バトルスピリッツ アナクロニズム   作:にしはる

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08 白き要塞

 バトルフィールドの風はどこか荒野を思わせる。少し砂っぽく湿気のない風が頬を撫でる。それはそう感覚に影響を及ぼす感だけで、実際には風など吹いていないのかもしれない。しかしその風を感じると、自分はバトルフィールドに立っているのだ、と、神田俊道は実感するのであった。

 神田の向かい側、円形闘技場の反対の舞台には、バトルフィールドに立つにはあまりに綺麗で、清楚な少女がいる。ハーフアップの髪はやや青い黒髪。ブラウスもスカートも清涼感があり、余計にここには似ても似つかない。しかしそれは少女の姿形に限ったことで、彼女の目はバトルフィールドに立つに相応しい、バトラーとしての輝きを持っていた。

 湯川綾織(ゆかわあやおり)という名の少女は、バトルフォームのライフを撫でて、息を大きく吸った。ゆっくりと息を吐き出し静かに目を伏せる。

「さて、お待たせしました。私達のバトルを始めましょう」

 きっと目を開いた綾織は神田を見つめると妖艶さを含んだ笑みをたたえた。

 

 

 * * *

 

 

第1ターン<湯川綾織>

リザーブ:4 手札:5 ライフ:5

 

「メインステップ、まずは超時空重力炉をLv2で配置します」

 

配置:超時空重力炉Lv2(c1)

 

 綾織の背後に厳めしい機械に囲まれた白い結晶が姿を見せる。

 綾織のデッキはいわゆる白重と呼ばれる類のもの。白の大型スピリットがデッキの多くを占め、その召喚をサポートするカードや時間を稼ぐカードで回りを固める。長引けば長引くほどに、高いBPのスピリットが少ない神田のデッキが不利になっていくのは明白だった。

 神田もそれを理解した上で速攻をかけたいと思うところだが、そう上手くはいかないだろうとも思っていた。

「メインは終了で、アタックステップもないのでターン終了です」

 

 

第2ターン<神田俊道>

リザーブ:5 手札:5 ライフ:5

 

「メインステップ、まずはメイパロットを召喚」

 頭の飾りの目立つ白い羽のスピリットが飛来し、神田の舞台の手すりに降り立った。

 

召喚:メイパロットLv1(c1)

 

 召喚時効果でボイドからコアを自身に乗せることでレベルが上がる。しかし神田は増えたコアをリザーブに戻し、アタックステップに入った。

「まずは1点貰う」

「大型が召喚される前に攻め切ろうということですね、ライフで受けます」

 メイパロットの爪の一撃に対し、綾織はそれを抱擁で受け入れんばかりに腕を広げてみせた。

 

湯川綾織:ライフ5→4

 

 神田がエンドを宣言して綾織の第3ターン。

 

 

第3ターン<湯川綾織>

リザーブ:5 手札:5 ライフ:4

超時空重力炉Lv2(c1)

 

「リフレッシュステップを終えて、メインステップに入ります」

 綾織の声が凛と響く。

 彼女の後ろの超時空重力炉が呼応するように輝きだし、神田もその眩しさに目を細めた。

「その輝きは、小さきスピリットには障害となりますが、大きなスピリットにとっては召喚のエネルギーとなるのです。Lv2の超時空重力炉の効果により、白のスピリットを召喚するとき、このネクサスのシンボルを白シンボル3つにします」

 効果を宣言し綾織が手札一枚を引き抜く。

「機獣要塞ナウマンガルドを召喚します!」

 リザーブのコア5つを支払い、綾織は維持コストを超時空重力炉から確保する。それにより超時空重力炉はLv1にダウンする。

 

召喚:機獣要塞ナウマンガルドLv1(c1)

 

