っていて、兄の時は私を抱きかかえて最奥へ行く徹底ぶり。
おそらく会わせないよう命令されているのだろう。勝手に忙しいと言って追い払う前に、大きな声で呼んだ事もあった。でも、両親の言い付けですと口を塞がれ、兄はボディーガードに持ち運ばれて部屋に戻された。
それでも諦めず果敢にもドアを叩きまくって、開いた隙間から強引に入ろうと何度も試みてくれたが成功はしなかった。一生懸命考えてくれたのだろう、他にも手を変えて挑戦し続けてくれた。
兄の諦めない姿に勇気づけられて、私も打開しようと奮起した。幼いなりに考えたような理由で、家族に会えるように、兄の頑張りを無駄にしない為にも──昔のように戻る為にも。
でも、その全ては徒労に終わった。
やり過ぎたのだ。
兄も私も諦めなかった。それが両親に、行ってはいけない方へと、更に一歩を進ませてしまった。
兄が小学校へ行った後、いつもなら気が緩むはずの九時。なぜかボディーガードは一時間ほど前から居ないし、使用人は妙に緊張していて。何かあるのかと思えば、無人の両親の部屋に連れて行かれた。
どうしてか聞いても答えてはくれなかったが、その内に階段をどたどたと何人も上って行き、三階が騒がしくなった。
寝ているフリをして耳を澄ませば、両親と男達の声と煩い音。聞き取れた断片的な内容を信じたくなくて、聞き間違えたんだと思い込みたかった。
けれど、間違いではなかった。
兄が帰ってくる前にと、人を増やして急がせたのだろう。
部屋に戻されれば、両親の都合の良いようにリフォームされた三階があった。賃貸ではなく、購入したからできる事だった。
この家は三階建てで、家を横断するように階段と廊下があり、左右に部屋や設備がある。
一階の半分にキッチンとリビング、反対側に風呂やトイレといった共有部分と一部屋があって、その一部屋は日用品などの予備を置く物置にするはずだった。
二階にはかなり広い一部屋とその半分の二部屋があって、これは夫婦の部屋と両親の自室。
三階には両親の自室ほどの広さの三部屋と、一階のよりは狭いトイレと風呂がある。三部屋の内二部屋は兄と私で、残った部屋はいつかできる子供の為に残しておこうと話していた。
その余裕がいけなかった。設備の良さもいけなかった。
三階にも風呂とトイレがあり、世話をする使用人がいるから三階だけで生活できてしまうのだ。
三階は、可能な所は全て防音加工された。
私の部屋のドアは両側とも一回り大きい鏡で塞がれ、動かないよう壁にしっかりと固定されていた。出入りは、新しく作られた隣の元空き部屋へのドアからするしかない。
その部屋からなら廊下に出られるが、そこは使用人とボディーガードの待機室になった。行けば使用人は寄ってくるし、ボディーガードは私を注視する。
それに、自室と待機室、待機室と廊下のドアには元から内側から掛ける鍵があったが、後から南京錠も付けられた。リフォームの人達に頼む訳にもいかず、ボディーガードが頑張らなくていいのに頑張りやがったのだ。私が届かない高さとして、女性使用人でも背伸びをしなければいけないほど上部に取り付けられた南京錠の鍵は、使用人達が首から下げて服の中に入れている。
廊下を挟んで反対側の風呂とトイレは防音加工以外は変わらないが、トイレのドアの前で待たれる身としては有り難い。
そして、兄の部屋は空っぽだ。空っぽにされた。
あの日、ボディーガードが居なかったのは兄の荷物を運んでいたらしい。一階の物置予定だった部屋に移されたようで、部屋の広さも設備も大体同じだとしても、本人の了承は取っていないだろう。そんなの拒否するはず。不在を狙った事といい、勝手にそうしたに違いない。
果たして、帰宅した兄はどんな顔をしただろうか。
階段には、シャッターが取り付けられた。
二階の天井であり三階の床でもある位置に水平に、まるで階段途中に床があるような形でだ。あの時は閉まっていたし、早すぎて思いもよらなかったが、個性がある超人社会だから可能なんだろう。
使用人が言うには、危ないから落ちないように一階と二階を繋ぐ階段にもあって、万が一落ちたとしても大人でも受け止められる強度があるらしい。
