八幡と雪乃の恋物語   作:れーるがん

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八幡、やらかす。


ぷれぜんと ふぉー ゆー

「お父さん、それ本当に渡すの?」

 

  俺の手の中にある物体を見て、娘が心配そうに問いかけてきた。もちろん答えはイエスだ。ここまで来たら引き返せない。例え発想の大元がただの思いつきのイタズラ程度だとしても、これは既に完成してしまったのだから。

 

「当たり前だ。そもそも、こんなどう見ても怪しい箱、お母さんが疑わないと思うか?」

「お父さんからのプレゼントなら疑わないと思うけど......」

 

  俺が今持っているのは、びっくり箱と呼ばれるやつだ。アニメに出て来そうなプレゼントボックス。もうこの見た目の時点で現実にはあり得ないので、怪しさ満点。そして箱を開けば飛び出る犬の人形。人形と言っても、かなり小さいやつだから、中の仕掛けは問題なく作動する。動作テストでも問題なかった。

 

「つーか、これ作ったのお前だろ」

「大好きなお父さんに作ってくれって言われたから作ったんだよ。今の私的にポイント高い」

 

  そのポイント制度やめなさい。あざといから。まあ可愛いので許しますけどね!

  さて、今日は土曜日だ。完全週休二日制の会社に運良く就職できた俺は今日という休日を使って策を練り、娘にびっくり箱の作成を依頼したわけだが。妻である雪ノ下雪乃、現比企谷雪乃は悲しいことに休日出勤。

  ここ最近の彼女は休日でも関係なく仕事に行くため、中々家族としての、延いては夫婦としての時間が取れていないでいる。正直、今回の作戦はその不満を表していると言っても過言ではないのだが。

  なんだかんだで、娘もノリノリで作ってたし。

 

「お父さんも、お母さんともっとイチャイチャしたいんだったら本人に直接言えばいいのに。多分、お父さんに言われたら普通にお休みもらうと思うよ?」

「馬鹿お前、別にそんなんじゃないから。俺はただ、もうちょい三人で過ごす時間があってもいいんじゃないかなーとか思ってるだけだから」

「私のことも考えてくれてるのは嬉しいけど、お母さんのこともちゃんと考えてあげてね」

 

  はあ、とため息を吐く娘。中学生になったばかりなのに、随分と大人びている。最近はどんどん母親に似て来て、マジで俺の娘世界一可愛いんじゃないかって思い始めた。嘘、生まれた時から世界一可愛いって思ってる。

  俺の娘マジ天使とか思ってると、玄関の扉が開く音が。どうやら、ターゲットが帰還したらしい。

 

「よし、行くぞ」

「どうなっても知らないからね」

 

  リビングから玄関へ移動すると、そこにはパンツスーツ姿の妻が靴を脱いでいた。どこかくたびれたようにも見えてしまい、これから行うことに罪悪感が募る。しかしそれをどうにか抑えつけ、声を掛けた。

 

「おかえり、雪乃」

「お母さん、おかえりなさい」

「ただいま」

 

  顔を上げて俺たちを視認すると、雪乃は微笑みを漏らしてくれる。やばい、抑えたはずの罪悪感がまた込み上げて来た。どうしよう。

  ことここに至って、俺は尻込みしてしまっているらしい。いくら彼女との時間が取れないと言っても、仕事から帰って来て疲れている雪乃に対してこんな事をしてしまってもいいのだろうか。

 

「あら、それは?」

 

  なんて心の中でヘタれていると、ついに雪乃の方から箱に触れて来た。まあ、こんなもん持ってたらそりゃ気になるわな。怪しさ全開だし。

  しかし向こうから話を振られれば、これを渡さないわけにもいかない。

 

「あー、その、俺と娘からの、日頃の感謝の気持ちと言うか。まあ、なんだ。受け取ってくれ」

 

