吉良吉影は潮流へ 〜Another One Bites the Past(過去に食らいつけ)〜 作:Mr.アップルパイ
今回でダービー戦は終わりです
18/02/11 20:30
最後のスタンドの説明を入れるのを忘れていたので追加しました。
「負けると分かっていながら闘うとは……………very good!
その心意気、受け止めて差し上げましょう!!」
ジョニーが器用にカードを配る。
本来ならパニックを起こすような場面でジョセフは平然と、しかしとてつもなく集中していた。
それをみてジョニーは心の中で嘲笑う。
(フン、何か企んでいるようですが…………
全て無駄ッッッ!!私はイカサマもしていなければスタンドも使っていないッ!
ただ生まれつき、ポーカーに関しては運が良い。それだけなのですよ!!
ポーカーに於いての運とは純粋な強さ!
小細工では覆すことなど出来ないッッッッ!!)
ジョセフを苦しませたジョニーの強さ。
どれだけ考えても分からない秘密。
それは単純で、明快で、言われてみれば納得できるような、できないような能力だった。
しかし、ジョセフにそれを知る術はない。
いや、知ったところでどうしようもないのだ。
「さて、カードを確認しましょうか」
ジョニーが自分のカードを確認する。
(よし!スペードのロイヤルストレートフラッシュ!
これでこの若造にイカサマをする方法はないッ!)
ジョニーは勝ちを確信しつつもポーカーフェイスを崩さない。
まさにプロの鑑だった。
しかし、そのポーカーフェイスも少し歪む出来事が起こる。
「じ、ジョセフ!貴様何をしているッッッッ!?
カードを見ずに何故私の方ばかり見ている!?」
「いいや、なんともねーよ?
カードの確認はもう終わりか?」
ジョセフは頬杖をついて余裕綽々といった様子でジョニーを見ている。
ジョニーは、ここでジョセフが見ているのは自分自身ではなく、あくまでも
その見落としが、彼を地獄へと誘う。
「ぐぬぬ……………ベッティング・ラウンドに入るぞ!
7枚ベットだ!」
参加料のチップを一枚払ったジョセフにはもうチップは7枚しか残っていない。
コールかフォールド─────ジョニーの圧倒的有利であった。
しかし、ここでジョセフの口から驚くべき一言が出た。
「10枚上乗せでレイズだ」
「ッッッッ!?何を言っている!?貴様のチップは既に7枚しか………!?」
ジョニーは目を見張った。
ジョセフの手元には、明らかに増えている────いいや、むしろ初期に持っていたチップよりも多い数の物があった。
「ど、どうなっているッッッ!?貴様、どんなイカサマを────」
「イカサマなんかじゃあねーよ。
自分でその答えを考えるんだな。
さあ、次はおめーの番だぜ?」
(どういう事だ!?チップは私のスタンドで生み出された物……………イカサマで増やすことなど不可能だッッ!!
どんな方法で……………
いいや、関係ない!
どちらにしろヤツが私に勝てないことに変わりはない!
このままお互いに10枚ずつ上乗せして行けば57枚が賭けられるッッッッ!!
どちらにしろ私の勝ちだ!)
「10枚レイズだ!」
「10枚リレイズするぜ」
次々と賭けていき、遂にジョセフが持っているチップ数───57枚が場に出された。
「そ、それではカードのチェックに─────」
「ちょっと待った!!」
カードを見せようとしたジョニーをジョセフが手で制す。
ジョニーは何が起きるのかと怯え気味だ。
「ここで俺はフィラデルフィア特別ルール『デンジャラス・ベット』を使うぜ」
「バカなッ!特別ルールだとッ!?」
「ああ。
『デンジャラス・ベット』とは、ベッティング・ラウンドが終わった直後、使うことができるルールだ。
ルールは簡単!
一番チップが少ないプレイヤーの所持チップ数と同じチップが賭けられている時、すなわち負けている側が崖っぷちに立っている時…………そのプレイヤーが相手の役を宣言し、それが合っていれば、そのターンは負けている方のプレイヤーの勝ちとなるッッッ!!」
「な、なに!?そんなルール、負けているプレイヤーの圧倒的有利じゃあないか!
それに、私はフィラデルフィアどころか世界中のポーカーの地方ルールを知っているが、そんなルールは世界のどこにもない!
よって却下だ!」
ジョニーが言い張ると、ジョセフはニヤリと笑った。
計画通りといった様子だ。
「へっ、遂に言いやがったな!
つまり、それは「もし本当にそんな地方ルールがあるなら使っても構いません」って言ってるのと同じだぜ〜〜〜!」
ジョセフが立ち上がり、他の客に質問をする。
ジョニーは止めに入る隙もなく、ただ見ることしか出来ない。
ジョセフは彼らにこう質問して回った。
───『デンジャラス・ベット』を知っているか?、と。
そして質問された客の中でポーカーをやったことがある人間は全員、ジョセフが説明したルールに寸分の違いも無い事を認めた。
「フィラデルフィアのポーカーをやっている人間、ここにいる13人中13人が『YES』と言ったぜ?
