新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。   作:バナハロ

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平日はこんな感じ。

 学校。今は体育の授業中だが、足の怪我で見学。バレーボールの様子を、壁にもたれかかって座りながら眺めていた。

 あー、しかし暇だ。俺も身体を動かしたいが、この怪我で飛び跳ねの激しいバレーボールなんてやれば悪化じゃ済まないだろう。

 けど、やはり退屈なもんは退屈だ。……新田さんかアーニャさん、暇かなぁ。L○NEしてみよう。

 3人のグループのトークルームを開いて、メッセージを送ってみた。

 

 北山遊歩『暇』

 北山遊歩『体育超暇』

 

 漢字だけの文でなんか中国語っぽいな……。ワタシ、ユウホアルネ!……語尾にアル付ける中国人って006と神楽と劉偉以外にいるのかしら。

 ボンヤリとスマホを見てると、返事が来た。

 

 アーニャ『私も暇です』

 アーニャ『授業、退窟です』

 

 退窟……?ああ、退屈か。まぁ、外国の方だし誤変換はあるだろう。

 

 北山遊歩『何の授業なんですか?』

 アーニャ『日本酒です』

 アーニャ『日本史』

 

 ビックリした、その担当教師は趣味で授業してんのかと思ったわ。ちなみに、正月とかは親の酒を普通に飲んでる身としては、少し興味があるとは言えない。

 

 北山遊歩『まぁ、興味ない授業だとそうなりますよね』

 アーニャ『いえ、興味はあります。南と夕飯の国の歴史ですから』

 アーニャ『美波と遊歩です、スミマセン』

 

 夕飯……確かに俺の名前出そうとすると夕飯出て来るよな。ちなみに、この前の件でアーニャさんも結局、俺のこと下の名前で呼ぶことになった。本人曰く「ミナミだけ許されるのは狡いです!」だそうです。どうやら、こっちが強くなるしかないようだ。

 

 アーニャ『ただ、歴史の先生の声は眠くなるんです』

 北山遊歩『あーそういう人いますよね』

 北山遊歩『俺も全科目眠くなります』

 アーニャ『それは集中力がなさ過ぎるか、1〜6限までずっと寝てるだけでは……?』

 

 はい、その通りです。

 

 北山遊歩『まぁ、学校の勉強なんてしても意味ないですから』

 北山遊歩『就職するためには資格の勉強した方が良いですよ』

 

 まぁ、俺は資格なんて取ってないが。つまり、初めから勉強が出来ないタイプ。

 

 アーニャ『でも、私もうアイドルやってますから』

 

 そういやそうだったな。今更だけど、俺って今、アイドルとL○NEしてるんだよなぁ。

 

 北山遊歩『良いなぁ、既に就職してる人は』

 アーニャ『いえ、でもアイドルの後も考えなくてはならないので』

 

 む、確かに。

 

 アーニャ『遊歩は将来は何になりたいのですか?』

 北山遊歩『まだなーんも考えてないです』

 アーニャ『大丈夫なんですか?』

 北山遊歩『とりあえず、大学進学だけは決まってます』

 

 多分、大学は東京の行くし。いや、進路も何も決まってないのにどこのか大学行くかなんて決まってないんだけどさ。

 

 アーニャ『何処の大学ですか?』

 北山遊歩『そこは全然決めてないです』

 アーニャ『そうですか……。では、もしかしたら来年で遊歩とはお別れかもしれないですね』

 

 あー、そう言われりゃそうかも。もしかしたら地元の大学通うかもしれないし、そうなると二人と会う機会はなくなるだろうな。

 

 北山遊歩『まぁ、人との出会いは一長一短と言いますから。それまでは3人で出掛けたりしましょう』

 アーニャ『そうですね』

 

 うん、我ながら頭良さそうなこと言ったわ。日本独特の四字熟語を使い、アーニャさんも日本語の勉強になっただろう。

 

 美波『それを言うなら一期一会よ。それと、使い所も違うからね』

 

 ……頭の良い大学生から的確過ぎるツッコミが入った。

 

 美波『ていうか、2人とも今は授業中でしょ?どうしてスマホいじってる暇があるのか問い詰めるから、覚悟してね』

 美波『2人とも、聞いてるの?』

 美波『既読無視は良くないよ』

 美波『おーい』

 

 ヴッヴッヴッとテンポ良く震えるスマホの電源を落として、ポケットにしまって授業の様子を眺めた。

 

 ×××

 

