新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。   作:バナハロ

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周りから見たら事務所の社長の息子に見えるかもってレベル。

 一体全体、どうしてこうなった?と言わざるを得ない。うちの状況は。だって、ついこの前までボッチの上に骨折し、誰の目から見ても寂しい奴だったはずだ。

 それがいつの間にかどうだ?台所で昼飯の準備をしながら、狭い居間の中を見回した。

 

「回れ、我が運命のルーレットよ!我が終着点への道を指し示すが良い!」

「蘭子、ノリノリなのは良いけど君、最下位だからな」

「あ、蘭子ちゃん4ね。えーっと……1、2……」

「ここです、ユキ!株が下がった!株券一枚につき1万円払う!」

「あはははは!闇に飲まれてるし!」

 

 ……蘭子、飛鳥、姫川さん、アーニャ様、はるちんと人生ゲームにガチハマりしている。しかもあれ全員アイドルだからね。なんで男子高校生の一室にこんな人数集まってんだよ。蒸し暑いわ。サウナか。

 楽しそうにしてる様子を眺めながら、小さくため息を吐きつつジャガイモを剥いてると、隣から新田さんが声をかけて来た。

 

「どうかした? 遊歩くん」

「……なんでこんなに部屋の中が狭いのかなって」

「……あー」

 

 察してくれたようで苦笑いを浮かべた。

 

「嫌なの?」

「嫌ではないんですが……。あの人達、暇なのかなって」

「暇じゃないよ。忙しい中の暇な時に来てるだけだから」

 

 まぁ、そう言われると悪い気はしない。暇を俺なんかのために使ってくれてると思うと、むしろ嬉しく感じる。

 

「……にしても、遊ぶ内容も内容ですよね。午前中はみんなで野球やってお昼待ってる間は人生ゲームって、児童館か」

「ま、まぁね……。小学生二人しかいないのにね……」

「特に姫川さんとか、最初は低年齢に合わせてんのかと思ったら、コンビニで飲み物買うときビール買ってたでしょ」

「……気にしないであげて」

 

 集まってるメンツがマトモじゃないんだよなぁ。オレっ娘に中二病に厨二病に天使に見た目は女神、中身は悪魔にアル中でしょ?なんでこんなメンツが集まって来てんだよ……。

 

「……今、失礼なこと考えてたでしょ」

「いえ、何も」

 

 女神悪魔に追加、ニュータイプも。

 ジャガイモの皮剥きが終わり、野菜の下準備が終わったので新田さんに渡した。

 今日のメニューはカレーだ。こうして料理してる時、手伝ってくれたりするのは新田さんだけだ。そう言う面は優しいんだけど……。

 

「多分、私の事を悪魔って揶揄したね?」

「なんで分かるんだよ……。そういうところが連邦の白い悪魔……あ、いや冗談なので俺ごと煮込もうとするのやめて」

 

 鍋にぶち込まれそうになったので慌てて謝ってると、居間から酔っ払いの声が聞こえて来た。

 

「おーい、若夫婦!カレーまだー?」

「も、もうっ、友紀さん!夫婦じゃないです!」

「ていうか、そう言うなら手伝えよ年長者」

 

 7人分も作ってんだから時間掛かるに決まってんだろ。

 

「あたしはほら、料理とかしたことないから」

「男子高校生以下の女子力」

「なっ……!」

「プフッ……!」

「プハッ……!」

「ッ……!」

 

 言った直後、はるちん、蘭子、飛鳥が噴き出し、姫川さんはカァッと顔を赤くして、隣にいた蘭子の首に手を回した。

 

「笑ったのはこの口かぁ〜!」

「むぐっ……⁉︎お、おのれ卑怯な!我が呪われし封印を解かれたくなければその腕を……!」

「こしょこしょこしょ」

「アッハハハ!やっ、やめて下っ……ゆ、友紀さんごめんなさっ……!」

 

 謝んの早ぇーな、ブリュンヒルデ。まぁ、野次が飛んでこなくなっただけこっちの仕事は早く終わる。

 人生ゲームを中断してじゃれ合う蘭子、姫川さん、はるちんを余所に、飛鳥とアーニャ様は大人しく人生ゲームを再開した。三人の出番を無視して。

 そんな様子をぼんやり見ながら洗い物をしてると、新田さんが照れた様子で俺に呟くように聞いて来た。

 

「……あ、あのさ…私達、夫婦に見える、のかな……」

「何を真に受けてるんですか。見えても姉弟でしょ」

「………」

 

 言うと、一発で不機嫌そうな顔になった新田さんは、引き出しからめちゃくちゃ赤い香辛料を出した。

 

「……あの、それどうする気ですか?」

「良かったね、遊歩くん。遊歩くんのカレーだけスペシャルverだよ」

「後から掛ける気⁉︎待て待て待て俺どっちかっつーと辛いのはそこまで……!」

「何?ウルトラスペシャルカレーの方が良かった?」

「嫌なんでそんな怒ってんの⁉︎」

 

 もしかして、俺なんか弟にもしたくないって事か……?もう少し別の表現をするべきだったか……!

