吉良吉影は潮流へ 〜Another One Bites the Past(過去に食らいつけ)〜   作:Mr.アップルパイ

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更新が遅れてすみません。


13.吉良吉影は運命に逆らう その③

「ジョニーさん、そいつの光、なにかおかしいわ!

ジョセフが普通の光とは違うってことには気付いたけど、なぜか赤いものに吸収されるはずの光がリンゴには吸収されなかった!」

 

そんなベルにジョニーがチッチッと指を振った。

 

「いいえ、それは違いますな。

赤いものに吸収されるんじゃあない。

ベル殿のその赤い宝石に秘密があるのですよ。

──実は、一部始終は見ていました。

ジョセフ…………………やはり彼は素晴らしい策士だ。

光を集めるはずの黒い布にも、特に変わりなく光が当たることを証明し、ヤツの光は普通の光とは性質が違うことを見つけた。

しかし、リンゴで光の起動が逸れて脳を貫通されずに済んだ、そんな幸運な彼の唯一の不運は『エイジャ』を知らなかったことです」

 

そう、彼が黒い布に光を当てたのは、ストレイツォの光が普通の光と同じように黒いものに集まるのか試すため。

 

黒いものに対しても特に起動の変化を見せないというその結果によってストレイツォの光は普通のそれとは違うと確信を得た彼は、その光を吸収した宝石と同じ色、すなわち赤いリンゴで光を吸収しようと試みたのだ。

 

そして、皮肉にも見当違いな推理で取り出したリンゴによって、運良く光の軌道が逸れて、彼は即死に至ることはなかった。

 

 

ベルはしかし、そんな説明よりも、聞こえてきたある単語に興味を示した。

 

「…………………エイジャ…………………?」

 

「私も全国を旅しているうちに聞いた噂話なので、あまり深くは知りませぬが……………………

その性質のみは知っております。

光を吸収し、一点に放出する。

どこで生まれたのか、なにで出来ているのか。

それは未だに解明されていません」

 

「そうか、それは良かった。

おかげで貴様を始末しなくても良さそうだ」

 

ジョニーの語りにストレイツォが割り込む。

 

彼の身体は既に修復され、元の姿へと戻っていた。

 

「貴様には今、二つの選択肢がある。

いいか、二つのみだ。

一つは、このままジョセフ・ジョースターを置いて逃げるか。

もう一つは…………………」

 

ストレイツォが話し終える前にその顔が切られ、血が噴き出す。

 

「貴方を倒して帰る道、ですな」

 

そのときベルは、ジョニーの攻撃の秘密を見た。

 

それは、カード!

彼はカードを飛ばして攻撃をしていた!

彼の指の動きを見れば、カードの動きを操っているように見える。

ストレイツォの周りでは真っ赤なカードが舞っていた。

 

いいや、カードだけではない。

ストレイツォの身体は既に糸によって拘束されていた。

 

「カード………………………糸でカードを操って攻撃していたのか」

 

ストレイツォの呟きにジョニーは答えず、カードを飛ばす。

 

しかし、そのカードの動きはまるで蚊のようにふらふらとしていて、とても人を狙っているようなものではなかった。

一体何故だろうか。

トドメを刺すための一撃なのに、なぜまともにカードを投げなかったのだろうか。

 

それは大きく軌道を外れ、そして地面に落ちる。

 

なにがあったのか。

 

それをベルが考える前に、事態は起きた。

ストレイツォの身体が爆散していた。

血を撒き散らし、臓物さえも粉々になって吹き飛ぶ。

 

「や、やったわ!ジョニーが勝った!」

 

ベルが喜びながらジョニーに駆け寄る。

その顔を覗き込んだ。

 

「………………………!?」

 

ジョニーが浮かべていたのは、勝利の喜びではない。

驚き、だった。

 

「ジョ、ジョニー!?

一体なにが………!?」

 

聞いても彼は答えない。

そして、どさり、と前に倒れた。

彼はまともにカードを投げなかったのではない。

投げられなかった(・・・・・・・・)のだ。

 

「な、なに!?どういうこと!?

ジョニーは勝ったんじゃないの!?

一体なにがどうなってるのよーーーッッ!!」

 

ベルは、泣き叫ぶ途中でとあるものを見つけた。

ジョニーの手にはカードが握られていた。

そして、真っ赤な文字が描かれていた。

 

──────DON'T miss him.(彼を決して逃すな)、と。

 

「ま、まさか…………………」

 

「いいか、動くな。

そのままじっとしていろ」

 

ストレイツォの低い声に、ベルは咄嗟に動くことが出来なかった。

彼は既に拘束を解き、彼女の後ろに回り込んでいたのだ。

 

「うぐっ、かはっ」

 

ピストルでも撃ったかのような破裂音とともに、あたりに赤い鮮血が飛び散る。

ストレイツォの腕は、躊躇なくベルの胸を貫いていた。

 

「──さて………………この娘、どうやって手に入れたのかは知らないがエイジャを持っている……………………

今のうちに破壊しなければ──────────ッッ!?」

 

宝石を拾おうと屈んだ彼の目に映ったのは、カード。

 

「ただの悪あがき、か。

もういい。おとなしく────────────」

 

彼は、ジョニーの方を見ようとしたが、叶わなかった。

 

眼前には、カードが広がっていた。

まるで赤い結界のように。

等間隔に並んだ結界が、まるでテントのようにストレイツォを囲んでいた。

 

「────バカなッッッッ!!

