新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。   作:バナハロ

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最終章です。


文化祭は準備中や本番ではなくトラブルを楽しむもの。
友達の出来るきっかけは人それぞれ。


 美波の風邪から一週間が経過した。無事に美波も回復し、今日から俺は自宅暮らし再開。正直、死を覚悟してたけど、美波から蘭子の仕業だとネタバレをいただいたので、蘭子はマジで締める事を心に誓いながら、本格的な文化祭の準備に入った。

 しかし、現場監督というのは忙しいもんだ。何が忙しいって?そんなもん決まってんだろ。

 

「北山!ドライアイスはどうすりゃ良い⁉︎」

「教室の隅、通路じゃないところに置いて!」

「窓のポルターガイストはどうすんの⁉︎」

「誰かが揺らすかスマホ貼っつけてバイブで揺らせ!」

「なぁ、その辺に撒き散らしとく血はどうすんの⁉︎」

「生暖かくして血液独特の鉄臭さを出せば多少色は違くても血っぽく見えるから!」

「おっぱいは⁉︎」

「大好き!」

「今の、美波さんに言っとくから!」

「勘弁してくれ!」

 

 と、後半は全く関係なかったがてんやわんやだった。ちなみに最後のは多田さんな。

 まぁ、現場監督なだけあって忙しくて、最近はうちにアイドル達を集めることも出来ない。最近、うちに来るのは美波とアーニャ様と多田さんくらいだ。

 多田さんはうちのクラスで帰りにちょっと寄ってくってこともあるから分かるし、アーニャ様は女神だから祈ればご降臨してくださるから分かるが、美波はなんで来るんですかね……。付き合いが長いから?特に、多田さんがうちに来るときは決まって途中で合流してくるのが不思議だ。

 まぁ、どうせ「遊歩くんみたいな変態にアイドルを近付けさせちゃちけない」的な意図があってのことだろうな。はぁ、風邪引いてる時はしおらしくて大人っぽくて、正直見てて少しムラムラしたのに……。あの時の美波もう戻って来ないのかな……。

 

「北山!目ん玉爆竹とか面白くね⁉︎」

「面白いのはお前の頭だ!」

 

 趣味悪いにもほどがあんだろ……。

 とりあえず無視して、俺は俺で作業を進める。必要になりそうな経費の計算だ。これ提出しなきゃいけねんだよな、実行委員に。

 特に、あの姫川さんドッキリビデオを見てからうちのクラスの連中は本気になっちゃってるから、もう金掛かる事金掛かる事よ。まぁ、こう言うのも全部学校側から出してくれるんだから別に良いけどね。

 しかし、まさかここまで俺の手足になってくれるとは……都会の学生は良くも悪くもプライドのない奴ばかりのようだ。……いや、協力してくれる人達を悪く言うのは良くないな。

 

「ね、北山!」

 

 クラスの女子生徒が名前は知らんけど、二人ほど駆け寄って来た。

 

「あのさ、今日この後暇?」

「もし暇だったらスタバでお化け屋敷の打ち合わせしない?」

「え、いや今すれば良いんじゃ……」

「もー、良いじゃん。分かるでしょ?」

「ほら、同じクラスになってからあんま話した事ないじゃん?」

 

 いや、全然分からん。今話すんじゃダメなのか?言っとくけど、都会人には俺警戒心高いよ?どうせ路地裏で薬買わされるんでしょ?知ってるからね俺。

 しかし、せっかく友達が出来そうなのに断るのもチャンスをドブにスリーポイントシュートしてるような気がするし……。

 でもスタバとかってコーヒー1杯で500円くらいとるからなぁ……。あ、ならちょうど良い所あんじゃん。

 

「うちで良いなら良いけど」

「えっ……う、うちって……?」

「……北山の家?」

「家っつーかアパート。たまに多田さんとかも来るよ」

「はーいちょっとごめんねー!」

 

 当然、後頭部に一撃が入り、首根っこを掴まれて誰かに廊下まで引きずられた。誰かにっつーか完全に多田さんの明るい声だったけど。

 

