新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。   作:バナハロ

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怖いものと怖いものを足せばものすごく怖いものができるわけではない。

 衣装作り、との事で色々作らなきゃならない。うちのクラスは本気でお化け屋敷をやるそうなので、衣装以外にも小道具が必要になる。よって存在するのは受け付け、脅かし役、教室内改造組、衣装、小道具と別れている。

 そんな中、俺は衣装係になったわけだが、裁縫なんてやったことが無い。小学生の家庭科の授業でエプロンを作って以来だ。そのエプロンも勝手に色んなとこから触手みたいに糸を生やせて怪獣作って親と教師に怒られたくらいだし。

 まぁ、多田さんの気遣いには感謝しなければならないが、どうせなら小道具か受付のが良かった。

 しかし、まずはお化け屋敷にどんなお化けが出て来るか決めなければならないため、俺達衣装班はスマホをいじるしかない。一応、クラス全体で話し合ってるわけだが、俺みたいな末端に発言権なんて無いのだ。

 そんなわけで、とりあえず誰かに構ってもらう事にした。新田さんかアーニャ様か……あるいは他の人か。新田さんかな、唯一アイドルじゃないから一番暇そう。

 

 遊歩『暇なんですけど』

 

 すると、速烈で返事が来た。ほんとに暇なんだなこの人。

 

 美波『今日から文化祭の準備期間なんでしょ?』

 遊歩『意見言う立場にないんでホントに暇なんです』

 美波『またそう言う事言う』

 美波『気持ちは分かるけど、ちゃんと参加しないとダメだよ。せめて耳を傾けるだけでも』

 美波『そうすることで案外、友達の輪に入れるかもしれないんだから』

 

 ……いや、確かにそうかもしんないけどよ……。ていうか、怒られるのは目に見えてたのに何で新田さんを選んだんだ俺は。

 

 遊歩『話聞いてるから構ってくださいよ』

 美波『私も今、授業中だから。またね』

 

 ……ちぇ、真面目な奴め。しかし、耳を傾けろって言われてもなぁ。もうみんな自由に席移動しちゃってんだもん。会議ですらないわこれ。

 

「……」

 

 非常に嫌だが仕方ない。たまには新田さんの言うことを聞いておこう。後で確認なんてされたらたまらないし。

 そう思って黒板を眺めてると、俺の前の席に唯一の見知った顔が座って来た。

 

「よっす」

「なんか用?」

「んー、なんか案ないの?って思って」

 

 そういえば、多田さんはアイドルだしクラスの中でも中心人物だから、どちらかというとまとめる立場にあるようだ。

 正直、今は新田さんに叱られてショボンとしてるので放っておいて欲しかったし、特に案も無いのでそのまま答えようとした。

 

『そうすることで案外、友達の輪に入れるかもしれないんだから』

 

 だが、新田さんの言葉が妙に頭に残った。今更友達なんて欲しくないが、去年キツイ思いしたからって今年もそうだと勝手に決めつけたのは俺だ。

 ……それに、何となくだけど、たまには新田さんの言うこと聞こうと決めたんだし、聞かれたんだから少しは意見言っても良いかもしれない。

 

「……中学の時の学園祭で失神させた人数、23人出してめちゃくちゃ怒られて1日目で閉鎖になったうちのクラスの出し物で良ければ」

「おお!頼もしい!」

 

 良いのか。

 

「……まずは、アレだな。ドライアイス。怪談でもそうだが、怖さは雰囲気から出るものだから」

「なるほど?」

「それとリアリティ。今時、傘で目が一個しかないあのようわからんお化けに出てこられても怖くないだろ」

 

 てかあれはお化けなのか?ゆるキャラより可愛いだろあれ。

 

「人の怖さってのは一番は正体が分からない事にある。ハッキリ脅かしに掛かるのは少なくして、ポルターガイストみたく小さな異常事態で恐怖を焦らし、本気で脅かしに掛かるのは1〜2回くらいがベストだ」