ヤツには、攻撃をした私自身の身体が爆散してしまうほど

強力な波紋を糸を通して流し込んだハズだッッッ!!

こんなことをする体力は──────────」

 

「サティポロジアビートル……………………

いやはや、世界を旅していて本当に良かった」

 

ストレイツォの顔が驚きに歪む。

なぜなら彼は、その名前を知っていたからだ。

 

ジョニーが懐から一つの布切れを取り出した。

 

「友人からのお守り……………………………これのおかげでどうやら私は助かったようです。

そして、皮肉なことに────────」

 

ストレイツォは、そのときジョニーの豪運を改めて(・・・)思い知った。

 

彼らは、旧友だった。

かつてインドにて何度か賭けをし、彼のあまりの狡猾さにジョニーがカードとするのを躊躇った───そんな不思議な出会いから始まり、かつてストレイツォが野心に心を吞まれていなかった頃、ジョニーに渡したのがそのお守りだった。

 

(ば、バカなッッッッ!!!!

こんな偶然ッッッ!!!

自分で渡したものに足元を掬われるだとォォォォォッッ!?)

 

「さて、そろそろ終わりにしましょうか」

 

ストレイツォにはジョニーを見ることは出来なかったが、声と音だけは聞こえた。

 

それは、金属を弾く音。

直後、カードの結界の上の部分が、まるでドーム球場の天井が開くように広がった。

 

そこからは、コインが回転しながら落ちてきている。

 

「無駄だァッ!!

そんなもの、すぐに我がスタンドで消して───────」

 

ストレイツォがスタンドを操作し、コインに光線を当てた直後。

彼の頬を光がかすめた。

 

「────ハハ、そんな鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしなくても。

と言っても私からは見えていませんが。

さて……………乱反射、というものをご存知ですかな?

そのコインは特注で、私の名前が彫られています。

そんな凸凹なコイン、それも高速で回転しているものに光など当てればその光はあちこちに分散してしまうのですよ」

 

彼の言う通り、先ほどからストレイツォがコインに向かって光を撃ち続けているが、全てでたらめな方向に跳ね、コインには全く損傷がない様子だ。

 

「それでは、コインの追加といきましょう」

 

ジョニーがコインを投げると、それに合わせてカードの結界に穴が空く。

 

そして、ジョニーがカードを操ってコインを弾く。

カードによって急加速したコインは弾丸のようにストレイツォを捉えた。

 

黒板を爪で引っ掻いたような音を立てて、ストレイツォの胸に小さな穴が空いた。

 

「少し面倒ですが、このまま貴方の体力が切れるまで攻撃し続けます」

 

そう言い、またジョニーはコインを何枚か追加した。

 

「ストレイツォ。

貴方が裏の道に走ったこと、心から残念に思います」

 

ジョニーの顔からは、悲しみが見てとれた。

 

それに対し、ストレイツォは常軌を逸した行動をとっていた。

 

ニヤリ、と。

なぜかこの状況で笑っていた。

 

「こちらこそ残念に思うぞ、ジョニー・D・ダービー?

老いるということは、即ち死ぬことと同じッッ!!

そしてジョジョよ!

聞こえてはいないだろうが、貴様がいつも笑っていた理由がわかったッッッッッ!!!

─────────勝ちを確信すると、自然と笑みがこぼれるものなのだな」

 

ジョニーが顔をしかめる。

 

「おや?その言い方だと、貴方には起死回生の一策があるように聞こえるのですが……………」

 

ジョニーは、特に気にとめる様子もなく、攻撃を続けた。

ベル(・・)に対して。

 

「なっ!?

腕が勝手に──────────!?」

 

ジョニーが必死で抑えようとするが、彼の手は止まらず、ひとりでに動き続けている。

彼の意志とは関係なく、攻撃を続けてしまうのだ。

 

さらには、攻撃をしているジョニー自身の腕にも小さな傷が刻まれていく。

 

「くっ………『エターナル・シャイン』ッッッ!!!」

 

次々と飛んでくるカードをベルが弾いていく。

しかし、パワー・スピード特化の彼女のスタンドでも攻撃はいなしきれず、彼女の体に傷が生まれる。

 

「ストレイツォ……………一体何をッッッッ!!」

 

「──────ジョニー、どうやら貴様は、私に新しいヒントを与えてくれたようだ…………

今まで私は、私の能力では、目に見えるほどはっきりと大きな光線しか操ることはできないと思っていた…。

だが、貴様のおかげで今さっき気付いたよ。

───打ち出した後にコインの反射で目に見えないほど小さくなった光も、操作可能ッッ!!!

貴様は既に波紋入りの不可視光線に全身を貫かれているのだッッッ!!

