あまりにかすあり過ぎて五体投地をすることしか許されなかった
香澄という存在は、全然つかめない。
ポピパの中で何か言い出すのは、決まって香澄だ。でも決まってるのはそれだけで、どんなことを言い出すのかは全く予想できない。だからそう、目が離せないのは心配だから。そうに決まってる。なので間違っても。
全然知らないうちに、ココロ奪われるなんてこと、あるはずないでしょ!
「……ありがとう、有咲。……えへへ、改めて言うと、恥ずかしいね……」
それは無愛想な笑顔だったり、
「今日の演奏よかったよね! 私のギターに香澄のキーボードがジャーン!って重なって、すごい良い音が出せた!」
それは日曜日の日暮れだったり、
「有咲ぁ〜、全然わかんないよ〜。勉強教えてください〜……」
それはテストばっかの期間だったり。
それは君と言う名のメランコリストだ。
時々、いつでも全力な香澄のことが羨ましくなる。私は香澄みたいにはなれない。あんな風に、手当たり次第強気でぶつかっても、なんにも手には残らないって思い込んでる。
『お前が心配だから、あんまり無茶するなよな』なんて、伝えられればいいのに。
ちょっとくらいの勇気にだって、ちっちゃくなって塞ぎ込んでる私だから。
これはきっと、伝えられない。
香澄について、私は全然知らない。
私のこと、どう思ってるの?バンドのメンバーの一人?友達?それとも?
そうやって全然つかめない君のことを、全然知らないうちに、ココロ奪われるなんてこと。
あるはずねーから!
私の気持ちなんか全然気付かないお前のことなんて、全然知らない。知らねーから。
「ねぇねぇ、有咲! いいこと思いついたんだ!」
じゃねぇから。この笑顔の所為で、また眠れないだろ!
「あーもういい加減にしろ香澄! もうちょっと大人しくしてろ!」
また今日も香澄に起こってしまった。自分が嫌になる。
明日もおんなじ私がいるのかな。不愛想で無口なままの、カワいくないヤツ。
あの夢に。
ありきたりな、つまらない夢。ギターをかき鳴らして自分を歌い上げるヤツがいて、自分も同じ景色を見る。
そんな夢に香澄が出てきて、叶えられてしまって、夢じゃなくなった時から、素直じゃないんだよ。
だって。
何を考えてるか全然つかめない香澄のこと、私のことをどう思ってるのか全然知らないうちに、こころ奪おうとしてたのは。
「香澄!……あんまり無茶、するなよ。……私が好きなのは……元気なお前、だから」
私の方、な訳ない、ことはないかもしれない。
「め、珍しいね、有咲がそんなこと言ってくれるなんて……。」
「うるせー。そういう時期なんだよ」
「……あのね、有咲」
「なんだよ?」
「……私も、同じ気持ち、だから」
「……っ」
おぼれたいの、いとしのメランコリー。