東方魂恋録 The Second Existed   作:狼々

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どうも、狼々です!

遅れて申し訳ない。
その分、少し文字数多くなってるから許して。

というのも、被お気に入りユーザーが100人を突破したんですね。
それを記念して、短編を一つ上げようということで。
その内容のアンケートも取って、それを書いてました。
結構な文字数でね……という言い訳。
気をつけまする。

では、本編どうぞ!


短期決戦

 彼女は、疾風の如く現れた。

 銀色に輝く髪を美しく鳴らし、頼もしい笑顔で、俺の前へ。

 

「むしろ、ここまで耐えたんだ。褒めてほしいくらいだな」

「限界そうですね。少し休んで――と、言いたいですが、そうもいかなそうです」

 

 されど、眼前の狂気の権化はこれ以上待ってはくれないようだ。

 妖夢を敵だと認識した瞬間に、目を光らせる。

 

「ふむ、その傷、鎌鼬ですか。なるほど」

「あ、危ないっ!」

 

 俺の傷を一瞥して、呟く彼女へと、鎌鼬は(おの)が爪を振りかざす。

 咄嗟に叫んで、身代わりになってでも彼女を守ろうと、体を突き上げようとした。

 が、足は細かく震えるのみで、肝心の体はちっとも動かない。

 

「大丈夫ですよ、天君」

 

 優しく微笑んだ妖夢は、すぐに獣の方へ向き直る。

 その時には既に、風の刃は亜音速で空気を切り裂いていた。

 時空が歪んでいるかのように、あるいは、硝子(ガラス)を通して光が屈折するかのように、透明に。

 

 そして、俺はまず確信した。

 

 

 

 ――間に合わない。彼女の抜刀よりも先に、斬られる、と。

 

 透明斬が、陶器の肌を切り裂くのが速い。

 どう考えようとも、間に合うはずがない距離。

 

 それを、それを。

 

 妖夢は、()()()一刀両断してみせた。

 以前ならば、届くことさえ決してなかったであろう楼観剣(ろうかんけん)

 現在、俺の眼前にいる彼女は――師匠は。

 

 またさらに、彼女自身の限界を超えたのだと。

 高き壁を、高き記録を、険しい山を、跳躍し、塗り替えたのだと。

 そう、言うのだろうか。

 

「……遅い。何もかもが、遅すぎる」

 

 彼女は、短く吐き捨てた。

 対して俺はというと、目を見開くことしかできない。

 追いつきかけた師範の背中が、遠ざかってしまった。

 

 しかも、ただ遠ざかっただけではない。

 圧倒的な差を、距離を生んでいた。

 

「そこっ! 『霊符 夢想封印』!」

 

 上空からの叫び声。

 雄叫びにも似たスペルカードの宣言後、数多(あまた)の光弾が交錯し、幻獣へと向かっていく。

 突然の出来事に対応しきれない鼬には当然、全弾命中。

 呻き声を上げて煙の中を立つ姿は、非常に攻撃的だった。

 

「妖夢、話すのは後よ。先にコイツを何とかするの」

 

 赤白の巫女は、霊夢は、何事もないように淡々と言った。

 少し俺へ目を配らせたのは、彼女なりの優しさだろうか。

 とはいえ、油断できない状況下であることには変わりはない。

 霊夢の言っていることに、一切の虚偽もなし。

 

「わかりました……でも、勢いが良すぎる彼女も、考えものですよ」

「そらっ、『恋符 マスタースパーク』!」

 

 どこまでも響きそうな、またしても、スペルカードの宣言。

 認知した瞬間、俺達の前には極太のレーザーが走っていた。

 駆ける光弾――もとい光線が鼬も、鼬の周りで渦巻くオーラさえもあっという間に飲み込む。

 

 先程よりも一際大きい悲鳴は、夢想封印を上回る威力であることを瞭然に示した。

 

「こういうデカい(まと)には、やっぱりパワーが一番効くよ」

「そう言って、毎度暴れられるこっちの身にもなってほしいわ」

 

 霊夢が呆れてから、獣はついに倒れた。

 しかし、消滅しない。

 幻獣は紫の「瘴気」を纏っていて、幻獣自身も瘴気の塊のようなものだ。

 部位、もしくは全身。形を保てない程のダメージを受けると、瘴気は霧散する。

 

 もう一度言おう。消滅していない。

 まだ、瘴気は霧と化していない。

 つまるところ、鼬はまだ存在している。

 

「そろそろ来ます。用意を」

 

 妖夢の一声で、霊夢と魔理沙が会話を止めて、幻獣へ向き直る。

 

