Fate/Grand Order-双子のマスター-   作:通りすがりのぬかりゴハン

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まだプロローグか……すまな……




















などというつもりはない!


プロローグ-ようこそ!人理保障機関カルデアへ!- Ⅱ

 眼鏡の少女と緑の紳士に先導され廊下を走る、すると扉が見えた。あれが管制室の扉だろうか?眼鏡の少女が近づくと扉が開いた。勢いを殺しつつ、部屋の内部へと突入した。

 

 「……、ここが中央管制室です。

  お二人の番号は……一桁台、ということは最前列になりますね。真正面です、なんというか、素晴らしい悪運ですね……。」

 

 息を整えつつ、眼鏡少女がそう告げてくる。……、最前列?遠目からではその表情までは確認できないが、腕を組んで立っている女性が見える。彼女の近くにいかなければならないのか……確かに素晴らしい悪運かもしれない、ぜひ遠慮したいのだが、そうも言っていられない。

 

 「ふぅ、ふぅ……。ほろほろへふへひほ……」

 

 「そんな時間ないから、とにかく一番前の空いてる席に行くよ?」

 

 先ほどまで眠っていた立香は、事の状況を全く理解していないので説明を求めてきたが、あいにくと詳しく説明している時間はない。ただでさえ遅れてしまっているのだ、こちらの事情でこれ以上待たせる訳にはいかない。

 

 「……、時間通りとはいきませんでしたが、

  全員揃ったようですね。」

 

 「特務機関カルデアにようこそ。

  私が、所長のオルガマリー・アニムスフィアです。」

 

 こちらを一瞥した女性は、すぐに全体へと目を向けるとそう告げた。なるほど、この女性が所長さんなのか……綺麗な人だ、気が強そうではあるが……。

 

 「あなたたちは各国から選抜、発見された

  稀有な才能を持つ人間です。」

 

 「才能とは霊子ダイブを可能とする適性の事。

  魔術回路を持ち、マスターになる資格を持つ者。」

 

 先ほどの紳士からも出てきていた言葉だ、霊子ダイブとはあの引っ張られる感じの事だろう、しかし、魔術回路?耳慣れない言葉だ、一体なんだろう?それにマスターになる資格とは……何の事だろう?分からない事だらけだ、もう少し聞いてみよう。

 

 「想像すらできないでしょうが、

  これからはその事実を胸に刻むように。」

 

 「あなたたちは今まで前例のない、魔術と科学を

  融合させた最新の魔術師に生まれ変わるのです。」

 

 

 ダメだった。この所長さんが言っている事を理解する事は出来なかった、仕方ない理解できそうな事だけ拾っていく事にしよう。そういえば、立香はこの話についていけているのだろうか?横にいる兄の顔を盗み見る……。

 

 「っ……!」

 

 危なかった、もう少しで吹き出すところだった……!忘れていたが、今立香の顔は自分の放った数多のビンタによって腫れているのだ。真面目な話をしている時にその顔を見たら不意打ちもいいところである、踏みとどまった自分を全力で褒めてあげたい。

 

 「……?――とはいえ、それはあくまで特別な才能であって、

  あなたたち自身が特別な人間という事ではありません。」

 

 所長さんが一瞬、怪訝そうな視線をこちらに向けたような気がしたが気のせいだろう。

 

 「あなたたちは全員が同じスタート地点に立つ、

  未熟な新人だと理解なさい。」

 

 「特に、協会から派遣されてきた魔術師は学生意識が

  抜けきっていないようですが、すぐに改めるように。」

 

 その言葉に一部の人達が反応し始めたのか、少しざわつき始めた。その様子に少し眉根を寄せた所長さんではあったが鎮めるほどではないと思ったのか、そのまま続けた。

 

 「ここ、カルデアは私の管轄です。

  外界での家柄、功績は重要視しません。」

 

 「まず覚える事は、私の指示は絶対という事。

  私とあなたたちでは立場も視座も違います。」

 

 「意見、反論は認めません。あなたたちは人類史を、

  守る為だけの道具でしかないのだと、自覚するように。」

 