手摺りに付けた専用読み取り機にカードキーをかざせば自動で開いて三分後に閉まり、エレベーターと同じ安全装置と人感センサーが搭載され挟まれる心配はない。
二つのカードキーは違うらしいが、当然私には渡されない。
これで二重三重にも閉じ込められ、三階は私専用となった。
まさかここまでするとは思ってなかったから、使用人とボディーガードの交代制でも尽きっきりの軟禁は完成してしまったのだ。
それでも、このままで良い訳はないから試行錯誤を繰り返す。きっと兄も諦めてない。
入学時期を過ぎても変わらないので小学校へ行きたいと言えば、行かなくて良いと返ってくる。幼稚園の時のを曲解されて、ずっと家に居て良い、と。
義務教育で留年も退学もないが、催促は来ているはずだが、それすらも分からない。
勉強がしたいと言えば教材が届いた。小学生の内容なら教えられると使用人が申し出たが、断って自室から追い出し一人でやった。
友達が欲しいは、幼稚園でできなかったから無理でしょうと母からの伝言が返ってきた。
使用人達の目が見れないし、居たたまれない。そもそもあれは仕方なかったのだ。
走り回るスペースはないので走りたいと言ったら、数日後に元兄の部屋にランニングマシンが置かれた。
ダメ元で自転車に乗りたいと言ったらフィットネスバイクとステアクライマーが追加されてジムみたいになった。後者は言われる前に用意したんだろうが、階段が使えないからって上り下りしたいなんて言わない。
筋トレ用がないのが救いだが、幼児だと使いづらくてしょうがないのが難点だ。
直球で外に出たいと言ったが、危険がいっぱいだからで撃沈。今まで大丈夫だったと返しても、今は違う、状況は変わったで終了。
外部への連絡も考えた。でもそれは、兄とは会えるかもしれないが、両親と引き離される可能性をはらんでる。両親を説得しようとまず考えて、きちんと実行可能な人でないとダメだ。
私は今をなんとかしたいだけ。外に出れなくたっていい。小学校だって行かなくたっていい。友達も要らない。
──ただ、前に戻りたいだけなのだから。
事を大きくせず、穏便に両親を説得できるとなると親族が当てはまる。祖父母達と、両親のきょうだい達。それ以外だと、年齢や付き合いの長さから無理だろう。
だが、どう知らせるかが問題だった。連絡するには連絡先と連絡手段が必要になる。
連絡先は両親のスマホにそれぞれ登録されている。それに今も変わってなければ、一階の固定電話の棚にアドレス帳があった。連絡先と連絡手段はセットだが、どちらにしても下へ行かなくてはならない。
三階から出る事自体は簡単だ。
両親は肉まんの個性で物が消滅する事を知らない。私には安全でも、危険と見なされて個性禁止にされかねないから今まで隠してきた。だからシャッターで物理的に閉じ込めたと思っているだろうが、自分が通れる穴くらい簡単に開けられる。
ちなみに壁や床に穴を開けないのは、壊しすぎたら後が大変だし、降りる手段も無いからだ。
問題は見張り。幼児の身体じゃ倒すのは無理だし、ただ逃げてもすぐ捕まる。数十秒なら稼げるが、それ以上は何か策がいる。
とはいえ、例え下へ行けても問題は山積みだ。
まずは連絡先と連絡手段。
スマホなら二階にある可能性はあるが、両親が不在で置いてあるとは限らない。
それに三部屋の内、どこにあるか。鍵は掛けてないだろうが、充電器は三部屋ともに置いてあったから絞りきれない。
在室かどうかも防音で決行前に調べられないし、下手に聞けば勘付かれる恐れがある。
スマホも置きっぱなしならいいが、充電器は一階にもあったから部屋にある可能性は低い。
スマホの場合は以上を運良くクリアしてゲットし、隠し持って部屋から連絡すれば良い。
一応、スマホだけなら使用人達五人も全員持っているが厳重すぎて手は出せない。ロックを毎日変えて、ネックストラップを使って胸ポケットに入れて、本当に肌身離さないのだ。
兄と家政婦は未確認。
一階の固定電話は固定だから確実にあるが、固定だからこそ通話する時間も必要となる。アドレス帳を動かされていたら探す時間も掛かる。
