早めに出すと言ったな。あれは嘘だ。
嘘ついてすいませんでした許してください何でもしますから
時刻はそろそろ夕方に差し掛かろうとしている。
今回受けたクエストは、共同墓地に湧く、アンデットモンスターの討伐。
俺達は現在、墓場からちょっと離れた場所で鉄板を敷き、バーベキューをしながら夜を待っている。
「ちょっとカズマ、その肉は私が目をつけてたヤツよ!ほら、こっちの野菜が焼けてるんだからこっち食べなさいよこっち!」
「俺、キャベツ狩り以来どうも野菜が苦手なんだよ、焼いてる途中に飛んだり跳ねたりしないか心配になるから」
確かに、野菜が生き物のように活発に動かれればトラウマにもなるだろう。
俺に限ってはそもそも何も食っていない。
「ナガト、食べないのですか?それとも、具合が悪かったり...?」
「いや、そういう訳ではない。朝から野菜炒めしか食べていないから、少々飽き飽きしてるだけだ。遠慮なく食べてくれ」
こんな感じで討伐クエストなのにほのぼのとしているが、今回引き受けたのはゾンビメーカーと呼ばれる小型モンスターの討伐。
ゾンビを操る悪霊の一種で、自らは質の良い死体に乗り移り、手下代わりに数体のゾンビを操るそうだ。
カズマ達が装備やスキルが強くなったと聞き、気晴らしに引き受けてみたという訳だ。
「...冷えてきたわね。ねえ、引き受けたクエストってゾンビメーカーの討伐よね?私、そんな小物じゃなくて大物アンデットが出そうな予感がするんですけど」
いつの間にか月が昇り、時刻は深夜を回っていた。
「...おい、そういう事言うなよ、それがフラグになったらどうすんだ」
「だが、可能性は充分にある。小物だからと言って気を抜かない方が良い。よし、頃合いだ」
俺達は墓地へと向かう。
クリスから教わった、敵感知スキルを持つカズマを先頭に、俺達は墓地へと歩いていく。
「何だろう、ピリピリ感じる。敵感知に引っかかったな。いるぞ、一体、二体...三体、四体...多くね?」
「たまたまゾンビが繁盛しているだけだろう...あれは?」
俺が指差したのは、妖しくも幻想的な青い光。
魔法陣...だろうか、その隣には黒のローブを着た人影が見えた。
...黒のローブ?
「...あれ?ゾンビメーカー...ではない...気が...するのですが...」
めぐみんが自信無さげに呟いた。
「突っ込むか?ゾンビメーカーじゃなかったとしても、こんな時間に墓場にいる以上、アンデットに違いないだろう。なら、アークプリーストのアクアがいれば問題無い」
「ああ...やけにそわそわしているな、大丈夫か?」
「あ、ああ。大丈夫だ...」
その時...
「あーーーーーっ!!」
急にアクアが飛び出し、そのままローブの人影に向かって走り出す。
「ちょっ!おい待て!」
カズマの制止も聞かずに飛び出していったアクアは、ローブの人影に駆け寄ると、ビシッと人影を指差した。
「リッチーがノコノコこんなところに現れるとは不届きなっ!成敗してやるっ!」
「...リッチーって何だ?」
「アンデットモンスターの最高峰です。別名『ノーライフキング』大物というより超大物です...」
アクアの予感が的中した、という事か。
しかし、先程まで大物アンデットに怯えていたアクアが飛び出すとは...何か未練でもあるのだろうか。
それにしても...