 今度の言葉には、今まで黙っていた人達も黙ってはいられなくなったのだろう先ほどよりもざわつきは大きくなっている。その様を忌々しそうに見つめながら

 

 「……騒がしいですね。

  意見は認めないと言ったばかりですが?」

 

 「はぁ……、そこの貴女。

  いま話した心構えについて、何か不満があるかしら?」

 

 所長さんが問いかけてきて、目が逢った。おぉ……こんな間近で外人さんから真っ直ぐ見つめられたのなんて初めてだ。やっぱり綺麗な人だ、まつ毛も長いし羨ましい限りだ。しばらく黙って見つめていると、怪訝な顔つきになった。

 

 「聞いてるの?

  遅れた上に男と連れ立ってやってきておいていいご身分ね?」

 

 「う、すみません……。」

 

 ほぼ話半分にしか聞いていなかったうえに、遅れた事も、兄とはいえ、男と連れ立ってやってきたのも事実なので素直に謝っておいた。む、よくよく考えれば3分の2くらい悪いのは立香の方ではないか……1週間ぐらい奢ってもらわなければ。

 

 「まぁ、いいわ。連れの貴方は……

  待って、貴方どうしてそんなに顔が腫れてるの……?」

 

 「ほほひひふ、ひっはほへいへふ」

 

 腫れているせいで上手く言葉を伝えられない為、意味不明な言語となった言葉をなんとか解読しようとしているのだろう、所長さんは考え込んでいる。そんなに真剣に考えないでもいいのに、真面目な人だ。ようやく考えをまとめたのか、喋りだそうとした所長さんを遮るように、どこかから声が上がった。

 

 「聞いていた話と全然違うじゃない!私たちは才能を評価されて

  集められたエキスパートじゃないんですか!?」

 

 「どうしてもというからこんな人里離れた山奥にまでやってきたのに、

  絶対服従とかバカなんじゃないの!?」

 

 「そうだ!愚弄するにも程がある!」

 

 「魔術師にとって、血筋とは最も重要なものなんだぞ!

  それをないがしろにするとは、どういうつもりなんだ!」

 

 そんな非難の声が上がると同時に、静まりかけていた管制室内は再び騒然となった。その様子に、所長さんは俯き、拳を強く握りこんでいる。何か声を掛けた方がいいだろうか?

 

 「大丈夫、ですか?」

 

 「っ…………。…………、えぇ。」

 

 ピクリ、と所長さんの体が揺れた。驚いたようにこちらを見てくるが、すぐに目をそらして頷いた。どうやら大丈夫そうだ、良かった。

 

 「静粛に、私語は控えなさい!それだから

  学生気分が抜けていない、なんて言われるのよ!」

 

 「私は現状を打破する最適解を口にしているだけ、

  納得がいかないなら今すぐカルデアを去りなさい!」

 

 そう言い切った所長さんの顔が皮肉めいた笑顔に変わった、何を言い出すつもりだろうか?

 

 「もっとも?あなたたちを送り返す便なんてないけどね。

  なんせここは標高6000メートルの冬山、それを裸で下りる気概があるなら……それはそれで評価しましょう。」

 

 !?ここはそんな高いところにある施設だったのか……、海外にあるとしか聞いていなかったので驚いた。しかし、冬山を裸で下りるのは無理ではないだろうか?もしできる人が居るのなら会ってみたい。その言葉に管制室全体が静かになった。

 

 「結構、脱落者はいないようね。

  ふぅ……、私たち人類が置かれた状況が切迫しているのだと理解してほしいものだわ。」

 

 「……、さて、話の続きをしましょう。いいですか。今日というこの日は、

  人類史が行ってきた『星の開拓』そのすべての偉業を上回る偉業を、我々カルデアがなすと言っても過言ではない日です。」

 

 そろそろ脳の理解容量が圧迫され始めている。もはや所長さんが紡ぐ理解の追いつかない言葉の一つ一つが右から左に受け流されている、もし自分がロボットだったら耳から煙をモクモクさせている事だろう。