電話ではなく、パソコンなら待機室に用意されてはいる。でも常に見張られているし、メールアドレスが分からない。
私の知る限り、親族の中にネットに電話番号やメールアドレスが載るような人は居ない。SNSも知らないし、検索しても止められるだろう。
それにパソコンを使う時には、見張りが強くなる。これは唯一外界と繋がっているからだけじゃない。しょーちゃんの所為だ。私の迂闊さもあるが、しょーちゃんが悪い。その所為でより警戒されるようになった。
始めは確かに外部との連絡手段として警戒していて、パソコンを使う時は使用人が真横から見ていた。
私は親族に連絡できないならするつもりがなかったので、しょーちゃんの定期調査をいつも通り普通に始めた。このいつも通りは、引っ越す前からやっていたからの意味で、使用人の前では初めてだった。
うっかりしていた。どう思うか考えてなかったのだ。
ヒーローは数が多いし、しょーちゃんは無名。
普段の生活で私がヒーローにこれっぽっちも興味がないのを知ってるから、まさかヒーロー名とは使用人は気付けなかった。
イレイザーヘッドと打ち終わっても反応がなかったから、私も気付けなかった。
しょーちゃんの情報はほぼ無いが、ゼロではない。ヒーローと分かる程度には表示されてしまう。検索結果が出てやっと使用人はヒーローだと分かり、ビクッと身体が動くほど驚いていた。
それで私も思い至ったのだ。
軟禁された幼児と、加担している彼女。その幼児が、ヒーローに興味がないのにヒーローを調べている。普通なら助けを求める為だと思うから焦るだろう。しないけど、知らないから焦る。
だが、内容は薄く、検索結果トップにも掲示板が出るほど。当然連絡先も無い。なので、そわそわしつつも止められなかった。ボディーガードは呼ばれたが、無視して新しい情報はないかと探していたら背後で息を飲むような声がした。
そのまま終わるまで何も聞いてこなかったが、次からはパソコンを使おうとするとボディーガードも背後から覗いてくるようになった。
どうやら自分達が良くない事をしている自覚はあるらしい。
これが両親に報告されても、しょーちゃんの事は家族に話していたし、前述通り定期調査は引っ越す前からしているので問題はない。
その後も止められる事はなかったが、パソコン使用時は二人体制のままだった。
まあそれでも、いつまで経ってもしょーちゃんの情報は少ないままだ。何か大きな事件で活躍でもしない限り、本人の性格からして変わらないだろう。
ツチノコのような曖昧な目撃情報や、抹消という希有な個性が本当にあるのかという勝手な言い合い。調べていくと、中には証拠に動画をアップしろなどの酷いものもあるが、逆に少ないが助けられてお礼を言いたいって人も居る。連絡先も事務所も分からないから、お礼を載せてここを見てくれたら嬉しいという記事だ。
私以外も困ってるので、どうにかしなよと言いたくなる。だが、似た記事で事務所を知る方法が見つかった。
お礼を言いたい人の中に、ヒーロー公安委員会に問い合わせてまで連絡した人が居たのだ。お礼には仕事ですからの淡々とした返答で、すぐに忙しいのでと切られたらしい。愛想がなくて人気が無いのも頷けると続く記事に、確かにと私も頷いた。
この、なんともらしい対応に本人だと分かる。貶めたい人なら書かない記事でもあるし、信憑性は高い。
つまり、ヒーロー公安委員会に電話すれば事務所と連絡先が分かるし、事務所が分かれば本拠地も分かり、主な活動場所が判明する。
だが、もう手遅れ。今更分かってもどうしようもない。
連絡できるなら親族にするし、電話して聞くとしても昔に戻ってからだ。じゃなければ、もしかしたらしょーちゃんかヒーロー公安委員会から警察に伝わり、介入する口実を与えてしまう。なんせ、ヒーローと警察は協力関係。無いと言い切れない。
ふと、あの面倒くさがりなしょーちゃんなら面倒な事にせず、大事にしないでなんとかしてくれるかもと閃いた事もあった。しかし、あれでもヒーローだしと思い直した。疲れていたのだ。
次に、達成の妨げになる人。
これは、兄以外の全員だ。
まず両親だが、実は家族の衝撃の事実に気付いてしまった。兄を除いて、なんと三人ともニートなのだ。
