吉良吉影は潮流へ 〜Another One Bites the Past(過去に食らいつけ)〜 作:Mr.アップルパイ
是非、感想などもして貰えると嬉しいです
「さて……来てはみたものの……」
吉良吉影は今、自宅の前にいた。
先程の推測が正しければ────もし、今までの人生を見せられているのなら────さっきここで会った父の様子も変わっているかもしれない。
何より、17歳の自分を殺したことによる影響があるのかどうかも気になっていた。
そして、そこで吉良はありえないものを目にした。
「東方仗助……それに、空条承太郎…………か」
かつて自分を苦しめた2人が、まさに自宅に入っていくところであった。
「承太郎さん、ちょっと。さっきからアイツ、ずっとこっちを見てやがりますよ」
「……ああ。一般人か、スタンド使用者かは分からないが、いつでも叩けるように準備していてくれ」
東方仗助と空条承太郎は、耳打ちで会話をする。
「あいつら……なぜここにいる?
私の自宅に…………順当に考えれば、私が顔を変えて姿をくらましたあと、手がかりを得るためにもぬけの殻となった私の家を捜索しに来た時間軸に切り替わった……ってところか。
ここで私の姿を見られたのはまずいな……
だが、私が吉良だと気づいていない今こそ、逆に言えばチャンスとも言える。
ヤツらを殺して何かが起きるとも思えんがな。
しかし、どちらにしろ争いを避けることは─────」
「────おい、そこのアンタ。
俺たちゃあ別に空き巣に入ろうってわけじゃあねえんだぜ。
こっちにも…………ちょいと事情がある。ただそれだけだ
分かったらさっさとどっか行きな」
「(話し方を変えておくか……)いいや、違うんです。
ただ…………ただ、ここには僕の知人が住んでいるもので。
あなた達、見たことがありませんが吉影に何か用ですか?」
吉良の言葉に2人は動揺する。
しかし、これは手がかりを得るチャンスだ。
些末な怪しさを感じながらも、二人は食いついてきた。
「(ここに露伴のヤローがいればな……)知人だって?
それじゃあ聞きたいことがある。
アンタ、アイツのことを何か知らないか?
生い立ちだとか、癖だとか、好きな食べ物だとか、とにかく何でもいい。
なんでもいいんだ」
「吉影のことですか?
────────そういえば、一昨日くらいに彼からメールをもらいました」
「「──────!」」
吉良の一言に二人はまたもや動揺した。
吉良吉影は恐らくとても用心深い男だ。
できる限り相手に姿を見せず、決して自分の姿を覚えられたまま逃げることはしない。
そんな男が、友人にメールをした?
この男は我々にとっての重要人物なのか?
様々な思いが二人を駆け巡る中、吉良はなんでもないように自分の携帯を差し出した。
「ほら、ここに入ってますよ。手に取って見てください」
「ああ、そうさせてもら─────」
「仗助、ちょっと待つんだ」
スムーズに行われかけたやり取りに承太郎が水を差す。
「ど、どうしたんですか、承太郎さん」
「その携帯は俺が受け取ろう」
「あなたが……ですか?
私は別にどちらでも構いませんが………
ほら、どう─────」
「────ありがとう」
「!?」
吉良が携帯を改めて承太郎に差し出した頃には、既に彼の手から、携帯電話は消えていた。
これこそが空条承太郎のスタンド能力。
携帯を渡すやり取りの瞬間の攻撃を警戒しての行動だった。
「さて、目当てのメールは…………」
「…………んー?承太郎さん、どれだか分かります?」
「いいや、どれだか分からないな。
おい、アンタ。一体どこでそのメールってやつが──」
「いやいや、よく見てくださいよ。
ほら、その上から3番目のメールです。
よーく、しっかりと見てください」
「しっかりと、だってェ?
アンタ、俺達のことおちょくってんじゃあねえだろうなぁ?」
痺れを切らした仗助が吉良に当たる。
吉良もまた、おどけたように反論した。
「いえいえ、とんでもない。
ほら、もうメールは開きましたか?
しっかりと書いてあるでしょう
─────お前たちは、もう終わりだって」
「な─────」
思いがけない一言。
すぐに二人は各々のスタンドを出すが、既に起爆準備をしていた吉良の方が圧倒的に早かった。
いくら自分を苦しめた2人でも、不意打ちには弱い。
あるいは幻影だからか。とても呆気なかった。
あまりに呆気なさすぎて、吉良は以前の自身の死闘を疑った。
私はこんなやつらにあれだけ苦闘していたのか、と。
疑ったからこそ、数コンマ早く気づけた。
(────ヤツらはまだ死んでいないのではないか…………?)と。
「クレイジーダイヤモンドッッッ!!」
「キラークイーンッッッ!!!」
爆発の余韻を切り裂いて撃ち込まれたその拳に、ガードと同時にカウンターを入れる吉良。
一瞬の攻防で、互いの右腕の骨が折れていた。
「テメェ…………やっぱりそーだと思ったぜ…………」
「久しぶりだな…………いいや、君からするとそんなにじゃあないのかな?」
「「東方仗助(吉良吉影)ッッ!」」
「おかしいなとは思ってたんだ。
テメーはやけに携帯が好きだからな。
それに………………その腕時計」
「─────ッッ!!」
「趣味が悪いから、しっかりと覚えてたぜ」
「う、後ろにッッ!!」
気がつけば承太郎は吉良の後ろに立っていた。
「テメーの爆発はよォ…………到底防げるようなもんじゃあねえ。
だから、
俺は何ともねェ。
「くッ─────!」
以前と同じ手法。
仗助は気づいていないが、以前に億泰が爆弾に変えられた時、川尻早人がとったのと同じ手法。
クレイジーダイヤモンドは自分を直せない。
だが、自己犠牲を厭わない勇気ある人間と共闘するのなら、その人が盾となれば良い。
「スタープラチナのスタンド能力は、反射速度だ。
だが、俺の反射速度を持ってしても、爆発が始まってから携帯を投げ捨てるのは不可能」
「だから、食らってもらったんだ。
爆発が俺に及ばねーように携帯を抱き込むくれぇなら、スタープラチナなら十分可能だったからな」
「そして、次に強烈な一撃をくらってもらうのは───────
──────吉良吉影。お前の方だぜ」
「き、貴様…………」
絶体絶命。
────彼を。
吉良吉影を救ってきたものは、いつも
だから、今回もそれは当然のように訪れた。
「じ、承太郎さんッッ!?」
「────親父め、やっときたか」
「じ、仗助くん…………まずい…………写真の中に…………外にいる君たちの頭も写って…………」
先に中に入っていた億泰と康一。
彼らの撮った写真は、僅かに承太郎たちを写していた。
「か、かはっ……馬鹿な…………」
アトム・ハート・ファーザー。
宙に浮いたナイフが、承太郎の首を突き刺していた。
3話ほど先まで分かりにくい描写が続きます
申し訳ありません