 大地が割れ吹雪が吹き荒ぶ。地響きを伴い割れ目から姿を現したのは機械仕掛けの巨大なゾウ。

 地面を踏み鳴らす脚は強靭でメイパロットなどサイズの比較対象にもならない。そもそもそれ自体が要塞であるスピリットなのだから巨大であるのは当然のことだ。

 動く要塞は唸りを上げる。大地がわななきグラグラとバトルフィールド全体が振動した。

「アタックステップに入ります。ナウマンガルドでアタック! ナウマンガルドはダブルシンボルです。どうしますか?」

 綾織の声にナウマンガルドがおもむろに動きだす。静かな歩みだが一歩一歩が大きく、すでにナウマンガルドの鼻先は神田の眼前に迫っていた。

「さすがにそれは受けられないな、フラッシュタイミング! マッハジーを神速召喚」

 

神速召喚:マッハジーLv1(c1)

 

 後脚で身体を持ち上げ、振りかぶった長い鼻がしなやかな鞭のように神田に襲いかかる。風を引き裂く音と共に神田のライフが砕かれる……と思いきや颯爽と現れたマッハジーが巨躯から繰り出される一撃を受け止めた。

「ぐっ……マッハジー、助かった」

 神田は破壊されたマッハジーの衝撃波に腕で顔を覆う。しかし彼のライフは守られた。

 ナウマンガルドは自陣に戻るとうなだれるようにして疲労した。

「思わぬ伏兵ですね。ではあなたのターンですよ」

 綾織はにこやかに笑った。

 

 

第4ターン<神田俊道>

リザーブ:6 手札:4 ライフ:5

メイパロットLv1(c1)

 

 このターン、神田は猪人ボアボアをLv1で召喚し、メイパロットと猪人ボアボアでアタックを敢行する。

 神田は猪人ボアボアの緑シンボルの連鎖により猪人ボアボアにコアを一つ追加し、綾織は2体のアタックをライフで受けた。

 

湯川綾織:ライフ4→2

 

 

第5ターン<湯川綾織>

リザーブ:8 手札:5 ライフ:2

機獣要塞ナウマンガルドLv1(c1)

超時空重力炉Lv1(c0)

 

「焦っていますか?」

 綾織の問いに神田は表情を変えずに返す。

「早いうちにコアを与えてでも攻め込むべきだと思ってね。コアの多寡に関係なく白は踏み倒しての召喚も得意だからな」

「そうですね。確かに超時空重力炉がなければこれほど早くナウマンガルドは召喚できません」

 綾織は会話をやめメインステップを宣言した。

「ナウマンガルド、超時空重力炉をLv2に。そして獅機龍神ストライヴルム・レオをLv1で召喚!」

 

機械獣要塞ナウマンガルドLv1(c1)→Lv2(c4)

超時空重力炉Lv1(c1)→Lv2(c2)

召喚:獅機龍神ストライヴルム・レオLv1(c1)

 

 黄金に輝く牙と爪、機械的なゴツゴツした部位を持ちながらもしなやかな肉体の獣が登場する。2体並ぶだけで無限アタックを繰り出す凶悪なスピリットである上に、緑への耐性を持つため神田の得意戦術が通用しないスピリットであった。

「ではアタックステップに移行しますね?」

 ゆるりとお辞儀をするような仕草を交えて、盤面のナウマンガルドを疲労させた。

 咆哮を上げ地面を揺らし歩き出すナウマンガルド。

「ダブルシンボルでかつBP12000か」

 綾織のたおやかな笑みが神田の返答を肯定する。

 神田のライフは残り5。まだダブルシンボルの攻撃受けても致命傷にはならない。リターンとして使えるコアが2つも増えるため受ける価値はある。その分敗北が這い寄ることには注意をする必要があったが、これからの戦いを考えて神田は、

「ライフで受ける」

 手札を眺め思考を巡らせてからその宣言をした。

 なにをするにもコアが必要なのだ。コアに融通が利く方がここから先は強いのだ。それにナウマンガルドのアタックが通ればストライヴルム・レオもアタックするだろうと神田は踏んでいた。

 ナウマンガルドの振りかぶった鼻がヒットしてライフが割れる。

 

神田俊道:ライフ5→3

 

