新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。   作:バナハロ

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美波の悩み(最終)

 翌日、文化祭後。遊歩くんの部屋に久し振りにアイドル達が集まった。

 

「と、いうわけで、お化け屋敷の完成を祝して!」

「「「カンパーイ!」」」

 

 友紀さんの音頭と共にみんなでジュースの入ったコップで乾杯した。ゴクッゴクッと喉を鳴らして飲んだ後にコップを机の上に置いた。

 

「つーか、俺の打ち上げなのに何で美波はともかく俺が飯作ってんの?」

 

 今更、遊歩くんが不満げに目を腐らせて言った。その質問にはみくちゃんが陛下な顔で答えた。

 

「別に北山チャンの打ち上げじゃにゃいから」

「え?俺じゃないの?」

「李衣菜ちゃんの打ち上げニャ」

「そ、そっか……俺じゃなかったのか……」

 

 あ、少し凹んでる。ま、まぁ、今のは冗談だと思うから、遊歩くんにはあまり気にしないで欲しいな。

 

「そうだよ、細かいことは気にすんなよ。オレは美味い飯が食えてるから満足だから」

「ハイ。私もミナミとユウホのご飯食べれて嬉しいです」

 

 晴ちゃんとアーニャちゃんが私達の作った料理を食べながらそんなことを言っているが、それ結局祝いに来たとは一言も言ってないのでフォローになってない。

 まぁ、別に一々私もフォローしようなんて思わないので別のことを聞いた。

 

「お代わりあったら言ってね」

「おい、アイドル。お代わりして良いのかよ」

「大丈夫だよ、みんな痩せてるし」

「そっか……。美波ももう少し脂肪つけて胸の大きさを」

「死にたいのかな?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

 アイアンクローしてあげると全力で謝り始めた。うん、まぁ今のは私は悪くないし。

 

「そういや、みんなどうだった?うちの出し物見てみて。何人かは俺が勤務時間外の時に来てて反応見れなかったんだよな」

 

 その話を遊歩くんが切り出した時、李衣菜ちゃん以外の全員がピクッと反応した。もちろん、私も含めてだ。

 それに気付かず、遊歩くんはペラペラと話し始めた。

 

「俺と一緒に入った美波なんてさ、途中から腰抜かしてずっと俺におんブワァンドォ⁉︎」

 

 当然、私は黙ってない。横からこめかみに突手を放った。

 

「余計なこと言わなくて良いの」

「そ、そうだよ!ていうか、なんてもん作るんだ君は⁉︎」

 

 飛鳥ちゃんも蘭子ちゃんと手を繋ぎながら文句を言った。

 

「普通、学園祭であれだけやるか⁉︎」

「っ……わ、私も……!怖かった……」

「蘭子なんて二度目の失き……」

「だ、だめぇ!飛鳥ちゃんだめぇ!」

「はぐっ⁉︎」

 

 慌てて口を抑えようとした蘭子ちゃんの張り手が飛鳥ちゃんの鼻から下を抑えて床に叩きつけた。

 

「二人とも騒いじゃダメ!近所迷惑ニャ!」

「怒る前に蘭子を止めてくれよ!」

「も、も〜!飛鳥ちゃんか恥ずかしいこと言うからでしょー⁉︎自分だって念のために替えのパンツ持って来てた癖に!」

「蘭子、素に戻ってるぞ」

「まぁまぁ、恥ずかしかったら誰だってキャラくらい忘れるって。晴ちゃんだって途中からあの雰囲気にやられて千鳥足だったじゃん」

「オレの背中に隠れてた二十歳に言われたくない!」

「そういえば、みくちゃんもなんか脅かされて『シャー!』とか猫みたいな反応してたよね」

「ニャッ⁉︎なんでそれを言うニャ⁉︎え、えっと……あ、アーニャチャンもそういえば変な段差に躓いて転んじゃって、前歩いてる李衣菜チャンのスカート脱がしてたよね!」

「「みく(ちゃん)‼︎」」

 

 と、みんながみんなで暴露大会を開催。私も遊歩くんもたた黙々とご飯を食べ続けた。

 ……一応みんなに私と遊歩くんが付き合い始めたこと報告しようと思ってたのに、言うタイミング全くもって掴めない。

 ま、まぁ、いずれ話すタイミングは来るでしょう、と思ってしばらくのんびりしてると、いつのまにか全員の視線が私の隣の遊歩くんに向いていた。

 当然、本人もそれに気づいて「えっ」と声を漏らす。

 

「な、何?」

「……そもそも北山がお化け屋敷で全員泣かすとかほざかなきゃこんなみんな揃って恥かくことはなかったよね」

 

 李衣菜ちゃんが言うと、全員揃って頷き、コオォォと息を吸って戦闘モードに移行するアイドル達。

 

「ま、待て待て待てお前らなんでそうなるの?落ち着こう一旦」

「……とりあえず、みんなで一発ずつにしようか」

「何を一発する気⁉︎」

 