私はニートしたくてしてる訳じゃないし、軟禁なので外せそうではある。だが、色々面倒そうで小学校に行かなくていいならそれでよく、両親の為に現状に甘んじている面もあるのでニートと言えなくもない。
父は、仕事をしているか不明ではある。あるが、使用人に聞いても気まずそうな沈黙しか返ってこない。知らないならそう言うし、言わないのだから知ってる。知ってて沈黙を返答とするんだから、多分無職。ニートだ。
母は専業主婦だが、家政婦が来てから料理以外の家事は任せきりで、今では運ばれる食事も家政婦のものだから料理もしていない。ネットで調べたら、家事や育児をするのが専業主婦。どちらもしていない母もニートである。以前なら家事をする時はスマホを放置していたが、しないなら放置する機会も減るので余計げんなりする。
なんとも言えない気持ちになるが、これが厄介だった。だって用事が無ければ家に居て、生活時間が不規則の可能性が高く、いつどこに居るか分からない。
次に家政婦は、こうなる前から居たし、今も続けてるから味方ではない。見つかれば邪魔してくる事も考えられる。おばちゃんはおばちゃんでも、おばちゃん婦警とは大違いだ。
基本は月金休みで週五回、十時から十五時の五時間勤務だろう。情報を集めてると勘付かれたくないから時間は掛かったが、これは突き止めた。
栄養士資格を持っているので健康も考えられた美味しいご飯だが、出来たてか温め直しかは分かる。特に焼きや揚げといった調理法は顕著だ。
出勤の日は洗濯後の服が届き、昼食は出来たて。休みの日は洗濯物は届かず、一日温め直し。休みの次の日の朝食は使用人が作る。それを前提に、使用人に何気ないフリで確認していった。
休みは決まってるし、労働時間は短い。一階の固定電話を使うならそこを外せばいい。
最後の使用人とボディーガードは、一番情報量も多いが一番の障害でもある。
私の安全確保が仕事で、その為各一人ずつが側に付く必要があり、行動は私に左右される。
私の一日は、起床・朝食・昼食・おやつ・夕食・風呂・就寝の合間に勉強と運動をやる。どちらも微妙な時間はネットかテレビ。それぞれ、勉強は自室、運動はジム部屋、ネットとテレビは待機室で、たまにトイレに行く。
インドアすぎるが運動はしているし、窓からだが日光浴もしているので特に問題は無い。
そう、不満は無い。外どころか三階から出られない事自体は、それほど気にしていない。家族に会えない事と、常に見張られている事が嫌なだけである。
使用人は二人で、私の朝食から就寝までを一回として二交代制。
七時半に出勤し、家政婦が前日作った朝食を温め直して八時を目安に三階へ持って来る。前日家政婦が休みなら、材料はあるのでトーストや目玉焼きなど簡単に作って少し遅れる。
私は自分の事は自分でして八時前には身支度を整い終え、受け取ったらドアを開けたまま食事を見つめて食べる。
ご飯は事前に家政婦に言っておけば用意され、彼女らは勤務日は三食申請していて待機室から私が見える位置で食べる。
一応、これで食事を別々にしているつもりだ。これは一緒だと近くで凝視されるし、私が食べ終わらないと食べないのでウザく、見えればいいんだろぉという妥協の結果だ。
元々、常に見張られるなんて鬱陶しくて堪らない。だから待機室なんて作られてからは、せめてもの反抗として自室に入れなかった。始めは職務遂行の為に抵抗されたが、嫌がり続けたら両親に許可を取った。
普通の幼児と違って危なげな事も危ない事もしないので、そこまで過保護にならなくてもいいと判断したんだろう。なので掃除も自分でしている。
それでも自室以外にはつきまとうが、見張りをしているだけなので見ているだけ。三階の掃除も仕事だが毎日しているから時間は掛からず、見張りと並行して行うので無駄も無いし隙も無い。
風呂は先に使用人が掃除を兼ねて入り、その後に私が入るがここも妥協の結果、裸のまま隅に立って見てくるのを極力気にしないようにする。出たら自分で拭いて服を着て頭を乾かす。
洗面所兼脱衣所前の廊下でボディーガード待っているので、髪を乾かし始める使用人を置いて部屋に戻る。
