新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。   作:バナハロ

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相手の気持ちを知るには相手の立場になってみよう。

 翌日、学校が終わり、俺は帰宅していた。今日も今日とて、勉強しなければならない。まぁ、昨日の勉強で小学生の算数レベルですら危うい事が判明したから、そりゃそうなるとは思うんだが。

 しかし、にしても数学は嫌いだ。意味分からんし。これから勉強会と思うと、いくら新田さんと一緒でも憂鬱だ。

 その現実逃避をするように、何となく遠回りしながら帰宅していた。公園の間を通ってると、サッカーボールが足元に転がってきた。

 

「すみませーん」

 

 声が聞こえてきたが耳に入らず、何となく転がってきたボールを脚で浮かし、二、三回太腿でリフティングした後、足首の上に乗せて3秒キープし、再び浮かせて足でリフティングの後にボールの上に脚を一周通して再び蹴り上げて胸トラし、足元に落とした。

 今更になって「すみませーん」と声を掛けられた事を思い出し、声のする方を見ると、ボールの主は女の子だった。茶髪の可愛らしい女の子が俺の方を見ていた。ていうか、声かけられたのに人のボールで何してんだ俺は……。

 早く返さないと。インサイドで女の子に転がして謝った。

 

「ご、ごめん。ボールあったからつい……」

「スッゲェな兄ちゃん!」

「えっ?」

 

 なんかすごい明るい声が聞こえた。ていうか、スッゲェなって言った?男の子だったのか?

 

「そ、そう?」

「何、サッカー部かなんかなのか?」

「いや全然。小学生の時にちょっと練習しただけだよ」

 

 小学生ってのは案外、器用な生き物だからな。やろうと思えばなんだって出来る。バットを手に持って野球ボールでリフティングした後、その球をノックだってできるぜ。

 

「へぇー…!なぁ、俺とサッカーしないか?」

「え、今?」

「ああ!俺もサッカー好きなんだよ」

 

 うーん……でも、新田さんと勉強する約束してるし……。

 しかし、そんな少年の目で見られるとどうも断りづらい……。

 

「友達とサッカーしてたんじゃないのか?」

「さっきPKで勝ったから、友達に飲み物買いに行ってもらってんだ。その人が来るまでの間、暇だから」

「え、それ俺もいて良いの?てかどこまで飲み物買いに行ってんの?」

「コンビニじゃないか?それに、友紀はコミュニケーション能力高いし大丈夫だろ」

 

 ……にしても勝手にはまずいと思うが。それだけこの子は俺とサッカーしたいってことか?

 仕方ない、どの道あと1時間くらいで夕焼けチャイムだ。それまでの間は付き合ってやろう。

 

「分かったよ……。ちょっと待って」

 

 連絡だけ入れておかないとな。新田さんに「今日はいつもの1時間遅くにお願いします」とL○NEを送り、ブレザーを脱いでネクタイを外し、鞄の上に置いてワイシャツの第二ボタンを開けて袖をまくった。

 

「えっと、君名前は?」

「結城晴、兄ちゃんは?」

「北山遊歩」

「よし、遊歩!やろうぜ!」

 

 ……まぁ、相手するくらい良いけどよ。

 まずはお互いにインサイドのパスから。お互いに地面に転がしつつ、時折強いパスを出す。

 しばらくして慣れて来ると、結城さんの方が脚で掬って胸トラをした後、三、四回リフティングして浮いたパスを出してきた。

 それをこっちも胸トラップしてまた足の上にボールを置いて5秒キープし、両足で交互に二、三回リフティングした後、足元に転がした。このキープする奴がすごいすこ。

 すると、結城さんがトラップで球を止めて感心したように聞いてきた。

 

「やっぱすげぇなー。それどうやんの?」

「え、どうやんのって言われてもな……」

 

 感覚派の俺に説明を求められても困るんだよなぁ。

 