これじゃあもう認めるしかねーよな?
それに、こちらにも、失敗すればカードの見せ合いをせずにこちらの負けとなる、ってデメリットはあるんだぜ?」
そう、『デンジャラス・ベット』は失敗すれば強制敗北の捨て身のルールなのだ。
ジョセフはしかし、その状況にまったく焦りや恐怖といったものを感じていなかった。
「………いいでしょう」
「スペードのロイヤルストレートフラッシュ」
「なっ───」
ジョニーが諦めるように言うと、ジョセフは間髪を入れずに宣言をする。
「…………どうした?俺が宣言をしたんだぜ?
そのカードを見せてみろよ」
ジョニーの手が小刻みに震える。
そして、放り出すようにカードを机に出した。
その白い長方形には、スペードのマークと、10,J,Q,K,Aの文字が映し出されていた。
「Well done!俺の勝ちだぜ!!」
カードに刻まれていた腕が空中で太くなり、ジョセフの肩へと合体する。
既に体も元通りになっていた。
そしてジョニーは─────
「57枚失って残チップ数は36枚。
────────すなわち28%の亡失だぜ」
ジョニーの右腕が指から少しずつ、プレスでもされたかのようにぺらぺらになる。
先ほどまでのジョセフと同じように、彼もまた右腕を肩まで絵柄へと変えた。
「さあ、続けようぜ?」
「ぐ、おおおおおおおおおッッッッッッ!!」
「!?」
ジョニーが突如声を上げる。
それにジョセフはビクリとしたが、その次にはまた顔をしかめていた。
ジョニーは笑っていたのだ。
声をあげるのをやめていた。
彼はただニヤニヤとしていた。
公園で遊ぶ子供を見る親のように。
もうすぐでゲームをクリアできるプレイヤーのように。
満足気に笑っていたのだった。
「ええ、既にカードなら配ってありますよ?」
ジョセフがハッとして手元を見ると、5枚のカードがあった。
「………チッ(なんだ?ヤツは今、相当に混乱しているはずなのに………………
この寒気がするような感覚はなんなんだ?)」
お互いに手元のカードを取る。
「ベッティング・ラウンドに入るッッ!
俺は10枚ベットだ!」
「10枚上乗せ」
「さらに俺も10枚上乗せでレイズ!」
「6枚上乗せでリレイズ」
「なにィィィ!?」
彼らが賭けたのは36枚。
もし負ければ、ジョニーはトランプとなる。
一か八かの戦いだった。
「へっ、いいのかよ?そんなに賭けちまって?
(バカめ!さっきお前は俺のハーミット・パープルがイカサマをしているかどうかを確認せずにシャッフルをした!
カードが配られているのに気付かないフリをしたのはフェイクだったのさ〜〜〜!
ハートのロイヤルストレートフラッシュ!
絵柄の中で後悔しやがれ!)」
「じゃあ、カードを見せ合お─────」
「─────ちょっと待ったッッッ!!
私も『デンジャラス・ベット』を使わせてもらう!!』
「なっ─────」
ジョニーが声を張り上げる。
ジョセフはしまった、という顔をしていた。
「私の方が総チップが少ないならこのルールは使用可能なはずだ!
貴様の役は………おそらくハートのロイヤルストレートフラッシュ!!
さあ、カードを見せ給え!」
ジョセフが唇を噛みしめる。
手は明らかに震えている。
「早く見せるんだ!」
「このカードを………見せればいいのか?」
「当たり前だ!さあ、早く!」
ジョセフの震えが一層大きくなる。
「本当に……このカードをみせなきゃ……いけねえんだな?」
「いいから見せろと言っているんだッッッ!!」
ジョセフの震えが、ピタリと止まった。
「……………分かった」
(やったぞ!私の運の強さならきっと当たる!
確実と言っても過言では無い!)
ジョセフが少しずつカードを傾ける。
白い背景に、模様が刻まれている。
「くっ」
ジョセフが苦悶の声を上げる。
苦悶…………………いいや、苦悶の声では無かった。
「くははははははははは!!!!」
ジョセフの声は必死で笑いを堪えた故、漏れ出る声であった。
その手には、ダイヤのロイヤルストレートフラッシュが握られている。
「なっ、バカなァァァァァァッッッ!!
この私が………………外すだと!?」
ジョニーの身体が次々に紙のようになって行く。
「ジョニー……………メモ用紙が無いならそのトランプにでもメモっときやがれ!!
いいか!
