新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。 作:バナハロ
数日経過し、小テストを無事に終えることができた。結果は明日の授業だけど、多分受かってるなあれ。流石、新田さんにご教授いただいただけある。
放課後に再テストしたからいつもより帰宅時間は遅いが、まぁそれも仕方ないだろう。
そういえば、新田さんは今日うちに来るのだろうか。来るんだったら、今日は俺が飯作んないとな。
そのために、スーパーに寄り道した。とりあえず、野菜とか買わないとうるさいので野菜を先にカゴにぶち込み、続いて肉とかをカゴに入れる。
あとはー……なんだろうな。魚も良いか。ていうか、何作るかだけ決めないと。今の時代、スマホで調べるだけでレシピは出て来るから、何を使っても良い気がする。
「……よし、せっかくだしイタリア料理にチャレンジしてみよう」
ピザとかだよな、イタリアン。早速だけどピザは無理。何を作ろうかな……。ピラフとか、ドリアとか……あとパスタで良いかな。てかそれで良いや。ビュッフェスタイルでいこう。
そう決めて必要な食材をカゴに入れた。
さて、あとはアーニャさんが来たようにお菓子と飲み物を揃えておくか。先にポテチ、ポッキー、えびせん、クッキー、う○い棒30本セット……と片っ端からカゴに入れた。アーニャさんのためだ。致し方無し。
次は飲み物。炭酸を一本と午後ティーを一本買おうとドリンクの並んでる場所に来ると、ジンジャーエールがラス1だった。
これは運命と見たね。ジンジャーエールを手に……。
「……あっ」
……取ろうとした所で、後ろから切なそうな声が聞こえた。なんか、頭の中でデジャヴったぞおい。
振り返ると、銀髪のすごいポニーテールでゴスロリを着た女の子が立っていた。つーか、どっかで見たなこの子。
「……んっ?」
どっかで見た女の子は俺を見るなり声を漏らした。どうやら本当に知り合いのようだ。
けど、覚えてない相手と会話できるほど、コミュニケーション能力は高くない。
ジンジャーエールを回避し、ファンタを手に取ってカゴに入れてレジに向かった。
「っ、ま、待たれよ!」
後ろからランプの魔人みたいな声が聞こえた。銀髪の女の子が俺を見て言った。
「こ、今回は我が貴様に黄金酒を譲ろう!」
「……は?」
「だ、だから……!そ、その……!」
何故か顔を赤くしてる銀髪の女の子は、ラス1のジンジャーエールを手に取ると俺の元にわざわざ持って歩いて来た。
「は、はい」
「いや、いいです」
「へっ……?」
「別にシュワシュワしたかっただけで、炭酸ならなんでも良いんで」
アーニャさんも別にジンジャーエールが超好きってわけでもないだろうし。
「……だ、ダメー!」
「なんですかいきなり……」
「ま、前にも譲ってもらったことあったから!今回は私が譲るの!」
標準語になりながらそんな風に言わんでも……。
何より、そんな涙目で言われても説得力ないです。どうしようか悩んでると、その女の子の友達らしき子がやってきた。
「蘭子、何を騒いでるんだ?」
「あ、飛鳥ちゃん!」
……何でもみあげ変色してんのこの子?どんな栄養をとったらそうなるんだ?
飛鳥ちゃんと呼ばれたその子は、俺を見るなり警戒心むき出しの表情で蘭子と呼んだ銀髪の子に聞いた。そんなに俺って怪しそうな強面してますかね……。
「……蘭子、この人は?」
「このお兄ちゃ……じゃない。この者こそが以前、我に超神水を託した我が眷属であるぞ!」
「おい、誰が眷属だコラ。てか、眷属の意味わかって言ってる?」
中二病ってこれだから……。まぁ、もう片方は変色以外まともそうだし、こっちなら話が通じそ……。
「そっか……彼が蘭子の恩人だったわけか。僕の同志が迷惑をかけたね」
類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。しかし違うタイプの中二病がよく上手く集ったな。
「……もう何でも良いからジンジャーエールは受け取れよ。俺はもう行くから」
「……えっ、で、でも……!」
「気にしなくて良いよ。いや本当こんな事で時間取られる方がアレだから」
少しキツめな言い方になってしまったが、そんな事を一々気にしていたら、向こうにとっても良くない事だ。将来、必ず損する性格になる。
それだけ言ってその場を立ち去ろうとした。そんな時だ。
「ユウホ?」
「アーニャ様⁉︎」
天使の声が聞こえた。中二病二人の後ろに立っているのが見えた。
「アーニャ、知り合いなのか?」
「ハイ、ユウホはとても良い人ですよ!」
変色に聞かれてアーニャさんは微笑みながら答えた。
「ユウホ、お二人と知り合いだったんですか?」
「いや?自己紹介もまだですよ」
「では、私が紹介しますね!神崎蘭子、アイドルです!」
「へっ?あ、アイドル……?」
マ……?
