お久しぶりです。
まあ……お久しぶりです(白目)
一ヶ月どころか、二ヶ月遅れてしまいました。
申し訳ない、の一言に尽きます。
ちょっと長く6000字、そして、一期終了時にもらった支援絵を後書きに貼りますので、許して。
では、本編どうぞ!
――吹き飛んだ。
轟音を、砂埃を、激動を巻き起こして、幻獣をレーザーが飲み込む。
それはほんの数秒で終わりを迎え、辺りに静寂が駆けつけた。
……悲鳴もなしに、幻獣は消え去っていた。
跡形もなく、消し飛んだ。
「……あぁ」
力を無くして地に座り込んだ俺の口から出たのは、感嘆だった。
今までの対幻獣戦、対アイデアライズ戦、全てに苦戦を強いられた。
命さえも捧げ、全力をたった一撃に乗せたことさえあった。
鎌鼬戦では、過去一番に楽な戦いと言っても過言ではないだろう。
俺の傷も、比較的浅いものなのだから。
――問題なのは、それが
以前の皆の実力を、完全に把握しているわけではない。
だが、少なくとも皆は、以前の倍は強くなっている。
特に妖夢は、日々の鍛錬を怠っていないためか、二倍では足りない数字だろう。
結果だけ見れば、史上最高の快勝。
全てを考慮すると、先行きが不安な僅差での勝利。
唯一わかったことは、幻獣は確実に、格段に強くなっているということ。
「お疲れ様でした、天君」
「お疲れ、天。さすがは私の相棒」
「……ありがと」
妖夢に手を差し出され、立ち上がる。
だが、まだ足に力は入らず、そのまま妖夢に倒れ込んだ。
「うっそだろ、おい……」
「よく頑張りましたね、天君。取り敢えず、永琳のところへ行きましょう。まずは、傷をどうにかしないと」
妖夢は俺の頭を撫でながら、囁いた。
……やはり、俺の
もたれながら、改めて思う。
「あらあら、戦いが終わってすぐイチャついていますわよ霊夢さん」
「おほほ、仲がよろしいことですわね魔理沙さん」
「か、からかわないでください! 私はただ、天君が心配なんです!」
子供らしい言い訳は、他でもない二年前の彼女と同じ。
いくら時が経っても、妖夢が妖夢であることに変わりはないらしい。
不思議なものだ。これだけでも、笑えてくるのだから。
「ほら、さっさと行きますよ」
俺の右肩を持ちながら、ふらふらと空を飛ぶ。
それを見かねたらしい二人も、俺の左肩と後ろ襟を引っ張り始めた。
……なんだこの体勢。しかもちょっと苦しいんだが。
竹林を空中を通ることでショートカットして、永遠亭に直行。
その荘厳な佇まいの建物も、いつの日かと変わっていない。
ドアを開けて、来客を知らせるベルが鳴った。
だが、医者は待てど暮らせど来ない。
このベルは一体何のためについているのか、甚だ疑問である。
既に通い慣れた一室へ向かい、ドアを開く。
部屋の中には、カルテを眺める痩身な女性医師がいた。
「……帰って頂戴」
「おいおい、ひでぇなその対応。二年ぶりだろ? まあ仲良くしようや」
「私は貴方を何度診察したと思ってるのよ。これ以上忙しくなりたくないの」
彼女の持つ能力、『あらゆる薬を作る程度の能力』をフルに活かした医療術は、目を見張るものがある。
間違いなく、この幻想郷中で最高で、最悪の医者だ。
俺が何度も負傷するのが悪いのだが、その度に新薬の実験台にされたものだ。
失敗こそ、ただの一度もなかったものの、こちらとしては恐怖しかない。
「師匠、持ってきましたよ――って、天さんじゃないですか!」
薬を取ってくるように言われたのか、一匹の兎が薬を両手に持って入ってきた。
兎と言っても、二足歩行だし、永琳に同じく痩身だ。
永琳の助手にあたる存在で、弾幕ごっこの腕も中々だと聞く。
名医の助手という立ち位置故に、永琳と共に何度も救われた。
「よう鈴仙。久しいな」
「そ、それはそうですが、その傷――」
「はい、この軟膏を塗っときなさい。それと、暫くは傷が開くような真似はしないこと」