「続けてストライヴルム・レオでアタックします」

 ぐっと四肢を踏み込み、真っ直ぐに突っ込んでくるストライヴルム・レオ。白い弾丸となった獅子が神田を襲う。

「なんでナウマンガルドの攻撃をライフで受けたと思う?」

 神田はそんなことを言って、マッハジーを神速召喚し、ストライヴルム・レオのアタックをマッハジーでブロックする。

 

神速召喚:マッハジーLv2(c3)

 

 緑の小さな虫がストライヴルム・レオの進路を阻む。真正面からぶつかり合って僅かの間だけストライヴルム・レオの突進を止めたものの、すぐにマッハジーは弾き飛ばされてしまう。

「もちろんコアが欲しいからだ。でもそれだけじゃない。その厄介なスピリットを討ち取るためだ。フラッシュタイミング、ブリーズライド!」

 

使用:ブリーズライド 対象マッハジー

 

 神田は猪人ボアボアのコア1つを支払い、マッハジーにBP+3000を与えた。

「ストライヴルム・レオはBP6000、ブリーズライドの効果を受けたこっちのマッハジーもBP6000だ。どうする?」

 爪で引き裂かれる寸前、マッハジーを緑の旋風が包みストライヴルム・レオを遠ざける。急上昇したマッハジーは頂点から落下しストライヴルム・レオへ突撃する。ストライヴルム・レオの砲撃、銃撃を機敏な動作で回避し迫る。

「……まだ神速召喚があったのですね、それに加えてBPを上げるマジックの二段構え……」

「Lvを上げられたらこっちはお手上げだ。ならLvが低いうちに叩くしかない」

「……くう……」

 綾織は逡巡した。手札のマジックを使えばストライヴルム・レオを場に残すことができる。しかしそのコストを支払うにはナウマンガルドのLvを下げるしかない。ナウマンガルドの攻撃が使えなくては次のターンの攻撃を凌ぐシナリオが全て瓦解してしまう。となれば、綾織はその決断を下すほか選択肢はなかった。

「フラッシュタイミングはありません……」

 螺旋しストライヴルム・レオ目掛け飛来するマッハジーを額で受け止めるストライヴルム・レオ。身体のサイズは圧倒的なまでにストライヴルム・レオの方が上であるが、全てを決めるのはBPだ。

 ブリーズライドの効果を受けパワーアップしたマッハジーに押し切られストライヴルム・レオはフィールドの外縁まで押しやられ派手な音を立てると同時にストライヴルム・レオ、マッハジーの両者が破壊された。

「レオ……ごめんなさい。ナウマンガルドのLv2効果を発揮します。」

 ナウマンガルドはLv2の効果で、アタックステップ終了時にドロー/リフレッシュ/コア/メインのいずれかのステップを追加で行うことができる。

 綾織はリフレッシュステップを行い、ナウマンガルドを回復、トラッシュのコア4つ戻し、リザーブのコアを5つとした。

 

 

第6ターン<神田俊道>

リザーブ:9 手札:2 ライフ:3

メイパロットLv1(c1)

猪人ボアボアLv1(c1)

 

 神田にとっては非常に良い流れであった。考えもなしにストライヴルム・レオを討ち取ったわけではない。手札の消費も考慮済みだった。

「まずは魔王蟲の根城をLv1で配置、更にマジック、ハンドリバース」

 

配置:魔王蟲の根城Lv1(c0)

使用:ハンドリバース

 

「湯川さん、そちらと同じ枚数分ドローさせてもらう」

 綾織の手札は4枚。つまり神田がドローする枚数は4枚。軽減含めて僅か3コストで4枚ものドローをした上に、彼は手札を使い切っていたために損失は皆無。綾織は素直に強い、と思った。

「お一人で得をしてズルいですね?」

「白使いがなにを言ってる。魔王蟲の根城をLv2にアップしてアタックステップはなにもせずターンエンド」

 

魔王蟲の根城Lv1(0)→Lv2(c2)

