――8月8日・近所の公園
現在、午前九時三十分。軽くあくびをしながら近所の公園のとあるベンチに座っていた。
なぜこんなところにいるかと言うと、今から約三十分前に、一夜先輩から突然「今日は一緒に遊びませんかっ?」などとラインがきたせい――もといきたからだった。
正直、断りたかった。ただでさえ休日に家から出るのは嫌だというのに、今日は外に出たくないと思えるほどの猛暑ときた。今日は自宅のエアコンがガンガン効いた快適な空間に1日中居座り、ココ最近撮り溜めていたアニメを全話視聴する予定だったというのに。
まあ、そんなことを考えているところを憂姫に発見され、強制的に家を出されたわけなんだが。憂姫曰く、「こんなチャンスを逃したら、一生学生生活の思い出なんてできないからねっ。それこそ、枕元にもったいないお化けがでちゃうんだからっ」とのことだ。正直、余計なお世話ではある。
「はぁ……あちい……」
そんなこんなで、遠くに待ち合わせ場所を指定すると面倒……もとい大変だから、うちの近くの公園で待ち合わせをして、こうして待っているわけだ。
それにしても暑い。今すぐにでも真っ黒な炭酸飲料で喉を潤したい。だが、生憎近くには自動販売機らしきものは無い。五百メートルも移動すればあることは知ってあるが、もしこの場を離れている時に一夜先輩が来たらそれこそうるさい。……いや、ただ面倒事を避けたいだけなんだが。
「おはようございますっ、時雨くんっ」
そんなことを考えていると、不意に後ろから声をかけられた。
この聞きなれたトーンの声。そしてこんなテンションで話しかけてくるやつは、俺の知る限りでは一人しかいない。そう、一夜先輩だ。
「……ああ、おはよう、一夜先輩。ところで、今日はなんで呼び出したんだ?」
「私が時雨君と会うために理由なんてものを作ると思いますか?」
「質問に質問で答えるな。……まあ、そんなことだろうとは思ったよ」
軽く頭を掻きながら呆れたような声で呟く。
そうだ、この人はこういう人だった。まあ、変に毛嫌いされて、こういうふうに遊べなくなるよりはましなのだろうが。
「それで、今日はどこに行くつもりなんだ?」
「そうですね……こんな暑い日にはプール、と言いたいところですが、時雨君は水着を持ってきてないでしょう?」
「まあ、持ってこいと言われてなかったからな」
「ですから、今日はショッピングにでも……」
「へいへい、分かったよ」
どうせ嫌だと言っても強制的に連れていかれるのは目に見える。なら、抵抗しない方が楽というものだ。
下手に駄々をこねて雰囲気を悪くした方が面倒なことになる。
「それで、どっかいくアテでもあるのか?」
「んー、そうですねっ。それじゃあ、まず手始めに時雨君のおうちにでも」
「おい、買い物はどうした」
「冗談ですよっ。全く、そんな冗談も返せないようでは、彼女なんてできないですよっ?」
「余計なお世話だ。それに、俺には――」
「嫁がいるから、彼女なんていらない……ですか?はぁ……そんなことを言っていられるのは今だけなんですからねっ!」
何故かいつもよりも突っかかってくる一夜先輩。何がこの人をここまで興奮させたのだろうか。
「二次元等という一趣味に過ぎないものにのめり込んだがために、永遠に恋人ができないまま死んでいく。それが今のままの時雨君が進む未来の光景ですっ」
「おい、それ以上は――」
「三十代無職の男性、鹿倉時雨。PCゲームに夢中になりすぎて食事をとることをせずに衰弱死。親族はこのような事になるなら社会復帰させておけば……等と語っており」
「俺の未来を勝手に決めてんじゃねえ!しかも何でニュースキャスターみたいな口調になってんだよ!」
「ふふっ、冗談ですよっ。もし嫁の貰い手がなかったら、私が引き取ってあげますからっ」
「人をペットみたいに言うな。それに、俺は男だから嫁ではない」
「何を言っているんですかっ、しーちゃんっ」
「これ以上傷口に塩を塗るのはやめてくださいっ」
こいつは悪魔かなにかか。的確に人の傷口を抉ってくる。
俺はドMだが、それはあくまで肉体に対する痛みが好きなだけであって、精神的なものは専門外だ。ただ辛いだけ辛い。
「でも、私と結婚するというところは嫌がらないんですねっ」
「うるせー。こっちからしたら玉の輿だぞ。公式ニートになれるだろうが」
「そんな理由ですかっ!?」
「そんなとはなんだ。公式ニート。最高の肩書きじゃないか。一日中自分が好きなことをして過ごせる。これ程人間冥利につきることはない」
「本物のクズですか、時雨君はっ!?」
顔を真っ赤にして怒る一夜先輩。正直、一夜先輩の心地いい罵倒と蔑むような目は捨てがたいが、これ以上は流石に面倒なことになりかねない。
「流石に冗談だっつの。真に受けんな」
「むっ、冗談でも言っていい事と悪い事がありますっ!」
「そう怒んなって。それに、もし金狙いで付き合ってたら今頃愛想つかされてるよ」
「うぅ……それはそうですが……」
まだ納得していない様子の一夜先輩。
どうやら公式ニート発言のインパクトが強すぎたらしい。まあそれは俺が悪いんだが。