 ……流石に今回は遊歩くんは悪くないかな。というか、遊歩くんに手を出して良いの私だけだから。

 パンパンと二回手を叩いて全員に言った。

 

「はいはい、そこまで。今はご飯中だから」

「っ、は、はーい……」

 

 ふぅ、みんな大人しく従ってくれた。しかし、友紀さんまで素直に従われちゃうとなんか申し訳ないのは何でだろう。

 

「美波ー、助かったわー」

「はいはい、よしよし」

 

 私の方に抱きついてくる遊歩くんを頭を撫でて止めつつ落ち着かせた。みんなの前でハグされるのは恥ずかしいです。

 

「なー、あいつら酷いよな。別に俺の方から来てくれなんて言ってないのに勝手にビビって報復して来るとかマジ、はるちんならともかく他はガキかっつんだよな。や、アーニャ様の愛のムチなら喜んで受けるけどね、フヒヒ」

「やっぱやっちゃって良いよみんな。あ、アーニャちゃんはダメね?むしろご褒美みたいだから」

「美波さぁん⁉︎」

 

 言い方ってものがあるでしょう。それに、堂々とアーニャちゃんに浮気しようとするのは許せないし。

 私の許可が出た事により、再び乱闘(というより一方的なリンチ)が始まった。

 数分後、食事とリンチを終えて、みんなで食休み。その間に私と遊歩くんはコーヒーとクッキーを出してみんなの前に置いた。

 

「おおー、食後のコーヒーとデザートまで」

「デザートっつーかおやつだけどな」

「細かいなぁ、北山くんは」

「そうだぞ、遊歩。細かい奴はモテないぞ」

「余計なお世話だ」

 

 なんて遊歩くんと友紀さんと晴ちゃんがまた雑談を始めようとしたところで、私は「あーちょっとたんま」と声をかけた。

 それに対し、遊歩くん含めたみんな揃って「?」と顔を上げた。

 

「その前に、その……報告?があって……」

「? 我らに?」

「うん、実はね……」

 

 言いながら遊歩くんに手招きした。なんのこっちゃ?みたいな顔をして立ち上がる遊歩くんの腕を引いて私の隣に立たせると、頬を赤らめながらも言った。

 

「……その、実は私達、付き合うことになりました」

「……あ、言っちゃうんだ」

 

 惚けたことを言う遊歩くん。

 しばらくみんなほけーっとした顔で私と遊歩くんを眺めたが、やがてみくちゃんが「この人何言ってんの?」みたいな顔で聞いてきた。

 

「……今更?」

「はっ?」

「てか、付き合ってなかったのかい?」

 

 飛鳥ちゃんにまで言われて、少し狼狽えてしまった。えっと……今のはどういう意味?

 李衣菜ちゃんも狼狽えた様子でみくちゃんに聞いた。

 

「えっと……みくちゃん、どういう事?」

「いや、てっきりみくは既に付き合ってるものかと……」

「……はっ?」

 

 他のみんなも「うんうん」みたいに頷いていた。

 

「ていうか、あれだけ一緒に台所にいて付き合ってないはないでしょ」

「それな、二人でじゃれてる時超楽しそうだし」

「てか、最近になって北山チャンが下の名前で呼んでたし」

「うむ、永劫なる愛を誓い合った者達のオーラを出していた」

「あれは完全に恋仲に見えたね」

「とってもお似合いでしたよ?ミナミとユウホ」

 

 みんなに揃って言われるたびに私は顔を赤く染めていった。遊歩くんは「あーあ……」みたいな顔をして私を見てきた。

 それ以上、なんだか立ってるのも辛くなってきたので、両手で顔を覆ってその場でしゃがみ込んだ。

 

「……み、美波?」

 

 心配そうな声で声をかけてくれる遊歩くん。やっぱり彼氏として慰めてくれるのかな?と思ったら震え声で言った。

 

「ぷふっ……!っ……わ、わたし、達っ……付き合うことに、なりましっ、ふんっ、ました……!」

「……」

 

 反撃出来ないほどに恥ずかしくて、私はその場から動かなくなった。

 ……もう、いっそ殺して……。

 

 ×××

 

 夜。寮のみんなと自宅暮らしの二手に別れて帰宅し始めた。遊歩くんも送ってくれて、とりあえず李衣菜ちゃんを送ってから最後の私のマンションに向かった。

 

「いやー、さっきは恥ずかしい事してましたな、美波さん」

「やめて……。ホントに勘弁して……」

「『私達、付き合うことになりまし……』」

「やめてってばぁ……!」

 

 まさか、みんなもう付き合ってるものだと思ってたなんて……。そんなこと一言も言ってないのに……。

 

「まぁ、恥は旅の情けの世は平和っていうからな」

「混ざってる、混ざってるよ。意味も違うし最後どこから来たのか分かんないし。私より恥ずかしいよそれ」

「と、とにかく、気にするなよ。多分、俺以外はみんないじらないから」

「……一番、遊歩くんにいじられたくないんだけどね」

 

 次にいじったら怒ろう。そう決心しながら二人で私のマンションに歩を進めた。さっきまで大人数だったからか、二人きりなのが静かでとても良い雰囲気な気がする。

 