「やめてええええええ!誰なの!?いきなり現れて、なぜ私の魔法陣を壊そうとするの!?やめて!やめてください!」
「うっさい、黙りなさいアンデット!どうせこの妖しげな魔法陣でロクでもない事企んでるんでしょ、なによ、こんな物!こんな物!!」
「...あれで超大物なのか?」
「その筈なんですけど...」
どうにも奴が不良に因縁をつけられてるイジメられっ子に見える。
...あいつ、何処かで会ったような気がする。
「やめてー!!この魔法陣は、未だに成仏できない迷える魂達を、天に還してあげるための物です!ほら、たくさんの魂達が魔法陣から天に昇って行くでしょう!?」
「リッチーの癖に生意気よ!そんな善行はアークプリーストのこの私がやるから、あんたは引っ込んでなさい!見てなさい、そんなちんたらやってないで、この共同墓地ごと浄化してあげるわ!」
「ええっ!?ちょ、やめっ!」
アクアが容赦なく宣言し、手を広げようとしたが
「...もうやめてやれ」
「なっ...!?」
俺はその手をガッチリと掴む。
「ちょ、離しなさいよ!」
「悪いが、こいつは俺の知り合いだ」
「「...え?」」
ーーーーー
顔を見れば、やはりリッチーの正体はウィズだった。
「あの、ありがとうございます...!」
「え、長門ってこのリッチーと知り合いだったの?」
「キャベツ狩りの日に、こいつが経営してる店で会ってな。それよりウィズ、こんな所で何してるんだ?」
「ちょっとナガト!こんな腐ったみかんみたいな奴と喋ってたら、貴方までアンデットが移るわよ!ちょっとそいつにターンアンデットを」
「話くらい聞いてやれよ」
「痛っ!?」
カズマがアクアの後頭部を剣の柄で小突いて黙らせる。
「そ、その...私は見ての通りリッチー。アンデットの王なんて呼ばれてるくらいですから、私には迷える魂達の話が聞けるんです。この共同墓地の魂の多くはお金が無いためにロクに葬式すらしてもらえず、天に還る事なく毎晩墓場を彷徨っています。それで、定期的にここを訪れ、天に還りたがっている子達を送ってあげているんです」
...成る程な。
「それならまあ、しょうがないか。でも、ゾンビを呼び起こすのどうにかならないか?俺達がここに来たのって、ゾンビメーカーを討伐してくれってクエストを受けたからなんだが」
カズマの言葉に、ウィズは困った表情を浮かべ。
「あ、そうでしたか...。その、呼び起こしている訳じゃなく、私がここに来ると、まだ形が残っている死体は私の魔力に反応して勝手に目覚めちゃうんです...その、私としてはこの墓場に埋葬される人達が、迷わず天に還ってくれれば、ここに来る理由も無くなるんですが...。えっと、どうしましょう?」
ーーーーー
「その、お騒がせしてごめんなさい...」
「気にするな。アクアにはキツく言っておく」
結局、俺達はウィズを見逃す事に決めた。
まあ、輪廻眼や童話の事とか聞きたい事は山ほどあるからな。死なれては困る。
俺はまた尋ねたい事があるため、カズマ達を先に帰らせてウィズと二人きりの場を作っていた。
「それで、話というのは?」
「この童話についてだ。この童話の主人公、俺の過去と一致している箇所が多すぎる」
「え...?」
内容をまとめると、幼い頃に両親を亡くし、ずっと独りぼっちだった主人公だったが、親友や師匠との出会いによって『幸せ』という物を実感する。しかし、不幸にも親友を亡くした事により何もかもを信じられなくなってしまい、終いには多くの人間に『痛み』を伝える事となってしまう。そこに同じ血を持つ弟弟子が現れ、主人公に本当の平和を教える。主人公はやっと自分の間違いを見つけ、人々を助ける為に力を尽くして死んでいく...といったものだ。
「こいつは何処で手に入れた?」
「えっと、それは貰い物です」
やはりか...
「姿とかは覚えているか?」
「容姿、ですか?顔とかは帽子とかフードとかで隠していたので分からないです...ごめんなさい、あまり覚えていないです」
帽子にフードか...
以前、俺に金を渡した奴は帽子は被っていなかったが...あいつみたいなのがもう一人いるのだろうか。
だが、俺を知っているのは間違いないだろう...
ーーーーー
墓地からの帰り道
「納得いかないわ!」
アクアは未だに怒っていた。
「しょうがないだろ。あんな良い人討伐する気になれないし」
しかし、リッチーが街で普通に生活してるとか、この街の警備はどうなってんだ。
「でも、穏便に済んで良かったです。いくらアクアがいると言っても、相手はリッチー。もし戦闘になってたら私やカズマは間違いなく死んでいましたよ」
何気なく言うめぐみんの言葉にぎょっとする。
「げ、リッチーってそんなに危険なモンスターなのか?ひょっとするとヤバかった?」
「ヤバいなんてもんじゃないです。リッチーは強力な魔法防御、そして魔法の掛かった武器以外の攻撃の無効果。相手に触れるだけで様々な状態異常を引き起こし、その魔力や生命力を吸収する伝説級のアンデットモンスター。あの人がナガトの友人で本当に良かったですよ」
ちびりそうになる。
カズマがそんな事を考えると、ダクネスがポツリと言った。
「そういえば、ゾンビメーカーの討伐はどうなるんだ?」
「「「あっ」」」
ク エ ス ト 失 敗
また新しい人物が登場しましたね。
いや〜こういうの書くの楽しい!
それでは!