 

 「観測の結果、我々人類は―――2016年を持って絶滅する。

  ということが証明されてしまったのよ。」

 

 「ですが、こんな未来を許していいはずがない。

  そもそも、ある日突然、人類史が途絶えるなんて説明がつきません。」

 

 ようやく理解できそうな言葉が……、人類絶滅。規模が大きくなってきている、いやいや……人類絶滅!?もしかしなくても、自分達はとんでもない事に巻き込まれてしまったのではないのか……?そう考えている間にも所長さんの話は進んでいく。

 

 「異変を観測した地点がここ――――空間特異点F。

  西暦2004年、日本のある地方都市です。」

 

 「ここに、今までの歴史では存在しなかった、

  “観測できない領域”を発見したのです。」

 

 「そして我々カルデアは、これを人類絶滅の原因と仮定し、

  霊子転移実験を国連に提案、そして承認されました。」

 

 「霊子転移とは人間を霊子化させて

  過去に送り、事象に介入する……端的に言えば過去への時間旅行でしょう。」

 

 「しかし、それは誰でもできる訳ではなく、優れた魔術回路

  そしてマスター適性のある人間にしかできない旅路です。」

 

 「さて―――ここまで説明すればあなた達の役割が

  この特異点Fの調査であることは理解できるでしょう」

 

 すみません、自分は全く分かりません。あらゆることが理解できていません、あ、いや、このままだと人類が滅ぶという、とてもまずい状況だという事だけは理解出来てます。……そういえば、隣の立香がまったくうんともすんとも言わないのはなぜなのだろう?人類が既に崖っぷちという状況に愕然としている?いや、自分じゃあるまいし……小声で声を掛けてみよう。

 

 「お兄ちゃん、今の話どう思う?……、お兄ちゃん……?」

 

 「…………zzz。」

 

 この状況で寝られるのか、この兄は……いつから寝ていたのだろう?所長さんに声を掛けられたときはまだ起きていたからそれ以降だろうか。思い返してみれば、昔から話が長いと立っていても眠れるような人間だった、それで何度も怒られているという事をまだ理解できていないのか。剛腕、の一言に尽きる。

 

 「――――貴女たち何してるの。

  やるべきことはもう説明しました。それとも、何か質問でも?」

 

 しまった……、立香の様子に気を取られ過ぎていて何をするかまるで聞いていなかった、どうしようか、素直に答えるべきだろうか?誤魔化してしまうべきだろうか……仕方ない、立香にすべての罪を被せてしまおう。

 

 「す、すみません!実は兄が途中で体調不良を訴えてまして、私は早く医務室に行った方がいいと勧めたんですけど、説明会の途中に席を立つのは良くないから我慢すると聞かなくて、今、倒れかけたんです!」

 

 「そ、そうなの……そういえば、貴女のお兄さん?顔が腫れてるわね。

  はぁ……、そんな調子でこれから大丈夫なのかしら。……いいわ。キリエライト!」

 

 所長さんが入口の方に向かって声を掛けた、すると先程の眼鏡少女がこちらに向かってきた。彼女はキリエライトさんと言うのか、そういえば互いに自己紹介すらしていなかった。

 

 「どうされました?所長」

 

 「こっちの顔が腫れてる彼、医務室に彼女と一緒に連れていきなさい。

  こんな状態でここに居られても邪魔なだけだから。」

 

 言葉こそ邪険に扱っているが、一応心配してくれているらしい。眠っているので重量をそのまま感じる立香をキリエライトさんと共に背負う、眠っているのがわかったのだろう、小声で寝てる、と呟いていたが所長さんには聞こえなかったようだ。

 

 「そっちの貴女はお兄さんを預けたら

  ここに戻ってきてコフィンに登録をする事、いいわね?」

 

 「は、はい……!ありがとうございます……!」

 

 そうして、キリエライトさんと共に医務室へと向かう為に歩き出した。




おっと、一部独自解釈があります。重箱の隅をつつくのは正月だけにしてくださいねー?原作沿い?いや、ほぼです。

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