今日はなにかと悪いことが起こる。寿命だったのか木刀が根本からポキッと折れたり靴の紐が切れたり…まるで不吉なことが起こる前触れのようだ。普段なら部下に仕事の書類を押し付けるのだが俺は今日と言う一日を部屋から出ないと決め扉に鍵をかけ黙々と書類を片付ける事にした。
しかし、そんなギントキを嘲笑うかのように来客が訪れた。そいつは扉のノブを数回ガチャガチャと鳴らし鍵が掛けられてるのを知るや力ずくで扉を開け侵入してきた。
「久しぶりじゃのうギントキ」
「」
現れたのは元上司の大将サカズキであった。ギントキからの返事はない。屍のようだ。
「今から海へ出る。準備せい」
「」
それだけ言ってサカズキは去っていった。暫くしてギントキは蘇った。
いや、意味わかんないんですがあの人本部で箱詰めなんじゃないんですか?えっ?もしかして箱詰め生活終了したんですか?話ではまだまだ先の筈なんですが?あ、もしかして夢か?なんだ夢か?えっ違う?現実?あ、扉が壊れてるこれ現実だわ。だがしかしーーーー。
俺は色々と考えた末、考える事を止めた。
準備を終え向かった先には大将一人、中将三人、少将…複数の海賊絶対殺すマン大集結なとんでもない面子が待ち受けていた。こいつらは島を地図から消し飛ばすつもりなんだろうか…向かう先は新世界。俺の部隊にはまだ荷が重く編成に組み入れるつもりはないむねを伝え然り気無く俺も編成から外れようと試みたが既にサカズキさんの艦隊に組み込まれていた。まあ、これだけの大部隊だしサカズキさんの開幕ぶっぱからの大砲の弾幕で俺の出番なんてまずないだろう。
なんて思っていた時期もありました。現在、俺は単独海賊船に乗り込み味方からの大砲の弾幕と上空からはサカズキさんの直撃したらお陀仏攻撃と言う状況に置かれている。こいつら秘密裏に俺を始末しようとしてるんじゃないかと疑ったがよくよく思い出せばサカズキさんの下に居たときは毎回こんな感じだったわ。俺は目の前にいる海賊を切り伏せ大破寸前の海賊船から離脱した。
それから海賊絶対殺すマン達は幾つかの海賊船を発見してはそのふざけた過剰戦力で海の底へ沈めていった。そして数日後、無事海軍本部へ帰還した俺は心底疲れきって自室へと戻っていたが、そこである人物と鉢合わせをした。
「…」
「…」
そいつは背中にばかでかい剣を背負い、まるで鷹の目のように俺を見据えていた。俺はこいつを知っている。世界三大勢力の一つ王下七武海の一角にして斬撃を飛ばすとかちょっと意味が分からない事を仕出かすシャンクスのストーカーをしているヤバイ奴。鷹の目の男ことジュなんとかミホーク。
「貴様がギントキだな?赤が…隻腕の男から面白い奴が居ると聞いて斬り合いに来た」
シャンクスお前…俺になにか恨みでもあるのか?いや、面白い奴がって言ってるからそうじゃないってのは分かるんだよ?でもね、一つだけ言わせてくれ。シャンクス禿げろ。
「いえ、僕はギントキではないですよ」
「なんだと?」
「僕はギントキの兄でキントキと言います」
俺はこの状況を回避するために咄嗟に閃いた双子の兄です。人違いです作戦で逃げ切ろうと試みた。
「…」
「…」
見てる。めっちゃ見てる。その鋭い鷹の目は俺の作戦など看破しているぞと訴えている錯覚すらある。
「弟のギントキは数日前から仕事で外出中でして…」
「…」
「暫くは帰ってこないと思いますが…」
「…」
「…はい」
「…」
なんか喋れよおおおおお!不安になっちゃうだろおおおおお!!アウトなの?やっぱりアウトなのおおおおお!?
「…」
「…」
長い沈黙が続く。数十秒か数分か…しかし突然終わりを迎えた。
「…そうか」
そう言ってミホークは去っていった。
「…今日はもう寝よう」
俺は重い足取りで自室へ向かった。この時の俺は知るよしもなかった。ミホークがシャンクスから俺へ標的が変わっていたなどと。