「こちらが二宮飛鳥、アイドルです!」
「また⁉︎ち、ちょっと待って!アイドル多くね⁉︎」
「……ハイ?今更何を?」
や、そりゃそう言われりゃそうだよ?アーニャさんと知り合ってるんだし。にしても、こんな簡単にアイドルになって良いのか……?
「で、ランコ、アスカ。こちらはキタヤマユウホ。海でお世話になった高校生です」
「それ、アーニャが迷子になった話だよね」
どうやら、あの時の話は全部繋がってるようだ。
「あの時は大変だったよ。L○NEしても既読すらつかないってアーニャが凹んでたもんだから」
「も、もう!その時の話はやめて下さい!」
「恥じることはない。我が魂に響き渡る程に可憐であった」
「ら、ランコまで〜……う〜……!」
おお、からかわれてるアーニャさんもこれはまた可愛らしくて良いものだな……。
と、思ったらアーニャさんは俺をにらんだ。
「こうなったのも全部ユウホの所為です」
「俺⁉︎」
「ユウホが不注意で脚とスマホを壊すからこんなことになったんです」
アーニャさんが言うと、それは言い回しなのかそれとも日本語の使い方が間違ってるのか悩む所だ。まぁ、言いたいことは伝わるから良いけど。
そして、言ってる内容も間違っていないのがまた言い返せなくて辛い。
「……申し訳ありません、アーニャ様。アーニャ様に恥をかかせたのなら、このわたくし腹を切る覚悟にございます」
「……アーニャ。君とこの男はどんな関係なんだい?」
「お友達ですよ?」
変色改め二宮さんが盛大に引いていた。まぁ、何にしてもそろそろ帰って新田さんへの食事を作らねばならない。
別れの挨拶をしようとしたところで、アーニャさんが口を挟んで来た。
「ところで、ユウホと何を揉めていたのですか?」
……またその話蒸し返すかー。まぁ仕方ないっちゃ仕方ないが。
神崎さんが全部説明すると、アーニャさんが素敵な笑顔で言った。
「なら、こうしましょう!」
アーニャさんのご意見なら全部聞くつもりの俺でも、何となく嫌な予感がした。
×××
「……で、こうなったと?」
スーパーでの出来事から一時間ほど経過した辺り。アーニャさんの提案で「ユウホの家でみんなで飲めば良いです!」となり、神崎さんと二宮さんと四人でジンジャーエールを飲みながら人生ゲームをしてる中、帰って来た新田さんが俺に説明を求めて来たので答えると、その返事が返って来た。
「……アイドルだらけね」
「……本当に」
もはや家族といっても過言ではない人数だ。ジンジャーエールに合わせてお菓子も出し、なんかもう児童館みたくなっていた。
「おい、遊歩。次は君のターンだ。早く、君の人生を歩め」
「って、あれ?美波さん⁉︎」
二宮さん、神崎さんが新田さんを見て声を漏らした。なんだ、知り合いか?いや、アーニャさん経由で知り合いでもおかしくはないか。なら、紹介は必要ないな。
「悪い、俺飯作るから抜けるわ。新田さん、すみませんけど俺ので途中から参加してくれませんか?」
「それは良いけど……テストはどうだったの?」
「結果は明日ですけど、多分大丈夫だったと思いますよ」
「良かった……。あ、だから今日は遊歩くんがご飯作ってくれるんだ?」
「……その察しの良さなんとかなりませんかね……」
……鋭いにもほどがあんだろ。
まぁ、バレちまったもんは仕方ないし、飯を作り始めることにした。女子達が楽しそうに人生ゲームをやる様子を見ながら、料理を作り始めた。
もう時間も時間なので、多分神崎さんも二宮さんも食べるだろうし、多めに作り始めた。
まずはドリアを作り始めた。スマホでググり、手順を踏みながら調理していく。アレンジャーではないため、下手なアレンジは加えない。
ドリアをオーブンであっためてる間にピラフの調理に入った。
しばらくの間、調理して数十分掛けて全部完成した。
「……よし」
盛り付けた後、まずは取り皿とフォークとスプーンを持って行った。
「はい、飯だ」
「みんな、一旦終わろうか」
俺が来るなり新田さんは早速、全員に呼びかけた。みんな素直な良い子のようで、二宮さんとアーニャさんはちゃぶ台から人生ゲームを崩さないようにどかし、神崎さんは台所に言った。
「我が晩餐を創造せし者よ!」
「普通に話せ」
「……料理、運ぶのお手伝いします」
「サンキュ。やる前に言っとくけど、無理して三つ一気に運ぶ事ないから、一つずつひっくり返さないように運べよ」
「な、何故解った⁉︎貴様、まさか予知夢を使いし能力者……!」
「話し方」
アホか、中二病の考えることなんてお見通しだっつの。経験者は語るってな……。……チッ、嫌なこと思い出した。
みんなの協力もあり、早めに食卓に飯を並べることができたのはありがたい。育ちが良いんだろうな、この子達。
「では、食べましょうか」
アーニャさんが元気に言ったのが合図になり、全員で手を合わせた。いただきます、と挨拶すると、相当腹減っていたのか神崎さんがピラフ、二宮さんがパスタに手をつけて取り皿に取ってから一口食べた。ちょっ、お前らっ。まだ心の準備が……!
