新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。   作:バナハロ

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美波の悩み(2)

 夜中。私は未だに眠れずにベッドの中で目を覚醒させていた。何故って?さっぱり迫れなかったからに決まってるでしょ。なんで私と遊歩くん一緒に寝てるの?バカなの?なんでこうなったの?

 いや、理由は分かってる。全部私が蒔いた種だ。お化けが苦手なのも私だし「うちに来る?」と誘ったのも私だ。ちょっと大胆過ぎる気もしたけど、なんかあのままじゃ可哀想でほっとけなかったから。

 ちなみに、さっきL○NEが来て知ったけど、あの人形は蘭子ちゃんが「遊歩のアホをビビらせたい」と思って仕掛けたものらしい。李衣菜ちゃんが「買ってない」と言ったのは蘭子ちゃんが仕掛けたのを見ていて、それで悪ノリしたそうだ。本物じゃなくて私も少し安心しました。

 お化け屋敷アイテムはテキトーに買ってたらしいし、自分で何を買ったのか把握してなくても無理はない。関係ないけど、それでも一人暮らしでお金ないのに買ったものを把握していない遊歩くんにはお説教が必要ね。

 で、まぁそんなこんなで私は遊歩くんを泊めてるわけだけど、これ本当に大胆なことしたなと思う。異性の男の子を部屋に泊めるなんて……パパに知られたら遊歩くん殺されちゃうんじゃないかな。

 いや、そんな場合ではない。私も今はピンチなのだ。だって明日1限なのに一睡も出来ないんだもん。自業自得なのに、気持ちよさそうに寝息を立ててる無邪気な遊歩くんの寝顔が本当に腹立たしい。

 

「……こいつめ」

 

 頬を突くも無反応で動かない。それが尚更腹立たしい。

 しかし、この子は少しは私の事意識してるのだろうか。私の事をどう思ってるのか、それが気になる。全く意識してないってことはないと思いたいけど、なんだか最近は遊歩くんにとって私は恐怖の象徴でしかない気がしてきた。

 確かに、結構厳しく勉強のこと見てたし、なんだかアホすぎてイラっとして、つい手が出ちゃうこともあった。けど、一人の女の子としては恐怖でしかないと思うと少しツライ。

 

「……」

 

 はぁ……他の恋愛してる子達のほとんどは上手くいってるみたいだし、なんだか羨ましいなぁ。

 ……もう少し私も攻めた方が良いのかな。でも、どうやって攻めたら……。恋愛なんて告白されることはあってもすることは初めてだから分からないよ。

 

「……誰か経験のありそうな子」

 

 いや、経験があってもダメなのは文香ちゃんの時に学んだ。私が求めるべきは大人っぽい人だ。客観的なアドバイスをくれそうな方、それを探すべきだろう。

 ……となると、誰が良いかな……。なるべく遊歩くんのこと知ってる人が良いけど……。

 

 アーニャちゃん→言うまでもない

 晴ちゃん→小6

 蘭子ちゃん→実はシャイ

 飛鳥ちゃん→初恋もまだそう

 みくちゃん→一番お姉さんっぽいけどそもそも猫

 李衣菜ちゃん→ロック

 友紀さん→論外

 

 ……うん、無理。別の人を探そう。となると、やっぱり大人の方が良いよね。

 でも、その中でも瑞樹さんとか早苗さんとかをチョイスしてしまうと「若いって良いわね……」って物思いにふけられてしまいそう……。

 なるべく同年代で……あ、そういえば、文香ちゃんって恋愛とか一人じゃ絶対にダメそうなのにどうやって成功したんだろう。

 多分、誰かしら協力者がいたと思うんだよね……。聞きたいけど、多分今の時間じゃ寝てるかな……。

 もし寝てなかったら、多分今の時間はpso2やってそうな気がするけど……ログインして起きてるか確認してみようかな。

 そう決めると、私は身体を起こして布団から出ようとした。が、ギュッと後ろから引っ張られる感覚。下を見ると、遊歩くんが私の手にしがみついていた。そう言えば、手を繋いで寝てたっけ……。

 

「んっ……に、にった、さん……」

「ーっ……」

 

 不覚にも今、キュンとしてしまった……。な、何よ今の……!いつもは生意気な癖に……!生意気で失礼で人の気持ちなんか全然察してくれない癖に……!