そのままマリオネットのように操られながら同士討ちを続けることだな」

 

ストレイツォを囲んでいたトランプが、ぼとぼとと地面に落ちた。

 

「なるほど……………それなら、私にもう道は一つしかありません」

 

「いいや、貴様に助かる道など無いな」

 

彼の言葉も意に介さず、ジョニーが左手で辛うじてポケットから一つのメモ帳を取り出した。

 

「ベル殿。どうか、インドにいる息子にこのメモ帳を渡しておいてください。

きっと喜びます」

 

悲しそうな目で、ジョニーが語る。

カードを捌きながらベルが返した。

 

「何を言っているのよ!?

そんなもの、自分で────────まさかッ!?」

 

「私に残された道はただ一つ。

若い者に希望を託すことです。

これでも私、60を超えているのですよ」

 

彼はおもむろに胸ポケットからカードの束を取り出し、そしてそれを思いきり自分の頭の上へ放り投げた。

 

「ジョニーッッッ!!

会って間もない私達にそこまでする必要は──────」

 

そんな呼びかけに対し、ジョニーはにこりと微笑んだ。

 

「いいや、今のあなたにはその価値がある……

ジョセフ殿と、あちらでもポーカーを楽しんできますよ。

今度は、イカサマなしで、正々堂々と、ね…………………」

 

カードの束が空中で分解する。

赤い裏面がまるで桜のように舞い散る。

全てがスペードのエースであるカードが重力に従い、ひらひらとジョニーのまわりを落ちていく。

そのカードのあまりの多さに、ジョニーの体が見えなくなった。

改めて比喩しよう。

それはまるで桜吹雪のようであった。

 

「────────!!

攻撃が、止まったわ………………」

 

ベルの言葉を皮切りにしたかのように、砂漠に風が吹いた。

ジョニーのまわりを舞っていたカードが風に流される。

 

「……………………………やはり、人間とは脆い……………

そして、虚しいものだ」

 

ストレイツォが、一瞬だけ敵意や緊張といったものを解いて呟いた。

その目は心なしか切なくみえる。

 

陽気なギャンブラーの遺骸は、決してマジックのように消えることなく、倒れていた。

 

「──今度こそ、そのエイジャを渡してもらおう。

今すぐにでもそれを壊してしまわないといけないのだ」

 

ストレイツォがベルに歩み寄るが、彼女は動じない。

 

その目線はまたもストレイツォには向いていない。

 

彼の後方へと───────

 

「───ん?」

 

ストレイツォは、肩に何かが当たる感覚を覚えた。

後ろを向くと、下にはリンゴが落ちていた。

 

驚き、再び前に向き直ると、彼はいた。

ジョセフだ。

ジョニーが死んだことにより、カードから解放されたのである。

瀕死ながらもジョセフが、確かにストレイツォを見据えていた。

 

「今更無駄な抵抗を………

いいだろう、先に殺して──────────」

 

彼は言葉を続けることができなかった。

なぜなら、既に彼の肉体はけたたましい爆発音とともに塵となっていたからだ。

そこへ、一人の男が歩み寄った。

 

「──確かに人間の最期とは、あっけないものだが…………………君達吸血鬼とやらはもっと虚しい存在だな」

 

「けっ……………………とっておきの………………リンゴ爆弾だぜ………………………」

 

吉良がいた。

彼が、リンゴを爆弾へと変えていたのだ。

ジョセフが捨て台詞を吐き、今度こそ意識を失う。

 

(芳しい成果は無かったな…………

スピードワゴンによると「私が過去に戻ってきたのはおそらく過去を改変するため」と。

B級映画みたいな話だが、一理あるかもしれないな

この世界でジョジョを殺せば…………)

 

吉良が施設での成果を鑑みて思考を巡らせる。

 

しかしそれは、すぐに邪魔されることになった。

 

「ぐ、ぐぐ」

 

再び、塵が集まって肉片となり、肉片が集まって身体を成していく。

ストレイツォが再生を始めたのだった。

それを吉良は虫ケラを見るような目で見下ろす。

 

「無駄だな。私がいる限り、君は勝てない」

 

「一つだけ、選択肢があるさ………………」

 

ストレイツォの身体に光が集まる。

 

「逃げるのだよッッッッ!!!」

 

彼の体が光に押され、ありえないほどの加速をしながら移動する。

自分の身体を光で強引に押しているのだ。

自分の体も光線によるダメージを受けることと引き換えに、光速に近い速さを手に入れたのだった。

 

「ちっ。私の安眠が…………………なにか追う手立ては…………………」

 

「クイーン。もういいわ。放っておきましょう……

どうせあのダメージじゃあ、しばらくはまともに活動出来やしないわ」

 

ベルの説得に、吉良は分かっているようないないような、返事をする。

彼の頭には、既にストレイツォのことは無かった。

 

(JOJOは今、弱っている………………

殺すのなら今が好機では………?)

 

吉良は右手を構え始めていた。




施設内での吉良は敢えて今は書きません。
次話が出れば、その内容も吟味して、みなさんで想像してみてください
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