  隣から巻き込まないでくれと言いたそうな視線を頂戴してしまったが、これを作ったのは紛れもなく娘なので、その時点で共犯だ。

  差し出したびっくり箱を、雪乃はおずおずと受け取る。どんな反応をされるのか怖くて視線は明後日の方に向いてしまっていたのだが。

 

「......嬉しい」

「え」

 

  聞こえて来た言葉は、俺の予想を裏切るものだった。

 

「ありがとう八幡。とても嬉しいわ」

 

  視線を前に戻すと、そこには綺麗な笑顔を浮かべた雪乃がいて。本当に、心の底から喜んでくれているんだと、わざわざその言葉を聞かなくても理解出来てしまった。

  いや、いやいやいや。待って待って。待ってください雪乃さん。マジで? その箱めっちゃ怪しいよ? マジで言ってる?

  隣からはほら見たことかと言いたげな視線が。やめて、ジト目を向けないで。でもそんな目でも可愛いから俺の娘マジ天使。

 

「開けてもいいかしら?」

「えっ、いや、もうちょい後でもいいんじゃないかな。うん」

「今開けてもいいよ、お母さん」

 

  ちょっとー!誰だよ娘が天使とか言ったやつ! こいつめっちゃ笑顔でなんてこと言いやがるんだよ! 悪魔じゃねぇか! 叔母の悪いところを着々と継承しやがって......。

  そして箱に手を掛ける雪乃。戦々恐々とその様子を見守る俺。悪魔のような笑顔を浮かべる娘。

  やがて開かれた箱は勿論その機能を十全に発揮して。

 

「きゃっ!」

 

  ビヨーン! と。

  バネの反動で中から現れる、小馬鹿にしたような顔の犬の人形。雪乃の口からは可愛らしい悲鳴が漏れたが、残念なことに俺はそれを可愛がる余裕なんてなく。背中から嫌な汗が噴出している。

  やばい。絶対怒らせた。

  最早苦笑いすらも浮かんでこない。ここは素直に怒られようと思ったのだが、雪乃の表情を見て、絶句した。

 

「ゆ、雪乃?」

「お母さん......?」

 

  彼女は、その綺麗な瞳から、静かに涙を流していた。怒るでもなく、かと言って泣き喚くでもなく。ただただ静かに、頬を濡らしている。

  俺も娘もその姿に驚いてしまって、掛ける言葉が見つからない。やがて雪乃は、その役割を全うしたびっくり箱を床に置くと、涙を拭うこともせずに俺たちの横を素通りした。

 

「......お風呂に入ってくるわ」

 

  それだけ言って、部屋へと消えて行く。その後ろ姿は、帰ってきた時よりもくたびれて見えて、ともすればとても悲しそうにも見えてしまって。

 

「どうするの、お父さん?」

 

  翌日の日曜日。雪乃は俺に一言も口をきいてくれなかった。

 

 

 

 

************

 

 

 

 

  俺が朝目を覚ます時は、大抵娘に叩き起こされている。小さい時から中学生になった今の今まで、それは娘にとって日課と言えるものだろう。布団を思いっきり捲られる冬や、俺に思いっきりのし掛かってくる夏。起こし方は多種多様で、苦しみと同時に夢の世界から覚醒するのだが、なんだかんだで娘に起こされることに幸せを感じているあたり、俺も親バカと言われる類の人間なのかもしれない。

  なぜこのような話を唐突にし始めたのかと言うと、なにも特別な事情があるわけではない。いや、俺にとってこれはある意味特別なことで。日々の習慣と化したものが突然変化していたら、俺だって困惑するわけで。

 

「おはよう、比企谷くん」

 

  目を覚ましたとき、そこに娘の姿はなく。その代わり俺の視界に飛び込んできたのは、昨日一言も口をきいてくれなかった、愛する妻の姿だった。

  どうして彼女が起こしにきたのか。一昨日のことは怒っていないのか。そもそもなんで苗字呼びなのか。様々な疑問が頭に浮かんで来るが、それを口にするよりも前に。

 

「んっ......」

「......っ⁉︎」

 

