吉良吉影は潮流へ 〜Another One Bites the Past(過去に食らいつけ)〜 作:Mr.アップルパイ
「着きましたよ。
ここがドイツ軍の研究施設…………………スピードワゴンさんが幽閉されている場所です」
「スピードワゴンが…………
くそっ、一体何があったんだ!?」
ジョセフが悔しそうに言う。
そこへ、財団の者が申し訳なさそうに話しかけた。
「残念ながら、私が同行出来るのはここまでです。
─────どうか、スピードワゴンさんをよろしくお願いします」
そう言い残し、彼は車に乗って去っていった。
砂漠の砂の上でも、彼のバギーは難なく遠ざかる。
「さて、まずはあの門番をどうにかしないとだな……………………ん?」
ジョセフは、2,3kmほど離れたドイツ軍施設の屋上から、何か黒い点が落ちるのを見た。
───────否、落ちていると言うよりは、ジョセフに向かって滑空してきていた。
よく見れば人型のようにも見える。
「…………………黒髪の男ね」
視力には自信があるというベルが確認する。
徐々に距離を詰めてくるそれは、確かに黒いロングヘアーの男だった。
「敵か!?こんな砂漠じゃ糸の結界は張れねーぜ!?」
その点は、少しずつ大きくなっていく。
しかしジョセフと男の距離が300m程になろうかという時、異変は起こった。
────────いなかった。
黒髪の男が、どこにもいなかった。
否、消えたと表現するのが正しいだろうか。
慌てて周りを見渡すも、悠然と立つサボテンら以外には何もない。
「どこ行きやがったーーッ!?急に消えて───────────!?
痛ってェェェ──────!」
ジョセフの右肩に突如、穴が空く。
まるで木の棒が貫通したかのように、丸い穴だ。
そしてその穴からは黒い煙がでていた。
「なんだってぇぇェェェェ──!!?
どうなってやがる!?」
右を向く。いない。
左を向く。いない。
後ろを振り向く。────やはりいない。
男はどこにもいなかった。
しかし、ジョセフがその男に攻撃されたこともまた確かな事実である。
敵は確実に、どこかから彼らを狙っている。
「次はどこからだ!?
どんな手段で攻撃してくる!?」
ジョセフは身構えながら周りを警戒した。
しかしそこへ、男の低い声が響いた。
「JOJOォ────。頑張って周りを警戒しているな?
そして、いつの間にかサボテンに糸を引っ掛けて結界を張っているのも気づいているぞ?」
ジョセフがギクリとした。
男の言う通り、彼は既に自身のスタンドで結界を作っていた。
砂漠のような平地では括り付けるものがないせいで作れない結界だが、サボテンによって簡易的なそれを成し遂げたのだ。
ジョセフの額の汗が、日光を反射して光る。
「フハハハハ!!JOJO!実に滑稽だ!
ああ、まぬけなJOJOよ!
貴様は祖父ジョナサン・ジョースターとは違い、冷静な策士だと聞いていたが………………どうやらそれが仇となったようだな!!
既になぁ、JOJO…………………既に私の攻撃は終わっているんだよ───!」
男の甲高い笑い声が響く。
彼を体勢を見ると、宣言通り既に攻撃を終えたようだった。
満足気に笑っている。
「フハハハハハハ!!遂にやったぞ!このストレイツォが、ジョセフ・ジョースターを遂に……………………………む?」
ストレイツォと名乗る男は笑いながらあることに気付いた!
本来なら自分の攻撃で穴だらけになっているはずのジョセフ・ジョースターが未だに立っている────────────悠然と、笑みを浮かべながら立っていることに気付いた!
「ストレイツォって言ったら確か、俺のじいちゃんの知り合いだよなぁ?
そんなやつがその若い姿でここで戦ってるって事は─────────いわゆる吸血鬼ってヤツだよなぁ!?」
「なっ!?─────何故だ!?何故生きている!?
確かに攻撃は終わって……………いや、そんなことよりも、若い姿、だとォォォ!?
私の姿は見えていないはずッッ!」
「攻撃は終わっているだって?
─────ストレイツォ!
攻撃が終わったって言うのは、よー?
100%の自信と、プラス100%の確信を持って言うもんなんだぜ〜〜〜〜ッッッ!!」
ジョセフがとある方向を指差す。
そこには
彼の目にはたしかに人の姿が見えていた。
いいや、正確には人の輪郭だ。
人の形をした砂漠の背景が、そこに佇んでいた。
その部分だけが、異空間への穴が空いているかのように砂漠の背景だったのだ。
後ろに軍の施設があるのにも関わらず、である。
「ストレイツォ!てめーの能力、完全に理解したぜ!!
てめーの能力は、『光』!!光を操る能力だ!!
その能力で自分の周りの光を逸らして透明人間みたくなっているんだ!
だから本来届くはずの施設の光じゃあなく、曲がってきた砂漠の光が俺たちの目に届いてる!
だかな、ストレイツォ───────。
後ろのサボテンや施設が人型にくり抜かれたように見えてるのにも気付かねーてめーはよ────────。
まるで、ケツのウンコを拭き忘れたヤツみてーに、最高に間抜けだったぜーーーッッッ!!」
ジョセフの操るハーミット・パープルがその空白へと伸びる。
その茨は確かにその空間にいる者を捉え、がんじがらめに拘束していた。
「そして動けなくなったてめーにプレゼントだ!!
