吉良吉影は潮流へ 〜Another One Bites the Past(過去に食らいつけ)〜   作:Mr.アップルパイ

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23.遡行

騒動から数日。

 

 

 

用事で席を外していた億泰と浩一以外は、ある山に集まっていた。

 

 

 

「で、これが『例のブツ』だって?

ミキタカ、こりゃあいくらなんでもチンケすぎるぜ?

いくら吉良吉影が消えた日に大きな音がしたからって、こんなものが関係あるとはとても思えねーな」

 

「ええ、私も同感です。

しかし、こんなもの、普通の人間が一夜にしてここまで運んで来れるでしょうか?」

 

「そりゃもちろんそんなことは分かってんだ。

けどよー…………………

 

 

 

 

いくらなんでもベタ(・・)すぎんじゃあねえのか!?

この『UFO』はよォ!!」

 

今、仗助、承太郎、ミキタカの3人の前には巨大なUFOが立ち塞がっていた。

丸い円盤型のボディに、等間隔に配置された窓。

そして、丸く突き出たエンジン。

 

UFOと言われて、誰もが想像するそのものである。

 

問題は、その大きさだ。

飛行機1つ分程のその巨体を運ぶには、計り知れない労力が必要なはずである。

それが、大きな音とともに突如現れたのだ。

 

「それに、こいつ入口ってもんがねえ。

もし本当にUFOだって言うんなら、怪しいビームとかで乗り込むのが相場だけどよ……」

 

「兎にも角にも、これがスタンドと関係しているのはほぼ確実だ。

無闇に触るよりも1度戻って、改めて調査を──────」

 

「ちょっと待ってください。

この音は…………」

 

ひゅー、と。

 

なにか音が聞こえる。

 

そう言ったミキタカの声は、何故か(・・・)誰にも届いていなかった。

 

「ーーーーーー」

 

「ーーーー?ーーーーーーー。

ーーーーーーー!?」

 

いいや、彼自身にも、周りの音は届いていなかった。

仗助も、承太郎も、なにか口を動かしているのは分かるが、自分の耳には何の音も届かない。

 

気がつけば、微かに届いていた空気の漏れるような音も聞こえなくなっていた。

 

「これは…………一体何が…………」

 

仗助の体に切り傷ができる。

致命傷では無いものの、無数の傷が彼を蝕んでいく。

 

「くっ………音を操るスタンドではないのですか………

まるでかまいたちみたいに─────ハッ!」

 

その時、ミキタカは相手のスタンドの正体に気づいた。

 

しかし、それを伝えようにもお互い声は聞こえない。

 

「筆談なら──────ッッッ!!」

 

すぐにノートを取り出そうとしたミキタカだったが、瞬間、豪風が彼を襲い、文字を書く手段は全てなくなる。

 

「伝えなければ………やつのスタンドは……」

 

彼もまた、全身を切り裂かれて徐々に意識を朦朧とさせていく。

 

「じょう………すけ……」

 

完全に意識が途切れる直前。

 

ミキタカは、敵の能力を仗助に伝えることを諦めた。

 

 

 

 

その時、仗助の声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

任せろ、と。

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

「くそ、なんだってんだ!?」

 

仗助は今、ミキタカとは全く違う状況に追い込まれていた。

 

きっかけは、ミキタカが異変を察知した時だった。

 

彼が突然取り乱し出した。

 

自分たちには彼の声が届いているのに、彼自身はまるで何の音も聞こえていないかのように振舞っている。

 

何を呼びかけても、彼は動転しているばかりで返事をしない。

 

 

そんな状況を把握しようと思った矢先、今度は仗助自身の目が見えなくなった。

 

目は確かに開いているのに、視界が真っ暗で何も見えない。

 

「承太郎さんッ!!一体これはどうなってんだッ!?」

 

「ああ、俺もさっきから時を止めようとしているが、上手く止められない。

お前のスタンドもそんな感じだろう」

 

その発言に仗助はますます混乱した。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。

俺は目が見えなくなっただけで、スタンドは普通に出せるし、『ものを治す』のだって、いつも通りにできるぜ?」

 

「なんだと?それじゃあ、さっきから彼の様子がおかしいのは───」

 

承太郎が指さした先では、ミキタカが未だに何かを呟いているが、言っていることは意味がわからない。

 

「恐らく、俺たちの能力が1部、奪われてるんですよ。

『視覚』だとか『聴覚』みてーに。

俺のクレイジーダイヤモンドじゃあ、外傷は治せても感覚を戻すってのは無理だ」

 

そう言うと、仗助はポケットからライターを取りだした。

 

「だから─────『治す』のは後でやる。

俺さえいれば、後でいくらでも(・・・・・)治せるんだからな。

全部燃やしちまっても問題ねェ」

 

彼は山を燃やす気だった。

怪しげな物体が目の前にあり、それに近づいた瞬間に攻撃を受けた。

それはつまり、敵のスタンドは遠隔操作型ではなく、敵の本体は近くに潜んでいる可能性が高いと推測したからだ。

 

 

しかし、それは叶わなかった。

 

 

ミキタカが見た通りの光景が起きていた。

 

仗助は謎の突風によって全身を切り裂かれ、ライターなど持っていられる状態ではなくなっていた。

 

「なッ!?能力を奪うだけの能力じゃねーのかよッッ!!

承太郎さん、飛んでった俺のライターを取ってッッッ!!

早く火をつけるんだ!」

 

「う………うぅ……」

 

「じょ、承太郎さん!?

冗談きついですよ!一体何が──────」

 

彼が言い終わる前に、承太郎の体に火がついた(・・・・・)

 

「あ、熱ぃッ!!?

承太郎さんッ!返事してくださいよ!!

