Fate/Grand Order-双子のマスター-   作:通りすがりのぬかりゴハン

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ロマンは添えるだけ。


プロローグ-ようこそ!人理保障機関カルデアへ!- Ⅲ

 医務室は、中央管制室からそう遠くない場所にあった。何かあった時の為に医師がすぐ来れるように、患者がすぐ行けるようにとの配慮であるらしい。のだが……様子がおかしい。

 

 「ドクター?おられないのですか?」

 

 扉を入ってすぐに声を掛けたのだが反応はなく、不審に思ったキリエライトさんが室内の奥の方まで探しに行ってくれている。戻ってきた彼女は首を振っている、どうやら居ないようだ。席を外しているのだろうか?

 

 「どうしましょうか……、流石に許可も無く備品を触るのは……」

 

 「まずは適当に座らせましょう、えっと……氷嚢なんかがあればいいんだけど……」

 

 キリエライトさんが何やら言っている間に立香を椅子に座らせ、氷を入れられそうなものを探した。棚を物色しているとお目当ての氷嚢を見つけた、キリエライトさんが慌てているような気がするが緊急なので諦めてもらう事にする。

 

 「この氷嚢に、小さめの氷を5、6個と水を3分の1ほど入れてきてください。」

 

 「……、は、はい。」

 

 差し出された氷嚢に驚きながらも、頷いて奥に引っ込んでいった。素直で良い子だなぁ……、あんな感じの後輩がいたら学校ももっと楽しかったのかな……?と過ぎ去った青春の日々に思いを馳せているとキリエライトさんが戻ってきた。

 

 「お待たせしました、このような感じで大丈夫でしょうか?」

 

 「はい、ありがとうございます。」

 

 水と氷で重量を増した氷嚢を受け取って立香の腫れた頬に宛がう。すると、小さく呻いて目を覚ました。状況を把握できてない今の内に、厭味の一つでも言っておこう、この程度ではバチも当たらないだろう。

 

 「おはよう、お兄ちゃん。人に迷惑を掛けて貪る惰眠は

  さぞ気持ち良かったんだろうけど、良かったら感想聞かせて?」

 

 

 少し溜まっていた鬱憤やらを吐き出してすっきりした所で、立香の視線が自分の近くに立っているキリエライトさんに向かっている事に気が付いた。

 

 「彼女はキリエライトさん。私と一緒にお兄ちゃんを

  ここに運んできてくれた親切な人だから、お礼言っておきなよ?」

 

 「そうだったのか、えっと、ありがとう!キリエライトさん!」

 

 立香が椅子から立ち上がって頭を下げる。そんな立香の様子に、キリエライトさんはどう対応したものかと慌てふためいている、人から感謝され慣れていないのだろうか?

 

 「い、いえ……、その、私は大した事はしていません、

  貴方の妹さんが殆どやっておられたので」

 

 「だとしてもだよ、他人を助けるってなかなか出来ないからさ。

  あ、そうだ!まだ名乗ってなかったよな、俺は藤丸立香。よろしく!」

 

 そう言って、笑顔で手を差し出した。その手を少し驚いた様子でしばらく見つめていたキリエライトさんだったが、何かに納得したのか、その握手に応じたのだった。

 

 「よろしくお願いします、先輩。

  改めまして、私はマシュ・キリエライトと申します。……、妹さんの方もお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

 「大丈夫ですよ、色々あったのでなかなか名乗れませんでしたが。

  私は、藤丸立花です。よろしくお願いしますね。」

 

 

 その後、他愛ない話をして親睦を深めていたのだが、立香の事を先輩と呼んだ理由を聞くと笑顔で今まで出会った人の中で一番人間らしく、全く脅威を感じない人であり、敵対する理由が微塵もないから。との事らしい。自分の事も近い感覚ではあるが、先輩とは少し違う気がすると言われた。なぜか少し、悔しい。

 

 「そろそろ、ファーストミッションの準備に行かないと……

  すみません、先輩方、最後までお付き合いできず。」

 

 「いや、こっちこそファーストミッション頑張って、マシュちゃん!」

 

 申し訳なさそうにしているキリエライトさんを見送っていると、部屋から出る直前こちらっを振り返った。

 

 「また、いつか、お二人とお話ししたいです。」

 

 「もちろん、な?立花。」

 

 「同じ施設内なんですから、暇な時にでもお話ししましょう。」

 

 自分達の言葉に頷いたキリエライトさんは、そのままファーストミッションが行われる管制室へと向かていった。

 

 

 この時の自分には知る由もない事だが、もし彼女を引き留めていたらこの先、違う展開が待っていたかもしれない……だが、自分達は人類が絶滅するという受け入れがたい未来だけを知らされた、どうしようもなく無力な、ただの一般人だ。だから、ただ待つしかない、その時を――――

 

 

 キリエライトさんが医務室から出て数分経った頃、手持ち無沙汰になっていた自分達は取り留めのない会話で暇を潰していると、急に部屋の明かりが消えた。何事だろうかと見えないなりに気を張っていると、手を掴まれた。

 

 「大丈夫か立花、俺はここにいるぞ。」

 

 「大丈夫――――」

 

 答えようとすると、何かが破裂するような音が響き、次いでけたたましく警報が鳴り始めた。そして、何が起きたのかを知る事になる。

 

 「緊急事態発生。緊急事態発生。

  中央発電所、及び中央管制室で火災が発生しました。」

 

 「中央区角野隔壁は90秒後に閉鎖されます。

  職員は速やかに第二ゲートから避難してください。」

 

 緊急のアナウンスが流れ続けている。火災という事は先程の破裂音は爆発か何かなのだろう、こうしてはいられない早く避難した方がいい。第二ゲートに向かわなければ……!予備電源に切り替わったのか部屋の明かりがついた、これで暗い中進むことはなくなりそうだが……立香は動かない。