 

 教室でやるからそんな長く作れないしな。

 

「あーあと、ポルターガイストっつっても限度があるから。その辺でペットボトルが浮いたりしてても怖くないでしょ。風も無いのに窓がガタガタと震えたり、何もなかった所に血痕があったりした方が……」

 

 そこまで言った所で、多田さんは耳を塞いで俯いていた。

 

「……聞けよ話。何耳塞いでんの」

「……」

「聞けっつの」

 

 頭にチョップすると、ようやく顔を上げて耳から手を離した。

 

「なんでそんな人を脅かす方法知ってるのさ!思わず想像しちゃったじゃん!」

「いや、まぁ中学の時だから学内の学園祭、客もみんな中学生だったから高校生に効くか分からんけど」

「うーん……で、でも少なくとも私は怖かったし……!」

「上手くポルターガイストっぽく鳴れば、の話だろ」

 

 今回は中学生だけじゃなく高校生や親も来るだろうし、子供騙しじゃスベるからな。やるからには本気でやるのが俺のモットーだ。だからパルクールも習得出来たし、サッカーも野球もテニスもバスケも基本的にその部活の奴より上手い自信がある。

 

「なるほどね……。よし、ちょっとみんなに聞いて来るね」

「へっ?な、何を……?」

「ん? 今の案はどう?って」

「ま、待て待て待て!俺が言ったって言うなよ!

「え、言うよ。なんで?」

「なんか恥ずかしいし文化祭になって急にはしゃいでる、みたいな目で見られたくないから……!」

「大丈夫だよ。ね、ちょっと良い?北山から提案があって……」

 

 は、はわわわ!とりあえず多田さんはあとでぶっ飛ばそう。

 かなりいづらかったので教室から出て行こうかとも思ったが、何となく足が止まった。というか、自分でも何で足を止めたのか分からない。もしかしたら、心の何処かにまだ友達作りを諦めてない自分がいたのかもしれない。

 クラスメート達の反応を見ると、当然「えー、なんかめんどくさそう」「そんなの効果あるかわからないし」「てか北山って誰?」「あれだよ、前のドラマ撮影の時調子こいてた奴」「そんな奴の案採用すんの?」みたいなざわめきが聞こえて来た。オイ、喧嘩売ってるなら買うよ?田舎の学生はみんな喧嘩強いからね?

 ま、友達がいない奴がイベントごとで発言すると調子に乗ってると思われるのは都会じゃ当たり前だ。分かっていたことだし、より一層友達作りなんて馬鹿らしくなって諦めがつく。

 なので、それらの小言を一切無視してスマホをいじり始めると、俺以上にムッとしたのか、多田さんが啖呵を切った。

 

「じゃあ分かった!効果があるって事を証明すれば良いんでしょ?」

「出来るなら良いけど」

「待ってて。今から実験しに行くから!」

 

 そう元気よく言うと、多田さんは自分の荷物をまとめると俺の方に歩いて来て手を引っ張った。

 

「行くよ、北山!」

「おい待て何処行くんだよ」

「実験!北山の家なら小学生から大学生まで色んな年齢層の人で実験できるでしょ!」

 

 ……ああ、そういう事か。まぁ、早く帰れるなら良いか。

 多田さんに手を引かれて連行された。昇降口を出て、のっしのっしと確かな足取りで俺の手を引く多田さん。

 

「さ、まずは今日、北山の家に来れる人を確認して」

「おい待てよ。何怒ってんのお前?」

「……別に怒ってないし」

 

 ……いや怒ってるでしょ。そんな分かりやすく頬を膨らませて……。可愛いから困る。流石アイドル。

 

「お前が怒ることなんてないだろ。あいつらからすれば、一生に一度の思い出を出所が不確かな情報で壊されるとこだったんだぞ」

「その出所が不確かっていうのがムカつくの!クラスの一員じゃん!」

 

 ……まぁ、そうだけど。

 