  さらりと唇を奪われた。

 

「おはようのキスよ。目が覚めたかしら?」

「えっ、あっ、お、おう......」

「朝ごはん出来てるから、リビングに行きましょう?」

 

  なにこれ。なにこれ〜? 雪乃さんどないしてしまったん? 一昨日の一件でついにおかしくなっちゃったとか? いやいや、怒る要素はあってもおかしくなる要素はないでしょ。

  なにが一番堪えるって、まるであの頃に戻ったかのような苗字呼びが一番堪える。夫婦になることはおろか、触れることすら叶わないと思っていた、あの高校時代に。

  自分の顔が熱くなっているのを自覚しながらも、ベッドから降りて雪乃の後ろに続いて歩き出す。

  リビングに入ると、そこには既に制服へと着替えた娘の姿が。なんか携帯を見てニヤニヤしてる。

 

「あ、おはようお父さん」

「おはようさん。行儀悪いから飯食ってから携帯見ろよ」

「はーい」

 

  傍に携帯を置いて、娘は食事の手を早める。なに、そんなに携帯見ていたいの? つーかなに見てんの? まさか男からのメールとかじゃないだろうな......。

 

「ねえお父さん」

「ん?」

「お母さん、どうしたの?」

 

  ヒソヒソと内緒話でもするかのような声のトーンで、娘は台所の雪乃を見ながら聞いてきた。雪乃は鼻歌でも歌いそうな程に機嫌よく味噌汁をよそってくれている。

  昨日一昨日の彼女からは想像出来ない姿だ。

 

「俺にもわからん......」

「だよねぇ......。兎に角、お父さんは早くお母さんに謝ってね」

「分かってるよ」

「なら良し」

 

  その後運ばれて来た朝食は、いつもと遜色ない美味しさだった。ただ、雪乃が俺の食べてるところをずっと見ていたから、非常に食いづらかったのだが。

  因みに娘は飯を食い終わるとリビングのソファで携帯を見ながらずっとニヤニヤしてました。あのニヤケヅラは比企谷家の遺伝なんだろうなぁ......。

 

  朝食を食い終わりスーツに着替えて、会社に行く準備を終える。いつも同じくらいのタイミングで家を出る雪乃は、しかし部屋着から着替えていなかった。

 

「今日はお休みをもらったの。最近、休日出勤が多かったから」

「なるほど」

 

  玄関先に見送りに来てくれた雪乃にそう教えてもらい納得する。そこで納得してしまったのが、俺の失態だったのだが、この時に気がつくはずもない。

 

「比企谷くん。ネクタイ、歪んでるわよ」

「お、おう......」

 

  グッとこちらへの距離を一息に詰めて来て、雪乃は胸元のネクタイへと手を伸ばして来る。明らかに今までと違う距離感に、俺は戸惑うことしか出来ない。

 

「な、なぁ雪乃、今日はどうしたん──」

「んっ」

 

  またしても、あっさりとキスされてしまった。

 

「行ってらっしゃい、比企谷くん」

「......行ってきます」

 

  笑顔でそんなことを言われてしまえば、もう家を出るしか選択肢はなかった。唇に残った柔らかい感触と微かな熱に胸の中を翻弄されながら、俺は会社に向かう。

 

 

 

  一度仕事を始めれば今朝のことは考えずに済むと思っていた。しかし現実はそんなに優しいものじゃなくて。朝起きた時と、家を出る時。その二度の口づけがどうしても頭から離れなくて、とてもじゃないが仕事に集中なんて出来るわけがなかった。

  俺ももういい歳だ。かつての恩師の当時の年齢を越してしまっているくらいには。いや、あの人が何歳だったかは結局分からずじまいだったけど。アラサーと呼ばれる年齢になってから、随分と時が過ぎた。

