吉良吉影は潮流へ 〜Another One Bites the Past(過去に食らいつけ)〜 作:Mr.アップルパイ
「へっ、そこで為す術もなくじっとしてるのがいいと思うぜ〜ッ!
まるで尻尾を掴まれたトンボみてーによォー」
「きさま……」
サンタナは鋭く睨みつけるも、太陽によって身体はほとんど石の状態だ。
そして彼は、ついにその重い口を開いた。
「今、貴様は波紋を使えなくなったと言ったな」
「──────────!……さ、さァ…………それがどうかしたんですかい?」
「取引、といかないか」
「────!!」
ジョセフの応答に間髪入れず切り出したサンタナに、ジョセフはただ驚くばかりだ。
彼が指を動かすと、サンタナの周りを茨が取り囲んだ。
「……どうした?波紋を使えるようになりたいのだろう?」
サンタナは挑発するように言い捨てた。
しかしジョセフは動かない。
それも当然である。サンタナは1度触れさえすれば、1秒の1億分の1億分の1よりも早く能力を発動できる。
もし彼が約束を破り、ジョセフを殺そうとしたところでジョセフには何ら抵抗する手段はないということである。
サンタナへのメリットもない。
────おそらく次に彼は「もうあなたを襲いませんから助けてください」といった条件を提示してくるだろうが、日光などジョセフを殺してしまえば致命的なものではないはずなのだ。
と、ジョセフは推理していた。
だからこそ動かない。
せめて、サンタナから本当に余裕がなくなり、「悪かった!実はさっきはお前を騙して殺そうとしていたのだ!だが今度はもう本当に石になってしまいそうだ!絶対に約束は守ると誓うから助けてくれ!」などと懇願してくるまではアクションは起こさないつもりでいた。
しかしサンタナが見せたのは、また少し違ったものだった。
「……おい?どうした?」
「……」
ジョセフが心配して声をかけるが、サンタナは答えない。
────いや、答えられない。
なぜなら、既に彼は石となっていた。
苦しむ声を上げることもなく、ジョセフが考えている間に石化していたのだ。
ジョセフは焦ると同時に自分を落ち着けようと努力した。
────これは罠だ。俺が心配して近づいたところを攻撃する気だ、そうに違いない────と。
「おいおい、猿芝居は見苦しいぜ?
本当はまだまだ余裕があるんだろ?ほら、なにか喋ってみせてくれよ」
「……」
サンタナはなお、1ミリも動かない。
ジョセフは更に焦りを覚えた。
(芝居だ、芝居に決まってるッ!
ここは手を出さないのが最善策だ!
クイーンなら絶対に近づかねェ…………)
そこまで考え、ジョセフは自分の思考がクイーンに囚われていることに気づいた。
そしてこうも思った。
クイーンは今は関係ない、自分は自分の道を行くだけだ────と。
その結果たどり着いた答えは、ハーミット・パープルでの攻撃だった。
(これならやつは黙ってやられるわけにはいかねえ……
もし身体の内側が石化していないのなら、身体を貫いて傷が付けばバレてしまうからな。
ヤツに余裕があるという推測が正しければ、何かしらの抵抗をするはずだぜッ!)
ジョセフは腕から茨を出し、それを鞭のようにサンタナに打ち付けた。
しかし────彼はなんの抵抗もすることなく、簡単に砕け散った。
「…………まさか、本当に死んだのか?」
ジョセフが伺うようにサンタナに近づく。
そして、やられた、とでも言うように顔を歪ませた。
「──ねェッッ!!!
まるで風船みてーに、こいつ、中身が無いぞッ!!!」
「……チェックメイトだ」
彼が割った石は、あまりにも簡単に砕け散っていた。
それはその石化したサンタナは卵の殻のように中身が空洞な状態だったのだ。
では、中身はどこへ行ったのか。
まさかサンタナは元から肉や骨が存在しない、皮だけの生き物だったのだろうか。
いや、血が出たり傷が出来ているからそれは違う。
──────答えは、地中から出てきてジョセフの足を掴んだサンタナから語られた。
「な、どうしてテメーがそこにいやがるッ!サンタナ!」
「……ジョジョ、貴様が砕いたのは私の骨だ」
「ふざけたこと言ってるんじゃあねぇぜッ!
俺が砕いたのは紛れもないテメーの石化した姿のはずだッ!」
「いいや、違うな。
私の元から持っている能力は自身の身体の器官を操ること。
骨であろうと自由自在に操ることが出来るのだ。
つまりは、骨をピザの生地のように薄く伸ばして皮膚の周りを纏わせ、本体はスタンドを使って地中へ潜っていた……というわけだ
──────そして、貴様の生きているという事実を反転してこの戦いの幕を閉じるとしよう」
「な、なにィ~~~~~ッッ!?