 

「ごめんなさい!」

「嫌です」

「いやほんとに!あんまり辛いとむせちゃうから!」

「嫌です」

「分かった、今度ラーメン奢るから!」

「嫌です」

 

 結局、スペシャルカレーを食べるハメになった。

 

 ×××

 

 お昼を食べてから、また表に出た。スポーツの秋とはよく言ったもので、今度はサッカーを始めた。

 まぁ、別にみんながみんなサッカーをしてるわけではない。とりあえず、うちにあったペットボトルのゴミを四本持って来て、簡易的なゴールを作って3対4。無論、唯一の男がいる俺が3人側で固定だ。

 しかし、新田さん以外のみんなはアイドルなだけあってすごい体力だ。新田さんは新田さんでラクロスサークルらしいので無尽蔵の体力だった。

 つまり、俺だけ凡人の上に3人チーム固定のため、限界がくるのが早かった。

 

「もー無理!休憩!死ぬ!」

「まだやれるだろ!」

 

 はるちんが楽しそうにそう言った。こいつ、ほんとサッカー好きなのな……。

 でも、これ以上は無理です、死にます。

 

「飲み物買って来てやるから、3対3でやってろよ」

「あたしビール!」

「黙れ、全員サイダーにするから」

「あ、じゃあ私も付き合うよ」

 

 こういう時に声をかけてくれるのは流石、新田さんと思うが、それじゃ意味がない。

 

「いや、そしたら奇数になっちゃいますから」

「自分だけ休もうって言ったってそうはいかないんだから。私も行く」

 

 えっ、いや別にそんな意図は……。

 

「あ、ミナミが行くなら私も行きます!」

「ふむ、我も参ろう。別に疲れたわけではないが」

「肩で息してるじゃないか、蘭子。なら、ボクも行くよ」

「……晴ちゃん、どうする?」

「……オレも行く」

「おい、全員来ちゃってるじゃんそれ。半分は残ってろよ。ペットボトル捨て置いてるみたいだろ」

 

 気持ちはありがたいが、もう少し考えて行動しよう。

 で、話し合いの結果、結局俺だけ行く事になった。思いっきり無駄な時間だったんですけど……。まぁ、奢りの予定だったのがみんなからお金を貰えたから全く無駄だったわけではないが。

 一人でコンビニにきて、飲み物コーナーに来た。全員のリクエストがグループL○NEに来ていた。

 

 美波『無糖午後ティーお願いします』

 アーニャ『カルピスが良いです』

 ブリュンヒルデ『ハイポーション』

 二宮飛鳥@セカイの声を聞く者『コーヒー、もちろんブラックだ』

 晴『スポドリ!』

 姫川友紀『レモンサワー!』

 遊歩『二人分買って行かないからな』

 ブリュンヒルデ『お茶』

 姫川友紀『ジンジャーエール』

 遊歩『飛鳥はそれで後悔するなよ?』

 二宮飛鳥@セカイの声を聞く者『カフェオレ』

 

 素直に最初から答えて欲しいものだ……。ていうか、名前が自由過ぎるし。

 カゴに言われた飲み物を入れ、最後に俺の分の天然水を入れた。買い物を済ませて帰ろうとすると、ちょうどすれ違いで誰かが店に入って来た。

 

「……あっ」

 

 そいつは俺を見るなり声を漏らした。見覚えがあったからだ。だって俺も見覚えあるし。

 多田李衣菜、うちのクラスの女の子でアイドルの子だ。知らない仲では無いが、別に仲が良いわけでもないし、今の俺はみんなを待たせてるのでここにいるわけにはいかない。

 なので、さっさと立ち去ろうとしたが、多田さんの後ろの茶髪でメガネの女の子が多田さんに聞いた。

 

「李衣菜チャン、知り合いかにゃ?」

「ブハッ⁉︎ッ、ェホッ!ゲホッ!ッ、ゴホッ……!」

「「⁉︎」」

 

 あまりのすごい口調にすごいむせてしまった。今、「にゃ?」って言った?なんで?あなた見た感じ高校生くらいですよね?

