ずっと何かに耐えていたが、とうとう我慢できずに切れてしまったというような魔王の幹部の一人、デュラハンの怒り狂った叫びに、俺の周りの冒険者達はざわついた。
というか、この場の誰もが、何が起こっているか状況が掴めていないようだった。
「…爆裂魔法?」
「爆裂魔法と言ったら…」
俺の隣に立つめぐみんへ、自然と周りの視線が集まった。
隣をチラッと見ると、当の本人はもちろんカズマまでもが冷や汗を垂らしている。
「お前ら…」
「イヤ、アノデスネ。この馬鹿が「あの建物ぶっ放して良いですか!?」って目輝かせながら聞いてきて、その時はそこに幹部が住み着いてるなんて知らなかったから毎日何度も何度も…」
どんどんカズマの声が小さくなる。その上、震えも大きくなってきている。
やがてめぐみんがため息を吐き、前へ出た。
それに伴って、冒険者達がデュラハンへの道を空けてくれる。
「お前が…!お前が、毎日毎日俺の城に爆裂魔法ぶち込んで行く大馬鹿者か!俺が魔王軍幹部だと知っていて喧嘩を売っているなら、堂々と城に攻めてくるがいい!その気が無いのなら、街で震えているがいい!何故こんな陰湿な嫌がらせをする!?どうせ雑魚しかいない街だと放置しておれば、調子に乗って毎日毎日…」
もうこいつの話は聞いていられない…俺はデュラハンの目の前まで飛び出し、クナイの矛先を相手に向ける。
「な、何だ貴様は…!」
「魔王軍の幹部とやらの怒鳴り声が耳障りだったからな。少し黙らせてやった」
そう言うと、デュラハンの肩が更にプルプルと震える。
表情はみえないが、どうやら余計に怒らせてしまったようだ
「…おい貴様。俺がその気になれば、この街の冒険者、いや住人までもを皆殺しにする事だって出来るのだ。この程度で見逃して貰えると思うなよ?疲れを知らぬこの俺の不死の体。お前らでは傷もつけられぬわ!」
限界がきたのか、デュラハンは不穏な空気を滲ませる。
「まずはそこの赤髪、貴様からだ!この俺はベルディア。魔王軍幹部が一人、デュラハンのベルディアだ!」
「長門だ。さて、魔王軍幹部の力、見させてもらうぞ…!」
そう言って俺はクナイを、ベルディアは大剣を構えて立ち向かう。
ーーーーー
カズマside
俺達は2人の戦いに唖然としていた。
武器の擦れる音が先程から鳴り響きっぱなしである。逆に止んだとしても脳内再生してしまいそうだ。
ベルディアは頭を空へ投げると、長門の体術や忍術を全て見切り、多少ダメージを負っても致命傷まではいかなかった。
一方、長門も多少のかすり傷は負っているものの、じわじわとダメージを負わせている。
「…何で」
「えっ…?」
先程まで黙り込んでいためぐみんが口を開いた。
「何でナガトは私を庇ってまで…。いくらナガトでも相手は魔王幹部、今までのモンスターとは桁違いだと分かっている筈です。それなのに…」
何も出来ない自分を情けないと思ったのだろう。俺はめぐみんの頭にそっと手を置いた。
「ったく、長門がやられる姿なんて普通イメージ浮かぶか?」
「……いや、むしろ浮かびたくないです」
「だろ?だから自信持て…って」
ふと振り返ってみると、肩から血を流しながら膝をついている長門の姿が。
「嘘だろォォォ!?!?」
ーーーーー
「ぐっ…!読まれていたのか…!」
「フハハハハ!少々手こずったが貴様は隙を見つければ簡単に攻略出来る弱者だったようだな!!」
肩から流れる血が一向に止まらない。ここまで深くやられるとは、流石に油断したか…。
「ほう、出血多量で動けないようだな。もう少し楽しませてくれるかと思ったのだが、残念だ」
ベルディアは大剣を構えながらゆっくり俺の前へと進む。
そして、勢い良く振りかざした。
「死ねぇぇぇ!!!」
『餓鬼道』
「さて、茶番はここまでとしよう」
「何っ…魔力が吸い取られているだと!?」
餓鬼道
相手の術を吸収し、吸収したチャクラや魔力を自身に転換できる六道の能力の一つ。
俺は大剣を両手で受け止め、そこからベルディアの魔力を徐々に吸収していく。
「本来ならすぐにお前を片付けたかったのだが、先程使った口寄せで無駄にチャクラを消費してしまったからな。お前を足止めしながらチャクラを溜めていたのさ」
「手加減していたという事か、畜生…!というか、さっさと離しやがれ!」
要約すればベルディアの言う通り、手加減をしていた。だが、怪我を負う所までは予想外だった。
俺は十分にチャクラが溜まったのを感じると、ベルディアの望み通り離してやった。無論、簡単に呼吸を整わせようとはしなかった。
俺は手を前へかざし、チャクラを一点に集中させる。
「これで終わりだ。『痛みを知れ』」
『神羅転征』
ドゴーーーン!!!
俺が放った波動は、ベルディアの鎧を跡形もなく吹き飛ばした。
辺りが沈黙していた。もしかしたら終始沈黙の状態だったかもしれない。
「そういやこいつはアンデットだったな。アクア、浄化を頼む」
「…えっ、あ、うん。もう終わったんだ…。」
『セイクリッド・ターンアンデット!』
口をポカーンとしていたアクアは俺の言葉で正気に戻り、すぐさまアンデット魔法を唱え始めた。
「この、俺が…こんな、奴に…畜生っ…!」
捨て台詞を言い残し、ベルディアは浄化した。
その後、辺りは騒然とし、俺を宴やら何やらに誘って来たが同行するつもりもなく、パーティメンバーとギルドへと戻ろうとした。
「あの!」
その中で、俺を引き留めた者が1人。めぐみんだった。
「何故ナガトは私を庇ってまであいつに立ち向かったのですか!?私が前に出ていればそのような怪我を負わずに済んだのに…!」
めぐみんは自分の愚かさ、情けなさを噛み締めながら俺に必死に問いかけていた。
「…昔の俺であればこんな事はしなかっただろうな」
「えっ……?」
「俺には親友がいてな、そいつは俺が選択を誤った所為で死んでしまった。だから、もう仲間を死なせたくはなかった。要するにあれは単なる俺の身勝手な行動だ」
その身勝手な行動によって今度は仲間を不安にさせてしまったか。人の感情というのは読み取るのが難しいな。
「それでも、何も出来ずにただ迷惑をかけた私の責任です。ナガトを巻き込むことなんてしたくは…」
「何故そこまで自らを否定するんだ?それに、めぐみんの行った事は好材料だったぞ。ペルディアをおびき出す事が出来たのだからな」
そう言って俺はめぐみんの頭を撫でる。
「自分に自信を持て。誰もお前を責める奴なんていない」
「…はい!」
「おーい、早く飯食いに行こうぜ〜」
カズマ達が呼びかけてくる。とはいえ、まずは傷を癒してからだが。
「ほら、行くぞ。みんなが待ってる」
「…全く、私含めて馬鹿ばっかりのパーティですね!」
そうだな。俺もかなりの大馬鹿だ。
お待たせしてしまい申し訳ありません!
これからも不定期ではありますが、再始動していけたらなと。とはいえまた失踪する可能性があるのでご了承くださいw
次回は2巻に入ります!2巻はネタが盛りだくさんだと思うので、楽しく書き上げていこうと思います!
それでは!