東方魂恋録 The Second Existed   作:狼々

5 / 16
どうも、狼々です!

いや~、遅くなった()
夏休みなのにお盆が学校とか、それマ?
取り敢えず、これで一章は終了かな。
ちょっと短いけども、いいでしょ、多分(´・ω・`)

そしてお知らせ。支援絵を頂きました!
詳しいことや絵そのものは、後書きの方に載せますね。
では、本編どうぞ!


成瀬という男

「……倒、した……?」

「ええ。僕が、一人で。案外、手応えありませんでしたね」

 

目前にいる紫色の瞳を持った男は、簡単に言った。

見た目から推測するに、(よわい)は俺と同じか、それ以下。

 

とてもではないが、彼の言葉を信じることはできなかった。

たった一人で、幻獣を排除することなど、不可能に近い。

現実味を帯びない真実は、彼の口からいとも容易く語られる。

 

「取り敢えず、人里に報告に行きましょう、新藤さん」

「え、あ、あぁ」

 

彼は戸惑う俺を置き去りにするように、途轍もない速度で人里へと飛び立った。

なんとか追いつこうと加速を続けながら飛行したが、ついに追いつかないまま人里に到着。

ほぼ全速力だった俺に対して、彼はまだ、涼しげな顔をして幻獣討伐の報告を行っていた。

 

人里の皆から、わっと歓声が湧き上がる。

それに笑顔で答える男に、不思議と形容し難い不快感を感じずにはいられなかった。

 

そして、群衆の中から、零れ落ちた。

 

――()()()()()()、と。

 

「いやあ、そんな……そうだ、新藤さん。貴方の噂はかねてからお聞きしていますよ? お強いんでしょう?」

「……だったら、どうした?」

「僕と、一戦交えませんか?」

 

その一言が、群衆の導火線に火をつけた。

盛り上がる会場と、人々で取り囲まれた円形の闘技場が自然に作られる。

 

「本気で言っているのか? お前、()()()()()()()()()?」

 

あり得ない、と思った理由の一つとして、この男が全くもって武装していないことにある。

ロクな武器も持たず、幻獣を完全に討伐できるとは思えない。

妖夢や咲夜の刀やナイフはわかりやすいが、霊夢や魔理沙の御札やミニ八卦炉といった、アイテムに近いものも武器の一種だろう。

だが、彼に武器の類のものは何一つ見つからない。

 

「ああ、大丈夫ですよ。――錬成」

 

彼は小さく呟いてから、右手に雷が集まった。

雷というよりも、紫色の霊力が激しくぶつかり合ってできた静電気が弾けているのだろうか。

彼の霊力が螺旋状に強く結びついた後、突如剣の形に凝縮し始める。

 

彼の右手には、紛うことなき一本の剣が収められていた。

単に、霊力が集まっただけではない。

本来は不可能だとされていた、霊力の物質化。

原因不明ながらも、俺の刀、夜桜を形作ったときと同じ原理だ。

それを、意図的に行ったというのか。

 

「じゃ、寸止めでいいですよね?」

「手加減するつもりはないぞ」

「ええ、問題ありません。僕が手加減できますから」

 

俺は高圧的に言ったつもりだったが、涼しい顔のまま返される。

その返答に、心のどこかで苛ついていることを否定できなかった。

 

観客に囲まれる中、互いに各々の構えを取った。

 

「いつでも来い」

「では、いきますね」

 

彼は確かに、笑顔で答えた。

その直後、紫の瞳が、鋭い覇気を纏ったが最後。

 

彼の姿は、既に俺の視界から消えていた。

 

「はい、おしまいです」

「は……?」

 

後ろから、声がした。

ゆっくり振り返ると、彼が歪んだ笑顔で俺の肩に剣を構えていた。

背後を取るような時間なんて、なかったはずだ。

反応すら、できなかった。

その事実を、受け入れることは簡単にはいかなかった。

ただ、大きな歓声が、俺を泥沼の現実へと引き戻すまでは。

 

「ん~、手加減したつもりなんですけどね――おっ、貴方、強そうですね。僕と、やってみません?」

 

俺には既に興味はないように、宙に指を彷徨(さまよ)わせる。

そうやって、指で指し示した先は、妖夢がいた。

 

