吉良吉影は潮流へ 〜Another One Bites the Past(過去に食らいつけ)〜 作:Mr.アップルパイ
また、UAも500を超えさせていただきました!
他の方に比べれば500は少ないかもしれませんが、こうした小さな指標を越えて行く事が大事だと思っております(。-_-。)
これからも応援よろしくお願い致します!
「暇だな〜」
ジョセフが間抜けな声をあげる。
三人は今、SW財団が用意した車でメキシコへ向かっている途中であった。
その車は所謂リムジンと呼ばれるものであり、三人で使うにはかなりスペースが余っている。
会って間もない三人には、それが幸か不幸かは決めきれぬことだった。
「……とりあえず、まずは君の名前を聞かせてくれるかな?」
吉良が一人の女に話しかける。
その女はまだ少し幼さを残した顔立ちで、綺麗な桃髪をしている。
「私は………ベル。
ファミリーネームは分からないわ」
ベルが少し哀愁を漂わせた顔で答える。
「分からない?どういうことだ?」
ジョセフが首を傾げた。
「フフッ、そのままの意味よ?
私は名前以外、自分の事を何も知らないの。
家の名前も、住所も、親の顔も。
ただ、『どこか』に行かないといけない、って事だけは知っている。
あなた達の呼び方……………スタンド、だったかしら?
私のスタンドは『
能力は10秒以上触れた相手の記憶の一部を奪うこと。
記憶を探し求めた結果、私が手に入れた能力よ」
彼女の背後に影が現れる。
全身が、彼女の髪と同じ桃色で構成されたスタンド。
両掌にはハート形の突起が付いている。
彼女に似た、可愛らしいスタンドであった。
「…………正直まだ分からねえが、お前が苦労してるってことは分かる気がするぜ」
ジョセフが、少し悲しい顔をする。
「フフッ、別に同情することないわよ。
私は今の生活に十分満足してるし」
ベルが軽快に笑う。
「あなた達にも会えたしね」
ジョセフの顔が少し赤くなる。
吉良は依然として何かを考える様な顔だ。
(この女もどこかで見たことがあるような………ッ!?)
車が突如宙を舞う。
中にいた三人がかき回される。
車は三回転ほどした後、地面に衝突した。
「ってェ〜、なんだァ?」
ジョセフがドアを開けて顔を出す。
それに続き吉良とベルが出てきた。
「何者かの攻撃を受けたようだが………」
「がっ、うがっ」
呻き声がして、三人がその方向を見ると、それはSPW財団の車の運転手だった。
仰向きに倒れた運転手の目は虚ろで、軽く伸ばされた手で必死に何かを探しているように見える。
「ちぃ、恐らくこれはスタンド攻撃だぜ………。
おい、運転手!なにがあった!?」
しかし運転手には聞こえている様子がなく、ただ蛙のように跳ねているだけだ。
ここで、吉良とジョセフはあるものに気が付いた。
「これは………」
「JOJO、運転手のここにあるこれはもしかして………」
ブーン
虫の羽音が耳元で鳴る。
その瞬間、二人はその虫から離れるように跳んだ。
「これは厄介なんてもんじゃねーぞ………」
二人が見たもの、運転手の肌には無数の斑点がついていた。
それはまるで虫に刺された跡のようであった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「JOJO、見えていたか………?」
「いいや、羽音だけだ。
音から推測するに、おそらく蚊だ。
ベル!俺たちの後ろに………いや、俺たちの目に見えるところにいてくれ!」
「わ、分かったわ」
吉良とジョセフが車を背にして立ち、ベルはその二人の間に立っていた。
ジョセフの指が突如ピクリと動く。
「──ッッ!!見つけたぜっ!そこだあァァ!!」
ジョセフのハーミット・パープルが空を駆る。
その先には、全身を糸で巻き付けられた大きな蚊がいた。
ジョセフは既に糸の結界を張っていたのだ。
「クイーン!スタンドってのは遠くからも動かせるモノなのか?」
「………ああ。しかし、離れれば離れるほど力は落ちる。
あるいは決められた単純な命令をこなすだけ………例えば温度に反応して追尾するものなどは距離と力は関係ない、といったところだ。
そして後者のタイプは耐久力が高いことが多い」
「なるほど、じゃあ恐らくこいつは………」
ジョセフが自分の腕にハーミット・パープルで傷を付ける。
すると突如蚊が過剰に反応する。
「見たか、クイーン!こいつはおそらく血に反応して自動で動くやつだぜ〜〜ッ!
