そんな偉大なる航路を半周し
とある新世界の海域で海軍と海賊による少し規模の大きい争いが行われていた。海軍の艦隊七隻対海賊の艦隊十隻と数で海賊が優位であり尚且つ、この海賊達は新世界においても特別な存在であった。
四皇と呼ばれる存在がいる。彼等は海賊王に限りなく近い四人であり
鳴り響く大砲の轟音、鉄砲の乾いた音、金属同士がぶつかる鈍い音、雄叫び、怒声、悲鳴が耳に残る。
銃火器から出る火薬の臭い、硝煙の臭い、血の臭い、海軍が、海賊が焼け焦げる臭いが鼻につく。
仲間が、敵が同じ数だけ死んでいく。阿鼻叫喚の地獄がそこにあった。
実力が均衡して数で劣る海軍は圧倒的不利な戦況にあった。しかし、海軍の兵に絶望の色はなかった。その理由は二つあり一つはたまたまこの海域の近くに巡回していた艦隊がいた事、もう1つはその艦隊にはあの中将が率いている部隊だと言う事だ。
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海軍の艦隊が残り二隻になった頃、海軍の増援が三隻到着した。それでも海賊側の方が数は多く被害は増えるが敗けはないと慢心していた。それが勝敗をわけてしまった。
それは一瞬の出来事だった。増援の艦隊から巨大なマグマの拳が海賊船を襲い轟沈、海賊達は青ざめた。増援に来た人物が誰なのか分かってしまった。海賊を捕まえるなどそんな生温い思考なんてない見つければ皆殺しと言う味方の海軍ですら戦慄する男、サカズキ中将が来たと。そして彼が居ると言う事はあの男も居ると言う事。
「ギントキ、行け」
「ハッ!了解です」
サカズキの命令を聞きギントキの姿は消えた。六式体技である剃と月歩の応用技、
「し、白夜叉が来たぞおおおおおお!」
「船へ近付けるな!撃ち落とせええええ!!」
白夜叉…白色の髪に血を浴び、戦場を駆け回るその姿は正しく夜叉である…誰が言ったか分からないがギントキの通り名となっていた。
接近するギントキへ大砲と鉄砲の弾幕。それを嘲笑うかのように交わすギントキ、集中砲火する事で出来た隙に増援の艦隊による大砲の弾幕、それを機に危機的状況から離脱し新たに編成を組む艦隊。それらを見届けたギントキは海賊船に降り立った。
何時の間にか囲まれていた海賊船は海軍の艦隊による大砲の集中砲火、上空からはサカズキ中将による流星の様なマグマの拳による超火力の広範囲攻撃、中からは夜叉の如く暴れまわるギントキの内部破壊、殲滅にさほど時間は掛からなかった。
その後、海賊と遭遇することなく海軍本部へ戻ったサカズキとギントキはセンゴクに呼び出しをくらっていた。身に覚えのない二人は首を捻りつつもセンゴクの元へ足を運んだ。
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コンコンと扉を叩く音が鳴った。部屋の主、センゴクは書類に走らせていたペンを止め声を掛けた。
「誰だ」
「わしとギントキです」
「入れ」
ガチャっと扉が開く。
「失礼します!」
そう言って部屋へ入室した男を見てセンゴクは思う。お前、変わりすぎじゃない?少し罪悪感が沸くんだけどと。サカズキの元へ配属して一ヶ月くらいたったある日、こいつはこんな感じになっていた。サカズキに聞いたら拳で教えているだけと笑みを浮かべ多くを語ることはなかった。
「急に呼び出してすまんな。お前達に昇格の話が上がった。ギントキ准将は少将に、そしてサカズキ中将は大将にだ」
「…昇格早くないですか?」
「異例の早さではあるが新世界でのお前達の戦果を聞くに上層部も妥当と決めていた」
「でしたら、昇格の話ありがたく受け取ります!今後も精進したいと思います!」
「うむ。サカズキお前はどうだ?」
「わしもその話、受けましょう」
「そうか、なら受理しておこう。大将になったら今までよりも多くの機密事項も知らされるから暫くは本部で箱詰めになるからな」
「仕方ないけぇの」
「それから部隊も解散だ。ギントキ准将はこれから部隊を引き連れて行動することになるだろう。編成に時間が掛かるだろうし三週間程有給をとるといい」
「ハッ!了解です」
「話は以上だ」
話も終わり二人は退室した。しかし、この決断は知将仏のセンゴク人生最大の過ちだと気付くのは暫くたってからである。
ギントキが有給を終えた時には元の性格に戻っていた。