長門の口調がよく掴めません...
「仲間を募集しましょう!」
食事中にアクアが唐突に言いだす。
「長門がいるから別に良くね?」
「いや、俺はアクアの意見に賛成だ。今の難易度であれば楽に熟せるが、魔王討伐の目標に進むに連れて俺だけの戦力じゃ厳しくなるだろう。」
「成る程...それもそうだな。けど、俺達のパーティに入ってくれる奴なんているのか?」
「この私がいるんだから、募集かければすぐよ。何せ、私は最上級職のアークプリーストよであり、女神アクア様なのだから、ちょろっと募集かければ『お願いします私を連れてって下さい何でも言う事は聞きますから』って輩が山ほどいるわ!分かったら、唐揚げ一つずつ寄越しなさい!」
「「はぁ......」」
ーーーーーー
翌日
「「「.........」」」
誰一人来ない...
その理由は分かっている
「...なあ、ハードル下げようぜ。目的は魔王討伐だから仕方ないっちゃ仕方ないんだが...。流石に、上級職のみってのは厳しいだろ」
「うう...だってだって...」
「確かに、例え来たとしてもバランスの問題があるからな。ちよっとハードル下げに...」
募集のハードルを下げようとした途端、誰かがこちらに近づいて来る。
「上級職の冒険者募集を見て来たのですが、ここで良いのでしょうか?」
「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」
黒マントに黒いローブ、黒いブーツに杖を持ち、トンガリ帽子まで被った、物語にもよく出て来そうな魔法少女めぐみんはポーズを決めながら自己紹介をする。
「...冷やかしに来たのか?」
「ち、ちがわい!」
「...唐揚げ食べるか?」
「...!はい!もう3日も何も食べていなかったので、助かります!」
唐揚げは子供の好物という意味で揶揄い交じりに言ったのだが...
「(使ってないフォーク目の前にあるのに何で長門の使ってんだよ...)」
ーーーーーー
「爆裂魔法は最強魔法。その分、魔法を使うのに準備が結構かかります。準備が整うまで、あのカエルの足止めをお願いします」
俺達は満腹になっためぐみんを連れ、カエル討伐に来ていた。
「俺はお前たちの戦いを見学させてもらう」
「は?何で?」
「ここで俺が出ればリベンジの意味がないだろ?だが、ピンチの時は手を貸してやる」
「あ、そっか。よし、行くぞアクア。今度こそリベンジだ。お前、一応元なんたらなんだろ?たまには元なんたらの実力を見せてみろ!」
「元って何!?ちゃんと現在進行形で女神よ私は!アークプリーストは仮の姿よぉ!」
「...女神?」
涙目でカズマの首を絞めようとしてくるアクアを、めぐみんが不思議そうに首を傾げる。
「を、自称してる可哀想な奴だよ。まあ、出来るだけそっとしておいてやってくれ」
カズマとめぐみんは哀れな人間を見る目でアクアを見る。そして、とうとう耐えきれずに
「ナァァァガァァァトォォォ!!」
アクアは俺に思いっきり抱きつき、胸の中で大泣きする。
こいつがエリスと同じ女神とはとても信じ難い。
「こうなったら、今度こそ女神の力を見せてやるわよ!見てなさいよカズマ!」
直ぐに立ち直ったアクアは拳を握ってヤケクソ気味に、近い方のカエルへと駆け出した。
ジャイアントトードに打撃は効かないと受付の人から聞いてる筈なんだがな...
見事にカエルの体内へ侵入する事に成功した学習能力のないアクアが、身を挺して時間稼ぎをしようとしている。
自らを犠牲にしてまで敵の足止めをする女神、何故か逆にカッコよく感じる...
...周囲の空気がビリビリと震え出した
「もう魔法を放てるようになったようだな」
「はい、見ていて下さい。これが、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段。これこそが、究極の攻撃魔法です...!」
めぐみんの杖の先に光が灯る。
膨大な光をギュッと凝縮した様な、とても眩しいが小さな光。
めぐみんが、紅い瞳を鮮やかに輝かせ、カッと見開く。
「『エクスプロージョン』ッ!」
平原に一筋の閃光が走り抜ける。
遠く、こちらに接近してくるカエルに吸い込まれるように突き刺さる。
そして...
ドゴォォォン!!!
目も眩む強烈な光、そして辺りの空気を震わせる轟音と共に、カエルは木っ端微塵となった。
威力は起爆札数枚分か、デイダラの起爆粘土並の破壊力だろう。
「これが上級職の魔法というやつか...」
ついつい感服してしまう。
爆煙が晴れると、カエルのいた場所には二十メートル以上のクレーターが出来ており、その爆発の凄まじさを物語っていた。
しかし、魔法の音と衝撃で目覚めたのか、一匹のカエルが地中からのっそり這い出てきた。
普通、カエルは水源がないと生きられないはず。
ジャイアントトードはそういうモンスターなのだろうか...
「めぐみん!一旦離れて、距離を取ってから攻撃...」
カズマはめぐみんに距離を取って爆裂魔法を放つという作戦を伝えようとするが、言いかけた所で動きを止めた。
見ると、そこにはめぐみんが倒れていた。
「ふ...。我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません。あっ、近くからカエルが湧き出すとか予想外です。やばいです食われますすいません、ちょ、助け.........」
「「.........」」
ーーーーーー
結局、俺も加わり見事にカズマ達が受けた三日以内にジャイアントトード五匹の討伐のクエストを完了させた。
「うっ...うぐっ...。ぐすっ...。生臭いよう...。生臭いよう...。」
俺はめそめそと泣いている粘液まみれのアクアを負ぶってカズマの後を付ける。
「カエルの体内って、臭いけどいい感じに温かいんですね...。知りたくもない知識が増えました...」
自来也先生にしか分からなさそうな知識を教わってもな...
