幼馴染みだけど疎遠だった北条加蓮と久々に再会したら、アイドルになっていた。 作:高波
北条加蓮は夢を見る。
夕焼けが残る病室。
「なんで信じないんだよ!そんなに怖いのかよ!」
「いつも…信じてるよゆーくんのことは」
そこには今より少しばかり幼い自分と、男の子の姿。
「俺なんか信じなくてもいい!自分を信じろ!」
「でも…」
「大丈夫だ。信じることは怖くない!」
――――――――――――
「おい、起きろ望月」
「んん…」
どうやら寝ていたらしい。
懐かしい夢を見ていた気もするけど。
「起きろと言ってるだろ!」
「……はっ!」
授業後。
「ったく…昼休み後だから眠たいのはわかるが…」
「すんません…」
「いくら勉強ができるとしても寝るのは見過ごせんな」
言い訳もできない。昨日は確か遅くまでラノベ読んでたんだっけ…途中で寝落ちしたけど結局寝たのは夜中の二時だった。
俺は睡眠不足だから、一日八時間は寝ないとまともに日中過ごせやしない。睡眠不足ならさっさと寝ろという文句は受け付けません。
さっき見た夢は何だったのだろう。あれは確か病室…ってことはあの夢か。久しぶりに見た気がする。忘れられないからだろうか。
「ところで望月。頼みことがある」
「はいなんでしょうか」
嫌な予感がする。こういうことの後に頼まれごとなんてろくなもんがない。
「一か月後は文化祭だろ?うちのクラスはどいつもモチベーションが低くてな。案の定実行委員が足りない」
「はあ。」
「ということで望月夕、お前に任せる!頼んだぞ!」
満面の笑みで先生が言う。拒否権はないのですか…?
まあ居眠りをしていたのだから仕方ない。別に実行委員とかは苦手じゃないしな。まあやるだけやろう。
「何をやればいいんです?」
「今日の放課後、最初の会議がある。場所は第二理科室だな。とりあえずそこに出席してくれ」
「わかりました。」
そして放課後。
先生から教えてもらった通り第二理科室へと向かう。
にしても文化祭か…まともに参加するのは久々かもな。
先生も言った通りこのクラスはとにかく学校行事のモチベーションが低い。去年の文化祭もかなり酷かった。(ちなみにこの学校はクラス替えがない)
やるからにはあんまり出来の悪いものにはしたくないし、何とかクラスの士気を上げないといけないな。
理科室のある三階に到着すると、何やら騒がしい。目的の理科室の前に人だかりができているようだ。
鍵が開いていないのか?人だかりはめんどくさいから早く退いてくれよ…
わずかな人の隙間を抜けつつ、入口へ向かう。
人だかりの中心に一人誰かがいる。ってかなんでここだけ距離感が空いてるんだ…
「北条さん!あなたも実行委員なんですか!?」
「そうだけど…ちょっとどいてくれるとありがたいかな…」
「まさか北条さんがいるなんて…俺実行委員立候補してよかったー!」
「サインしてください!サイン!」
「私も私もー!」
生徒の目の先の人物。謎の距離感の先に、俺はかなり懐かしい顔を見つけた。
同じ学校にいるというのに二年とちょっと顔を合わせていないが、それでもすぐわかるぐらいの美人。
そいつは俺を見つけるとちょっと驚いた顔をしたが、すぐに目をそらした。
俺の幼馴染みの、北条加蓮だ。
プロローグ。短めです。ゆっくりやっていこうと思います。