この素晴らしい世界に輪廻眼を!   作:イタチ丸

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春休みも近づいているという事なので頻度は上がっていくかもしれません。
ではどうぞ


第8話 へっぽこ勇者と魔剣

 

 

「ドナドナドーナードーナー……」

 

「…お、おいアクア、もう街中なんだからその歌は止めてくれ。ボロボロのオリに入って膝抱えた女を運んでる時点で、ただでさえ街の住人に注目されてるんだからな?というか、もう安全な街の中なんだから、いい加減出てこいよ」

 

「嫌よ。この中こそが私の聖域よ。怖いからしばらく出たくないわ」

 

すっかり檻の中に引きこもってしまったアクアを、馬車で引きながら。

 

トラウマを植え付けたものの、最後まで諦めずに立ち向かったアクアの勇姿は素晴らしく感じた。

後でわがままでも聞いてやるか…

 

「め、女神様っ!?女神様じゃないですかっ!何をしているのですか、そんな所で!」

 

突然叫んで、檻に引きこもっているアクアに駆け寄り、鉄格子を掴む男。

 

そいつはあろう事か、ブルータルアリゲーターが齧り付いても破壊できなかったオリの鉄格子を、いとも容易くグニャリと捻じ曲げ、中のアクアに手を差し伸べた。

 

唖然としている俺達を尻目に、その中の見知らぬ男は、同じく唖然としているアクアの手を…

 

「…おい、私の仲間に馴れ馴れしく触るな。貴様、何者だ?知り合いにしては、アクアがお前に反応していないのだが」

 

ダクネスは男に詰め寄った。

 

「あいつ、いつもこんな感じでいてくれたらなあ…」

 

カズマの呟きに俺は同感するしかなかった。

 

男はダクネスを一瞥すると、ため息を吐きながら首を振る。

 

きな臭い雰囲気になってきたので、カズマはこの期に及んでも膝を抱えて檻から出ようとしないアクアに、そっと耳打ちする。

 

「…おい、あれお前の知り合いなんだろ?女神様とか言ってたし。お前があの男を何とかしろよ」

 

「…ああっ!女神!そう、そうよ、女神よ私は。それで?女神のこの私にこの状況をどうにかして欲しいわけね?しょうがないわね!」

 

ようやく外の世界へと出てきたアクアは、男に対して首を傾げる。

 

「…あんた誰?」

 

知り合いではないのか、と思っていたが男は驚きの表情を見せている。

 

「何言ってるんですか女神様!僕です、御剣響夜ですよ!あなたに魔剣グラムを頂いた!!」

 

「頂いた」ということはこいつは俺やカズマと同じ転生者だろう。

 

後ろには、槍を持った戦士風の少女と、革鎧を着て、腰にダガーをぶら下げている少女を引き連れている。

 

「ああっ!いたわね、そんな人も!ごめんね、すっかり忘れてたわ。だって結構な数の人を送ったし、忘れてたってしょうがないわよね!」

 

ようやく思い出したらしい。

若干表情を引きつらせながらも、ミツルギはアクアに笑いかけた。

 

お久しぶりですアクア様。あなたに選ばれた勇者として、日々頑張ってますよ。職業はソードマスター。レベルは37まで上がりました。ところで、アクア様はどうしてここに?というか、どうしてオリの中に………」

 

 

 

 

 

「…バカな。ありえないそんな事!君は一体何を考えているんですか!?女神様をこの世界に引き込んで!?しかも、今回のクエストではオリに閉じ込めて湖に浸けた!?」

 

ミツルギは、これまでの経緯を隅まで説明したカズマの胸ぐらを掴んだ。

 

「…アクア様、こんな男にどう丸め込まれたのかは知りませんが、今の貴女の扱いは不当ですよ。ちなみに、今は何処で寝泊まりしているんです?」

 

ミツルギの言葉に、アクアが若干押されながらも答えた。

 

「え、えっと、馬小屋で…」

 

「は!?」

 

ミツルギの、カズマの胸ぐらを掴む手に力が込められた。

 

流石に止めた方が良いか…。

 

「放してやれ。強引に振舞っても何も得はしないぞ」

 

ミツルギは俺の言葉で手を放すと、俺らを見回した。

 

「クルセイダーにアークウィザード?それに、随分綺麗な人達だな…。君はパーティーメンバーに恵まれているんだね。それなら尚更だよ。君は、アクア様やこんな優秀そうな人達を馬小屋で寝泊りさせて、恥ずかしいとは思わないのか?さっきの話じゃ、就いてる職業も、最弱職の冒険者らしいじゃないか」

 

「さりげなくナガトの事スルーしましたよ……」

 

「長門殿がどれほどの冒険者か知らないのか……?」

 

ん、省かれていたのか……?