  だと言うのに、今日はまるで、青臭かったあの頃に戻ってしまったようで。彼女の呼び方とか、俺の心境とか。

  子供が生まれている以上、勿論夫婦としての営みはしっかり経験してきているし、それこそキスなんて数えるのがバカバカしくなるほどしてきた。

  だと言うのに、今日のたった二回のキスだけで、俺の心はめちゃくちゃに掻き乱されている。

 

「比企谷さん、今日はあんまり仕事進んでませんね」

「あぁ、ちょっとな......」

 

  後輩からそんな風に言われてしまい、今日こなしたタスクを振り返ってみるが、ノルマには程遠い。今日も残業かなぁ。

 

「もしかして夫婦喧嘩でもしましたか?」

「夫婦喧嘩なら、まだマシだったんだがな......」

 

  喧嘩なんてものよりもよほどタチが悪い。

  俺の言葉に後輩くんは首を傾げ、自分の仕事に戻って行く。

  集中出来ないながらも暫く仕事を進めていると、昼休みの時間になった。社員達が食堂に向かったり弁当を広げたりする中、俺もそれに倣って愛妻弁当を取り出す。

  取り敢えず飯を食って、昼からは仕事に集中しよう。腹を減ってはなんとやらと言うし、きっと弁当を食えばいつも通り仕事ができるだろう。

  そう思い自分のデスクに広げた二段弁当の上の段。

  その中身を見て、驚愕してしまった。

 

「なっ......!」

 

  驚きから動きが膠着してしまったのは何秒くらいだろう。もしかしたら、1分くらい俺は動けずにいたかもしれない。

  桜でんぶでハートマーク。

  つまりはそう言うことだった。朝の奇行から何かあるかなーとは薄ぼんやりと考えていたが、まさかこんなテンプレを、それでいて盛大な爆弾を投下して来るとは。

  俺の弁当を見た同僚達がニヤニヤと笑顔を浮かべながら通り過ぎて行く。中にはラブラブだなーとか、羨ましいぜ、とか声をかけるやつまで。

 

「あいつマジか......」

 

  まさか社内でこんな羞恥プレイをさせられるとは思いもよらなかった。脳裏にほくそ笑む雪乃の姿がよぎりながらも下の段を開けてみれば。

 

「マジか......」

 

  トマトしか入っていなかった。

 

 

 

 

  なんかもう色々と疲れた仕事を終え、なんとか帰宅したのは19時を過ぎたころ。定時退社はやはりいい文明。ノルマギリギリでめっちゃ疲れたけど。

  辿り着いた自宅の扉を開く。今日の雪乃から察するに、玄関に入ったらなにか仕掛けて来るだろうことは容易に予想できた。筈だった。だが悲しいことに、定時退社のために全力を尽くした俺はそこまで頭が回らず、哀れにもゴキブリホイホイに引っかかるゴキブリのごとく、家に入ったのである。

 

「お帰りなさい、比企谷くん」

「ただいま......っておい」

 

  玄関に入ると同時、雪乃に抱きつかれた。ぎゅーって。結構痛い。なんかギチギチ鳴ってる気がするんですけど?

  漸く解放してくれたと思いきや、やっぱりと言うかなんと言うか。そのまま背伸びしてきて、小さく唇を触れ合わせてくる。

  離れて行った雪乃は満面の笑みを浮かべていて、頬に集まる熱は余計に温度を上げてしまう。

 

「直ぐに夕飯の準備するわね」

「あぁ......」

 

  今日の弁当のことで一言物申そうかと思っていたのに、雪乃の笑顔を見てしまってそんな考えは霧散した。ちくしょう可愛いじゃねぇか。

  リビングへ向かうのに足を進ませようとすると、カバンを持っている手と反対の手が、あたたかい感触に包まれる。見れば雪乃の手に握られていて、そのまま引きずられるようにしてリビングへ。

 

「おかえりお父さん」

「ただいま......」

 

  リビングには、ソファにだらしなく寝そべった娘が。また携帯の画面を見てニヤケヅラを晒している。そのうちグヘヘ、とか漏らしそうで怖い。

  その後暫くもしないうちに晩飯の時間となり、家族三人机に揃っていただきます。最近は雪乃も忙しかったから、手の込んだ料理は作っていなかったのだが。今日は休みを取ったお陰か、いつも食べているものよりも美味しく感じた。

