新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。   作:バナハロ

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新田さん、誕生日おめでとうございます。


打ち上げ(2)

 翌日、体を揺さぶられる感覚で目を覚ました。でも目を覚ましたくなかった。別に、もっと寝ていたいとかではないし、起きるのが面倒とかでもない。

 ただ、俺を起こしてくれる人間はこの世でただ一人、美波だけだ。で、美波は起きるまで起こすのをやめない。

 つまり、あれだ。構って欲しいってわけだ。いや分かるでしょ、彼女がいる人ならみんな。いや、彼氏がいる女の子も分かってくれると思う。やらしい意味なく、触られるのって嬉しいよね。

 本来ならこのまま起きたくなかったのだが、今日はあいにく二人でお出掛けの日だ。大概にしておくべきかもしれない。

 まぁ、その分構ってもらうけど。揺さぶって来てる美波のお腹に俺は抱き着いた。

 

「ん〜……みなみぃ……」

「っ⁉︎ ゆ、遊歩チャン⁉︎」

「はははっ、そんな年下の癖にムカつく猫みたいな呼び方とかどうし……」

 

 ……ていうか、声違くね? ていうか、抱き心地も違くね? ていうか、ムカつく猫の声じゃね?

 ギギギッと顔を上げると、前川さんが真っ赤な顔で俺を睨んでいた。

 

「……年下のくせにムカつく猫で悪かったね」

「……な、なんでいんの……?」

「いいからまず離れてよ変態」

「……美波より胸でかいな、この位置から顔が見え」

「離れろ!」

 

 無理矢理後ろに押し返され、ベッドから頭から落ちた。痛て……ったく、あのアホ猫……。まあ、美波に今のシーン見られなかっただけマシか……。

 そう思った時だ。

 

「どうするニャ? 美波チャン、彼女の目の前で別の女の子に抱きついてセクハラ発言だよ?」

 

 猫のアホな声がアホなことを抜かした。恐る恐る顔を上げると、前川さんの隣に美波が立っていた。

 あの顔はまずいな。怒り過ぎて怒りを感じさせない笑顔だ。ドラゴンボール超で、神の気を一般人には感じられないのと同じだ。

 ……つまり、美波は神だということか? そういえば、ヴィーナスだなんだと言われてたな……。なんて事だ、まさか目の前に悟空に匹敵する気を持つ女性がいるとは……。

 

「くだらない事考えてないで、何か言うことないの?」

 

 あっさり考えてると事を看破された上に、微笑みながら謝罪を要求された。

 うん、まぁ俺が悪いな。特に胸の下りは間違いなく抹殺対象。

 

「すみませんでした、美波の胸も同じくらい柔らか」

 

 ベッドを一つ挟んでる距離感で、間合いを詰めることなくどうやったのか知らないが、拳が俺の額に直撃した。

 

「みくちゃん、わざわざお財布届けてくれてありがとうね」

「ううん、気にしないで良いニャ」

「良かったら朝ご飯食べて行く?」

「良いの?」

「うん。ちょうど今、一人分減ったし」

「やったにゃ」

 

 どうやら俺の朝飯は抜きになったようだ。

 

 ×××

 

 美波の部屋を出て、二人でお出掛けした。とりあえず、街でぶらぶらするという事なのだが、まぁ美波の機嫌が悪い。

 そりゃそうだろう、彼女の家で彼女の目の前で別の女の子に抱きついたんだ。むしろ怒らない理由がない。

 ……でも、その、何? なんで怒ってるのに一緒に遊びに行ってんの? まだ仲直りもしてないのに……。

 

「あの、美波……」

 

 そっちから声かけてくんの?

 

「遊歩くんはさ、やっぱり胸は大きい方が好きなの?」

「えっ? そりゃ勿論……あっ」

 

 やべっ、つい呆気にとられて反射的に答えてしまった。怒られる……かと思ったら、美波は「そっか……」と顎に手を当てて呟くばかりだった。

 

「……あの、美波? 怒ってるんじゃ……」

「怒ってるよ」

「だ、だよな……。彼女の前で堂々と他の女の子に……」

「そうじゃないよ。寝惚けた遊歩くんは起こすと抱きついてくるの知ってるし、間違えちゃったことは良いの。百歩譲って」

 

 え、じゃあ胸の話か?

