吉良吉影は潮流へ 〜Another One Bites the Past(過去に食らいつけ)〜 作:Mr.アップルパイ
また、評価つけてくださった方もありがとうございます!
「も、戻ってこいっ!!いたぞっ!
侵入者を発見した!!
────ヤツはガラスの中だ!柱の男の上に立っているぞ!
だがしかし、これは好都合だ………………この厚さのガラスを破ることは生身の人間には不可能!
マシンガンを用意しろ!
ヤツを撃ち殺すぞォォ!!!」
シュトロハイムの叫びに、侵入者を探そうとしていた部下達は慌てたように戻ってくる。
そしてスイッチが押され、ガラスの中で男に向けていくつもの銃口が向けられた。
「発射ぁぁぁぁぁぁ!!!」
彼の号令とともに夥しい数の銃弾が撃ちだされる。
土木工事の現場のようなその音が鳴り止むのには、シュトロハイムが思わず欠伸をしてしまうほどの時間を要した。
彼の長い欠伸が終わる頃には、舞い上がった粉塵は消え、あとには柱の男だけが残っていた。
そこには既に、立っていた男の面影はない。
「よぉぉーーーし。掃討完了。
それでは柱の男への血液を供給しろ!!」
このとき、装置を操作する研究員はとあるものを見た。
それがなにかは分からないが、なにかとても小さいものが下から目の前を通り、上へ飛んでいくのを見た気がした。
だが次の瞬間には上官からの命令を優先し、血液の供給を開始したのだった。
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昔の中国に、『矛盾』という話がある。
最強の矛と最強の盾を売っていた商人が、その矛でその盾を突くとどうなるのか、という問いに答えられなかったという話だ。
ストレイツォの操る光は、まさに最強の矛と盾だった。
彼の目の前には、身体中に穴が空いたジョセフ・ジョースターが倒れている。
彼は負けた。
彼の持ちうるあらゆる策を用いても決して、ストレイツォの盾を破ることができず、また彼の矛を止めることが出来なかった。
そして、ストレイツォが彼のそばに立つ桃髪の女性に向かって、──次は貴様だ──と言い放つ。
その言葉が聞こえていないかのように、女はただ呆然としている。
その瞳は、倒れる男にも、自身を狙う男にも向けられていない。
自分に指を指しているストレイツォの後ろを、見ていた。
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事態は30分ほど前に遡る。
ジョセフの周りには四つの球──────見るだけでも中にとてつもないエネルギーが含まれていることが予想されるほど高密度な光の球が浮かんでいた。
それらはただの光球ではない。
時間経過による破裂で数え切れないほどの光線が飛び出す仕組みだ。
その球を見て、ジョセフはリュックに手を伸ばす。
「JOJO!無駄だ!
今更何をしようと、貴様の死は変わらない!
それが『運命』というものなのだ!」
彼のそんな言葉を聞いてもなお、ジョセフの手は止まらない。
彼がリュックから取り出したのは、大きな、黒い布のようなものだった。
「ストレイツォ………………お前、田舎ばかりに引きこもってねーで、もっと都会に慣れるべきだったんじゃあねーの?」
満身創痍のジョセフが自信気に言う。
しかし、ストレイツォは分からないといった様子だ。
「俺の故郷の友達が言ってたんだ…………
『4』は不吉な数字だってな。
今、おめーの光の球は四つ!」
光球の一つが破裂し、光線が水風船が割れた時のように飛び散る。
ジョセフは、それに向けて布を広げた。
「な、なんだと!?(あんな布で私の攻撃が防がれるわけがない!
だが……………だが、はったりでああも自信満々でいることが出来るのか!?