「俺も、もう大丈夫だ」

「じゃあ、妖夢と天は陽動しつつ攻撃して。私と霊夢が後ろから援護する」

 

 さすが、と言うべきだろうか。

 魔理沙はたった今到着したばかりだというのに、戦況を十二分に理解している。

 やはり力押しだけが、頭にあるわけではないか。

 

「……一応聞いとく。妖夢、栞を中に入れてるか?」

 

 栞は魂だ。実体を持つ人物ではない。

 その代わりに、依代となる人間や妖怪を自在に移って変えられる。

 基本俺の中にいたのだが、栞は幻想郷に残ったまま。現実世界に連れてきてはいない。

 

「残念ですが。だって、まさか貴方がいるだなんて思わなかったものですから」

「ま、そうだよな」

 

 少しとはいえ可能性が残っている以上、聞かない理由はなかった。

 芽生えた僅かの希望が潰えた今、できることは限られてくる。

 

 ――その時。

 

「ごめんなさいね、少し遅れたわ。お望みのもの、連れてきたわ」

 

 つい数刻前にも見た紫の裂け目から、スキマ妖怪が現れた。

 目の前に来たかと思うと、ウインクだけを送ってすぐに去っていく。

 

 お望みのもの。

 この状況で最上級に対抗できるもの。

 

 ――自分の中に、充足感が一気に湧き上がっていく。

 沸々と滾る白の霊力は、遥か遠くにも感じられる二年前のそれと、全く同じだった。

 自分の魂が、どっぷりと飲み込まれる感覚。

 海底へと沈んでいく、極限の集中状態へと誘われる感覚。

 興奮と沈黙を兼ねた、常識を覆せそうな自信と確信。

 

 実際、何度も不可能を可能にした、『英雄』の半身とも呼べる存在は。

 

「やっほ~、天! 久しぶりだね、嬉しいよ! って、結構ボロボロだねぇ」

「栞、再会を喜びたいのは山々だが、少しまずい状況だ。手を貸してくれ」

「おっけー、相棒」

 

 命さえ天秤にかけているこの戦闘。

 にもかかわらず、軽快に笑みすら溢れてくる。

 使命を、希望を、あらゆる物を背負ってなお。

 

 固く閉ざされた、南京錠付きの鉄鎖に縛られている鉄扉。

 遥か遠くに消え去ったはずの鍵を取り出し、鍵穴へ。

 

「――リベレーション!」

 

 錠は外れ、鎖は引きちぎれる。鈍い音を立てて、扉は開け放たれる。

 刹那、俺の中から栞の分の霊力が溢れ出た。

 

 解放(リベレーション)。そしてその上位に位置する無限(アンリミテッド)

 これら二つは、栞の霊力を引き出し、自分の霊力と一体化させること。

 それにより、全体的な身体能力の向上が起こる。

 

 アンリミテッドは、霊力を過剰に体中へと行き渡らせた状態。

 当然、四肢や臓器にも相応の反動があるので、滅多には使えない。

 一番最後の戦い、不知火戦では、永琳お墨付きの錠剤でダメージを抑えきった。

 ただ、そもそもその薬が手元にない上、いくら抑えるとしても時間の制限がある。

 永琳曰く、「十秒戦いが長引けば、俺は死んでいた」とのこと。

 

 勿論、それを今使うわけにはいかない。

 いざとなれば。使わざるを得ない状況になれば、別の話だが。

 

「あ~、やっぱこの感覚だな」

「……いつ見ても、この天には圧巻の一言ね」

 

 霊夢から称賛の言葉をもらうが、正直今の俺に制御できるかどうかはわからない。

 暴走はないにしろ、力を完全に引き出すのは不可能だ。

 

「私が合わせます。全力でどうぞ」

「おーけー!」

 

 膝を曲げ、伸ばした瞬間だった。

 先程とは比べ物にならないスピードで、疾走できた。

 音と並走するほどの速さだが、それに妖夢もついてくる。

 さすが、としか言いようがない。

 

 しかし、鎌鼬は俺達の疾走を目で捉えていた。

 瞬く間に黒い鉤爪が空を裂き、透明な刃が走っている進行方向へ。

 計算されたような、獣の直感による偏差射撃。

 

 それを確認してすぐに、妖夢とアイコンタクトをとった。

 言葉を発しているようでは、間に合わない。

 

紫電一閃(モーメント・エクレール)!」

 

 納刀された夜桜に、紫の閃光が迸る。

 栞の持つもの。それは、火・水・雷それぞれの神々の霊力だ。

 その霊力の一部を三つのどれかへ変換し、具現化させることができる。

 