「ちょっと貸してみ」

「はい」

 

 放られたボールを、インステップで受け止めながらボールを吸収するように足を引き、足首を縦に曲げて受け止めた。

 

「こう」

「分かんねぇよ!」

 

 だよね知ってた。しかし、なんて言えば良いのか……。

 

「例えばさ、野球あるでしょ?」

「いきなりなんの話だ?」

「良いから聞いて。野球にフライってあるじゃん」

「あるな。タッチアップに使われてる奴だろ?」

 

 野球もそれなりに詳しいんだな。それなら話は早い。

 

「フライが取れない奴って何がいけないか分かる?」

「さぁ?」

「取る直前、打球に向かって手を伸ばすのが悪いんだよ。だから、球の落下点に置いたら足はなるべく動かさないのがポイント」

「そうじゃなくてだな、まずは足の上でどうやってボールを止めてるのか教えてくれよ」

 

 あ、そ、そっか……。そこが分からないとな。

 

「足首を曲げて足の甲と脛で挟んでるだけだよ」

「な、なるほど……。ちょっとボール貸して」

 

 挟んだらボールをループシュートの要領で結城さんの胸に放り、結城さんはそれを手でキャッチすると、足の上に置き、足首で挟んだ。

 フラフラしながらも、なんとかボールが落ちないようにキープしている。

 

「うおっ……とっ、と?意外と、難しいな……」

「そんな強く固定出来るわけじゃないからな。左右でバランス保つのが難しいんだけど……まぁ、そこは慣れで」

「クッソ〜……」

 

 まぁ、ほんとに慣れだからなぁ。

 しばらく結城さんが練習してるのを近くでぼんやり見てると、ようやくバランスが安定してきた。流石、サッカーを習ってるだけあって勘が良い。

 

「こ、こうかっ?」

「おー、そうそう。上手いな」

「へ、へへっ、これくらい楽しょ……ああっ!」

 

 まぁ、油断すると落とすのも小学生らしくて可愛らしいと思います。

 そこまで来たら次のスタッフだ。

 

「じゃ、放るから受け止めてみ」

「よっしゃ」

 

 転がってるボールを足で浮かして手に取ると、結城さんの足元に転がした。それを足首で受け止めようとするが、まぁそんな簡単に上手くはいかない。足の甲の硬いとこに弾かれて転がってしまった。

 

「ーっ!も、もっかい!」

「ああ、この時にだな。足で向かえに行かないで、吸収するように足を引いて受け止めるんだよ」

「……なるほど」

 

 言われるがまま、受け止めるように足でボールをキャッチしようと試みるも、なかなか上手くいかない。

 だが、結城さんは諦めずに何度もトライした。「もっかい!」と強請っては構え、俺はボールを足元に放り、失敗する度に何かアドバイスをあげた。

 しかし、こうしてみると何だか不思議な感覚に覆われる。新田さんも俺に勉強を教える時、こんな気分だったのかな。嫌だというわけではない、ただしなんかこう……責任感?みたいなのが少し芽生える。目の前の子を見捨てられない的な。

 教えたがりというわけでもないけど、やはり付き合うと言った以上は最後まで面倒を見るべきだ、みたいな。

 

「遊歩、もっかい!」

 

 いつのまにか汗だくになりながら俺にボールを放った。それをインステップで真上に蹴り上げて手に取った。

 

「行くぞー」

 

 声をかけてから放ると、結城さんは落下点に足を置いた。ボールを引き寄せるように足を若干引いて、ボールが足に着いた直後に足首を曲げた。

 左右のバランスよく受け止め、ボールは足首の上で固定された。そのまま2秒くらい経過し、結城さんは嬉しそうな表情で静かに言った。

 

「き……来た……!来た来た来た!来たこれ!」

「ああ、もう少し落ち着け」

「えっ?……あっ、そ、そういう……あー!」

 