 

 手札にブリーズライドが戻り神田の手札は5枚になった。

 

 

第7ターン<湯川綾織>

リザーブ:6 手札:5 ライフ:2

機獣要塞ナウマンガルドLv2(c4)

超時空重力炉Lv1(c0)

 

「天王神獣スレイ・ウラノスをLv2で召喚!」

 

召喚:天王神スレイ・ウラノスLv2(c3)

 

 スラスターを四肢に備える馬に似たスピリットが登場する。スピリットを手札に戻す効果と連動した回復効果を持つスピリットである。

「アタックステップ! スレイ・ウラノスお願いします。アタック時効果発揮により猪人ボアボアを戻します」 

 スレイ・ウラノスのいななきに吹き飛ばされた猪人ボアボアが、神田の手札へと戻る。

「この効果でコスト4以下を戻したのでスレイ・ウラノスを回復させます」

 スラスターが火を噴き、スレイ・ウラノスが宙に浮き移動する。

「ならこっちは魔王蟲の根城のLv2効果を使う」

 神田は手札からマー・バチョウを提示した。

 

魔王蟲の根城Lv効果によりノーコスト召喚:マー・バチョウLv2(c2)

 

 根城がざわめき立ち、マー・バチョウが現れ神田のフィールドに飛来した。

 マー・バチョウ召喚時効果でリザーブにコアが追加される。

「フラッシュがないならマー・バチョウでブロックする」

 宙空でスレイ・ウラノスとマー・バチョウが交錯する。素早い空中戦が繰り広げられ、BPで劣るマー・バチョウが押され始めた。

「更にフラッシュタイミングでブリーズライドを使用する。マー・バチョウにBP+3000。これによりマー・バチョウはBP7000。スレイ・ウラノスに並んだぜ?」

 

使用:ブリーズライド 対象マー・バチョウ

 

 先ほどと同じくマー・バチョウは緑の渦に抱かれ、スレイ・ウラノスを押し返し始める。

「これ以上してやられるつもりはありません。こちらも行きます! フラッシュタイミングでリゲインを使います」

 神田の神速とブリーズライドを使った戦法にはもうやられまいと、綾織もフラッシュを宣言した。

 

使用:リゲイン 対象 天王神獣スレイ・ウラノス、機獣要塞ナウマンガルド

 

「自分のスピリット全てをBP+3000。コストはスレイ・ウラノスから確保します」

 スレイ・ウラノスはLv2BP7000、乗っていたコア2つが取り除かれLv1に下がり、BP5000になる。そこにリゲインの+3000が加算され、合計BP8000となる。

 白いエナジーで吠え猛るスレイ・ウラノスがマー・バチョウを遥かに凌駕する速度でマー・バチョウを翻弄し、一瞬の隙をつき鋭利な首の刃でマー・バチョウを切り裂いた。

「どうですか? 毎回あなたの思うようには行きませんよ?」

「さすがに2ターン続けて召喚されたスピリットを破壊されたくはないか。まあ手札を使ったのは痛かったけど、損失はそんなじゃない」

「……? 一体どういう……」

「本当に破壊したと思ってる?」

 神田はそう言って、すでに使用されたスタークレイドルが自らのトラッシュにあることを示した。

 

使用:スタークレイドル

手札に戻す→マー・バチョウ

疲労→機獣要塞ナウマンガルド

 

 神田はコストを魔王蟲の根城から払い、スタークレイドルの効果でマー・バチョウを回収、更にナウマンガルドを疲労させ追撃を封じていたのだ。

 破壊されたと思われたマー・バチョウは星のゆりかごに守られ、手札へと戻っており、スレイ・ウラノスの攻撃を回避していた。

「……なるほど、こちらが対抗した場合の策も講じていたわけですね。これは私の思慮が欠けていたということですね」

 綾織は少し表情を歪ませた。

「超時空重力炉がなければまたマー・バチョウを神速召喚できたんだが……」

 更に相手にとって面倒なことを考えていた神田であったがそれは実行できなかった。

「超時空重力炉のLv1効果は常時発揮ですからね。とはいえ僅かな抜け穴を駆使されて、こちらは翻弄されっぱなしです」

 そこまで綾織は苦笑しながら言って、まだアタックステップは終わりませんよ、と回復状態のスレイ・ウラノスを再度アタックさせた。そのアタックを神田はライフで受けた。

 