「っ!お、美味しい!遊歩さん、料理上手なんですね!」
興奮すると素に戻るのか、それとも俺に怒られたからか、神崎さんが超褒めてくれた。
それを聞いて、小さくホッとため息をついた。
「……そ、そっか。良かった」
「確かに……。このペペロンチーノの茹で加減もちょうど良い」
「ん〜っ、ドリアも美味しいです」
「お褒めに預かり光栄です、アーニャ様」
「……美波さん、この人とアーニャはどういう関係なんだ?」
「私に聞かないで……。私、あの人と何の関係もないから」
おっと、知らない間に縁を切られましたよ?その反応は少し酷くないですかね。
そう思いながらも、俺はソワソワしながら新田さんの方を見ていた。元々、新田さんのために作ったものなので、一番重要なのは新田さんの感想だ。
それを察してか、新田さんは俺と目を合わせると、ピラフを一口食べた。
「あむっ……んっ。美味しいよ、遊歩くん」
「……あ、ありがとうございます……」
「わざわざありがとね。小テストの勉強見てあげただけなのに」
「いえ、かなり助かりましたから。だから、中間テストの時もよろしくお願いします」
「そういう事……。自分で勉強しないとダメです」
「いや冗談だから。ちゃんと数学30点はとるから」
「赤点ギリギリじゃない!せめて50点は取りなさいよ!」
「無理だって。うちの数学教師捻くれてるから必ず一問はメチャクチャ難しい問題出してくるから」
「はぁ、仕方ないなぁ……。中間も面倒見てあげる。ただし、試験日の三週間前からやるからね」
「マジでか!ありがとうございますっ!お礼に俺も新田さんの大学の勉強を……!」
「いらない。逆に成績落ちそうだし」
「いやいや!数学以外は割と優秀ですからね俺⁉︎他の教科は全部50〜70は取れてますから!」
「優秀のハードル低いよ!せめて70点はまだしも50とか60点で優秀とか言っちゃダメだから!」
「半分も取れてるのに⁉︎」
「半分しか取れてないんだよ!」
「さっき自分で50点って言ってたんじゃん!」
「それは最低ラインの話だから!」
「いやいや人生高望みは一番しちゃいけないでしょ」
「高望みと向上心は別の意味の言葉だからね⁉︎50点ギリギリの科目も私が見ます!」
「それ寝る時間なくなる奴じゃん!」
そんな言い争いをしてる時だ。気が付けばアーニャさん、神崎さん、二宮さんの視線がこっちに向いていた。
何?と視線で問うと、三人は順番に言った。
「……ミナミとユウホ、仲良しさんですね」
「……お姉ちゃんと弟みたい」
「……痴話喧嘩みたいだったね」
その台詞に「なっ……!」と新田さんは顔を赤らめた。
「な、何を言うの三人とも⁉︎」
「だって、普段ミナミあんなに声荒げないですよね?」
「あんな美波さんの大声初めて聞いた……」
「そもそも、テストの中身を確認しあってる仲というのが」
「〜〜〜っ!ゆ、遊歩くんも何か反論してよ!」
ふむ、俺に矛先が向いたか。しかし、俺はその手のノリは嫌いではない。
「お姉ちゃーん!」
悪ノリして新田さんに抱きつこうとした直後、片手アイアンクローが俺の動きを止めた。
「……なんのっ、つもりよ……!」
「痛いです痛いです痛いです」
とても制裁された。