────くそ、血を出しすぎた………もう……意識が………ッ!」

 

承太郎の返事を求めるその声とは裏腹に、彼の体はもはや立つことすらできなくなっている。

膝をつきながらも、彼の目にはなお闘争の火がついている。

 

「ダメだ………あとは任せましたよ…………『これ』だけは…………託しました……」

 

彼は、もう膝さえ着いていられなかった。

地面に横たわりながらも、仗助は右手を前に大きく伸ばした。

 

強く握られたその手が、弱々しく開かれる。

 

その手には、制服のボタンが握られていた。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

「これで、怪しいヤツらは排除完了……と」

 

仗助達から数十メートル先。

木陰に謎の男が隠れていた。

燃えるような赤い髪に、全身黄緑色の水玉の服を着た男だ。

 

「あとはあの白い服のヤローだけだな………む?

やつが立ち上がった…………確かに俺の能力で燃やしたはずだが」

 

承太郎は全身を炎に包まれながらも立ち上がったかと思うと、まるで水でもかけたかのように、彼を包む炎は消えていた。

 

「な、なぜだ!?

俺の『ディレクション』は相手の『意思』に反抗するスタンドだぜッ!?

ヤローは森を燃やそうとしていた、だからやつの意思に反してやつ自身が燃え上がったはずなのに………」

 

男が狼狽していると、ふとある事に気づいた。

 

「ヤローが………俺を見てる……のか?」

 

よく見ると、承太郎は男の目をまっすぐと見つめている。

 

「ば、馬鹿なッ!歩いてくるッッ!こっちに歩いてくるぞッ!!」

 

男はすぐに自分の能力を発動した。

 

承太郎は歩いているのだ。

だから、歩こうという『意思』に反抗するよう、スタンド能力を使用すればいい。

そう思い、彼は手から突風を発生させた。

 

 

 

 

しかし、承太郎は全くひるまなかった。

 

「なッ!?この突風は確かに歩こうという意思を潰すために出したはずだぜッ!?

ヤツは歩いてるんだッッ!そこに歩こうって意思がねーなんて、そんなの虫けらでもない限りありえねぇッッ!!」

 

男は叫びながら手から何度も風を出すが、承太郎には全く効いていない。

 

「テメーのその能力、物理的な攻撃力は全くと言って良い程無いみたいだな」

 

「─────────ッッ!!」

 

気づけば承太郎は、男の前にいた。

全身を焦がしながらも、確かに立っていた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ、俺は別にあんた達を攻撃しようなんて」「オラァッ!!」「へぶっ!?」

 

男はスタープラチナのパンチに数メートルほど吹き飛んだ。

 

「な、なぜ、俺の能力が………」

 

「テメーの能力、やっぱり発動は手動みたいだな。

最初からずっと、突風の吹いてくる方向は同じだったから、そう検討がついた。

そしておそらく、テメーのスタンドは『何かをしよう』と思う相手に発動する能力だ。

自動発動じゃあないなら、俺が(・・)テメーの気を引けばいいだけだ」

 

「お、『俺が』?それじゃあまさか─────」

 

男がハッとして仗助の方を見るが、仗助は確かに気を失ってそこに倒れていた。

 

仗助だけが(・・・)倒れていた。

 

「おい、もう出てきていいぞ」

 

承太郎がそう言うと、彼のズボンが変化し、徐々に人の形を作っていった。

 

そして出来上がったのは、もう1人のメンバー、ミキタカである。

 

「気を失う直前に、ボタンになったんです。

音を聞くことを諦めた途端に耳が自由になったものですから、貴方の能力にも見当がついたんですよ。

だから、咄嗟にボタンに変身して、意識を取り戻せたら何か役に立てるようにしておいたんです。

さっき僕がズボンに変身してしようとしたことは『歩こうとした』ではなく、『承太郎さんが歩けるように私が動こうとした』なんですよ。

だから、貴方の能力も屁でもありませんでした」

 

「お、お前何者─────ぶへッ!?」

 

男が言い終わる前に承太郎は再び彼の顔を殴った。

 

「ひとつ聞きたいことがある。あのUFOはテメーのものか?」

 

「──────は、はい!そうです!!じょ、情報ならなんでも吐きますから、命だけはッッ!!!!」

 

「俺は、弱いものいじめをするつもりはない。

それに、今はあの物体の情報も必要だ」

 

承太郎がそう言うと、男はほっとした素振りを見せた。

 

「だが、テメーのそのポケットに入った怪しいモンを見たら、そう簡単に自由にする訳にもいかないな」

 

「わ、分かりましたッ!!これも今すぐに渡しますッッッ!!」

 

男は疑われないよう、ゆっくりとポケットから隠していたものを取りだした。

 

それは、まるで手持ち時計のような形をしていたが、ひとつ違う点があるとすれば、側面に大きなスイッチが付いていることだ。

 

「それをゆっくりと俺に渡せ」

 

「は、はいッ!ゆっくりですね!」

 

男は言われた通りに、承太郎へゆっくりと手を伸ばす。

 

そして、すぐに引っ込めた。

 

「残念だったな!俺はこれを使って逃げさせてもらうッ!!

開けッ!!『タイム─────」

 

「スタープラチナ・ザ・ワールドッッッ!!」

 

「ぐべッッッ!?な、なんだッ!?スイッチをおそうとした途端、ヤツが時が止まったみてーに速く─────いや、それよりも─────」

 

時計型の『なにか』は、男が既にスイッチを押していたのか、その周りに徐々に黒い空間を広げながら飛んでいく。

 

その軌跡の先には───────仗助がいた。

 

「くっ…………連発して時は止められない……」

 

「仗助さんッッッ!!」

 

「お、俺の道具が──────」

 

3人の叫びは虚しく、仗助は時計の作る黒い空間に飲み込まれ───────────消えた。

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