神田俊道:ライフ3→2

 

 綾織はナウマンガルドLv2の効果でリフレッシュステップを選択、次のターンへの態勢を整えた。

 

 

第8ターン<神田俊道>

リザーブ:12 手札:5 ライフ:2

メイパロットLv1(c1)

魔王蟲の根城Lv1(c1)

 

 相手の攻撃は幾度も凌いできたものの、こちらが攻めるには厳しい、と神田は思った。対処しなければならないのはナウマンガルドのBPの高さだ。ナウマンガルドはLv2でBP12000を持つのでビャク・ガロウでも太刀打ちできない。Lv2にし翡翠の小太刀 日輪丸を合体させたビャク・ガロウがようやく相打ちを取れるBPである。神田のデッキ内で最もBPの高いビャク・ガロウがこれでは他のスピリットで太刀打ちはできまい。

 とはいえBPで勝てずとも勝負で負けられはしない。

「メインステップ、マジック、ストロングドロー」

 

使用:ストロングドロー

 

 神田は3枚手札を増やし、剣王獣ビャク・ガロウ、翡翠の小太刀 日輪丸の2枚を選択して破棄した。

「その2枚はキーカードでは?」

 これまで神田の戦いを観ていた観客も対戦相手の綾織も驚いた顔をした。

「勝つためには切らざるを得なかっただけだよ」

 相棒として選んだスピリットをトラッシュに送るのは心苦しくはあるが、綾織に言ったように勝つためである。神田は、ビャク・ガロウには今回に限っては休んでもらうことにした。

「続けてライ・シュウユを召喚!」

 

召喚:ライ・シュウユLv1(c1)

 

 ライ・シュウユもメイパロットのような鳥型スピリットであるが、そちらよりも人に近い姿をしている。衣を纏い直立した姿であるからだ。

「召喚時効果で超時空重力炉は手札に戻ってもらう。更に戻したネクサスの枚数だけ相手のスピリットを疲労させる」

 

ライ・シュウユ召喚時

ネクサスを戻す→超時空重力炉

疲労→機獣要塞ナウマンガルド

 

 超時空重力炉から発せられていたエネルギーが消滅し、ナウマンガルドもうなだれるようにして疲労する。

「超時空重力炉がなくなったことで、コスト3以下のスピリットを軽減して召喚できるので、猪人ボアボアをコスト1、維持コア1を乗せて召喚」

 

召喚:猪人ボアボアLv1(c1)

 

 トゲ付き鉄球を持った獣人がフィールドで唸りを上げる。軽いコストながらパワーとコアブーストを合わせ持つ使い勝手のいいスピリットだ。

「アタックステップだ! まずは猪人ボアボアでアタック!」

 Lvを上げる効果により猪人ボアボアはLv2に達する。

「ブロックを誘っているのかもしれませんが、別に対応します。フラッシュタイミング、幻影氷結晶」

 

使用:幻影氷結晶 対象、猪人ボアボア

 

「このターン猪人ボアボアのアタックで私のライフは減りません!」

 振り回した鉄球を綾織目掛け投げる猪人ボアボアだが、氷の結晶が彼女を守りライフは減らない。当然、ライフが減らせなかったので魔王蟲の根城のコアブーストも失敗となる。

「まだだ、行けメイパロット、ライ・シュウユ!」

 神田も負けじとアタックを続ける。2体の鳥型のスピリットが綾織に向かって飛来する。

「ストロングドローを使った時にマー・バチョウは破棄しませんでしたね?」

「ああ、だからいつでも神速召喚できる」

「白のバウンス効果は神速には相性が悪いのでとても厄介です」

「そうだな。だがこのアタックを凌がないと神速召喚するまでもないぜ?」

 神田もこのアタック両方が通るとは思っていない。片方でも通れば勝利へ近づく。

「あわよくば、片方のアタックが通れば、というところでしょうか。そうやすやすと負けるわけにはいきません」

 綾織がフラッシュの宣言をする。1体バウンス程度は神田も覚悟していたのだが……

「まとめて処理させてもらいます、バーストブレイク!」

 