特にそういうのは気にしないので気付かなかった。

 

二人の不機嫌な表情も御構い無しに、ミツルギが同情するかの様に、憐れみの混じった表情で笑いかけた。

 

「君達、今まで苦労したんだね。これからは僕と一緒に来るといい。というか、パーティーの構成的にもバランスが取れてていいじゃないか。ソードマスターの僕に、僕の仲間の戦士と、そしてクルセイダーのあなた。僕の仲間の盗賊と、アークウィザードのその子にアクア様。まるであつらえたようにぴったりなパーティー構成じゃないか!」

 

身勝手な提案に、俺とカズマ以外の三人はひそひそと囁き出した。

 

聞き耳を立ててみると、どうやら大不評らしい。

 

と、ここで俺はある考えを思いつく。

 

「こいつらが欲しいのならばくれてやる」

 

「「「!?!?」」」

 

ほぼ全員が驚きの反応を見せる。

途端に言われればこの反応は無理もないか…。

 

「本当かい?いやあ、君なら分かって…」

 

「ただし条件がある。俺と勝負をしろ。お前がこいつらを連れるのに相応しい人間かを試す勝負だ。お前が勝てば譲ってやろう。だが、俺が勝てば一つ言う事を聞いてもらう。どうだ?上級職のお前なら容易い話だろ?」

 

それに、こいつらに真面目に俺の戦いを見せた事はないからな。丁度良いだろう。

 

「それで構わないけど、最弱職の冒険者に見える君が高レベルの僕に勝負を挑んで大丈夫なのかい?」

 

「実戦してみなければ分かるまい。だが、ここじゃ周りに迷惑がかかる。場所を変えるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここなら問題ないだろう」

 

ここは人気のなく自然の多い広い空き地。

 

「長門。大丈夫だよな?あまり無茶すんなよ?」

 

カズマが心配してくれているが、無茶する事なくすぐ片付くだろう

俺はそんな余裕を見せる。

 

「随分余裕そうな顔してるけど、僕にはこの最強の魔剣グラムがあるからね。すぐに終わらせてあげるよ」

 

「そうか。なら、俺はこいつで行くとしよう…『口寄せの術』」

 

地面に掌を当てると、突如巨大な煙が舞う。

そして、煙の中から出てきたのは……

 

 

 

 

 

グルルルルルル……!!

 

 

 

 

 

「「「…は?」」」

 

巨大な犬、というより頭が二つあるのでケルベロスの様な動物だろう。

 

一同は固まってその巨大なケルベロスを見つめていた。

 

「お、おい…何だよそれ…」

 

ミツルギは恐怖のあまり尻餅をついてしまった。

 

「先程の威勢はどうした?もしや、恐怖で怯えて立ち上がれないという訳じゃないだろうな?」

 

「そ、そんなこと…あるはずが、ない…だろ?」

 

ミツルギは体が震えてしまうも立ち上がる事は出来たようだ。

 

「あんな隠し玉を持っていたなんて…凄いというより怖いです」

 

「もうそいつ使って魔王倒しに行けばいいのに…」

 

「あのさ…私、トイレに行きたくなったんだけど…」

 

「それより長門殿のあの人を見下すような目…ああ堪らない…!」

 

「お前に関してはもう恐怖通り越してるじゃねえか」

 

カズマ達がボソボソと呟きながら二人の戦いを観戦している。

 

その目はまるで悟りを開いたような目であった。

 

「ぼ、僕を舐めるなあ…!!」

 

ミツルギは剣をがっしりと構えてケルベロスに真っ直ぐに立ち向かう。

 

「グルルルルルル……!」

 

ケルベロスはまるでミツルギを食べたそうに鼻息を荒く、よだれを垂らしながら興奮している。

 

「おりゃああああ!!」

 

怯える事なく剣を振るう。しかし…

 

「ガアアアアア!!!」

 

ケルベロスが威嚇し、その衝撃で吹き飛ばされてしまう。

 

「これでは話にならんな…どうする、まだ戦うか?」

 

ミツルギはもう敵わないと思ったのか、何度も頷いて負けを認めた。

 

「あ、あんなの倒せる訳ないじゃない!」

 

「そうよ、最低!正々堂々と戦いなさいよ、卑怯者!」

 

少女達の罵倒など聞こえていないかのように俺はケルベロスを封印する。

 

そういや、言う事一つ聞いてもらうんだったな。

 

「…カズマは何か案はあるか?」

 

「え、俺?それじゃあ、この魔剣を」

 

その言葉に取り巻きの一人がいきり立つ。

 

「なっ!?バ、バカ言ってんじゃないわよ!それに、その魔剣はキョウヤにしか使いこなせないわ。魔剣は持ち主を選ぶのよ。既にその剣は、キョウヤを持ち主と認めたのよ?あんたには、魔剣の加護は効果がないわ!」

 

「…マジか〜、せっかく強力な装備を巻き上げたと思ったんだけど」

 

こんな剣さばきが鈍い奴でも認められるんだな…と俺は複雑そうに魔剣を見つめる。

その時だった…

 

『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まって下さいっっ!」

 

「とうとう魔王軍らが動いたか…」

 

俺達は直ちに現場に向かう。

 

「あ、あれ…?僕の魔剣は…?」

 

 

 

 

 

「まままま、毎日毎日毎日毎日っ!!おお、俺の城に、毎日欠かさず爆裂魔法撃ち込んでく頭のおかしい大馬鹿は、誰だああああああー!!!」

 

 




ご覧の通り、次回はデュラハン戦です。
長門vsデュラハンのガチバトルとかやってみようかな…

それでは!
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