───────バレなきゃ、イカサマじゃあねーんだよ〜〜〜〜〜!!」
ジョニーの体が完全にトランプへと変わり、動くことができなくなった。
辛うじて話すことは出来るようだ。
「ジョセフ!残念だったな!
どんなイカサマをしたのか知らんが、私の能力なのだから私が解除できないわけがない!
すぐに元に戻って─────」
「──────へえ、てめーはポーカー抜きの
「…………ハッ!─────許してくださいいいいィィィ!!」
既に能力の解除をしてしまったジョニーが元の大きさに戻りながら許しを請う。
出会った頃のハンサム顔はもうどこにもなかった。
「許して欲しいなら、てめーを差し向けたやつの名前と居場所を吐きな」
「………私を差し向けた人間?」
ジョニーが、分からないという顔をする。
「てめー、とぼけるんじゃあねーぜ!」
「ほ、本当ですッッ!!私はたまたまここを通りかかって道を聞いただけですよ!」
「なにィィィ〜〜〜?」
ジョセフが怪しみ、ベルに記憶を見るように言う。
3分ほどジョニーに触れていたベルが本当に一般人だと言うのを見て、ジョセフは警戒を解いた。
まだ納得はしていなさそうだが一応は彼の言うことを信じているようだ。
「と、ところで一つ聞きたいことがことがあるのですが!」
「あァん?」
「何故私の勘が外れて、あなたは私の役を当てられたのですか?
それにチップが増えたのも………
自分で言うのもなんですが、私はとても運が良く、勘を外すことなどありえないはず………」
「ああ、やっぱりてめー、ただ運が良いだけだったのか。
簡単なことだよ。
最後のはおれのスタンドでハートの上の半円部分を隠してダイヤに見せただけだ。
猫騙しみてーなイカサマだが、焦って見抜けずに負けを認めたのはお前だぜ?
それと、増えたチップはベルの魂を賭けた。
これは正直できるかどうか分からなかったけど、まあ出来たみたいだな?」
「ちょ、いつの間に私の!?」
ベルが思わず叫ぶ。
「俺が役を当てたのに関しては……………クイーン、説明してやってくれねェか?」
「ああ」
「──!?」
ジョセフの呼びかけに吉良が応じる。
しかし彼はいつの間にか、テーブルではなくジョニーの後ろにいた。
「実は途中からジョセフにメッセージをもらっていてね。
私のイカスミパスタが文字になった時は驚いた。
そのメッセージは「クイーン、俺の金でレストランの客全員を買収してくれ」だ」
「なっ!?まさか………」
「ああ、そもそもフィラデルフィア特別ルールなんてただの嘘っぱちだよ。
俺の言う事を肯定するよう買収されてる客達に質問してもそりゃあYESとしか言わねーさ。
あと、お前の後ろの客がジェスチャーでてめーの役は教えてくれたぜ?」
ジョニーが驚いて後ろを見ると、そこにいた客は口笛を吹きながらレジへと向かった。
手には札束が握られている。
それを見て唖然とする彼の肩に、吉良がポンと手を置き、
呟いた。
「………日本には、節分という文化がある。
2月3日に、海苔巻きを食べたり豆を撒いたりして運気を高めるんだ。
何が言いたいかっていうと、みんな運を上げようと頑張ってるってことだ。
君は、自分の運に甘え、努力を怠ってしまった。
まあ、運なんて不確定なもの、努力で高めようなんて私は思わないが──────君は私達を舐めすぎたんだな」
吉良の言葉を聞いたジョニーが、一人で頷き、そして立ち上がった。
「素晴らしい!貴方達のおかげで目が覚めました!
これからはイカサマも使って頂点を目指しましょう!
『バレなきゃイカサマじゃあない』………………その言葉、孫の代まで受け継ぎましょう!!
あそこをこうすればあんなイカサマが…………いいや、それならここをこうして………」
「おいおい、こいつ今度はイカサマの研究なんて始めてやがるじゃあねぇか!これじゃあ真面目なのか不真面目なのか分かりゃあしねェぜ〜〜〜ッッ!?」
一人で興奮してイカサマを考え出したジョニーに、ジョセフとベルは口を開けてぽかんとしていた。
吉良は席に座り、イカスミパスタを再開していた。
通りすがりのギャンブラー 『ジョニー・D・ダービー』
和解し、再び旅に出る。
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スタンド名 - 『ラック・ユー』
本体 - ジョニー・D・ダービー
破壊力:E
スピード:E
射程距離:E
持続力:E
精密操作性:E
成長性:B
能力 - 〔相手が魂を賭けることで、お互いに50枚のチップを発生させる。
チップは1枚で持ち主の身体の2%を受け持っている。
失ったチップの分の体はカードの柄となる。
全てのチップを失えば、カードとなってしまう〕
なんとか節分中に投稿出来た………
最後の吉良さんの一言のためだけに今日中に仕上げました。