俺に向かって放たれた日光のお返しだぜ〜〜!!!」
そこまで聞いてストレイツォは、今初めて、ジョセフが自分の攻撃を受けずに済んだ理由を理解した。
彼の手には光る物が握られていた。
(あれは…………手鏡ッッッ!!
まさか近くのあの女からいつの間にか取っていたとでもいうのか!)
ストレイツォが放った光は既に軌道を変えて彼自身に向かっていた。
そこで彼は改めてジョセフの狡猾さを理解した。
頭の回転の速さが尋常ではない。それこそ光の速さでも追いつかないほどに。
しかし、ストレイツォはハッと自信を取り戻す。
「いいや、無駄だ!!
JOJO、忘れたのか?私の能力は──────」
ストレイツォに合わせて、ジョセフも口を動かした。
「「光を操る能力なのだ!この光、今度は貴様がはね返せないように、軌道を複雑にして返すのみ!」」
「───だろ?」
「ハッ!」
ストレイツォが自分に返ってきた光を再びはね返す。
そこで、自分の体がやけにぬめっていることに気付いた。
「これは………………油────────!?」
「てめー、さっき光を逸らしてるって言ったよな?
吸血鬼は太陽光に弱いはずだ!ということは、ストレイツォ!
おめーは、太陽からの光も逸らしているはず!
てめーの周りでは今、俺たちの目に向かう光と太陽からの光、二つの光が交錯してるってことだ!!
そして今!てめーは三つ目の光を近付けたぜ!!
三筋の光と、そのハーミット・パープルに塗っておいたガソリンが意味するのは───────」
ボウッ、と音を立ててストレイツォの左腕が炎を上げた。
その炎は茨を伝って彼の全身へと回る。
「は、発火だとォォ────────!!」
ジョセフがニヤリと笑った。
「ストレイツォ、やっぱりてめー───────────間抜けだったな?」
「ぬぁぁぁぁぁぁにいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?
熱い、熱いぞおぉぉぉぉぉぉぉ」
ストレイツォが叫びを上げながら燃えていく。
まるでドイツ軍施設にぽっかりと空いた人型の穴がのたうちまわっているように見える、それは異様な光景だった。
その体も、少しずつ炭化していき、そして塵となる。
あまりにあっけなく、彼は消えた。
すかさずベルがジョセフへと駆け寄った。
「JOJO!!私の手鏡を盗ったのはいけすかないけど、ナイスファイトだったわ!!
────────って、私の鏡が割れてる!!!
ジョセフ、お詫びとしておんなじものを…………………いや、もっと高くて可愛い手鏡を買ってもらうわよ!」
その言葉に不意をつかれたようにジョセフの顔が歪む。
しかし次にはやれやれだ、と手をふらふらとさせた。
「身も蓋もねえ女だな……。
───────!?
ベル!決して見るんじゃあねえぞ………」
愚痴をこぼしていたジョセフが一点を見ながら呟くように言う。
なにかに気づいたようだった。
「も、もう見ちゃったわよ………」
ベルが思わず口を手で抑える。
集まっていた。
黒い塵のようなものが、集まって一つの塊となっていた。
それはモゾモゾと動きながら、少しずつ、少しずつ大きくなっていく。
徐々に形を成していくそれは、肉片のように見えた。
「吸血鬼………………俺は────いいや、人類は今、予想以上に危ない立場に立っているのかも知れねえな………」
そんな彼の呟きをよそに、近くの建物内ではもう一つの戦いが起きていた。
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時刻はストレイツォが燃え尽きた10分ほど前に遡る。
「次は身体検査だ!!
おまえら、スカートをめくれェ!!」
二人の兵士が身体検査と称し、自分の欲を満たしている。
女達も抵抗する手段はないようで、怒りと恥辱を含む顔で従う。
(スピードワゴン………………東方仗助の先祖の知り合いなら、何か知っているかもしれない。
まずはどこにいるか、だな。
財団の人間は地下に施設があると言っていたが………)
吉良は今、その兵士たちの前にいた。
ドイツ軍施設の前で、平然と策を実行していた。
「次!──────あ?誰だ、てめーは?」
相手が男とわかった途端、睨みつける兵士に、物怖じすることなく吉良はコインを差し出した。
「あぁ?なんだこりゃァ?」
「見て分からないかね?賄賂だよ。
これでここを通してくれないか」
吉良が戯けるように言ってみせると、兵士2人は、大声で笑い出した。
「ギャハハハハ、おめーバカじゃねーのか!!
そんなコイン一枚で賄賂だなんて、言えるかよ!
あ!?何マルクだぁ!?見せてみろよ!」
兵士が、吉良の差し出したコインを強引に奪い取り、まじまじと見つめる。
それを見て、吉良は思わず嘲笑した。
「…………………命二つ分だ、値段にすればかなりのものだと思うがね」
「あぁ!?なんだってぇ!?もう一度言って───────」
兵士が手を耳に当て、聞こえないというジェスチャーをする。
しかしそれは間違った選択だった。
手を頭に近付けたせいで、すなわちコインを頭に近づけたせいで、彼の頭は跡形もなく爆破された。
もう1人の兵士も既に息をしていなかった。
「さて………………どう忍び込むか」
吉良は、施設へと足を踏み入れた。
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スタンド名 - 『
本体 - ストレイツォ
破壊力:E
スピード:D
射程距離:D
持続力:B
精密操作性:A
成長性:C
能力 - 〔金色の指輪の形をしたスタンド。
自分から半径1.5m以内の光を自由に操ることが出来る。
ただし、一度操った光は1.5mから離れても少しの時間、ある程度の操作は可能〕