「いってぇな!何すんだよロック!」

「ありがとう!なんでそんな簡単に私が北山の部屋に行ってる事バラすの⁉︎意味分かんない!」

「意味分かんねーのはテメーだろ……」

「普通ね、お互いの家や部屋に行く時ってのは付き合ってる人同士の場合だけなの!あんなアイドルホイホイみたいな空間はそうそうないんだからね⁉︎」

 

 あー……そういえば最近感覚が麻痺してたのはあるかもしれない。

 

「それに、ああいうのは断らなきゃダメ」

「なんでよ。友達作りの良い機会なんじゃねーの?」

「そうだけど、普通は異性より同性の友達からでしょ?」

 

 まぁ、そう言われりゃそうだが……。というか、嫌味じゃなくて最近男と話してない。

 

「それに美波さんがいるのに女の子と出掛けるのはダメ!」

「……なんで美波が出てくんの?」

「……教えない」

「なんだよ……」

 

 自分から言っといてなんすかそれは……。つーか、考えてみりゃ美波とは随分長く関係が続いてるよなぁ……。あの人は優しくて面倒見も良くて運動も出来る、ちょっと真面目過ぎるけど割と俺と趣味も合いそうだ。

 

「……美波が男だったら良かったのになぁ」

「それ、本人の前で言っちゃダメだからね。命の保証はできないレベルだから」

「? なんで?」

「自分で考えて。……とにかく、女子からの誘いは私が断っとくから、ちゃんと同性の友達を作って来て」

「えー、モテ期が来たと思ったのにー?」

「来てるよ、前から」

「……やっぱお前俺のこと好きなの?」

「ぶちのめすよ」

 

 ぶ、ぶちのめす……?過激な表現に少し引き気味になりながらも、渋々了承して教室に戻るとクラスメートの視線は全部俺と多田さんに向いていた。

 

「? 何?」

「え、お前ら付き合ってんの?」

「毎日北山の部屋で何してんの?」

「むしろナニしてんの?」

「ち、ちちち違うから!なんで私がこんなのとそんなエッチな事しなきゃいけないの⁉︎」

「誰もエッチなんて言ってねーよ」

「んがっ……!」

 

 多田さんは墓穴掘るの上手いなぁ。まぁ、別に俺としては多田さんが彼女みたいに思われても不都合はないので、訂正する気は起きなかった。

 しかし、多田さんが「お前もなんか言え」みたいな目ですごい睨んで来たので、咳払いしてから言った。

 

「それよりお前ら、手を動かせ。来た客全員泣かすんだろ?このままだとおしっこ行きたくなった赤ん坊しか泣かねえぞ」

 

 すると、上手いこと乗ってくれたようでみんな準備に戻る。それにホッと一息ついた多田さんは俺の脇腹を殴った。

 

「なんだよ、助けてやったのに」

「……ちゃんと否定しないと勘繰られるじゃん」

「ならしばらくうちに来ない方が良いんじゃない?」

「……そうする」

 

 うちに来るメンバーが減った。

 

 ×××

 

 今日も今日とて学校が終わり、俺は自宅に戻った。遊びに誘われることも多々あったが、生憎一人暮らしは忙しいので断った。

 それにほら、今日もアーニャ様が来るなら待たせるわけにはいかないじゃない?切腹もんだからね。

 帰るのが遅くなったのをきっかけに、買い物はそれなりに買い溜めしておくことにしたのでしばらく帰りに買い物はしなくて良い。てか、今日は美波とアーニャ様来るのかな。

 そんなことを考えながら帰宅してると、スマホが震えた。

 

 美波『後ろ』

 

 振り返ると、美波が頬に指を立てて来た。

 

「ふふ、こんにちは」

「……何を高校生みたいな事してんの?自分の年齢を思い返せよ」

「何か言った?」

「いえ、何も」

 

 怖っ!その顔怖いよ!相変わらずキレると半端なく怖い方だ。

 

「今日も遊歩くん家に上がっても良いかな」

「良いよ」

 

 ほんと、毎日毎日ありがたい限りだ。

 

「ちょっと、お話があるの」

「? なんですか?」

「あー……後で良いかな?」

「あ、はい」

 

 と、いう事なので、一度帰宅した。

 手洗いうがいを済ませてすぐに晩飯の準備。今日はアーニャ様来ないっぽいし、美波と二人で夕飯の準備にかかった。

 今日のメニューはビーフシチュー。美味いよなビーフシチューって。なんであんな美味いんだろうな。

 