小壺の形をしたプラスチック容器を永琳から手渡される。
中を開けると、白濁色の一般的な軟膏だった。
見た目としては普通の医薬品でも、効果は
実際に、それほど外の世界と変わらない錠剤が、驚きの効果を持っていたこともあった。
「なあ。幻獣が来たことって、もうどれくらい広まってるんだ?」
「さあね。でも、あの記者のことだから、もう人里全体に知れ渡ってるかもしれないわね」
これを、一種の幸と見るか不幸と見るか。
一般人の恐怖を煽らないように、秘密にすべき。
突然のアクシデントに備えて、存在は公開すべき。
全てを考慮した上では、後者が無難だと言える。
「はい、治療終了。もう帰れ」
「おいおい、薬渡すだけで帰れとは、こりゃまた手酷いじゃないですかええ?」
「この場で治さないといけないほどの致命傷じゃないもの」
「常連に向かってその態度、心が痛まないかい?」
「常連だからムカつくのよ。病院はしょっちゅう来るとこじゃないの。ほら、行った行った」
半ば追い出されるように、永遠亭を去る。
去ると言えど、結局自力で移動は難しいので、皆に運んでもらうのだが。
……やっぱ体勢が苦しい。
空の遥か彼方にあるのは、宇宙ではない。
細かく言えば、幻想郷では、宇宙の前に
『白玉楼中の人となる』という言葉があるように、そのまま、死した者が彷徨う場所だ。
そうは言えど、死んだ者の魂がふよふよと浮遊しているだけの場所。
妖夢の隣にも半霊という白い魂が浮いているが、こちらは妖夢の半身だ。
結局のところは、骸骨や幽霊などのホラー的存在はない。
――いや、こいつがいたか。
「あら、お帰りなさい」
水色の浴衣を左前に着た彼女は、白玉楼で茶を穏やかに飲んで俺達を出迎える。
『死を操る程度の能力』を持ち合わせた、亡霊。
亡霊の名からわかるように、彼女は既に亡くなっている。
妖夢を庭師兼従者に持った、この白玉楼の主。
彼女の能力を理由に、この白玉楼の魂の管理を任されているらしいが、特に今までそんな動きを見たことはただの一度もない。
要するに、何もしていない。
「おうおうおう、随分と優雅なことだな」
「お帰り、天。女の子三人に囲まれて、両手に花ってやつかしら? 私も入れたら、両手両足に花ね?」
「浮気は許しませんから」
おかしいかな、何もしていない俺が妖夢に怒られている。
理不尽極まりない、とは正にこのことだろうか。
「妖夢、昼食作ってきて頂戴。翔を手伝ってあげて」
「は~い……えっ?」
「翔がねえ――翔!?」
俺の友人、
二年前、俺と同時ではないが幻想入りを果たし、共に幻獣と戦ってきた。
今思うと、『英雄』の片割れとして、彼が
「何で翔をこっちに寄越してくれなかったんだよ」
「仕方ないじゃない。翔がここに来たの、つい数分前よ?」
察するに、紫がサボったか。
元々、紫は夜行性らしいので、俺を呼んだだけで手一杯だったのだろうか。
幻想郷の危機に、呑気なものだ。
妖夢は台所へ、霊夢と魔理沙は一言だけ挨拶をして、白玉楼を発った。
静かに時が流れる中で、この場にいるのは俺と幽々子の二人。
「……本当に、お疲れ様。お帰りなさい」
「ああ、ただいま。今回の幻獣には、大分苦戦したよ」
「ブランクがある中、よく頑張った方よ」
相変わらずお茶をすすりながら、彼女は告げる。
服を脱いで軟膏を塗りながら、考えた。
幻獣が、何の理由もなしに現れるはずがない。
様子からして、自意識を持って暴れているわけではない。
以前と同様、瘴気で使役されているのだろう。鎌鼬のオーラを見れば一目瞭然だ。
二年前は、アイデアライズがそうやって幻獣を操っていた。
間違いなく言えること。
それは、また幻獣とは別に、
「体力も随分落ちているようね」
「御陰様でな。最近、体動かしてないからな~」
「あっ、そうだった! 天、ちょっと見ててよ」
今まで静かだった栞が声を上げて、俺に呼びかけた。
