新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。 作:バナハロ
性欲(1)
土曜日、この日は学校がない。や、ほんとに神だよね、学校がない土曜日って。何時に起きても良いし、夜は何時に寝ても良い。昼間はどれだけゴロゴロしても構わないし、飯のタイミングも自由だ。
そう、土曜日とは神の日だ。そんな日の朝、二度寝して昼まで起きようと思っていたのに、インターホンによってそれは阻まれた。
仕方なく身体を起こし、まずは覗き穴。玄関の前に立ってるのは美波とアーニャ様だった。ダメだ、開けないと。
とりあえず、簡単な身だしなみだけ整えてから扉を開けた。
「おはよう、遊歩く……」
「おはようございます。我が主アーニャ様、或いはマイヴィーナス、どうぞお上り下さいませ」
「おはようございます、ユウホ!」
「……」
二人を中に上げて、とりあえず布団を畳んでスペースを広げた。
「私、着替えて参りますので少々お待ちくださいませ。美波もちょっと待ってて」
「分かりました!」
「……うん。待ってるね」
そんなわけで、洗面所で着替えを終えて、歯磨きして居間に戻った。
「お待たせ致しました。ただいまから朝食を作らせていただきます」
「大丈夫ですよ、食べて来ましたから。私はミナミの家でお泊まりしてて、ついでに立ち寄っただけで、今日はお仕事ですから」
「失礼致しました。分を弁えない差し出がましいご提案、お許し下さい」
「気にしないで下さい。じゃあ、ミナミ。私はここで」
「うん、またねアーニャちゃん」
「よろしければ駅までお送りしますが」
「大丈夫ですよ」
それだけ挨拶して、アーニャ様は部屋を出て行った。玄関で深々と頭を下げ、視界から消えたあたりで頭をあげた。
さて、それで美波は何しに来たんだろ。まぁ、彼女が彼氏の家に来るのに理由なんてないか。
「どうしたの美波。エッチしに来」
直後、ガッと、ガッと頭を掴まれた。
「遊歩くん? なぁに、この部屋? 先週お片づけしたばかりだよね?」
そう言われた通り、先週はあまりに部屋が汚いということで一日、後片付けで終わってしまった。
その時に比べたら汚くはないが、まぁ確かに一週間で散らかしたには散らかした。
美波の顔を見るのが怖くて、気まずげに目を逸らそうとしたものの、アイアンクローがギリギリと頭を軋ませてそれを許さない。
「しゅ……しゅみません……。でも、違うんです……俺は何もしてないのに気が付いたら……」
「何もしないでこんな汚れるわけないでしょ。大体、遊歩くんみんなが来なくなってからだらしなくなったよね?」
……やばい、すごい怒ってる。でも、気の所為か怒ってるのは部屋が汚い事以外に関して怒ってるような気が……。
とりあえず、何かしら言い訳しないと消されると思い、気まずげに言った。
「……まぁ、それはその……ようは人が部屋に来ることに慣れてしまったというか……特に、前は人が多かったけど最近は美波しか来ないし……良いかなって」
「つまり、私くらいなら手を抜いても良いと思ってるのね?」
「ち、違う違う! そんなつもりないから本当に! むしろ美波になら本当の俺を晒け出せると思って……!」
「ーっ! ば、バカ! そんなセリフじゃ誤魔化されないんだから!」
「いだだだだ! 弾ける、頭弾け飛ぶって!」
ていうか、頬赤らめちゃってるし! 可愛いけど痛いです頭!
何とか「ごめんなさい」を連呼するとようやく手を離してもらった。よし、許してもらえたな、とりあえず美波の手料理が食べたい。
「美波ー、朝飯作ってー」
「嫌」
「え、い、嫌なの……?」
地味にショックなんだけど……。もしかして、嫌われた……?
「まずは部屋の片付けからです」
「えー、お腹空いたんだけど」
「あのね、やるべき事もしないで人に甘やかしてもらえると思わないでね? 私、そんなに甘くないから」
「うぐっ……仕方ないな……」
「仕方ない? ここは誰の部屋?」
「すみません……俺です……」
……なんか今日はいつにも増して、機嫌悪いな……。何かあったのか?