使用:バーストブレイク

対象 ライ・シュウユ、メイパロット

 

「2体のスピリットの合計BPは5000。よって2体とも手札に帰っていただきます」

 雨のようにレーザーが降り注ぎ、触れた端からスピリットの身体がドットのようになり崩れていく。

 スピリットの姿が消滅するのと同時に、カードの置き場から飛び跳ねたカード2枚を空中で掴みつつ、神田は別のカードを手にした。

「くっ、まだだ。マッハジー、マー・バチョウを連続で神速召喚!」

 

神速召喚:マッハジーLv1(c1)、マー・バチョウLv1(c1)

 

 魔王蟲の根城の効果は使わず、どちらも通常の神速召喚である。

 神田はマッハジー、マー・バチョウのアタックを宣言し、2体の神速スピリットが綾織を襲う。それでも尚、彼女は冷静だった。

 マッハジーの進路をスレイ・ウラノスが阻み、マー・バチョウは目にも留まらぬ速さの三度の刺突に吹き飛ばされる。

「マッハジーはスレイ・ウラノスがお相手します。そしてマー・バチョウには手札ではなくデッキの下に戻っていただきます。コストはナウマンガルドから全て確保し、Lvダウン」

 綾織が使ったのは光速三段突。バトルスピリットにおける確定除去である、デッキ下へのバウンス。神速召喚といえどもデッキから召喚できない。

 

使用:光速三段突 対象 マー・バチョウ

 

 マッハジーもなす術もなくスレイ・ウラノスのに押し負けて破壊されてしまう。

 が、神田は悲観した表情ではなく、むしろ安堵した表情であった。その違和感に綾織は怪訝な顔をした。その顔色が問う質問に、神田はいつの間にか3枚から2枚に減っていた手札を見せながら言った。

「こいつに三段突を打たれていたら俺に勝ち目はなかった。かと言って湯川さんにターンを回したところでその数のフラッシュのマジックを持たれていたら抵抗もできない。当然、超時空重力炉も再配置されてしまうだろうから、マー・バチョウもコスト軽減なしで召喚しなくちゃならない」

 神田が減らした手札、それは彼の手札でずっと出番を待っていた別のキースピリット。

「ライフを残り1にしたくないのはよく分かるし、2体も神速召喚されたらもういないと思ってくれるだろうと考えて、なんとかここまで漕ぎ着けた。お前の出番だ、黒樹神クワガ・ラブナ!」

 

魔王蟲の根城Lv2効果によりノーコスト召喚:黒樹神クワガ・ラブナLv2(c3)

 

 魔王蟲の根城がさんざめき、根城から黒い影が神田のフィールドに降り立った。昆虫をベースに樹木を取り込んだような姿のクワガタタイプのスピリットだ。

「こいつのアタックが通らなければ俺に勝つことはできなかった。さすがにもう誰にも妨害されないよなあ……?」

 安心していた神田の表情がやや曇る。綾織の手札は残り1枚。手札で突然変異でも起きていない限り、彼女の手札は神田に戻された超時空重力炉のはずである。

「うふふ、さあどうかしら、なんて冗談ですよ」

 もう攻撃を防ぐ術がないと彼女も分かっていたようで、手札をカードの置き場の縁に置いた。

「そりゃよかった。じゃあ安心してアタックできる」

 クワガ・ラブナが少し耳障りな羽音で綾織のライフを狙い飛行する。

「連鎖の効果でネクサスを疲労させクワガ・ラブナは回復する」

 綾織のライフを1点2点と奪い、神田が勝利した。

 