「……ね、遊歩くん」

「? 何?」

「なんで、私に告白してくれたの?」

「え、好きだからだけど」

「や、そういうんじゃなくて……。あ、じゃあ私のどこが好きなの?」

「んー……何処だろうな」

「てっきり、アーニャちゃんが好きなのかとばかり。恋愛的な意味じゃなかったとしても、アーニャちゃんより私を選んだのがどうしても気になって」

 

 すると、遊歩くんは顎に手を当てて考えてから答えた。

 

「……なんでだろうな。ただ、美波に会えない間、なんかすごい震えが止まらなくて」

「はあ?」

「いや、本当。しばらく会えなかった時に禁断症状みたいに奇行に走ることが多くてさ」

「……き、奇行?」

「学校だと体育館の壁を殴ったり、シャー芯を定規で全部粉々にしたり、ダンボールでアーマー作ったり……自宅だと壁に頭突きしたり、パンでチャーハン作ったり、かまぼこの天ぷらソテーステーキ作ろうとしたり……」

 

 ……むしろ距離を置いたほうが良い気もしてきた。まぁ、そんなことしたら私の方が保たないと思うけど。

 

「で、あー俺あの人のこと好きなんだなと思って。考えたら一番お世話してくれてたの美波だったし、知らないうちに好きになってたんだなって」

「そ、そっか……」

「ほら、面倒見良いし料理上手いし大して胸大きくないのにエロすオーラすごいし、ほんとなんでこの人彼氏出来たことないの?って感じで」

「も、もうその辺で良いから」

 

 なんだか恥ずかしくなってきた。ていうか、エロすオーラって何よ。

 ……というか、えっちな本を買ってるの知った時から思ってたけど、やっばりアホの遊歩くんも異性の体とか興味あるんだな……。

 意外、でもないけど……いや、これは意外って事なのかな。意外だ。……そういえば、前に遊歩くんをうちに泊めた時、変にムラムラしたよね……。

 

「……」

 

 ……あ、バカ。なんでそういうこと考えるの美波。一度そういうこと考えると、中々収まらないのが性欲なわけで。

 しかも、これから一つ屋根の下に恋人を連れて行こうとしてるのだからなおさらだ。いや、別に部屋にあげるわけじゃないんだけど……。

 

「ねぇ、遊歩くん。良かったらうちに上がって行かない?」

「マジ?良いね、さんきゅ」

 

 なんで誘ってるの私⁉︎え、今すごい。自動的だった。オートだった。完全に勝手にポローンと出た。自転車の鍵みたいにポケットから落ちた感じ。

 ど、どうしようっ……!な、なんだかすごい緊張してきた……。わ、私ってやっぱりえっちな子なのかな……。

 

「美波、着いたよ」

「ふえっ⁉︎……あ、う、うん……」

「……どうした?顔がギロロより赤いけど」

「な、なんでもないなんでもない!」

「風邪?」

「なんでもないってば!ほ、ほら行くよ!」

「? お、おう……?」

 

 マンションに入り、二人きりでエレベーターに上がった。ふわああ、と欠伸をする遊歩くんを後ろから眺めた。

 隙だらけの背中。そういえば、まだ付き合い始めてからキス一つしていない。彼女いたことあるらしいからファーストキスってわけじゃないだろうけど、確か前に童貞とは言ってたよね。

 続いて、私の視線は遊歩くんの体に移った。私を送った後はすぐに帰る予定だったのか、かなりラフな格好だ。半袖短パン、一応上着に上半身にだけパーカーを着ていて、靴はサンダルで裸足。夏場の小学生かこの子は。

 つまり、脚は完全に太ももまで生脚なわけで、すらっと細くともしっかりそれなりに筋肉のついてる脚がむき出しになっていた。その背中を見ながら、私は一つの決心をした。

 

 この子、部屋に入ったら襲っちゃおう(錯乱)。

 

 私の部屋のある階に到着し、鍵で玄関を開けた。部屋の中に入って靴を脱ぐと、続いて遊歩くんも玄関に入った。

 

「お邪魔しま……んんっ⁉︎」

 

 唇に唇を押し付け、舌を口の中に侵入させた。流石の遊歩くんも顔を真っ赤にしてる間に、玄関を閉じて鍵も閉めた。

 プハッ、と息を吐いてようやく離れると、顔を真っ赤にしたまま遊歩くんは聞いてきた。

 

「……な、いきなり何……?」

「……まださ、恋人っぽいことしてないよね?」

「は、はい……」

 

 急に返事が丁寧になったが構わなかった。

 

「……だから、その……シちゃおうか……」

「するって……何を?相撲?」

「……分かってる癖に」

「……マジ?」

「嫌なら、良いけど……」

 

 しばらくその場で固まった後、返事を出した遊歩くんと一緒にベッドに向かった。

 まぁ、その、なんだろ。そんなわけで、幸せに生きていきます。

 

 




例によって番外編が続きますので、暇つぶし程度に読んでください。
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