 

 「どうしたのお兄ちゃん?早く逃げないと!」

 

 「なぁ、中央管制室ってさっきマシュちゃんが行った場所だよな……?」

 

 俯く立香は決意を固めたように顔を上げた、あぁ、この顔は知っている……。次にどういう言葉が飛び出てくるかも、日ごろ能天気でいるくせに、こういう時には行動が迅速で無鉄砲になる自分の兄の悪い癖。

 

 「俺、マシュちゃんを助けに行く!」

 

 「言うと思ったけど、ダメだって。

  それに、もしかしたら逃げてるかもしれないし」

 

 もちろん逃げている保障などない、どころかこうなることを事前に察知でもしていないと逃げられないだろう……そんな事が出来るような女の子には見えなかった。たとえ、ここにたくさんの凄い道具があって、彼女達が特別な力を持っていたとしても、未来を守ろうと尽力する彼女達に現在を見るだけの余裕があっただろうか……?

 

 「かもしれない、けど心配だ。

  だから――――」

 

 「お兄ちゃんを一人で置いて先に逃げるなんて

  そんなこと、するわけないでしょ……?それに、約束もしたし」

 

 いつも立香の尻拭いをするのは自分なのだ、もはや幼い頃からの習慣になっている。だからこそ、自分にできる最大限のバックアップをする為に、色々と必要そうなスキルを磨いてきた。保健委員、陸上部、護身用に柔術だ。

 

 「……、危なくなったら一人でも逃げろよ。」

 

 「もちろん、本当に危なくなったら置いて逃げるよ。」

 

 

 

 二人で中央管制室の前まで来ると、後ろから声を掛けられた。ここの職員さんだろうか、白衣を纏ったどこかふんわりとした雰囲気を醸し出す青年だ。

 

 「君たち何やってるんだい!?避難場所は第二ゲートだぞ!?」

 

 「分かってます、でも俺達も何か手伝えないかと思って」

 

 立香の必死さにたじろいだ青年は、自分と立香の顔を交互に見比べ諦めたように項垂れた。

 

 「わかった、でも決して無理はしないでくれよ。」

 

 その言葉に立香と共に頷いて、白衣の青年と共に扉をくぐった。

 中は、酷い有様だ……室内は所々が炎に撒かれており、散乱した瓦礫が行く手を阻むようにばら撒かれている。これでは、生きていない人間を探す方が簡単かもしれない、と思うほどには絶望的な状況だった。

 

 「動力部の停止を確認。

  発電量が不足しています。」

 

 「予備電源への切り替えに異常 が あります。

  職員は 手動で 切り替えてください。」

 

 「隔壁閉鎖まで あと 40秒

  中央区画に残っている職員は速やかに――――」

 

 アナウンスを聞いた白衣の青年は電源復旧の為に地下へ行くから君達はすぐにここから離れるんだ。と言い残して走っていった。そうしたいのはやまやまだが、すぐに立香はキリエライトさんを探しに行こうとする。

 

 「このハンカチ使って!後、姿勢は低く!」

 

 ハンカチを受け取った立香は瓦礫を避けつつ大きな声で呼びかけている。正直なところで言えば、もはや生きていないと思う……、だが、生きていてほしいとも思う……。そして、そんな極僅かな可能性に賭け揺るがない兄、立香が羨ましくもある。

 

 「システム レイシフト最終段階に移行します。

  座標 西暦2004 1月 30日 日本 冬木」

 

 「ラプラスによる転移保護 成立。

  特異点への因子追加枠 確保。」

 

 アナウンスは続いていく、動き出した歯車を止める事はもはや誰にもできないのだと嘲笑うかのように、遠くで立香の声が聞こえる、キリエライトさんを見つけたようだ。だが、それと同時に目の前にあった地球儀の模型のようなものが真っ赤に染まった。

 

 「観測スタッフに警告。カルデアスの状態の変化に伴い

  シバによる近未来観測データを書き換えます。」

 

 「近未来百年までの地球において

  人類の痕跡は 発見 できません。」

 

 「人類の生存は 確認 できません。

  人類の未来は 保証 できません。」

 

 それは、絶望的なアナウンスだった……人類の未来を救う筈の人達は今やほとんどが死に絶えた、だからだろうか?人類の全ては今この瞬間に終わりを迎えた。もはや誰にも人類は救えないと宣告されたようなものだ。

 

 「中央隔壁 封鎖します。

  館内洗浄開始まで あと 180秒です」

 

 そして、外に逃げる為の道も遮られた。しかし、人類が終わってしまった今、逃げたところでどうせ死だ。なら、ここで死んでしまった方がいい……そう思って静かに目を閉じた。

 

 「レイシフト 定員に 達していません。

  該当マスターを検索中・・・・・・発見しました。」

 

 「適応番号47 藤丸立香 及び 適応番号48 藤丸立花 を

  マスターとして 再設定 します。」

 

 「アンサモンプログラム スタート。

  霊子変換を開始 します。」

 

 

 終わりを迎えた筈の人類。

 

 救われぬ筈の未来。

 

 

 「全行程 完了。

  ファーストオーダー 実証を 開始 します。」

 

 

 だがしかし――――

 

 ここに、か細くも小さな命と想いがあるのなら。

 

 絶望を知り、それでもなお前へと進む覚悟があるのなら。

 

 足掻き、もがき、苦しみながら抗うがいい。

 

 ―――――人類最後のマスター共よ!




ほぼ原作沿い。……原作沿い?僕の出番あれだけ……?

     -どこかのゆるふわドクター-


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