カズマはアクアと同じく粘液まみれで、知りたくもない知識を教えてくれているめぐみんを負ぶっていた。
「めぐみん。今後は爆裂魔法は禁術...禁断魔法として扱え。アークウィザードなのだから、他の魔法もあるだろう?」
カズマの背中に負ぶさっためぐみんが、肩を掴む手に力を込めた。
「痛ッ...!」
「...使えません」
「「...は?」」
同時に変な声が漏れた。
「...私は、爆裂魔法しか使えないんです。他には、一切魔法が使えません」
「...マジか」
「...マジです」
カズマが絶句する。
...いや、それは有り得ない。
「爆裂魔法以外使えないってどういう事?爆裂魔法を習得出来る程のスキルポイントがあるなら、他の魔法を習得していない訳がないでしょ?」
俺より先にアクアが発言する。
「そういや、ギルドのお姉さんがスキル習得がどうのって...」
「...いえ、スキルどうこうの問題ではなく私は爆裂魔法をこよなく愛すアークウィザード。爆発系の魔法が好きなんじゃなく、爆裂魔法だけが好きなのです」
「爆発と爆裂って何が違うんだ?」
同じ事を疑問に思っていた。何か細かい違いがあるのだろう。
「もちろん他のスキルを取れば楽に冒険が出来るでしょう。火、水、土、風。この基本属性のスキルを取っておくだけでも違うでしょう。...でも、ダメなのです。私は、爆裂魔法しか愛せない。例え今の私の魔力では1日1発が限界でも。例え魔法を使った後は倒れるとしても。それでも私は、爆裂魔法しか愛せない!だって、私は爆裂魔法を使うためだけに、アークウィザードの道を選んだのですから!」
「素晴らしい!素晴らしいわ!その非効率ながらもロマンを追い求めるその姿に、私は感動したわ!」
...発する言葉も思い浮かばない。
はっきり言わせてもらうと、カズマもアクアも世話のかかる奴だ。
更に一人増えると疲れるというか何というか...
「そっか。まあ、頑張れよ。そろそろ街が見えてきたな。じゃあ、ギルドに着いたら報酬を山分けにしよう。うん、まあ、機会があればまた会うだろ」
カズマがめぐみんをパーティに入れない事を何とか別の言葉で誤魔化そうとしている。
だが...
「俺はめぐみんをパーティに入れても良いと思うぞ」
「...へ?」
「本当ですか!?」
紅い瞳をキラキラ輝かせながら俺の方を向く
「確かに、一度の戦いに一度しか魔法が使えない魔法使いは悪く言ってしまえば無能だ。だが、あの爆裂魔法を『一撃必殺』や『とっておき』と捉えればとても頼りになる」
「...そ、そうですそうなのです!あの魔法はマ○○テのようなものなのです!」
いや、それは良く分からないが
「カズマもそれで良いだろう?」
そう言ってカズマの方を振り向く。
が、どうしてもカズマは納得がいかないらしい
「いやいやいやいや。長門、良く考えてみろ。確かに一撃必殺とか考えれば強くて頼もしいかもしれないよ?でもその爆裂魔法しか使えないんだよ?そんな魔法使いとか使い勝手悪すぎだから。だからめぐみん、お前とはここでお別れだ」
カズマは負ぶっているめぐみんを一度引き剥がす。
が、めぐみんは即座にカズマの腕に必死にしがみつく。
「お、おい放せ、お前多分他のパーティにも見捨てられた口だろ、というかダンジョンに潜った際には、爆裂魔法なんて狭い中じゃ使えないし、それこそ役立たずだろ。お、おい放せって。ちゃんと今回の報酬はやるから!HA☆NA☆SE!」
「見捨てないでください!もうどこのパーティにも拾ってくれないのです!ダンジョン探索の際には、荷物持ちでも何でもします!お願いです、私を捨てないでください!ナガトは、私を見捨てませんよね!?」
今度は俺の腕にがっしりしがみつく。
アクアを負ぶっている為か妙に腕に負担が掛かる。
「おい、あんまり大声で叫ぶな。色々と目立つ...」
通行人達からひそひそと小声で話している。
「あの赤髪の人、女の子を庇おうとしてる...!格好いい...!」
「それに引き換え、あのジャージの男はあの小さい子を見捨てようとしてたわよ?」
「もう一人女の子いるし、二人とも粘液まみれよ?一体どんなプレイしたのよあの変態」
お互いに色々と誤解されている事に俺は苦笑するしかなかった。
アクアはそれを聞いて俺の後頭部に隠れてニヤニヤしながらカズマを見つめている。
当のめぐみんはというと...
「安心してくださいカズマ!どんなプレイでも大丈夫ですから!先程の、カエルを使ったヌルヌルプレイだって耐えてみせ...」
「よぉしよし!分かった分かった!めぐみん、これから宜しくな!」
いい加減来てくれ、まともな冒険者よ...
最後らへん、カズマのクズっぷりが凄まじい感じがしたんですが...
次回へ続きます。
それでは!