湯川綾織:ライフ2→0

 

 

勝者:神田俊道

 

 

 * * *

 

 

「ありがとうございました。神速のラッシュには驚きました」

「いやいや、だいぶ危なっかしかったけど、なゆとかね」

「確かに、もしああしていれば、こうしていればと後から言うのは簡単ですが、実際のその瞬間でその想定されうる対応をできなかったのですから、その点でも私の敗北です。神田さん、芸達者なんですね?」

「バトスピフェイスと同じくらいカマかけるのも必要ってことで」

 神田と綾織は談笑しつつ、やって来た坂下に彼女を優先し、神田は近寄ってきた深月と向かい合った。

「さて、長きに渡った大会も次で最後だね?」

「ああ、ゼッテー負けねえ」

「お? なんか神田らしくない発言じゃない?」

「それだけ意気込んでるってことだ、察しろ」

「へーい。じゃあ、両者の健闘を祈って」

「おう」

 神田と深月は互いに拳を握り、コツンとぶつけ合い、それぞれの舞台に移動した。




ついに、ここまできました。大変お待たせいたしました。一年以上もなにやってんだにしはるやろう!という感じですね、本当にお待たせいたしました。
バトルについては、なんかこう、無茶苦茶です。私も神田氏くらいの引き強マンになりたいものです。
表現の都合として「俺は◯◯を発動していたのさ!」とスピリットの同時アタックがありますがご了承くださいませ。ってあとがきに書いても意味ないでしょうかね?

バトスピ事情
長かったアルティメット編が終わりまして烈火伝になりましたね。アルティメット嫌いだーうわーと古参風をビュンビュン吹かせていたわたくしにしはるでありますが、烈火伝に入りスピリットが戻ってきたところで「アルティメットもなかなかいいんじゃない?」と手のひらクルーしております、周りがアルティメットまみれなのはあれですがスピリットが群雄割拠する環境に不意にあらわるアルティメットはなーんかかっこよくていい感じに思いませんか? わたしはそう思います。
UサッポロにUダゴンどアルティメットデッキを満喫しております。当然烈火伝からのカードたちも使ってますよー。やっぱり忍風でデッキトップめくって殴り倒すのが楽しいですよねえ。起導も強いですし……というかギュウモンジさんとシノビオウさんが強いだけ?
さてもう数日で名刀コレクションも発売されます。黄泉からお帰りになったイーグレンさんはかっこいい上に効果から一縷のデッキにぴったりです。というか烈火伝の紫デッキはリアニメイトいっぱいするので面白そうですね(カードがなくて組めていない)

ここでワチャワチャかいても仕方ないので、アナクロニズムの今後の話。ひとまずショップバトル編?とも呼べる今回の話は次回でおしまいになります。ようやくおしまいです。
今後は神田氏を継続するか別のお話か……というところを妄想しております。
正直なところ、アルティメット編の頃はバトスピへの意欲が大分削がれていたために小説からも離れておりました。烈火伝に移行しカードとしてのバトスピはかなり盛り返してきましたが小説の方までは手が回らず。
今になってようやく重い腰を上げることができました。さすがにここまでは遅くならないとは思いますが時間もなるべく早く投稿したい……な……。

以下謝辞。
バトルスピリッツ 激震の勇者のブラスト様、こちらのアナクロニズムとのコラボのストーリーありがとうございました!面白かったです!
神田をはじめこちらのキャラ達もよくして頂きました。本当にありがとうございます。
激震の勇者はぶっちゃけるとアナクロニズムを書こうと思ったきっかけの小説だったのです!(もしかすると前にも言っていたかもしれませんが)
ブラストさんの執筆する激震の勇者も終わりへ向けてストーリーが加速しております。まだ読んだことないよという方がいらっしゃるようでしたら是非ご覧になってください。
こっちの文量とは比較にならない文字数なので読み応えもありますよー。


長くなりましたが、この辺で。また近いうちに。
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