って事は………」
ジョセフが茨ごと地面に思い切り叩きつける。
「…………!全然なんともない、って感じだわ…!」
蚊は特に気にする様子もなく、血を探している。
「だが攻撃力はあまりなさそうだな。JOJO、そいつを今すぐ瓶か何かに………………ッッ!!」
吉良が提案していた時、突如蚊が動いた。
羽を折りたたみ、何やらもぞもぞとしている。
それはまるで蛹になる前の蝉のようだ。
「JOJO!早くそれを何かに閉じ込めろッ!
なんだか嫌な予感がしているんだッ!」
吉良が叫んだがジョセフは答えるどころか反応すらしない。
聞こえていないかのような無反応だ。
「………………JOJO、なにがあったんだ………?」
吉良が問いかけるがこれもまた無視される。
いいや、ジョセフは言葉を発した。
しかしそれは吉良に向けてではなく、独り言のように呟かれたものだった。
「耳が………聞こえない………?」
「────ッッッ!!」
ジョセフの脳には、今なんの音も届いていなかった。
「おい、JOJOッ!聞こえているのか!?
どんなことをされた!?言ってみるんだ!」
吉良がジョセフの肩を掴むがジョセフは困った顔をしている。
「クイーン………おそらくおめーは、どんなことをされたのか、と聞いているのだと思うが、悪いが何もわからない………。
ただ一つ分かったのが、いきなり聞こえなくなるんじゃあなく徐々に聞こえなくなって行く、って事だ」
「そ、そんな………」
ベルが思わず後ずさりする。
しかしそのベルに対して、叫ぶ者がいた。
「ベルッ!君のエターナル・シャインでJOJOの記憶を見てくれ!恐らく……
吉良に言われ、ベルが自らのスタンドを出現させる。
そしてジョセフの腕に触れた。
(10………9………8………7………6………)
刻々と時が過ぎて行く。
(5………4………3………………嫌な予感が消えないのは何故だ?)
吉良が息を飲む。
(2………1………0。ただの思い違いか?)
「ベル。どうだね?」
「………クイーン。落ち着いてよく聞いて」
ベルが唇を噛みしめる。
「?なんだ?言ってみなさい」
「本当にこれを聞くと動揺すると思うけど………」
「いいから早く言うんだ!」
吉良が催促をする。
「今………たった今………目が見えなくなったわ」
「───な、なんだとォォォ!?」
吉良がベルの前に回り込むが、彼女は目を閉じていた。
そして、その次に吉良の顔が険しくなった。
「ベルッッッ!!服を脱ぐんだッ!!!」
「ちょ、レディに何を言ってるのよ!」
「いいから脱げーーーーッ!」
吉良が強引にベルの服を引きちぎる。
その肌には一匹の蛭が付いていた。
吉良がそれを引き剥がした。
「痛ッ!なに!?」
「………ベル。どうやら相手の虫は一種類じゃあないようだ。
かといって数で攻めないところを見ると大量にいるわけではなさそうだが………」
吉良がそう言ってチラリとジョセフが捕まえていた物を見る。
それはいつの間にか蚊から蛆へと変わり、今まさにマンホールの中へ入っていくところであった。
「私の服………どうしてくれるのよ!」
ベルが涙目で吉良を見る。
両手は二つの恥部へと当てられている。
しかし吉良はそんなものに見向きもしない。
ただ一点だけを見つめている。
「ベル………そんなことを言っている場合ではないぞ」
吉良が窘めるように言う。
「そんなこと!?レディが裸なのよ!?」
抗議するベルに吉良が一言放った。
「いいか、ベル。
……………JOJOが倒れている」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
スタンド名 ー 【エターナル・シャイン】
本体 ー ベル
破壊力:B
スピード:A
射程距離:C
持続力:D
精密操作性:A
成長性:C
能力 ー 〔10秒間触れた生き物の記憶の一部を奪う。
奪うと言っても奪った記憶は奪われた本人にも残ったままである。
体のどこで触れていても良い〕