「私は剣を道楽に使ったり、己の実力をひけらかすような愚か者ではありませんので」

「いいじゃないですか、一戦くらい。訓練の一環、ということで」

「しつこいですよ。私はやらないと――」

「弟子がこんなにあっさりと負けちゃって、苛立ってるんですか?」

 

彼の言葉に、妖夢の表情が明らかに歪む。

怒りで満ちた顔を一瞬だけ見せて、すぐに表情は消えた。

 

「ええそうですね。愛弟子をこうも雑に扱われると、正直腹が立ちます。手加減ができそうにありませんので、身を引くことをおすすめしますが」

「だから、さっき言ったじゃないですか。僕が手加減できる、って」

 

男は、絶えず口をつく。

冷静になってから、さらに実感が湧いてくる。

俺はあいつの動きを目で追うことすらできず、一瞬で敗北したのだと。

 

剣技の程こそ、ほぼ見ていないのでわからない。

が、今の動きから考えるに、相当な強さであることは間違いない。

――それこそ、俺を遥かに超えてしまう程に。

 

「……少しです。一回で終わりにしますよ」

「さっすが、話がわかるお嬢さんですねえ。で、そっちの短刀は抜かないんですか?」

「必要ありません。御託はいいですから、早く始めてください」

 

戦場に立っている妖夢は、明らかに不機嫌そうだった。

俺が負けたことへか、俺への対応か、はたまた別の違うものか、両方か、全部か。

とにかく、尋常ではない嫌悪感を表していることはすぐに見て取れる。

 

「では。……アンリーシュ」

 

確かに、彼は呟いた。

アンリーシュ――unleash、だろうか。

意味は……()()()()

同義語には、liberateが入るのかもしれない。

 

頭に過った瞬間、爆発が起きた。

否、爆発が起きたという()()

 

凄まじい量の霊力が、竜巻の如く巻き上がる。

局地的な台風が訪れたのか、そう感じる程に風が吹き荒れている。

妖夢は驚きこそしていないものの、警戒の色を初めて見せた。

 

リベレーション、解放。アンリーシュ、解放する。

意味合いとしては――正に、俺のそれと酷似どころか同類。

戦闘の実力は、圧倒的とも言える程差を開けて俺が劣っている。

 

で、あれば……俺は一体、何なのだろうか。

そう考えると、俺の成り代わりともなれる彼に、冷や汗をかかずにいられなかった。

 

彼が地面を蹴って進んだのは、音が伝わる前だった。

当然俺の目で追えるはずもなく、一瞬で視界から消えてしまう。

砂埃と轟音と爆風が巻き上がり始めた頃には、両者は既に剣は鍔迫り合いを始めていた。

 

妖夢はあの速度に反応して、剣の通るコースを予測して間に入れたらしい。

繰り広げられる現実離れした激戦に、圧倒されるばかり。

必然的にオーディエンスが湧き上がる中、男は未だに笑顔を見せている。

 

「さっすが。今のを耐えますか? 普通」

「貴方も、やはり口だけではないようですね」

 

男は退いて、間合いを詰めてを繰り返す。

妖夢は防戦一方で、攻めようとはしない。

多少なりとも、妖夢になら突けるだけの隙はあるように思えるのだが。

 

三十秒くらいその時間が続いてから、男は攻撃をやめた。

 

「やり返されないと、僕も面白くないんですけど」

「手加減できると言ったはずです。私がその気になれば、すぐに終わると思いますよ」

「へぇ。すごいじゃないですか、じゃあやってみてくださいよ」

「そうですか。では」

 

妖夢は、駆けた。

風神の疾風に背中を押されるような速さで、男の背後に回り込む。

男の後ろを完全にとった、と確信したときだった。

 

尋常ではない反応速度で、彼は振り返る。

男の肩の上で止まるはずだった楼観剣は、錬成された剣に阻まれた。

 

「意外と根に持つタイプなんですね。僕と同じような動きで終わらせようとするだなんて」

「お返しですよ。ですがはっきり言って、止められるとは思いませんでしたが」

「そりゃどうも!」

 