「良い?これは良い機会なの。北山も友達作るからね!」

「何でだよ……。別に必要ないでしょ」

「だって……だってなんか、知り合いが一人でポツンとしてるの、嫌じゃん……」

「……」

 

 なるほど、そういうことか。多田さんは多田さんで俺に気を利かしてくれていたようだ。まぁ、俺も別に一人でいたいわけじゃないし、ありがたいと言えばありがたいが……。

 

「それに、美波さんに北山の様子をよく見とくように言われてるしねっ」

 

 少し照れたように頬をかきながらそう言う多田さんはとても可愛らしかった。それと共に、一つの疑問が浮かんだので聞いてみた。

 

「……お前、俺のこと好きなの?」

「……はっ?」

「いや、何でもない。新田さんに言われたとは言え、かなり気を使ってくれてるから」

「そんなわけないじゃん。そんなチョロインじゃないから。……ていうか、北山は他にそれを察するべき相手いるでしょ」

「……えっ?」

 

 それ、どういう意味?それって、俺のこと好きな女の人がいるってこと……?

 そんな考えが浮かんだ直後、多田さんが俺の思考を遮るように手を引いて言った。

 

「ほら、早く!小学校や中学校なんて高校生より学校終わるの早いんだから!」

「……分かったよ」

「よし、じゃあなるべく新鮮な反応を録画したいから、みんなにお化け屋敷のことは言わないで連絡して。それと、来る時間は18時からで」

「了解」

「じゃ、何を買いに行く?」

「とりあえずドライアイス」

 

 どうでも良いけど、それ君が金出してくれるんだよね?ね?

 

 ×××

 

 それなりにお化け屋敷の準備道具は整った。お化け屋敷と言ってもうちでやるんだから、お化け個室といった感じだけどを

 部屋に向かうと、玄関の前ではるちんが待っていた。

 

「おう。一緒だったんだ」

「……なんでいるの?晴ちゃん」

「L○NE来た頃にはここにいたんだよ。帰るの面倒だし待ってた」

「晴ちゃん……悪いんだけど……」

「いや、はるちんにも協力してもらおう。人手は多い方が良い」

「? 何やるんだ?」

「楽しい事」

 

 そんなわけで、三人で行動開始した。はるちんの楽しそうな顔ったらもう……。

 まずは部屋の中を暗くするためにカーテンを閉めて、光という光を全てダンボールでカット。それから、電気をつけるスイッチは押されると困るのでお札で押させないようにした。

 うちにある部屋は居間と台所とトイレとバスルームのみ。アイドル達が一番用が無いのはバスルームなので、多田さんはそこに身をひそめる。

 とりあえず脅かすのは難しいので、雰囲気作りだけでも試すことにした。ドライアイスによる冷気とポルターガイスト。はるちんは窓の外に隠れて窓を揺らす役とネタバラシの役。

 多田さんは部屋の中に残ってるスマホに「」という名前で電話をかける役。L○NE通話ではなく普通の通話で。

 それと重要なのが俺は表に身を潜めて外から玄関の鍵を締める役。誰もいないはずなのに鍵が閉まる程怖いものないでしょ。

 他にも諸々準備を進めて、ようやく完了した。

 

「……ふぅ、こんなもんでしょ」

「よし、そろそろ18時だね」

「じゃ、スタンバイ」

「よっしゃ!」

 

 そんなわけで、全員定位置についた。まぁ、俺は誰かが来るまで外で待機するだけなので、しばらく外で待った。

 今日、うちに来るメンバーは飛鳥、前川さん、姫川さん、新田さんの四人。万が一怒らせてしまった時のためのスーパーで買った少し高い牛肉の準備も出来ている。多田さんはお菓子で良いとか言ってた。職場の同僚だからかもしれないが、完全に歳上を舐めている。

 そんな時だ。スマホが震えた。参加メンバー追加かな?と思ったら、多田さんからの電話だった。

 