 学校が終わり、放課後。さて、新田さんにバレないように帰らないとな。

 とりあえず、遠回りして帰ろう。普段、下校してる道は新田さんも知ってるため、他の道を使う事にした。

 公園を通る道は実は近道だったりする。ただ、子供がよくボールで遊んでるので、飛んで来たら危ないし、気も使わせるかもしれないので普段は通らないが、今日は生命の危機なので避けざるを得ない。いや、流石に命までは取られないと思うけど。

 でも怒られるの怖いから逃げます。だってあの人の制裁痛いんだもん……。

 俺と同じ、逃げる立場のアーニャさんと待ち合わせしてるから、そこから先は2人でデートしながら帰宅である。超楽しみでござる。

 そんな事を考えながら、ウキウキしつつアーニャさんと合流地点の公園に入った直後、新田さんとアーニャさんが待機していた。

 

「こんにちは、遊歩くん」

「……あの、なんで、ここが……」

「ヒント、アーニャちゃん」

「答え合わせじゃねぇか……」

「ごめんなさい、ユウホ……。言わないと、脇の下に指を挟んで1分間こまめに動かすと……」

 

 どんだけ可愛い脅迫だよ。俺にもそれくらい優しくして欲しいものだ。

 ていうか、俺がアーニャさんと帰ろうとしてる事とか全部読まれてたんだな。これだから頭の良い人は……。

 

「さ、早く帰ろうね。足が悪化するといけないから」

「……はい」

 

 新田さんが空いてる右腕を支えるように組んできた。胸が当たり、まるで恋人のように見える光景だが、周りに見えないように右腕の関節決められてるので超嬉しくない。

 

「あの、新田さん……。右腕痛いんですけど……」

「何?もっと締めて欲しい?」

「いえ、すみませんでした……」

 

 くっ……こんな事なら逃げるんじゃなかった……。家に着くまでは我慢するしかなさそうだ。

 右腕が痺れてきて涙目になってると、隣でむーっと唸ってる可愛い生き物が視界に入った。

 

「アーニャさん、助けて下さい……」

「羨ましいです」

「えっ、何が?」

 

 締め上げられてる事が?マゾなの?マゾでも天使だが。

 だが、別にマゾというわけではないようだ。

 

「お二人です!私も腕を組んで歩いてみたいです!」

 

 あ、この子には締め上げられてるの見えてないんだ。

 

「あら、じゃあアーニャちゃんは私の反対側に来る?」

「はい。ミナミの反対側もらいます!」

 

 いや、待てよ?これは使える。

 

「いや、俺の隣来てくださいよ」

「へっ?」

「ほら、俺とアーニャさんはこうして腕組んでもらった事ないじゃないですか。まぁ、これは腕を組むというより体を支えてもらってるんですが」

 

 何より、隣の関節技を外して欲しい。そのためには割と悪くない戦略なんじゃないだろうか。そして、良い人のアーニャさんなら必ず承諾するはずだ。

 

「分かりました♪」

 

 ほら見ろ。決まりだな。

 俺と新田さんの間に、微笑みながらアーニャさんは入ろうとしたが、新田さんは俺の腕を離さなかった。

 

「に、新田さん……?」

「ダメ」

「えっ、な、なんで……?」

「なんでですか?ミナミ」

「……遊歩くん、アーニャちゃんの感触を堪能しようとしてるでしょ」

「えっ?」

「えっ…」

 

 ちょっ、違っ……いや、それも2割ほどあるけど……!アーニャさん、そんな目で見ないで!

 

「そんなの私が許すわけないじゃない」

「い、いやいや!そんなつもりは……!」

「ま、まぁ……ユウホも男の子ですからね……」

 

 アーニャさん、一歩引かないで!でも顔を赤らめてそんな目で見られると少し興奮しちゃうの不思議。

 

「そういうわけで、アーニャちゃんと腕を組むのは許しません。アーニャちゃん、私の反対側の腕なら良いよ」

「はい。お借りしますね、ミナミ」

 

 ……くっ、羨ましい。俺もアーニャさんに抱き着かれたかったぜ。

 

「さ、行こっか。2人とも」

 

 まとめるように新田さんが言い、帰宅し始めた。……あれ?右腕の痛みがない。

 あ、そっか。新田さんが片腕になったから関節技決められてないんだ。まぁ、助かったっちゃ助かった、のか?