 

「〜〜〜っ!」

 

 で、でもなんかこうして甘えてくる遊歩くんは希少だし、仕方ないから一緒にいてあげよう。仕方ないから。

 布団の中に戻って、眠ってる遊歩くんの方を向いて体を横にした。

 

「……」

 

 寝顔だけは可愛いんだからズルイ。ギャップ萌えってこういうことを言うんだ……。

 ……まぁ、文香ちゃんの協力者については今度で良いかな。というか、考えれば分かりそうだし。文香ちゃんの恋愛に関しては、クローネの撮影に行ってたアーニャちゃんから少し聞いた。なんでも、文香ちゃんの彼氏さんが一緒にいたようだ。

 その中の誰か、或いは全員が協力者だけど、その中でも文香ちゃんと特に仲良いのは奏さんとありすちゃんの二人。必然的に協力者は奏さんだと分かる。明日辺り、L○NEしてみようかな。

 さて、そろそろ寝ないと本気で明日一限だからヤバい。

 

「……んっ、にった、さん……」

「……」

 

 ……あの、遊歩くん?寝てる、んだよね?寝言でも私の名前呼ぶのはやめてくれないかな……?心臓に悪いんだけど……。

 

「……ひめかわ、さん、から……おさけ、取り上げて……」

「……」

 

 夢でもどうやら苦労してるみたいだ。遊歩くんのお兄さんスキルは高いらしいからなぁ。私からしたら生意気な弟だけど、蘭子ちゃんも飛鳥ちゃんも晴ちゃんもみんな「頭の悪いお兄ちゃんみたい」って言ってたし。あれ?これ貶されてない?

 しかし、なんだかドキドキして損した気がする。ていうか、前からずっと不満に思ってたんだけど、友紀さんと私の呼び方が苗字にさん付けってどうなの?私の方が少しでも付き合い長いんだから、そろそろ下の名前で呼んでくれても良いのに……。というか、さっきその話しなかった?

 

「……私は下の名前で呼んでるんだからさ」

 

 遊歩くんの頬をツンツンと突いてる時だった。遊歩くんが寝返りをうって、私の指が遊歩くんの口の中に入った。

 

「ーっ⁉︎」

 

 っ、や、やばっ……!どうしよっ……!いや抜かないと……!

 指を遊歩くんの口から抜こうとした時だ。あむっと齧られた。その直後、私の中に稲妻が走ったような変な快感に襲われた。

 ちょっ、何これ……何かの変な感じ?なんだか、身体が熱くなって来たような……。いや、身体だけじゃない、顔も火照って来ている。それに、心臓の鼓動が徐々に加速していく。

 

「うっ……」

 

 なんだか変な気分になってきた。どうしよう、眠るどころか目が冴えてきてる……。

 そんな私の気も知らずに、遊歩くんは私の指を食べ続けた。……というかその舌使いなんなのよ?なんでそんなエッチに指をしゃぶるの?まるで指のツボを一箇所ずつ丁寧に焦らすように優しく刺激していく。

 っ、こ、これ以上はダメ!なんか変な性癖が私の中に芽生えちゃ……!

 

「……たさん、新田さん」

「ふえっ?」

「何やってんですか?人の口に指突っ込んで」

「……えっ?」

 

 ……遊歩くんが起きてた。咥えたのはあなただから、というツッコミを出す事も出来ずに私の顔はただただ真っ赤になった。

 

「新田さん?」

「……ゅっ」

「ゆ?」

「っ……ゆっ……!」

「ばーば?」

「遊歩くんが咥えたんでしょうバカァーッ‼︎」

「オブリビエイトッ‼︎」

 

 恥ずかしさのあまり、こめかみに手刀を叩き込んでしまった。遊歩くんはそのまま気絶し、そこでようやく私は正気に戻った。しまった、今のは私にだって非があるのに、つい……。

 遊歩くん、大丈夫かな?と、思って心臓の鼓動と息してるかを確かめ、安全を確認した。

 

「ほっ……」

 

 胸を撫で下ろしたものの、心臓の鼓動は鳴り止まない。胸の奥の性的興奮もだ。

 ……どうしよう。このままじゃ眠れない。でも、寝てるとは言えうちに遊歩くんが来てるのに……。そんな変態みたいな……。でも、明日一限だし、アイドルやってるとただでさえ単位の取得は難しいのに……。

 

「……」

 

 悩み抜いた挙句、私はトイレに移動し、用事をすませると何となく遊歩くんの隣は恥ずかしかったのでソファーで眠る事にした。

 

 ×××

 

 翌朝。ふと目を覚ますと、いい匂いが鼻腔を刺激した。目をこすりながら身体を起こすと、ちょうどソファーの前に料理が置かれた。

 

「あ、おはようございます、新田さん」

「? ゆ、遊歩くん……?起きてたの?」

「はい。ていうか、なんで新田さんソファーで寝てたんですか?」

 

 言えない。昨日の事は後悔してるのでほんとに言えない。未だに恥ずかしいのか、顔が熱くて頭がくらくらする。

 ……遊歩くんは昨日のこと覚えてないのかな……。てことは、私の事を下の名前で呼ぶってのも……。

 

「しかし、なんか頭痛いんですけどなんでですかね」

「うえっ?そ、そうなの?風邪じゃない?」

「いやそういうんじゃなくて……こう、いつも喰らうアイアンクローとはまた別種の打撃的な痛みが……」

 

 良かった……記憶にはないようだ。いや、でも下の名前で……。でも殴った記憶がないのは助かるけど……。何だか頭が混乱してると、遊歩くんの方から声をかけてきた。

 