  そんな一家団欒の暖かい時間の最中。

 

「比企谷くん、頬にお弁当がついてるわよ」

「お、おう......」

 

  比企谷くん呼びに狼狽えながらも、指を頬に持って行く。しかし何かが取れた様子はない。見兼ねた雪乃が近づいて来て、俺の顔に指を伸ばして来た。

 

「はい、取れた」

「......サンキュ」

 

  白く細い指でつまんだ白飯を、あろうことか雪乃は自分の口へと運んで行く。

  おいそこ、娘よ、うわぁとか言うな。俺が言いたいくらいなんだぞ。

  しかし昼食がトマト地獄だったせいなのか、やっぱりどの料理も馬鹿みたいに美味くて。

  そのうち俺は、考えるのをやめて食事に集中することにした。

 

 

  風呂にも入り、夜も更けて来た頃。俺は思い切って、今日の奇行について聞いてみることにした。

  部屋で一人待っていると、風呂から上がったばかりの雪乃がやって来る。火照った体は肌を常よりも健康的に見せ、濡れた黒髪は照明を反射し美しく輝いている。

  そんな妻の姿は何度も見て来たと言うのに、何故か動悸が止まらない。

 

「どうしたの?」

「いや、なんでもない......」

 

  赤くなった顔を悟られないよう、そっぽを向いてしまう。しかしそんなもの彼女にはお見通しなのか、クスリと笑って俺の隣に腰掛ける。そのまま腕を絡ませて来ることにすら、俺の胸は高鳴ってしまう。

 

「なあ雪乃、今日はどうしたんだ?」

「あら、あなたの望みを叶えて上げただけよ?」

 

  尋ねて返ってきた言葉は、どうにも納得しにくいものだった。

  はて、俺は雪乃に翻弄されるような一日を望んだだろうか。

 

「あの子をパンさんと猫の秘蔵フォルダで買収して、全部聞いたわ」

「おい。娘を買収するな」

 

  つーか今日携帯見てニヤニヤしてたのはそれを見てたからなのね。

 

「あなた、私とイチャイチャしたいんでしょう?」

「語弊がありまくりなんだよなぁ......」

 

  確かにそう思っていたけれど。休日はもうちょっと二人でゆっくり過ごせたらなぁ、程度だったし。なんならトマト地獄とか抱きついてきた時の過剰な力の入れ具合とか、イチャイチャとは程遠いものもありましたけどね?

 

「一昨日の仕返しをするなら、あなたにはこの方が効果的だと思ったのよ。結果は、まあ聞くまでもないわね」

「......」

 

  ふふっ、と微笑みを漏らし、雪乃は俺の腕から離れて机の引き出しから何かを取り出した。

  それは小さな箱。手のひらよりも大きいそれは、綺麗な模様があしらわれている。

 

「これ、あげるわ」

「これは......?」

「日頃の感謝の気持ちと、最近忙しくて構って上げられなかったことの謝罪の気持ちよ。受け取ってくれるかしら?」

「......当たり前だろ」

 

  彼女からの贈り物を受け取らない理由なんて、俺にはない。それに、それが雪乃の気持ちだと言うのなら尚更だ。

  チラリと視線をやると、頷きを返される。それを開いてもいいと言う合図だと受け取り、俺は心持ちワクワクしながら、箱を開いた。

  それと同時、バコッ! と音が鳴る。

  箱を開けた瞬間に飛び出してきたパンさん人形の足が、俺の顔にめり込んだ音だった。

 

「ふっ、ふふふっ、ど、どうかしらっ、私からのプレゼントは......」

 

  肩を震わせて必死に笑いを堪えるも、口の端からは堪えきれなかった息を漏らす雪乃。

  翌日、俺はショックで仕事を休んだ。

 

 

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