 雷を帯電させ、自分の体を刺激させた。

 纏った電撃に後押しされるがまま、風の刃を()()()()

 避けるでも、幻獣を狙うでもなく、その攻撃を早い段階で処理しておく。

 

 誰が見ても、抜刀さえ困難な長さの大太刀。

 それを、視認すら容易ではない速度で、抜き去ると同時に風を正確に捉え、打ち砕いた。

 殆ど全盛期から衰えない――本物の閃光とも思えるような、神速の抜刀術。

 

「頼んだ、妖夢!」

「はいっ!」

 

 後ろから追ってきた彼女が、前へ。

 縫うような滑らかな交代。殆どタイムラグは起きていないはずだ。

 互いが意図を汲み取り合った結果の産物。

 そうでなければ、交代の隙はこれほど小さくはならない。

 

 さすがの幻獣も、不意を突かれたように対処が遅れた。

 妖夢と獣の間合いは、約十数メートル。

 鎌鼬を発生させることは、十二分に可能な間合いだ。

 

 

 ――()()()()()()()()()()、の話ではあるが。

 

 鎌鼬が前足を振るよりも、妖夢の詰めが明らかに速かった。

 俺とのスタートもそこそこ速かったのだが、比較にならない。

 そこから倍近い速度は……出ているだろうか。

 

「『人鬼 未来永劫斬』」

 

 彼女は、鈴の声でスペルカードを宣言した。

 刀が鞘から顔を出したのを最後に……俺は、斬撃を目にも留められなかった。

 剣が空気を分断する音さえも置き去りに、鎌鼬へ容赦なく降り注がれる数多(あまた)の斬撃は。

 

 怪物が叫び声を上げる暇すら作らなかった。

 それを傍観している俺――いや、霊夢達も含め、俺達は圧倒される。

 剣の軌道を追うどころか、斬撃の本数さえも数えられない。

 

 僅か数秒で終わった絶技が、数十秒にも思えた。

 彼女が納刀した時には、既に鎌鼬の四肢が綺麗に切断されていた。

 

 支えを失い、倒れるのを忘れた胴体がようやく地面に打ち付けられる。

 俯瞰する妖夢が再び剣を取り、とどめを刺そうとした時。

 

「……っ!? 妖夢、下がれ!」

 

 状況を理解するよりも先に、口が動いた。

 妖夢は俺の警告を疑うことなく、直ぐ様後ろへ跳んだ。

 突発的な衝動を声に出した直後、鎌鼬の胴体周辺が黒く爆発した。

 いや、厳密には爆発ではなく、霊力の暴発に似ているだろうか。

 幻獣で言うところの瘴気が、突然過剰に循環し始めた結果だ。

 

「助かりました。あの言葉がなかったらどうなってたかと思うと、ゾッとします」

 

 一旦下がり、こちらまで戻ってきた妖夢。

 あと少し遅かったら、二度とこの声を聞くことがなかったかもしれない。

 そう考えると、腕と脚が恐怖で震えそうな気がした。

 

「……残念だけど、まだ続きそうね」

 

 幻獣は――立っていた。

 黒く巻き上がる煙から、確かに、四足で。

 むしろ、纏われた瘴気の量が増えている。

 霊力と同じ原理と考えると、瘴気も量に比例して全体的な能力は向上する。

 平たく言って、先程の鎌鼬よりもさらに強くなっている、ということ。

 

「さて、どうすればいいか」

 

 こうして比較的穏やかに声を出せるのが、いつまで続くのか。

 それも正直なところ、時間の問題だろう。

 

 こちら側の人数は四人。

 対して、向こうは強化が行われた状態だ。

 あまり決着を長引かせるのは、得策とは言えない。

 

 短期決戦を狙うしかないだろう。

 しかし、どうすればいいのだろうか。

 

 魔理沙のマスタースパークのような大技が決まるには、かなりの隙が必要。

 半端な技だと、ダメージに期待はできない。

 

「……よし。魔理沙と霊夢は、俺が合図したら一番の大技を頼む」

「わかったわ」

「りょーかい、ってね」

「妖夢にはそのための隙を作ってもらう。俺が妖夢を援護する」

 

 あの瘴気の量から察するに、先程からさらに強くなっているに違いない。

 いくら妖夢とはいえ、大きな隙を作るほどの攻撃はできないだろう。

 できたとして、それがいつになるのかわからない。

 短期決戦を目的としている以上、長引く可能性がある時点で採用が難しい。

 なにせ、作戦を変更するにしても、それまでの時間は結局意味がないことになってしまうのだから。

 