剣を弾いた勢いを縦への回転にそのまま乗せて、男はバックハンドの不意打ちを仕掛けた。

彼が霊力錬成で生み出した武器は、刀ではなく剣だ。

日本刀でいう峰に当たる部位が、西洋の剣では存在しない。いわゆる、諸刃というやつだ。

 

峰打ちという技術もあるが、このワンマッチにおいてそれは殆ど無意味だ。

刃よりも抑えたダメージを与えることが目的の峰打ちは、寸止めだと関係ない。故に、わざわざ峰打ちである必要がない。

さらに、防御手段が一切ない背中を自ら進んで見せる、それは自殺行為に等しい。

つまるところ、バックハンドでの攻撃自体がひどく愚策である、と言ってもいい。

 

ただ、それは通常時に限った話である。

峰打ちを含むバックハンド自体があまり使われない技なので、対応が遅れやすい。

不意を突いたバックハンドなら、背中へ反撃される確率を最小限に抑えられる。

寸止めすれば勝ちのこのルール上、ガードを崩すよりも不意を突く方が確実なのだ。

 

思いもよらない一撃に、妖夢は――驚くことはなかった。

表情を一切変えず、剣を楼観剣で流した。

 

ただ、それだけではない。

まるで刀を鞘から抜くように、楼観剣を男の剣に沿って押し出している。

やがて武器同士の衝突は終わった。

 

妖夢が男の攻撃を受け流した。瞬間、誰もがそう認知した。

が、それだけでは終わらない。彼女は終わらせはしなかったのだ。

 

接触が終わった直後、男の剣は当然、横に流された。

 

 

 

――否、そのまま()()()()()()()

対する妖夢は、楼観剣を彼の剣に滑らせた勢いのまま、()()

 

完全に受け流すのではなく、ギリギリ当たらない程度に軌道を僅かにズラし、そのままコンパクトな攻撃へと移ったのだ。

彼女は一つのアクトに防御だけでなく、攻防を両立させていた。

 

完璧な不意打ち。不意打ち返し。余裕を保っていた男の顔にも驚き一色が浮かんでいた。

燕返しという下からすくい上げるような剣技もあるが、どう考えても間に合わない。

避けるにしても、重心は剣を振り下ろすために前に残っているのでそれも不可能。

 

男の体勢が安定したときには、既に桜観剣が男の喉元の前で止まっていた。

 

「……さっすがぁ」

「終了です。私達はこれで失礼しますから」

 

歓声が鳴り始める前に、刀を収めた妖夢は静かに俺の元へやってくる。

 

「後で、話がありますからね。行きますよ」

「……ああ。わかった」

「待ってくださいよ。特に、新藤さん」

 

男は俺を名指しで呼び止めて、振り返ったのを確認した後に告げる。

 

「僕は成瀬(なるせ) 白夜(びゃくや)です。自己紹介が遅れて申し訳ない、新藤さん」

「そうか、覚えとくよ。あと、俺の名前知ってんなら天で構わない」

「わかりました、新藤さん」

「……そうかよ」

 

別に、今となっては気にしていることでもない。

幻想入りをしてからというもの、『神童(しんどう)』とはかけ離れた生活をしていたからだろうか。

それとも、幼かった精神が成長したからだろうか。

白夜のわざとらしい言葉が、(かん)(さわ)ることはなかった。

 

 

 

「で、どうだったの?」

「はい。幻獣は一人で――成瀬 白夜という方によって討伐されました」

 

夕食を終えて、妖夢は幽々子と紫に報告をしていた。

この二人が並んでいる光景も、随分と久しぶりに拝むものだ。

鮮やかな月光を授かる彼女達の表情は、それとは対照的に難しい顔をしていた。

 

「彼の要望で、私と天君が寸止めを条件に手合わせをすることになりました。結果は、天君が敗北、私が勝利です」

「天が、負けたの?」

「ああ。それも一瞬だった」

「俺にも見えなかったよ。目にも留まらぬ、ってのはああいうのを言うんだろうねえ」

 

いつもなら笑っているであろう翔も、考え込んだ表情を前に出した。

ただ、それ以上に妖夢は険しい顔をしている。

 

「私は……あの方は、十分に気を付けるべきだと思います」

「どうして?」

「私が剣で受け止めなかったら――恐らく、()()()()()()()()