 が、今のを笑った、と思われたのだろうか。茶髪の子はオレに詰め寄ってきた。

 

「今、なんで笑ったニャ⁉︎」

「い、いえっ、笑ってませんっ!」

「み、みくちゃん?どうしたの?」

「今、この人みくの口調を聞いて笑ったのにゃ!万死に値するにゃ!」

「お、落ち着いてみくちゃん!その人、私のクラスメートだから!えっと……名前なんだっけ?中島?」

「おい、当てずっぽうにも程があんだろ」

 

 思わず素でツッコんじゃったよ……。君の方がよっぽど酷いからな。

 

「えっと、なんだっけ?」

「いいよ、無理して覚えてくれなくて。俺、人待たせてるから」

「あ、それは嘘だ。だっていつも教室で一人じゃん」

「……」

 

 的確ストレートに返す言葉もなかった。じゃあこの大量のジュースはなんだと思ってんだよ……。

 で、まとめるように多田さんが聞いてきた。

 

「で、笑ったの?」

「笑ってないから。ちょっと咽せただけだよ」

「……って言ってるけど」

「ふんっ、そんなのいくらでも言い逃れできるにゃ。みくは猫を馬鹿にする側を許すわけにはいかにゃい、謝ってもらうにゃ!」

「だって」

「ごめん。じゃ、また……」

「ちょちょちょっ、待つにゃ!そんなテキトーな謝罪、みく初めて聞いたよ⁉︎」

「ごめん」

「繰り返すにゃー!」

 

 本当に猫っぽく「フシャー!」と言わんばかりに俺に威嚇するみくちゃんとやら。

 これ以上うちのアイドル達を待たせるわけにもいかないんだけどなぁ……。しかし、このみくちゃんは多田さんと知り合いだろうし、アイドルのサインあげるから作戦は通用しない。

 

「……ふむ、困った」

「自業自得にゃ!ちゃんと心を込めて謝るにゃ!」

 

 ……待てよ?猫って事は、ボールとか猫じゃらしにじゃれるんじゃね?

 それで気を紛らわそうと思った俺は、その辺の雑草に混ざってる猫じゃらしを引き抜いて、みくちゃんの顔に当ててみた。

 直後、多田さんが「え、この人何してんの?」って顔で聞いてきた。

 

「……え、何してんの?」

「や、じゃれるかなーって思って」

「……李衣菜ちゃん、この人ほんとムカつくにゃ」

「プフッ」

「李衣菜ちゃん、今笑った?笑ったよね?」

 

 直後、コオォォッと息を吸い込んで臨戦態勢になるみくちゃん。俺と多田さんは一歩後退りした。

 

「……なんでお前まで逃げようとしてんだよ」

「いや、こうなっちゃった以上、私も巻き込まれそうだなーって思って……」

 

 二人して「ははっ……」と乾いた笑いが漏れ、俺の手の力が抜けて猫じゃらしがゆらりと落ちた。ふわりふわりと空中を漂い、地面に静かに降り立った。

 直後、三人で猛然とダッシュした。

 

「中島!みくちゃんに謝って!」

「中島じゃねぇっつの!お前こそ友達なら宥めるなりなんとかしろって!」

「無理無理無理!ああなったら止められない!一週間丸々理性が飛んで殺戮が止まらない!」

「阿修羅カブトか!てか、なんであんな怒るの⁉︎」

「普通怒るよ!ただでさえ、みくちゃん最近同じ寮の子達がオフの日は表に遊びに言っててジェラシーでイライラしてたのに!」

「んな事知るか⁉︎」

 

 そんな話をしながら逃げ回ってる中、阿修羅カブトがヒントになった。世の中にサイタマやジェノスなんていない。なら、災害レベル竜に竜をぶつければ良い。

 

「多田さん、近くの公園わかる⁉︎」

「広くて野球グラウンドがある⁉︎」

「そう!そこに後ろのネフェルピトー並み、いやそれ以上のデヴィルがいるから!そいつに食い合わせる!」

「はぁっ⁉︎そんな事……!」

「やるしかない!」

 

 そう決めて、近くの公園に入った。公園の真ん中でペットボトルをゴール代わりにしてるヤケに可愛いのが6人集まった場所に駆け込んだ。

 

「あ、遅いぞ我が友よ!喉乾いた!」

「悪い、蘭子!」

「ええっ⁉︎ら、蘭子ちゃん⁉︎どうしてここに……!って、蘭子ちゃんだけじゃない⁉︎」

 

 流石、アイドルと知り合いなだけある。だが、今の俺は説明をしては暇がなかった。慌てて新田さんの背中に隠れ、肩に手を置くとみくちゃんの方に突き出した。

 

「ちょっ、何いきなり……って、みくちゃんっ?」

「さぁ、新田美波よ!その女神の悪魔的ゴリ押しパワーであのケットシーを返り討ちにしたまえ!これぞ、世界の終焉を描く怪獣大決せ……!」

 

 直後、視界がグルンッと回った。いや、むしろ世界が回ったのかと思った。

 気がつけば、腰から地面に落下し、ケツを強打していた。

 

「オゴッ⁉︎」

「ミナミ、見事な背負い投げです!」

 

 こ、腰がッ……!死ぬ……!

 アーニャ様の楽しそうな声が耳に入らない程に激痛だった。ヤバい、このままだとみくちゃんからの攻撃が……!

 

「……あれ?美波チャン?」

 

 ……あれ?割と冷静な……。というか、周りの人達がいることが気になって俺の事なんかどうでも良くなったのか。今のうちに避難した。……嫌な予感を脳裏に浮かばせながら。

 

 

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