戻っても一時間は何かして、寝る前のストレッチが終わったらベットに入る。使用人は私がベットに入ったのを確認してから退勤する。
休憩時間は、私が自室に籠もっている時全て。でも基本立って見ているだけだから拘束時間は十二時間超えだが、労働していると言えるのはその半分以下。
幼児が気にするのはおかしいが、労働基準法に違反してたら犯罪なので意を決して聞いたら、特別手当を貰う代わりに休憩時間を詳細に提出しているそうだ。私の行動も筒抜けになるが、両親にしたら一石二鳥。まあ、犯罪じゃないなら構わない。
長時間勤務と二人交代制だからキツいが、楽で休憩時間も多くて三食昼寝風呂付きという好待遇が上回ったのか不満は見られない。
ボディーガードはもっと楽で、私について回るが掃除はしないので見張りのみ。それと、使用人が居ない時の代行と誰か来た時の対応くらい。
私が自室か待機室に居るなら、定位置の入り口に陣取るように置いた椅子に座って休憩時間。最悪ドアの前で寝てても役目は果たせるので、使用人より動かない。だからか、私がジム部屋で運動してると申し出てきて彼らも使ったりする。
こちらは三人で基本は八時間の交代制。早番七時・中番十五時・遅番二十三時と目安は決めているが固定ではなく、番も時間も代わる事がある。自分達で話し合ったようで八時間を超える時もあるが、残業代はきちんと支払われているようで安心だ。
食事は使用人より拘束時間が短いが、勤務日は三食申請してタッパーで持ち帰ったりもしてる。家政婦は申請通りに作っているだけだろうが、本当に父は、それに母も雇用者を管理しているのか不思議である。
出勤前に風呂に入ってくるのか風呂は使わない。幼女は関係なく、使用人が使っているので遠慮しているらしい。
少人数で休みはどうしているかというと、連勤や勤務時間を伸ばして捻出している。
なので連休は、使用人が連勤の時は待機室にあるソファで寝泊まりするくらいだから無理。ボディーガードは三人だからできそうでも、使用人が二人でその穴埋めをしてる分、一気に負担が増えるので取らない。
病気などで急遽欠勤になって代わりが間に合わない時は、使用人の場合はボディーガードが兼任し、逆の場合はいつもは掛けない鍵をして対応する。
この病欠対応なら連休も可能だが、取った事はない。病気をしても一日で治して翌日には出勤する。
確かに肉体的には疲れないし、私に気を遣わなくてもいいから精神的にも疲れない。休憩時間は私次第だが、スマホをいじったり本を読んだり特別手当用なのか何か書いたり、たまに転た寝して自由ではあるが結構キツいはず。
普通ならギスギスしそうなものだが、譲り合ったり気遣ったりしている所をみると、印象とは違って関係は良好なんだろう。
こうやってまとめると、よく回していると本当に感心する。
原因は私だから心苦しくて、見張りが緩んでもそれを利用したくなるくらいには大変そうで。甘いだろうが、毎日接して情が湧いたのかもしれない。コミュ障で私は仲良くなれないが。
利用しないと難易度は上がるが、しないと決めたらしない。チャンスを探すだけだ。
一日を振り返って、使用人はそんなに問題じゃない。連勤じゃなければ私が寝たら帰るし、三階の掃除を手が空いた時にやるので側に居ない時もある。
問題はそれを向こうも分かっていて、ボディーガードが穴を埋めている事だ。
ボディーガードが居なくなるのはトイレに行く時だけ。これは隙と分かっているので使用人含め、羞恥より仕事を優先させる。その姿勢は感心するが、体調だけでなく腹具合も共有するのはどうかと思う。それでどっちかが長く掛かる時は残った方がいつもより警戒し、揃っている時の方がまだ油断している。
唯一、夜だけはボディーガード一人になる。
トイレに行きたいと起きた時に確認したら、鍵を二つして寄り掛かって座っていた。多分、使用人が退勤したら掛けた。寝てても無理。
実際トイレに行く時も南京錠を外してから片手で持ち運ばれ、降ろすのはトイレの中と自室に戻ってから。待機室の鍵は片手でも掛けられるので、戻る途中で掛けていた。用心しすぎてて無理。