 

「……ふふ、ミナミの腕、あったかいです♪」

「私もアーニャちゃんとくっ付いてて暖かいよ」

 

 まだ夏抜けたばかりだから少し暑いんだけどな……。

 ていうか、3人で腕組んで帰宅って少し恥ずかしいんだけど……。周りの人なんか見てくるし……。

 まぁ、真ん中が新田さんのお陰で二股みたいにはなっていないから、そこは助かっているが。

 どちらにせよ、アイドル、美人と並んで歩いていたので、居心地はすごい悪い。周りの目線がとても痛い。

 歩く事数分、ようやく家に到着した。数分なのに数時間に感じました。

 部屋の中に入り、手洗いうがいを済ませた。

 

「じゃあ、ご飯にしちゃうから。少し待っててね」

「「はーい」」

 

 新田さんに言われ、2人揃って返事をして椅子に座った。

 

「大丈夫ですか?脚は」

「平気ですよ。まぁ、今日も体育は見学してたんで、そういう意味では大丈夫ではないんですけどね」

「見学ですか?」

「そう。する事なさ過ぎてL○NEしてました」

「あ、私とですか?」

「はい。本当は新田さんが反応してくれると思ったんですけどね。大学生って暇だし」

「ちょっと、大学生だって暇じゃない人はいるよ。大体、あの時は授業中にヴーヴー鳴ってて迷惑だったんだからね」

 

 聞こえていたようで、台所から声が飛んできた。

 

「そもそも、私が授業中にスマホをいじるように見える?」

 

 確かにそう言われりゃそうかもしんない。クソ真面目、というよりは何事にも真剣に取り組むタイプに見える。

 

「確かに見えないですね。周りの友達はみんなスマホいじってるのに一人だけ真面目に板書してそう」

「別に良いでしょ。真面目なんだから」

 

 不満げに文句を言う新田さんだった。ていうか、料理しながら会話に耳傾けて参加とかすごいなあの人。

 

「ああっ!塩入れ過ぎた!ごめん、ちょっとしょっぱいかも!」

 

 全然できてなかった。無理して会話に入る必要ないのに……。

 新田さんでもそういうところがあるんだなと感心してると、アーニャさんが呆けた顔で新田さんの方を見ていた。

 

「どうしたんですか?」

「いえ、珍しくて。ミナミが料理で失敗してるのは」

「そうなんですか?」

「はい。普段は私とお話ししてても普通に失敗する事なんてないので」

「ま、膀胱も尿の誤りと言いますからね」

「ボウコウ……?そんなことわざが?」

「アーニャちゃんに何を言わせてるのよ。ていうか、存在しない変なことわざ教えないで」

 

 スゲェ怒られた。そんな怒らなくても良いのに。

 

「嘘を教えたんですか?」

 

 アーニャさんがジト目で俺を睨んで言った。

 

「いや、待って。そもそも教えてません」

「先ほどの膀胱も尿の誤りとはどう言う意味なんですか?」

 

 おおう、アーニャさんから出たとは思えないような言葉が……。ある意味興奮するなこれ。

 

「さあ……俺もちょっと分からないですね。新田さんなら分かるんじゃないんですか?」

「ミナミ?」

「両手アイアンクロー」

「……おしっこを貯める身体の一部を膀胱と言います……」

 

 直後、アーニャさんはぷくっと頬を膨らませた。だからあなたが怒っても可愛いだけで怖さは感じないんですよ。

 ていうか、両手アイアンクローっていう単語だけで説明させる新田さんの方が怖い。

 

「もうっ、ユウホは意地悪なんですから!」

「すみません。つい……」

 

 アーニャさんが可愛すぎて……と、続けようとした所で、ドンッと俺とアーニャさんの間に肉野菜炒めと白米が置かれた。

 

「はい、出来たよ」

「ありがとうござ……」

「それと、遊歩くんのご飯」

「……何この一航戦が食べてそうな山盛りご飯」

「残したらビンタするから」

 

 ……もしかして、新田さん嫉妬か?そう考えれば説明がつく。俺とアーニャさんが仲良く話してる中、わざわざ割って入って来るんだからな。

 ……や、でもなんつーか……いたんだな本当に。同性愛者って。この人、アーニャさんが好き過ぎて俺に酷い仕打ちを……。

 まぁ、でもそう考えれば新田さんの暴力も可愛いものだ。そんな事を考えながら新田さんを見ると、新田さんが少し引き気味に俺を見て言った。

 

「……えっ、何その生易しい笑み」

「いえ、何でもないです。さ、食べましょう」

「なんだかよく分からないけどなんかムカつく⁉︎」

「いただきまーす」

「いただきまーす」

「ちょっとー!」

 

 食べ始めた。

 

 

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