「もしもし?」

『……き、北山?』

「どうした?」

『……その、怖いから持ち場変わってくれない、かな……?』

「………」

 

 仕掛け人がビビってどうすんだよ。とりあえず持ち場を変わった。

 多田さんに鍵を渡し、しばらく風呂場で待機。すると、玄関の扉が開く音がした。

 

「おいっすー!……って、あら?なんか暗くない?」

 

 姫川さんの声だ。緊張感のない声と共に部屋の中に入り、靴を脱いだ。

 

「何々、もしかしてお化け屋敷ごっこって奴?」

 

 早速バレたが、そこまでは大人組なら想定内、靴を脱いで部屋の中に入った。直後、姫川さんの背中からカチャッと扉の閉まる音がする。

 

「……え?い、今、閉まった……?」

 

 若干、声に震えが混じってるな……。次の行動は手に取るように分かる。落ち着けば鍵を開けて出りゃ良いだけなのに、勝手に閉まった恐怖からそうはせずに電気のスイッチを探す。

 そのスイッチにはお札は貼っていない。あるのは、生暖かい赤のペンキだ。

 

「きゃあっ⁉︎ち、血ぃ⁉︎」

 

 なわけないよね。だが、今のでパニックになったろう。慌てて大声を出し始めた。

 

「き、北山くーん!いるなら出て来てよぉ……!い、今なら怒らないで許して、あげるからぁ……!」

 

 あ、今、怒られるのは嫌だから少し決心が揺らいだ。でも、これもクラスのため、そして俺の高校生活これからのためだ。

 

「ううっ……なんか肌寒いし……嫌な気配するし……。は、晴ちゃあああん……」

 

 恐る恐る、といった感じで部屋の奥に進んだ。どうやら俺の事を探す気力もないようだ。

 となると、最後の行動はカーテンを開けることだけだ。足を忍ばせて居間に歩き始めると、ようやく俺の出番。部屋の中に放置されてるはるちんのスマホに電話を掛けるのだ。

 プルルルルッという音に反応し、ビクビクっと姫川さんの背中が跳ね上がった。

 

「なっ……何?」

 

 恐る恐るその音の方を見ると、はるちんのスマホがカーテンの前に転がっている。

 

「は、晴ちゃんのスマホ……?」

 

 覗き込むと「」の文字が出てるはずだ。さて、この時の行動によって次の行動が変わる。電話に出たら俺が「窓を見ろ」とボイチェン効かせて言って、出なかったらポルターガイストではるちんが窓を揺らし、ドッキリ大成功の文字を見せる。

 姫川さんはスマホの通話を切った。直後、窓のガタガタ音。恐る恐る、カーテンを開けた。

 

『ドッキリ大成功!』

 

 はるちんが顔を出したはずだ。その後に多田さんが玄関に入って来たので、電気をつけて俺と合流した。

 

「……へっ?」

「はい、どうもー」

「ご協力ありがとうございます、姫川さん!」

「お礼に今日の晩ご飯はちょっと高い牛肉にしようと思うので!」

「確かキャッツの試合も今日だったよね、ビールキメながらご一緒にどうですか?」

 

 二人で反撃の暇も与えずにそう聞くが、姫川さんの表情は徐々に変化して行った。ムッとした顔で俺と多田さんを睨む。

 

「……どういうことなの?」

「へ?あー……牛肉をプレゼントします!」

「誤魔化さなくて良いから。どういうこと?」

「……」

 

 説明すると、姫川さんはホッと胸を撫で下ろして小さくため息をついた。

 

「なーんだ……そういう事か」

「……怒ってます、よね」

 

 さっきまでの姫川さんからの空気を察した多田さんが肩を落としながら恐る恐る聞くと「んにゃ」と姫川さんは首を横に振ってニヤリと邪悪に微笑んだ。

 

「むしろ、これから来る人もハメるんでしょ?」

 

 ……あ、この人もこっち側の人だ。協力者が増えたので、実験を続行した。

 

 

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