ボディーガードがトイレに行く時は、自室と待機室両方に鍵を掛けていた。壊せない事もないが高さがあって、一階に着く前に捕まりそうで無理。
これは全員同じ対応だった。ドアの前に居座られるだけでどうにもできないのが痛い。下剤や睡眠薬などは手に入らないし、実力行使は使用人でも難しい。
やはり、前途多難だ。
理想としては、こっそりスマホを手に入れて、自室でひっそり連絡する。
もしくは、こっそり一階に行ってアドレス帳を見て、ひっそり連絡して、部屋に戻る。
けれど、確実な手段はなく、運任せも多い。
だが、運任せにはしたくない。超幸運体質でこりごりだし、こいつが発揮される条件がいまだよく分からない。トラブルメーカーでもあるし。だから、運任せは無し。
調査にも時間が掛かったのに、結局は手詰まりである。
児童相談所も、もし連絡できたとしても良い結果にはならないので端から選択肢に無い。
実は、家まで様子を見に来た事はあったが、自分の意思で行かないのだと伝えて帰ってもらったのだ。
まあ、普通なら虐待や犯罪かと疑う。本来なら小学校に入学して半年くらい経った頃だったから、色々と調べてから来たのだろう。
事前に連絡を受けた両親から必死に言い聞かせられたが言われるまでもなく、引き離されたくないので両親の望む結果となった。
兄は自由に動けるだろうが会えないので、私の考えを説明する事もできない。先の事を考慮してほしいなんて難しい事、小学生に期待しちゃいけないし。
下手な事をしないよう祈った。いや、祈っちゃダメだ。神はダメ。念を送る事にした。
渡された金稼ぎは突っ返し続けてるが、宝くじの金はまだまだ残ってるはず。
いつになるか考えたくはないが、焦れて両親が直接頼みに来れば優位に話が進められるので、チャンスではある。
……ふふ、でもね。でも、良かった事もあるんだ!
原作キャラに会わない! イェイ!……神様、これでいいんですか! 面白いですか!? 家族と引き離さないでなんとかして下さいよ!!
踏ん切りがつかないまま、神様の助けもなく──四年が過ぎた。
軟禁生活は、今も続いている。なんにも変わってない。
変える努力はしたが、何も変わらなかったのだ。
勉強を進めて一人でも使用人達でもどうにもなくなれば他に先生を呼ぶとか動きがあるかと思ったが、問題集とか参考書とか、とにかく分かるまで違う本が届く。無駄なので進めすぎて、兄を越えた。
英語にしてもペラペラに喋れる先生をと思ったら、使用人の一人が英会話教室に通ってやがった。前世よりできるようになった。
もっと動きたい、具体的にはアスレチック行きたいと言えば、ボルダリングとパルクールができるボディーガードが居やがってジム部屋の改造となった。
風呂とトイレの隣という、使用していたら煩そうな部屋が兄の部屋になったのは天窓があるからだった。最上階にある風呂は曇りガラスの天窓があり、ハンドル式の窓を開ければ昼は日光浴しながら、夜なら夜空を眺めながら入浴ができる。それと同じ物だ。その為、私の部屋と待機室は普通の高さだが、風呂とジム部屋の天井は高くて四メートル近くもある。
それが災いして、高さは十分。防音してあるからとマシンを廊下に置いて、ジム部屋の壁二面はボルダリングの設備を、そこ以外は障害物だらけにして教わる事になった。
ボルダリングは、いつでも受け止められる位置から教えられやった。
パルクールは、床と天井と壁に固定する箇所を作り、移動も可能にして慣れたら移動させるという本格的なものになった。
同じような運動ばかりというのは半分本音だったので、悔しいながらも楽しかった。前世ではやろうとも思わなかったが前より身体能力が高くてできる事が多く、スタントマンのような動きも可能で面白くなってしまったのだ。
ボルダリングが趣味のボディーガード。パルクールができるボディーガード。そして、ボディーガードは三人居る。自分も何かと思ったのか、戦い方を教えてくれた。
基本の受け身に始まり、一般的な人間の関節の可動域によって想定される攻撃方法と、実際された時の躱し方や捌き方。異形系個性はまた違うので、別途動物などの構造を勉強したり、腕が二本などの普通の人間の形から派生した場合の各対処法。対武器としてどういう攻撃をされるか知る為に扱い方から、素手での対応と手放させる為の方法など。