会話を切り上げてすぐに、俺の中で霊力の充足感が消えてなくなる。
消えた霊力の持ち主は――栞は、ピンク色の髪をした幼い少女は、俺の目の前に立っていた。
俺の記憶では、栞が現実に現れることは一度もなかった。
霊力の部屋を俺の中で作って、その中での対面はあった。
だが、こうして本当の意味で面と向かって話すのは、案外初めてだったりする。
「マジか。出られるようになったのか」
「そそ。どーよ、この可愛さ!」
両手を上げて、目の前で一回転。
白いワンピースがひらひらと揺れる彼女の姿は、確かに可愛らしい。
「はいはい、可愛い可愛い」
「うっわ何そのあしらい方。ひっどいな~、乙女に向かってその口調は」
「そうだよ、天。すっごく可愛いよ、栞ちゃん」
男にしては高い、中性的な聞き覚えのある声が聞こえた。
振り向くと、やはりそこには、翔が立っている。
料理を作り終え、運んでいる最中のようだ。
「ほら! やっぱモテる翔とモテない天は違うねぇ」
「うるさい。妖夢以外の女にモテても仕方ねえの」
「うわ~、一途だねホント」
「……やめてください。聞いてる私が恥ずかしいですから」
嬉しいような、恥ずかしいような表情で、翔に続いて料理を運んでくる妖夢。
しかし、俺が言っていることも事実。
今のところ、妖夢以外に興味なんてないし、別れるような理由もない。
そう考えながら、簡単に食事の準備を進めていた。
昼食を食べ終わった後、幸いにも取材が来ることはなかった。
あのブン屋も、さすがに気を遣ってくれたらしい。
二年ぶりに入る自室は、そのままの状態だった。
懐かしい雰囲気に浸りながら、俺と妖夢は畳の上でくっついていた。
「……貴方にもう一度会えるなんて、夢みたいです」
「本当だよ。もう会えないと思ってたもんな」
現実世界に戻ることを選んだ俺が、妖夢をそのまま連れて帰るわけにもいかない。
必然的に、妖夢とは一生会えなくなる――はずだった。
「まさか、別れたことになんて、なってないですよね?」
「なってるわけないだろ。ほら、これ見てみろ」
徐に、自分の首から下げていたネックレスを外して、妖夢に見せる。
まだ幻想郷にいた頃に、二人でお揃いのネックレスを買ったのだ。
それをずっと、外出する時は肌身離さず付けていた。
「まだ、付けてくれていたんですね」
「お互い様だろ。ほれ」
今度は、妖夢にかかっているペンダントを持ち上げた。
決して特別なデザインでもない銀のリングのついたネックレスだが、俺達にとっては何物にも代えがたい代物だ。
確か、妖夢に当たるはずだった敵の攻撃を、ネックレスのリングが弾いたこともあったか。
「当たり前じゃないですか。何十年も、何百年も付けているつもりでしたよ?」
「そりゃ嬉しいことで」
「……複雑です。天君に会えて嬉しいんですが、それは幻獣が現れたから。幻想郷が危ない時が、私の望む時間みたいに感じてしまいます」
本来、俺と妖夢は会わない――いや、
俺が二度目の幻想入りを果たすこと。それは、他でもない幻想郷の危機が迫っている時なのだから。
「夕食のお買い物、行ってきますね。安静にしていてください」
妖夢は立ち上がって、部屋を出ていった。
戸を閉める彼女の顔は、一瞬で見てわかるほどに、沈んでいた。
―*―*―*―*―*―*―
「これで、お終い? そんなはず、ないでしょ?」
暗闇の中で呟く。
「全く、舐められちゃ困るなぁ」
暗闇の中で、呟く。
「……まだまだ、これからだってのに」
―*―*―*―*―*―*―
「お~、あやつ、鎌鼬を倒しおったぞ。名は何と言ったかえ?」
「新藤 天、と」
「さすがは、栞を連れているだけはあるのう。妾は嬉しいぞ」
彼女の体躯に似合わない喋り方だ、と思う。
どこからどう見ても、幼い女だ。
なのに、この話し方。もう慣れているのだが。
「それに、あの剣士も強いじゃないかえ? 名は?」