「今日はどうだったの?」

「大忙しだったよ。都会の学生とかあいつら本気でお化け屋敷とかやった事ないんだろうな。心霊現象の作り方も分かってない。何でもかんでも聞いて来やがって……」

「でも、楽しそうだったって李衣菜ちゃんも言ってたよ?」

「……気の所為だろ」

 

 別に楽しくはないわ。人とのコミュニケーションで余計に疲れるし。

 

「むしろ、その多田さんと付き合ってると疑われて最悪だったよ」

「……そうなの?」

「ああ。人一倍色恋に縁がない奴ほど人一倍色恋に興味あるとか銀さんが言ってたっけ……。いやまさにその通り過ぎて笑うしかないわ」

「……ふーん?じゃあ遊歩くん的には満更でもなかったんじゃない?」

 

 あれ、なんか声が低くなったな。何か気に障ったこと言ったか?

 

「や、そうでもないですよ。多田さんには迷惑掛かったみたいだし、俺はアーニャ様のようなミステリアスな女神か大人の甘やかしてくれそうな女性が好みだから」

 

 間違ってもロックロックビバロックみたいな女の子は恋愛対象には出来ない。なんであの子あんなアホなんだろう。

 すると、何を思ったのか美波は突然、俺の頭を撫で始めた。

 

「ふふ、遊歩くんとても頑張ったね。今日はお姉さんが後で耳掃除してあげようか?」

「野菜切った手で触んなよ、頭汚れんだろ。耳掃除は是非お願いします」

「……遊歩くんの分にだけタバスコぶちまけてあげる」

「嘘!美波お姉様に撫でて欲しいです!」

 

 あまり辛いもの好きじゃないんです。てか、今のは俺一人が悪いわけじゃないだろ。

 で、学校での話をしてるうちにビーフシチューが完成し、二人で食べた。

 

「いただきまーす」

「いただきマンモス」

 

 二人で手を合わせて食べ始めた。うん、やっぱ美味い。ほんとに美波ってあれだよね。料理上手いし優しいし(たまに悪魔将軍だが)美人だし本当に良い奥さんになりそうなもんだ。

 

「俺、思うんだけど、やっぱビーフシチューで重要なのは人参だよね」

「あー分かる。どれだけ人参の甘さとビーフシチューの甘みを調和させられるかだよね」

「やー、やっぱ美波と料理作れば絶対美味いもん作れるから良いわー」

「……あれだよね、二人でキッチンに立ってビーフシチュー作るなんて、なんかこう……恋人?みたいだよね……」

「……え、何急に」

「う、ううん、なんでも」

 

 や、確かに恋人どころか新婚みたいだが、別に今に始まった事じゃないだろ。今までだって何度も一緒に飯作ってるわけだし。

 

「ちなみに、美波もやっぱ彼氏欲しいとか思うの?」

「……へっ?」

「や、何となく気になって」

「……ま、まぁ……そうだね。甘えさせてくれる彼氏とか、欲しい、かな……」

「……ふーん」

「ほら、私弟いたからさ。たまには甘える側になりたいなーって」

 

 甘えさせてくれる、ね。この前風邪引いてた時はやけに甘えて来たな、そういや。

 ……あの時の色っぽさと甘えっぽさが混ざり合った美波を思い出すと未だにムラムラして来るので話を逸らそう。

 

「そういや、話って何?」

「へっ?あ、あー……うん。実は、しばらく私もここに来れなくなりそうなんだ」

「あら、そうなん?」

 

 それは意外だ。基本来れる日は来てくれるもんだとばかり。

 

「ほら、結局風邪で三日くらい学校休んじゃったでしょ?他にも色々休んでたから、その分の勉強とかやらなきゃいけなくなっちゃったから」

「あー……なるほど。理解した。いつ頃落ち着くの?」

「うーん……どうだろ。分からないけど、多分文化祭までには収まると思うよ」

「了解」

 

 ま、前は一人だったわけだしそれくらい問題ないだろう。むしろ、たまには一人の空間も悪くなさそうだ。

 そんな話をしてる間に夕食を食べ終えたので、耳掃除してもらって新田さんを部屋まで送った。

 

 

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