──────まさかあの布には何か秘密が!?)」
光線が直進する。
彼に向かって最短距離を進んだ光線がいち早く布に命中する。
その時、ストレイツォにとって驚くべきことが起きた。
貫いた。
光線は何の抵抗も受けず、以前の攻撃と同じように布を貫通した。
その時彼は、自分の深読みが見当違いであったと思った。
「か、勝ったのか………………?」
「いいや、違うな」
砂埃が晴れ、見えたのはジョセフの姿。
彼はリュックを盾にしてダメージを最小限に抑えていた。
しかし、それでも彼の身体の傷は、十分に目立つ。
決してなにか特別なことをしたようには見えない。
「ふ、ふはは!何を調子に乗っている!?
どうやらその布も、特に意味は無かったようだな!
そんなその場しのぎの策、次の爆発で破ることが目に見えているぞッッ!!」
「───────────────お前がそれに気づいてないってことは、やっぱりおめーは、田舎モンだったってことだぜ、ストレイツォ!!」
そう言いながら、ジョセフはリュックからリンゴを取り出した。
「ストレイツォ、どうやらお前は自分の能力をイマイチよく理解していないようだ」
「いいや!ハッタリだな!
貴様の悪あがきにももう飽きた!
諦めろッ!負けて死ねぇぇぇッッッ!!」
「……………………ベルは生きてるんだ。
それどころか傷一つ付いちゃあいねえ」
ジョセフが呟いた。
決してストレイツォに対して言ったわけではなく、独り言のように呟いた。
それが、ストレイツォを不安にさせた。
ハッタリではないのか?と。
本当に、こいつには何か策があるのか?と。
そして、彼がベルと呼ぶ女の生死に何の意味があるのか。
ストレイツォがそれに気付く前に、ベルが話しはじめた。
「…………………光は私のバッグに付いている赤い宝石に集まって、そのあと一気にあらぬところに放出された。
おかしいな、とは思ってたけど…………………何か秘密が?」
それを聞いてストレイツォはハッと気付いた。
五千枚あるパズルピースの一枚目からいきなり置く場所を見つけたような、そんな感覚を覚えた。
(おそらく…………………おそらくだが、私はジョジョが気付いていないあることに気付いている………!!)
そして、カウントが終わった。
音は鳴らない。
ただ、光のみが花火のようにばら撒かれた。
「俺の推理が当たっていれば、その光は赤いものには吸収されるはずだ!
そう、ベルのバッグの宝石みてーになッ!」
光に向かってジョセフがリンゴを構える。
その瞳には大きな自信が見て取れる。
─────着弾。
リンゴに、ではない。
ジョセフの額への着弾。
本人がその時、どう思ったのかは分からない。
撒かれた光は、既に彼の構えるリンゴなど貫通していた。
ジョセフは、光線に脳を貫かれた。
赤いリンゴは、決して光を吸収などしなかったのだ。
「…………あっけない…………………あまりにもあっけないが、これが現実だ。
私の脅威は消え去った…………………」
ストレイツォが、満足そうに言う。
ベルには、何が起こったのかまったく理解できなかった。
彼らがどんな読み合いをしていたのかも、ジョセフが何をしようとしていたのかも。
しかし、彼が頭から血を流して倒れていることは紛れもない事実である。
そんな彼女に、ストレイツォが話しかける。
「そこの女。その宝石は人間が持っていて良いものではない。
すぐに私に──────────!?」
ストレイツォは、吸血鬼である。
ゆえに痛覚、痛点を持ち合わせていない。
そんな彼だからこそ、目の前で起きた事態を把握するのに時間がかかった。
ベルに集中していたから、というのもあるのかもしれない。
しかしそんなのは些細なことだ。
ボトリ、と音がした。
恐る恐るその方向を見る。
そして、その顔は絵の具でも塗ったかのように青ざめた。
「ぐうっ…………………!