多岐に渡るそれらは、他の二人も含めて色々な武術を囓ったりもしているので雑多ではあったが、専門的に習ったものもあり、知らない事ばかりで興味深かった。
運動不足の解消だったはずが、身体をどう鍛えるかという話にもなった。教えてもらう内に、体幹が重要で、特に下半身が大事、効率的に鍛える為にはと繋がっていったのだ。
まだ成長途中という事を考慮して、成長の阻害や怪我をしないように気を付けて指導を受けていった。マシンや器具も増えて、育成ゲームを楽しんでいるのではと思ったが、私も楽しいのでいいかと流した。
けれど、その波が過ぎて。何をやっているのかと、ふと我に返った辺りで使用人の一人が不思議そうな顔で教えてくれたのは金的だった。ボディーガードは全員男性で、確かにそれは誰からも教わってなかった。理由は顔を見れば分かる。自分で練習されたくないからだ。
それに、とその使用人が教えてくれたのは、女性による、女性の為の、痴漢と暴漢対策特化の護身術だった。これは力の弱い女性が屈強な男相手にと考えられたもので、私にぴったりだった。
女子力(物理)は必要ないが、今の私は自分で言うのもなんだが結構可愛い。母に似ているので将来美人になりそうだし、胸も大きくなるかもしれない。
哀しくも前世は貧相なモブ顔だったから必要なかったが、今は覚えておいて損はない。何かあった時じゃ遅いのだ。
このまま続ける事には決めたが、ムキムキにはなりたくない。なので、オールマイトにはなりたくない、可愛くないと伝えたら苦笑いされた。
それからは使用人も加わり、護身術を教えてくれた。金的は私はどう当てるか、男性はどう逃げるかの攻防となり、結局当てられないまま。いつもは手加減しているが、ここだけは本気で必死だ。
関節の可動域など、前に勉強した知識も役に立った。力が無くても可能な関節技や、身体の構造を利用した取り押さえ方や無力化は意外と楽しく、ボディーガードを組み伏せられるようにはなったが、やはり三階から出るのに使いたくはないので強行突破は策から外した。
そうして、英会話教室に通っていた使用人も含めれば、この時点で全員と良い関係を築け始めた。軟禁から約一年後の事である。
逃がす事も、外部との連絡も協力できないと思いつめた顔で謝られたのは更に三年後だった。
これは親しくなるのに時間が掛かったのではなく、彼女らが罪の意識を持っていて、警察が家に来たからだった。
私が十歳、兄が十五歳の冬に、兄は姿を消した。
奮闘ぶりは面白いよー、諦めたら面白くないから手を出すかもしれないけどね。でも脱線しすぎでしょwwwなんで戦い方をそのまま教わっちゃうのwww向こうより身体能力高い世界だし、動けないよりも面白くなるかもって手を加えたけど、やり過ぎちゃったかなー? まあ、面白いからいいんだけど。さぁて、大好きなお兄ちゃんが居なくなってどうする? 認めたくなくても、そろそろ認めようよ。ね?
今回は恋愛要素についてアンケートです。かなり悩んでも相手が決まらないので(^^;)次回アンケートはキャラで、次話やります。相手は相澤・緑谷・爆豪・轟・心操の予定で、他に希望がありましたら感想などで教えてほしいのですが、中には書けないキャラも居ますので申し訳ないのですが絶対とは言えません。マイクは好きですが、英語が苦手なのですみません……。
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恋愛あり。一人。相手は次回のトップ。
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恋愛あり。複数。トップ以外は当て馬。
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恋愛なし。逆ハー。投票数で出番増やします
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恋愛なし。全員友情。同上。