「ていうか、ソファーで寝るならちゃんと何か掛けなきゃダメですよ」

「あ、あー……うん」

 

 絶頂してから恥ずかしくなってすぐにソファーにダイブして寝ちゃったとは言えない。

 ……思い出したらまた恥ずかしくなってきた。その場で俯くと、私の身体に毛布が掛けられていた。

 

「俺が起きてから掛けたんで、あんま意味なかったかもしれないですけど……」

 

 ……もう、そういう所よ。遊歩くんのムカつくほど好きな所。

 

「ありがとう」

「いえ、普通のことなんで」

「……朝ご飯作ってくれたの?」

「一応。……でも、新田さん食べない方が良いかもしれないですよ。なんか顔色悪いし」

「……へっ?」

 

 そ、そう……?確かに食欲は無いし頭は何だかクラクラするけど、それは別に恥ずかしくなってるだけだし……。そんなのでせっかく作ってくれた朝食を無駄には出来ない。

 

「大丈夫よ。食べられる」

「……そうですか?」

「うん。ほら、冷める前に食べよう?」

 

 そう言って並んでる料理を見た。ここ最近、毎日のように私やみくちゃん、たまに李衣菜ちゃんと一緒に食事を作ってるためか、遊歩くんの料理の腕はかなり上達していた。

 今日のメニューはお味噌汁に焼いた秋刀魚、白米とオーソドックスなメニューだ。

 

「さすが新田さんですねー。冷蔵庫に入ってるの、今が旬な食材ばかりでした」

「ちゃんと秋刀魚に火通した?私お腹壊したくないよ?」

「と、通しましたよ!」

 

 そんなことを話しながら、早速ご飯にした。まずはお味噌汁から。ズズーっと啜ると、身体中に薄味白味噌のお味噌汁の暖かさが染み渡る。

 

「……ふぅ、美味し」

「そうですか?良かった」

「秋刀魚ももらうね」

 

 秋刀魚、白米、またお味噌汁と食べた。どれも良い味を出している。……でも、その、なんだろ。やっぱり食欲が湧かない。なんでかな、もしかして本当に体調悪い……?

 

「……新田さん?」

「っ、な、何?」

「大丈夫ですか?なんかボーっとしてましたけど」

「だ、大丈夫よ」

「もしかして、やっぱ体調悪いんじゃ……」

「そ、そんな事ないよ。本当に平気だから」

 

 いつのまにか秋刀魚を骨だけにしていた遊歩くんが聞いてきたので、慌てて秋刀魚と白米を食べた。

 無理にでも飲み干して、小さく一息つくと遊歩くんが私の方をじっと見てるのに気付いた。

 そして、何を思ったのか私の前に歩いて来るなり、わたしのおデコに自分のおデコを当てた。

 

「っ⁉︎ な、何を……⁉︎」

「んー……37……いや、38か?今、相当気分悪いでしょ」

「……そ、そう、かも……」

 

 うっ……た、確かにそうかも……。言われて気付いたけど、頭がクラクラするのも食欲がないのも普通に体調が悪い所為かもしれない。

 

「朝飯は片付けますね。とりあえず、今日は寝てましょう」

「へ?あっ……」

「新田さんの大学にも連絡しておきますね。弟って言えば何とかなるでしょ」

 

 テキパキと片付けを始める遊歩くん。……なんだか、年下にお世話されるのって新鮮で少しか恥ずかしいなぁ……。

 ……でも、遊歩くんも今日学校じゃなかったかな……?

 

「……あの、遊歩くん?今日、学校は……」

「ですから、俺の方から連絡しときますから」

「いやそうじゃなくて……。遊歩くんの方のよ」

「俺?俺も休みます」

「ええっ⁉︎だ、ダメだよそんなの⁉︎」

「……体調悪いのにちゃんと言わないで無理して食べる人を一人にさせられません」

「ううっ……じ、自分だって骨折してた時変な無理してた癖に……」

「だから今日は休みます」

「……でも、学校は休んじゃダメ。昨日、李衣菜ちゃんと撮ったビデオを今日みんなに見せるんでしょ?遊歩くんの案じゃなくて李衣菜ちゃんのものになっちゃうよ?」

「別に良いですよ。友達なんてそんな多くても良いことありませんし」

「ダメ、私が遊歩くんの学生生活の足を引っ張るような事だけは嫌なの」

「……」

 

 すると、遊歩くんは渋々残りの自分の朝ご飯を食べ終えると、スマホを取り出した。

 

「姫川さんに来てもらうよう頼んでおきますね」

「あ、ま、待って!呼ぶ人は私に選ばせてくれない、かな……?」

「? なんで」

「あー……その、ほら。確か友紀さん、朝から仕事って言ってたでしょ?」

「まぁ、何でも良いですけど、ちゃんと言うこと聞くようにね」

「……私を子供みたいに……」

「じゃあ、俺行きますから」

 

 制服に着替えて遊歩くんは部屋を出て行った。

 

 

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