この俺が頭脳戦で負けただとーーーーッッッ!?」
ジョセフの悲痛な叫びもサンタナはまるで聞いていないかのように受け流す。
「────終わりだ」
サンタナが初めてそのスタンドを見せた。
そのスタンドの姿はとても異様なものだ。
人型ではあるが、全身が白く、目も鼻も口もない。
まるでマネキンのようなスタンドだ。
そのスタンドの手がジョセフに触れ、白く光った。
「い、嫌だッ!!死にたくねえッ!助けてくれーーーー!!
──────なんてな」
「なんだとッ!」
ジョセフの命乞いは突如止まり、今度はサンタナが混乱の表情を見せた。
「なぜ死なな…………ぶべっ!?」
驚いている間もなく、サンタナがありえない速さで吹き飛び、壁を破壊し、そのまま落下して地面へ叩きつけられた。
もはや日光を遮るものはどこにもなく、彼は全身を灼かれている。
「今のはおそらく『時速130kmで後ろに吹き飛ぶ』ってなところかな」
「な、なにを言っている……」
全く状況を理解出来ず混乱するサンタナにジョセフが近づいた。
「テメーの能力……着眼点でどんな性質も反対に出来るんだっけなァ?
だから俺は、ずーーーーーーーっと部屋のあらゆるところに作ってたんだぜ?
──────『ゼロ』って数字をよォーーーッッ!!」
周りをよく見れば確かに、割れた瓶の破片も、爆発しなかった手榴弾も、新聞の見出しの文字も、ハーミットパープルによって『ゼロ』の形に変えられていた。
「ゼロだとッ!?それになんの意味が────ハッ!!」
「『上』の反対は『下』……なら『下』の反対は『上』だ。
それなら何を反対にしたら『ゼロ』になるかって考えたらよ…………答えは『なんでもいい』んだ。
『何かが起きる』を反転すると『ゼロ』になる……なら、ゼロを反転すればなんにでもなる──────つまり世の中のあらゆる事象がランダムに起こるってことじゃあねえかって思ったのさ!
だから部屋に『ゼロ』を散りばめていたんだッ!
テメーの意識が────『着眼点』とやらが知らないうちに『ゼロ』に向くようによーッッッ!!」
「つ、つまり…………あの状況で逆に『ジョセフ・ジョースターが時速130kmで吹き飛ぶ』という事象が起きる可能性も……」
「ああ、当然あったさ。
ヤツ……クイーンならそんな賭け、しないかもしれねぇな。
──だがよ…………このジョセフ・ジョースター、博打ってモンが大好きな性格だッ!
可能性があるならそれに賭ける!それが1番かっこいいと思わねぇか……?
それに…………今のギャンブルには、きっと
ジョセフが問いかけるもサンタナは呆れた顔をしている。
「……なるほど、たった数千年で人間はそこまで頭が回る生物になっていたのか…………
──────だが!いま、それを学習したなら次にそれを活かすまでだッ!
さよならだジョジョ、またいつか戦うことになるであろうッ!」
そう言い、サンタナは見るうちに地面に沈んでいく。
骨が無いため、既に自分では立ち上がれないのだ。
だからスタンド能力を使って地面を消して逃げることに決めた。
ジョセフもこれには焦る。
──────しかし、地面に潜ったことは悪手だった。
「くっ……はやく逃げて回復しなければ………………!?
────な、なにィーーーーーッッッッ!?」
サンタナが逃げた先の地中にあったのは、古びた水道管。
それに穴を開けてしまったサンタナの顔に、当然水が吹き出した。
そして、大量に血を流し、骨もなくしたサンタナは既にかなりの軽さだ。
おかげでその水圧で十分に地面へと打ち上げられた。
「ハーミット・パープルッ!」
空中でサンタナが茨に串刺しにされ拘束される。
地面に這いつくばっていた先程よりも多くの日光を浴びたサンタナはあっという間に石化していく。
「こんな……バカな…………最強の能力のはずが………………」
「へっ……テメー、中々に無様だぜ?
まるで丸焼きにされる豚みてーによッ!」
ジョセフが茨をさらに増やす。
しかし、サンタナはもう既に抵抗の意思を示していなかった。
「…………だがもう遅い……。
既にローマのあの3人は蘇った…………波紋も使えない貴様に
「お、おい!それってどういう─────」
「………………もう石になってやがる…………」
今度は芝居などではない。
サンタナは完全に石化したのだった。
「…………どうやらローマにもう1つ用事ができたみたいだな……」
そう呟くジョセフにどこからかベルが走ってくる。
「ジョジョーーーー!!…………ってなにその石!?」
「ああ、襲われたもんだから返り討ちにしてやったさ」
「そう…………ってそんなことどうでもいいわ!
クイーンがどこにもいないの!」
「はぁ…………面倒なことは嫌いだって言ってるのに、なんで厄介事が増えるんだーーッ?」
サンタナ 石化により