「行くぞ、妖夢」

「はい。では、お願いしますね」

 

 二人で同時に飛び出した。

 今までと同じように、斬撃を飛ばされた。

 だが、感じられる瘴気からわかる。威力・殺傷力・()()()や速さが、確実に向上している。

 

 最早、鎌鼬は透明などではない。

 渦巻く紫色の瘴気に害され、蠢く空気が完全に斬撃を目に見えて形作っていた。

 

 妖夢の方へ飛んでくる斬撃を、必要最低限に弾く。

 俺を信じきっている彼女は、その間に刀を引き抜く動作すら見せようとしない。

 守るように約十メートルまで詰めて、護衛をやめ、()()()()()()()()()()()

 

 それを察知した怪物が、俺の対処をしようとした。

 が、その直前に妖夢が初めて刀へ手を置いた。

 俺よりも、彼女の方が幻獣にとっては脅威の存在だ。

 鎌鼬にとってまず優先して倒すべき順位は、俺ではなく彼女。

 

 裏に回った俺よりも先に、正面から斬りかかろうとする妖夢の対処を行ったようだ。

 

 

 ここまで、狙い通り。

 

 

 俺は刀を抜いて、かなり低めの位置で――()()()()()()

 当然、妖夢の対処に向かう鎌鼬には、俺が何をしたのか見えていないし、斬撃が当たったわけでもない。

 

 妖夢だけに、俺の行動が見える。

 鎌鼬には、俺の行動は見えない。

 

 それを察知したらしく、彼女は詰めた間を再び空けた。

 本当ならば、この場面では詰められる時に詰めるべきだ。

 だが、彼女は俺の動作を見て考えを読み取ったらしい。

 

 そして、空けた間をまた詰めた。それも、彼女が全力で。

 正直、これだけでは意味のわからない、無駄な一手。

 さすがの幻獣も、反射的に後ろへ跳躍した。

 

 

 

 ――鎌鼬の後ろ脚二本が、宙へと舞う。

 

 着地寸前に起きた、起きるはずのない出来事。

 咄嗟のことにバランスを崩し、思い切り地面へと倒れ込んだ鎌鼬。

 

 俺が一体、低い位置の空気を斬って何をしたのか。

 それは斬撃、もとい()()

 霊力を刀に乗せたまま、空間に()()()()のだ。

 霊力製の夜桜のレプリカが、そのまま幻獣の脚を切断した、ということ。

 刃の形をそのまま象っているので、切れ味も殆ど変わらない。

 

 鎌鼬が飛ぶ斬撃なら、残撃は文字通り、()()斬撃。

 

「今だ、妖夢!」

「『人鬼 未来永劫斬』!」

 

 鮮やかな、絶技。

 それは魔物を喰らい、叩き切る。

 残りの二本の前脚、小柄な体躯を一瞬で切り刻んで、技を終えた。

 

「よしっ、煉獄業火(れんごくごうか)(ひらめき)!」

 

 妖夢と入れ替わるように、動けない幻獣へと距離を詰める。

 抜刀し、構えた夜桜が纏っていた色は、栞の能力の火そのものを体現していた。

 赤く燃え盛る刃は、鎌鼬の首元を刈り取った。

 

 そして、爆発。

 霊力を過剰に送ると、それなりの反動がある。アンリミテッドの代償だ。

 その状態から、さらに限界以上の霊力を一気に流し込むと、耐えられずに爆発する。

 刀から霊力を伝え、捉えた対象の中で爆発させた。

 

 頭が吹き飛んで尚、煙にならない鎌鼬。

 このままだといずれ頭も脚も再生し、元通り。

 完璧に動けない今が、最大の隙であることは言うまでもない。

 全力で後方へ跳び、技に巻き込まれない範囲に入って叫ぶ。

 

「霊夢、魔理沙、今だぁぁあああ!」

「『神霊 夢想封印 瞬』!」

「『魔砲 ファイナルマスタースパーク』!」

 

 合図と共に、最大火力の二人の技が炸裂。

 大量の御札と極太のレーザーが、瞬く間に世界を揺らし、鎌鼬をまるごと飲み込んだ。




ありがとうございました!

処女作の書き方見てると、恥ずかしくてたまらない。

前よりも書き方がマシにはなった……と信じたいなあ(白目)

短編の話を前書きにしましたが、近いうちに上げようとは思ってます。
その「近いうち」がいつになるかはわかりませんが、よければそちらも見てくださいな。

ではでは!
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