 

皆一様に驚きと疑いの色を見せるが、それほど不思議なことでもない。

アンリーシュ、と呟いた後の突進。バックハンドでの不意打ち。

どちらも、途中で止めることを想定した威力や体勢ではなかった。

どうやら翔も、それには気付いているようで。

 

「ま、薄々わかってたけどやっぱそうなのね。幻獣を相手にしてたから敵じゃないと思うけど、これから先、連携とか取れるのかな」

「さあな。ただ、ヤツに連携は要らないのかもな」

 

今日の一対一の積極的な申し込みを見る限り、自信は持ち合わせているのだろう。

事実、その結果がこれだ。

 

「考えてたって仕方ないわ。今日はお疲れだろうし、早めに寝なさい。天と翔も、急に戻ってきてもらっちゃって本当に申し訳ないわ」

「だいじょーぶ、こっちの方が何かと楽しいし」

「俺はまあ、別に。妖夢にも会えたし」

「あら、ずっと会いたかったアピールかしら?」

「天君、こういうところありますからね~。私が恥ずかしいですよ……」

「よっしゃ、今日は五人で寝よ~!」

 

――騒ぎ始める縁側が、俺にはどこか羨ましくも思えた。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

「それで、何なのかしら?」

「私からお尋ねしたいことがありまして」

「聞いてるわよ、だから個別に来てあげてるんじゃない。その内容を聞いてるのよ」

 

私は三人とは別に、紫様と二人で話すようにお願いした。

三人が眠ったのを確認済みなので、誰かが来ることはない。

今回、どうしても気になったことがあったのだ。

忘れたように、暗闇の中を桜の花びらが落ち始める。地面に着いたとき、自然と私の口は開いた。

 

 

 

「……天君の能力、()()()()()()()()()()()()?」

「…………」

 

今までは、疑うことすらしなかった。

彼自身のセンスもあってか、剣技の上達には目を見張るものがあった。

ただ、今日の戦闘といい、成瀬君との一対一といい、おかしい。そう感じた。

 

たった一年、されど一年。そうとは言うものの、一年であれほど実力が落ちるとは思えない。

少なくとも、あの一対一が一瞬で終わり、目で追えないというのも、以前ならばなかったはずだ。

反応できなくとも、気付くことはできたはず。

 

彼の努力で勝ち取ってきた勝利は、確かに彼のものだ。

同時に、修行と戦闘で得た技術と経験も彼のものだ。

私達の応援が遅かったとはいえ、あれほど傷つくものだろうか。

幻獣が強敵であることに間違いはないが、防御に徹すればダメージを重ねることはないはず。

僅か一年の間で、命がけで培ってきたものの大半が崩れたとも考えにくい。

 

「答えてください。彼の能力は、『努力が実りをもたらす程度の能力』なんですか? それとも、そもそも能力を持っていない? はたまた――()()()()()()()()()んですか?」

 

そうして、彼女は目を細めて、こう言った。

 

「……さあ、どうでしょうね」




ありがとうございました!

さて、支援絵を、頂きました、それも二枚!


【挿絵表示】



【挿絵表示】


はい、妖夢ちゃんと栞ちゃんです。
まーあれっすね、支援絵って送ってくれるもんなんすね。正直驚いたもん(´・ω・`)

こちらの二枚、羅雲様に送っていただきました!
可愛いお二方を笑顔で描いてくださり、ありがとうございました!
……なんか、こういう言い方すると私がお願いして描かせたみたいだね()

他に支援絵を頂けたら、許可を取り次第後書きに載せていこうかと思います。
送る際は、ツイッターのDMかハーメルンで私宛てのメッセージに載せてください。

更新はこの通り遅いですが、更新のときにツイッターに告知しています。
タイミング知りたい方は、下のIDからどうぞ。狼々@ハーメルン、ってツイッターでユーザー検索で出るとは思うけど。
あ、趣味垢含めてるんで、普通のことつぶやきますし、リプライもしますよ~。

→@rourou00726

ちょっと長くてごめんね、もうちとだけ。
天君の能力、『努力』なのかそうじゃないのか。
今は皆様のご想像に、おまかせしますね(*´ω`*)

ではでは!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。