推しカプイメソン書き起こし企画   作:こつめ

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紗夜が回り疲れた時はつぐが側にいるの、エモみ深い


ダブルラリアット(アゴアニキ)×さよつぐ

私には音楽しか、ギターしかない。

だからこの音が届く半径85センチの中で、精々振り回してみよう。

 

 

 

「〜〜〜♪♪♪」

「わぁ……」

「〜〜〜♪♪♪。こんなところでしょうか」

「すごい……やっぱり紗夜さんはすごいです……!」

「羽沢さんに褒めていただき光栄です。今まで練習してきた甲斐がありました」

「そんな大袈裟ですよっ」

 

羽沢さんは嘘を言わない。だから羽沢さんに褒められると、素直に嬉しくなる。

 

他人に褒められても裏を疑うようになったのは、いつからだったか。

初めは、ただギターを弾く事が楽しかった。ずっとこのままでいたかった。

ただギターを弾く事を続けていたら、止まり方を忘れていた。

それなのに、そんなにも練習したのに、私を追い越していく存在があって。

いつも比較されているような気がして、褒められてもその存在と比べてしまって、素直に喜べなくなっていた。

どれだけの練習を積んでも付いてくるその存在を私は。

仕方ない、と一言つぶやいて、諦めたフリをしていた。

 

でも今は、少なくとも今この瞬間は。

私と羽沢さんの周りの半径250センチは、この音の届く距離だから、他の何も入ってこないで。

 

 

 

「〜〜〜♪♪♪」

「……いい音ですね……」

「〜〜〜♪♪♪……っと」

「やっぱりいつ聴いても、羽沢さんの演奏は良いですね。羽沢さんの気持ちが伝わってくるようです」

「そんな、褒めすぎですよ。私なんかまだ全然ですから」

「いえ、そんなことありませんよ。技術は後から幾らでも身に付けられますが、気持ちを伝えられるような、自分の音を出すのは別です。それができている羽沢さんが、私は寧ろ羨ましいくらいです」

「……えへへ、紗夜さんにそう言ってもらえるとなんだかすごいことができてるみたいで嬉しいです!」

 

から回る事も、楽しかったのかもしれない。から回る事を続けていれば、報われると信じていられるから。

でも私はどこまでいっても私の音が見つからなくて。

そんな私を置いていく日菜の存在が辛くて、私は日菜を直視出来なかった。

下から眺めるのは首が痛い、と拗ねたフリをしていた。

 

 

 

「それじゃあ次は2人で合わせてみましょうか」

「はい!」

 

2つの音が重なって、広がっていく。重なった2つの音は、半径5200センチが届く距離だ。『今から飛び回りまわすので、離れていてください』なんて言いたい気分だ。

 

今の私は、どうでしょう?昔の自分が見たら褒めてくれるだろうか?

まだ自分の音は見つけられてない、目が回り軸もぶれながらでも回り続ける私の姿はどう映るんだろう?

 

ずっと1人でやってきた、できると思っていた。

けれど、羽沢さんと、私の嫌いな私を認めて肯定してくれる人と出会って。

少しだけ変わった、23.4度傾いて眺めた街並みは、いつの間にか見た事のない色に染まっていた。

 

 

 

「「〜〜〜♪♪♪」」

やっぱり訂正しよう。

2人の音が届く距離は半径6300キロだ。

今なら、できる気がする。

 

 

 

つぐみさん。

私1人では、85センチが音の届く距離だから。

いつの日か回り疲れた時は、側にいてください。

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