私の腕だとおおぉぉぉぉ!?」
砂の上に赤い汁を垂れ流している、それはストレイツォの右腕だった。
それを拾おうと彼が左手を伸ばす。
しかし、それもまた根元からバッサリと切断された。
彼の目の前を赤い何かが通る。
それを追いかけようと足に力を込めたが、叶わなかった。
既に両足も切断されていた。
赤い物体が彼の後ろへ、回転しながら飛んで行く。
それはまるでブーメランのような動きだ。
彼はそれを目で追った。
しかし、その視界も空に移り変わる。
力を込めても前を向けない。
─────────ストレイツォは、首だけになっていた。
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ベルは、信じられないものを見ていた。
彼女の仲間で、最強の策士だったはずのジョセフが倒れている。
きっと死んだふり。彼にはまだ策が残っていて、死んだふりで相手を油断させてからそれを実行するつもりなんだわ─────。
そう思っても、彼の姿に意識は感じられない。
そして、もうひとつ信じられないことが起きた。
ジョセフを撃破したはずのストレイツォが、突如為す術もなく次々と四肢を切断される光景。
なにが起きているのか────?
目を凝らせばなにか赤いものが周りを舞っているではないか!
ベルはそれがブーメランのように戻っていく先を見て絶句した。
その先には、男が立っていた。
「ベル殿……………………でしたかな?
ごきげんよう。お久しぶり……というほどでもありませんな。
いやはや、こんなところで会うことになるとは……………」
そう言いながら笑う男。
口髭のような彫りが入ったその男を見て、ベルは自分は助かったのか、という安堵と、助けてくれたのはジョセフではないのか、という不安を抱いた。
戦闘タイプのスタンドを持たない彼になにができるのか。
しかし、不安の方は彫りの男によってすぐに取り払われる。
「ふむ…………………新しい能力をすぐに見せるのは、紳士としてあまり好ましくないのですが……………」
そう言いつつ、男はジョセフとベルをストレイツォから庇う位置に立った。
ベルがジョセフの後ろに立ち、そのジョセフの前には彫りの男、その男が見つめる先にはストレイツォだ。
「ベル殿。悪いのですが、ジョセフ殿を助けてもらえるとありがたい。
なに、簡単なことですよ。あなたが代わりに賭ければ良いだけだ」
「な、なにを言っているの………?
ジョセフはもう、既に──────」
「いいえ、彼は生きています。
なぜなら彼には意志と意識がある。
その証拠に、ほら?彼は
男の指差す先には、驚くべきものがあった。
チップ。ジョセフの傍らにはチップがあった。
しかし以前のように多くはない。
せいぜい10枚程度だ。
「SPEED GAME。私の新しい能力です。
チップ一枚が10%を受け持つ。
相手が承諾した場合に限り行える、言わばミニゲームですよ。
これならワンターン、ワンコールだ。
私は既に最大金額、賭けていますよ?
彼は今、話すことが出来ない。
貴女が代わりに賭けなければいけないのです」
それを聞いて初めてベルは、男の真意を理解した。
そして、言った。
コール───────と。
ベルの手に、いつの間にかカードが生成されていた。
彼女はそれをなんの戸惑いもなく投げすてる。
「カードの放棄──────即ち降参を意味する。
ベル殿。私を信じてくれたこと、大変嬉しく思います。
なんなら後でお食事でも奢り──────────おっと。
その話はこれが終わってからですね」
ベルがゲームを放棄したこと。
ジョセフのチップで賭けたゲームの敗北は、ジョセフの敗北を意味する。
彼の身体が紙のように薄くなり、男の持つカードへと吸収された。
「これで彼の命は、なにがあろうと失われることはない。
常に今の状態で絵柄として保存され続ける……………
──────ひと段落、ですな」
今の状態のままカードにして保存する。
なにか治療をした訳では無いが、これ以上傷が悪化しないための応急処置のようなものだ。
ジョニーは安堵したような声を出しながらも、険しい顔をして一点を見つめていた。
その視線の先──────ストレイツォが、立っていた。
その顔は怒りに塗れている。
「貴様ァ──────────このストレイツォを惨めな目に……………………………
貴様には、たった今、苦しんで死ぬ義務が生まれたぞッッッッッ!!!」
ジョニーのスタンド、成長性はBでしたね