……こうなったら、小っ恥ずかしいことでも言わなきゃ収まらない。多少告白めいたことだとしても。
「ったく。一夜先輩は心配性なんだよ。俺がそんなに薄情なやつなら、まず一夜先輩は俺のことなんて好きにならねーよ。それに
……」
「それに、なんですか?」
「俺の初恋はまだ続いてんだ。だから、アンタが俺を確実に嫌いになるような行動なんてしねーよ」
「……っ」
俺の発言に顔を真っ赤にする一夜先輩。心做しか、俺の頬の熱も上がってきたような気がする。……暑さにでもやられたか。
「……時雨君は、ズルいです。こういう時だけ、かっこいいことを言うなんて……」
「こんなことでも言わねーと納得しないだろ、アンタ」
「納得させるためだけに言ったんですかっ!?」
「そりゃそうだろ。まず、俺はこんな小っ恥ずかしいこと平然というようなキャラじゃねーだろ」
「確かにそうですが……。それじゃあ、さっきの言葉も作り話だったんですかっ?」
「この手の類の話で嘘なんかつかねーよ」
俺の発言にさらに顔を赤らめる一夜先輩。
案外、自分が想定していなかった発言には弱いのかもしれない。
「まあ、こんなところにいてもなんだし、さっさと買い物にでもいこーぜ」
「……はいっ!」
元気そうに返事をする一夜先輩。
一瞬、告白まがいのことを全然気にしていないのかと思ったが、そうではなかったようだ。
「何をしてるんですかっ、時雨君っ。早くしないと置いていきますよっ」
ーーだって、あんなに嬉しそうな笑顔を浮かべているのだから。
ーー近くの茂み
「時雨ぇ……何あんなにいちゃついてんだよ……」
二人の近くから怨嗟の如く声を発する少女こと私ーー千代田こよみ。
なぜ茂みにいるかというと、二人の様子がきになってストーカー紛いのことをしていたからだ。いや、実際にストーカーと同じ行動をしているんだけど。
「……こよみ、こんな事やめようよ」
呆れたような声音の憂姫ちゃん。今回のことの情報提供者にして、時雨の妹。自分で焚き付けたのはいいけど、私が暴走しないか心配できたらしい。おそらく、それは建前なんだろうけど。
正直、何を言いたいのかはわかるけど、今日だけはそっとしておいてほしい。
「いやー、別にいいんじゃないかな。あんな時雨君見るの初めてで面白いし、それに目を離したらたぶん恋仲になると思うよ」
笑顔で恐ろしいことを言う遥。学校での良き親友だ。今日は面白半分でついてきたらしい。おそらく、こっちの方も建前なのだろうけど。
「それはな……いとは言いきれないのが怖いんだよ。お兄ちゃんの口からあんな告白まがいの言葉が出てきたの、はじめてだし……」
「ほらほら、それを阻止するためにも一緒について言った方がいいんじゃないかな?」
「うぅ……」
これ以上焚き付けられたら、憂姫ちゃんじゃなくて私の方が直接乗り込んでいきそうになりそうなんだけど。
「とりあえず、ついていこうよ。知らないで後悔するよりも、知って後悔したほうがマシだろうしさ」
「後悔するのは確定なんだね」
「さあ、それは行ってみないと分からないからね」
遥は私たちを焚き付けて何が楽しいのだろうか。
「どっちにしろ私はついて行くけど、二人はどうするの?」
「「ついて行くよっ」」
こうしてここに、時雨尾行隊が結成されたのであった。
こよみ「おい」
作者「え」
こよみ「私のルートも作るんだよね?」
作者「今のところ予定にはな……って腕はそっちの方向には曲がらな」
こよみ「なんで私のルートだけないのっ!?」
作者「まず一夜先輩のものを書くのに忙しくてほかのやつを考える暇がない」
こよみ「切実すぎない?」
作者「それもこれもFGOが面白いのがわる……っていだいいだいもげるもげる」
こよみ「まずゲームをやめなよっ!私と時雨が仲良くいちゃいちゃする話の方が大事だよっ!」
作者「俺からゲームをとったら何も残らない」
こよみ「骨くらいは残ると思うよ」
作者「ひでえっ!……まあ茶番はここまでにするとして、こよみのはいずれ書くよ。個人的に口調が把握出来てない那由多と縁はあまり出てこないとは思うが」
こよみ「さっさとリメイク買いなよ」
作者「課金しすぎて金がない」
こよみ「ぽっと出の北斎や邪ンヌにお金を使いすぎるからそうなるんだよ。それに、嘘吐きリメイクには作者が好きな遥の水着シーンがでてくるんだよ?」
作者「あ、嘘吐きだけは購入して、遥が出てるところだけやったから」
こよみ「こじらせすぎてないっ!?」
作者「何を言う。遥は天使だ。それを崇めて何が悪い」
こよみ「あー、はいはい。少し黙りなよ」
作者「……ハイ。それじゃあそろそろ次回予告に入るな」
こよみ「次回こそはもっといい出番が……っ!」
作者「次回、『時雨、死す。デュエルスタンバイッ!』」
こよみ「思いっきりぱくったね!?」
作者「とりあえず、無事ではないんじゃね?」
こよみ「ふーん。まあ、どこぞのカニファンのネタみたいなことは言わせないでね」
作者「時雨が死んだ!」
こよみ「このひとでな……ってやめい!」
作者「暴力反対っ!……まあ、今回はこんなところで。さよなら」
こよみ「さよならっ!って、にげるなっ!まーてーっ!」