 落ち着かないとボール落とすからな。だが、納得するのが遅かった。ボールは右に転がり落ちた。

 

「あー……で、でもまぁ、すごいよな!出来た!」

「ああ。よくできたな」

 

 言いながら思わず結城さんの頭を撫でてしまった。すると、カァッと顔を赤くして、俺の手を払った。

 

「なっ、撫でるなよいきなり!」

「あ、ご、ごめっ」

「晴ちゃーん!ごめん、遅くなっ……誰?」

 

 女の人が突然、結城さんの名前を呼び、手を振って走って来た。俺を見るなり、その目は攻撃的なものに変わった。

 

「あ、友紀。遅ぇよ」

「え?この人が友紀?」

 

 想定してた10個くらい歳上なんだけど。

 

「……晴ちゃん、この人は?」

「えっ?あ、あー……友紀が来るまでやってたんだ。あ、見ろよこれ。すごいの出来るようになったんだ」

「やっ……⁉︎」

 

 あ、すごい警戒されてる。違うから、ロリコンじゃないから。

 

「あー……俺は、北山です。結城さんに誘われてやってました」

「誘っ……⁉︎こ、子供の前で……それも公共の公園で何言ってるの⁉︎」

「えっ」

 

 ……俺なんか変なこと言ったか?

 てか、結城さん。この人紹介してよ。一人でさっきの練習してる場合じゃないから。

 と、思ったら目の前の友紀さんとやらはスマホを取り出した。

 

「え、何でスマホ?」

「通報するから」

「なんでだよ⁉︎」

「こんな公共の公園で小学生を襲うような人、通報に決まってんじゃん!」

「おおおおまっ……いきなり公共の公園で何抜かしてんの⁉︎誰が誰を襲うんだよ!」

「だって、誘われたからヤったんでしょ⁉︎」

「サッカーをな⁉︎」

「……えっ、さ、サッカー?」

「そうだよ!」

「………」

 

 カァッと顔を赤らめる友紀さんとやら。で、呑気にさっきの練習を続けてる結城さんをキッと睨んだ。

 

「晴ちゃん!ちゃんと説明してよ!」

「え?だから言ったじゃん、やってたって」

「それ別の意味になっちゃうからサッカーって言って!」

「何だよ別の意味って」

「えっ?そ、それは……!」

 

 頬を赤らめて俯く友紀さんとやら。で、何故かキッと俺を睨んだ。何だよ、何で俺を睨むんだよ!

 が、やがて結局は自分の勘違いが原因だという結論に至ったのか、頬を赤らめたまま小さくため息をついた。

 

「……はぁ、ごめんね。晴ちゃんの面倒見ててくれたのに失礼な勘違いして」

「いやいや、俺も紛らわしい言い方しちゃったし」

 

 誘われたからやってたってどう考えてもエッチだよね。小学生に誘われてやってたらもうほんと大問題だし。

 

「……結城さん、もう友紀さんって人来たし、俺帰るよ」

「えっ、も、もう帰っちゃうのか……?」

 

 え、何その反応……。ちょっと意外でこっちが申し訳ないんだけど。

 

「あー……まぁ、今度また付き合うから。なるべく、来週以降なら」

「……わかったよ。約束な」

「はいはい。じゃ、また」

 

 短く挨拶だけして、荷物を持って公園から立ち去った。久々な身体を動かしたけど、やっぱスポーツって良いもんだな。

 少しスッキリした感覚で帰宅した。

 

 ×××

 

 今日の勉強会中。解けた問題を新田さんに見せた。

 

「先生、出来ました!」

「う、うん……。正解だけど……何かあったの?今日は一回もだだこねないで……」

「何もありません!」

「そ、そう……。じゃ、休憩にしよっか」

「いえ、まだまだやれます!」

「ううん、たまには休む事も大事だからね」

「……では、休ませていただきます」

 

 と、今日の勉強はかなり捗った。

 

 

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