「魂魄 妖夢、と。ただ、彼女が強いのは彼女の存在だけが理由ではありませんよ」
「……? どういうことかの?」
「連携ですよ。鎌鼬の両足が切れた時、新藤の意志を魂魄は汲み取っていました」
言葉を交わさずに、あれだけの連携。
二年間、新藤は不在だったらしいが、本当にそうなのかと疑いたくなる。
「ほえ~、相当にお互いを信頼しておるんじゃなあ。まあ、妾の敵ではないがのう」
この言葉には、私は首を縦に振らざるを得ない。
事実、あの二人が今の二倍……いや、
「会う時が楽しみじゃ……のう、栞や。にしても……あやつはどこじゃ? そろそろ、妾も限界なのじゃが」
「恐らく、死んでいますよ」
「そうなのか? どうも、そんな気がせんのじゃがなあ」
……死んだはずだ。
生きているなど、信じられない。
そして、彼女が依存しきっているこの状況は、何とかならないものか。
あいつと関わる度に、嫌な予感がしてならない。
―*―*―*―*―*―*―
――油断していた。
妖夢達が夕食を作っている最中のことだ。
肌を刺す痛みと寒気が、霊力を伝って全身へ巡った。
「行ってくる、幽々子」
「待ちなさい。貴方、傷は――」
「何のために俺が来たのか、わからねえだろ」
夜桜を手に取って、背中にかける。
毒々しい緊張感のような、名状しがたい、吐き気のような感覚。
明らかに、瘴気だった。
これを感じることは、どんな状況を示唆しているのか。
――
初めてのことだ。
一日に、二度も幻獣が襲来してくるなど。
少なくとも、一ヶ月は間が開いていたというのに。
「行きますよ、天君。大分遅れていますから。無理はしないでくださいね」
「そうそう。無理したら、足引っ張るだけだからねえ」
妖夢も翔も、俺を止めようとはしない。
止めても無駄であることが、既にわかっているからだろう。
ありがたい、の一言に尽きる。
毒気のある瘴気を辿りながら、途中で霊夢達と合流して、現場へと飛んで急行する。
妖夢も言っていた通り、異例の出現のため、対処が遅れている。
全速力で向かい、もうそろそろで到着だろうというところで、突如。
「……天君」
「ああ、消えたな」
「どういうことだと思う?」
翔の質問に、答えかねた。
正しくは、自分の出した答えに疑問を抱いた故に、答えられなかった。
気配がなくなったということは、
ただ、本当にそんなことがありえるのだろうか?
俺達が来る前に、幻獣が倒される、などということが。
紫色の残滓が空へ舞い上がる中、人影があった。
――
「おい、大丈夫か!」
大声で駆け寄って、人影の元へ着地した。
「ああ、貴方が新藤 天さんですか。どうも、こんにちは。いや、もうこんばんは、ですかね?」
呑気で丁寧な口調で、紫色の瞳の彼は非現実的な現実を告げた。
「幻獣なら、
すぐに、号外の記事が人里へと出回った。
幻獣討伐から、数分も経たずに発行された、その記事は。
『二代目の英雄、現る!?』、と大きな見出しを貼り付けていた。
ありがとうございました!
Heroは英雄、ということで、そのまま二代目の英雄、ですね。タイトルは。
私、敵の視点をちょこっとだけ入れる節がありまして。
途中二つ、それっぽいのがありましたよね? あれです。
一期の方では、アイデアライズの一つだけだったんですがねぇ。
さてこちら、前書きに書いてあった、支援絵です!→
【挿絵表示】
栞ちゃんだ! 満面の笑みが光るね! 彼女らしいいいいい。
可愛く仕上げてもらえて、私も嬉しいですよ。
こちら、腐れテンパ様から頂きました。
本当にありがとうございます!
ちゃんと、公開の許可も頂いておりますので、ご安心を。
何か挿絵とか、支援絵が来たらこのように載せていくつもりです。
送っていただけて、公開の許可まで取れれば、ですけど。
もし送る時は、ツイッターのDMとかハメのメッセージにどうぞ。
ではでは!