「……あの、美波? なんか機嫌悪くない?」
「……別に、そんなことないから。早く片付けするよ」
言われて、仕方なく片付けを始めた。まずはゴミ捨て、それから落ちてる衣類を洗濯機に放り込み、布団はベランダに干した。
幸い、テレビがないほど家具が少ないので、すぐに片付けは終わった。
「ふー……終わったぁ……」
伸びをしながら、床に座ってる美波の膝の上に倒れ込んだ。が、美波が膝をサッと横にずらして立ち上がったお陰で俺は頭を床に強打。
そんな俺に目を向けることもなく、美波は台所に向かった。
「朝ご飯、まだ食べてないんだよね?」
「あ、はい……」
「炒飯で良い?」
「あ、お願いします……」
それだけ聞くと、美波は調理を開始した。
……やっぱり怒ってる、よな……。でも、なんでだ? やっぱりダラしないからかな……。
だとしたらもう少ししっかりしないとなぁ……。とりあえず、久々に飯でも作るかな。
美波の料理を手伝おうと台所に向かった。
「美波、手伝」
「いい」
「……」
……違う、俺がダラしないから怒ってるんじゃない。でも、だとしたらなんで怒ってるんだ? 何かしたかな俺……。
なんだかドギマギしてる間に炒飯が完成し、俺の前に運ばれて来た。
「お、美味そ。いただきま……」
「待って」
スプーンを手に取ろうとした所で、パッと後ろに引かれた。
「……あの、お腹空いたんだけど……。焦らしプレイって性欲満たす時に使うのであって食欲満たす時に使っても……」
頭を叩かれた。叩かれた、と表現するとなんか可愛いかもしれないけど、威力が全然可愛くない。
「……なんでしょうか」
「……遊歩くんはさ、アーニャちゃんと私、どっちが好きなの?」
「は? 美波」
「そんな風にしらばっくれても無駄なんだから! いつもいつもアーニャ様アーニャ様って……え? わ、私なの……?」
「え? うん」
何を当然なことを。正直、人の優劣をつけるのは好きではないが、美波の問いとあれば答えざるを得ない。
「で、でも、どう見ても扱いが私よりアーニャちゃんの方が上じゃない!」
「え、だって美波とは付き合ってるんだし、気を使わない方が良いでしょ? それに、アーニャ様はほら……もう俺の中で人ではないから」
「……なんかそれはそれで……」
全国の彼女がいる男達だって好きなアイドルの一人や二人いるだろ。それと同じ。そのアイドルがたまたま俺と友達だっただけだ。別に恋心は抱いてないし。
「……でも、なんか納得いかない。本当に私の事好きだって証明してよ」
証明とか言われてもな……。まぁ、要するにアーニャ様にやらないで美波にやるような事をすれば良いんだろう。
そんなわけで、俺は美波の服の襟をつかみ、引っ張った。
「ちょっ、何を……んっ⁉︎」
そのままキスをしてやった。舌を絡め、後頭部に手を添え、そのまま押し倒した。ようやく離れ、つぅっと唾液が俺と美波の口を結ぶ。
美波の胸元に手を添え、ボタンを外そうとしたが、その手を美波が掴んだ。
「ま、待って!」
「証明するんでしょ?」
「わ、分かったからもう……。こんな朝からそういうのは……」
「何、前はそっちから誘って来たくせに」
「あの時はムラムラしてたし……!」
……まぁ、彼女という立場を利用して無理矢理するのは良くないよな。
「……冗談だよ。まぁ、これで証明になったか?」
「……仕方ないから信じてあげる」
言われて、美波の上から退いて朝食を食べ始めた。いやー、やはり美波の飯は美味いわ。
炒飯を食べてると、美波が身体を起こし、後ろから俺の肩の上に顎を置いた。
「……何、どうしたの?」
「美味しい?」
「うん」
「じ、じゃあ、その……私の口とどっちが美味しい?」
「……え、何? どうしたいの?」
「……なんであそこで引くのかな」
「や、腹減ってたし……」
「……私と炒飯、どっち食べたいの?」
「……」
襲い掛かった。
×××
朝からハードな体験をしてしまったぜ……と、炒飯を食べながら思った。
しかし、最近こんな事ばっかしてる気がするな……。俺も美波も性欲が強過ぎるのか?
「うう……もう、遊歩くんが誘うからつい朝から……」
「いや、てっきりそういうことなのかと思って……」
「ま、まぁ……正直、少し期待はしてたケド……」
「このすけべ」
「遊歩くんにすけべとか言われたくないんだけど⁉︎」
「すけべだろ、美波の方が」
「っ、も、もう! 女の子にすけべとか言わないでよ!」
「ぶふぉっ⁉︎」
可愛らしく頬を赤らめて攻撃して来た割に、鋭い蹴りが俺のボディに直撃し、口の中の炒飯を吹き出しながら後ろにぶっ倒れた。
「まったく、デリカシーないんだから……!」
ブタクサと怒りながら俺の吹き出した炒飯を摘んで食べる美波。いや、あなたも中々無いと思いますよ、理性とか羞恥心が。
「それはいいからさっさと上着着ろよ、風邪引くよ」
「わ、分かってるよ……!」
美波はブラウス一枚で下着もつけてない姿でコーヒーを飲んでいる。ちなみにブラウスしか着てないのは俺の趣味。美波って恥ずかしいって言いながらも俺の言うこと従ってくれるんだよな、多分マゾだよね。
「ふぅ、ごちそうさま」
食べ終えたので食器を流しに片付けた。
とりあえず、シャワーを別々に浴びてから、結局何しに来たのかを聞いた。
「で、今日はどうしたの?」
「ん、実はね、デートしたいなって思って」
「デートって……何処に?」
「どこでも。とりあえず、その……遊歩くんと出掛けたかったんだけど……」
言いながら、美波は俺の身体にくっ付いた。ていうか、だからいつまでそのブラウス一丁でいる気なんだよ。さっき落ち着いた所なのにまたグングンと成長して来たぞ。
「……今日は、ここでこうして1日潰しても、良いかなって……」
「……」
……うん、これは最早疑う余地はないよね。間違いなく俺よりも美波の方が性欲強い。歳を重ねた方が性欲ってのは強くなるものなのか?
まぁ、満更でもなく思っちゃってる俺の言えた事ではないかもしれないけど。
そんなわけで、俺と美波はそのままの勢いで身体を重ねた。
×××
……と、いう流れを土曜日三週連続でやってる、とは口が裂けても言えない。