 

「……遊歩くんが、みくちゃんの胸が好きみたいに言ってたから……」

「え? 俺、前川さんの方が胸でかいっつっただけで好きとは一言も……」

「でも、好きなんでしょ?」

「……正直」

 

 や、でもそれは違うぞ、美波。

 

「でも、俺は美波のおっぱいのが好きだけど」

「いいよ、別に彼女だからそういうこと言わなくても……」

「や、違うから。もう何度も見てるから言うけど、おっぱいは大きさより形と感度でしょ。櫻田家の長男も言ってたし」

「うん、分かったから外ではやめて」

 

 ……そういや表で歩いてたな……。

 

「でも、そっか……そうなんだ……ふふっ♪」

 

 すると、美波は嬉しそうに微笑んだ。

 

「あ、でも強いて言うならもう少し大きくなっても……」

「遊歩くんこそ身長伸ばす? コブで」

「……冗談です」

 

 指をゴキゴキ鳴らしながらそんなことを言われ、笑顔を引きつらせて目を逸らした。

 すると、美波はそんな俺の手を掴んで引っ張り、走り出した。

 

「さ、行こ。デート」

「えっ……」

「でも、私のこと傷付けたんだから、お昼奢ってね」

「まぁ、それくらいなら……」

「さ、行くよっ」

 

 なんか元気になった美波はそのまま走り出した。

 今日のデートはドラマ撮影終わりの打ち上げ。なのだが、昨日の夜に決まったことなので、どこかに行きたいというよりも街をブラブラするタイプのデートだ。

 そういえば、こうして美波と二人きりで歩くのは初めてだ。デートといえば家デートだし、とても他人に惚気られるような内容のデートは出来ていない。だから、最近友達になった白石にも話せてない。白石からはよく「最近銀髪外人美少女の友達が出来た」と惚気られてるが。

 ま、でも今日のデートの内容なら惚気られる。絶対反撃してやるぜ。

 そんな事を考えてると、美波が「あっ」と声を漏らした。犬のフンでも踏んだのかと思って美波を見ると、視線の先にはゲーセンがあった。

 

「ね、遊歩くん。プリクラ撮らない?」

「プリクラ?」

「うん。一枚も撮ってないよね、まだ」

 

 うーん……まぁ、悪くないかも。俺も美波との写真欲しいし、白石に自慢するためにプリクラは持ってこいだ。

 

「よし、行こうか。なるべくイチャイチャした奴」

「え、イチャイチャ? なんでまた……」

「クラスの友達に自慢する」

 

 直後、美波は手に持っていた俺の手を離した。衝撃、と言わんばかりに唖然とし、信じられないものを見る目で俺を眺めていた。

 

「……ゆ、遊歩くんに、友達……?」

「……おい、なんだその反応」

「ゆ、夢? それとも幻覚? あ、ま、麻薬⁉︎ ダメだよ! いくら遊歩くんでもやめられるまで殴るよ⁉︎」

「やってねぇよ! 怖いわ!」

「え、じゃあ……まさか本当に……」

 

 どんだけ疑われてんの俺。こういっちゃなんだが、アイドルの友達ならたくさんいるだろうが。

 と、思ってると、美波の目からつぅっと涙が零れた。

 

「って、泣いてんの⁉︎」

「ううっ……ぐすっ、遊歩くんにようやく……お友達が……嬉しいのに、なんでだろ。涙が止まらないや……えへへっ」

「やめろ! 人の目線集めてるから! 年上のお姉さん泣かしたみたいになってるから!」

「お友達、大事にしなきゃダメだよ?」

「分かってるわ! 姉目線やめろ!」

 

 まぁ、友達というほど友達じゃないけど。クラスの中で一番話すってくらいだし。でも、なんか美波泣いちゃってるし黙っておこう。

 二人でゲーセンに入り、プリクラの筐体に入った。金を入れて、なんだかよくわからない操作は全て美波がいじり、いざ撮影。

 

「遊歩くんはプリクラ初めて?」

「中学の時に何度か撮ったけど。でもフレームとかの選びは女子に任せてた」

「……女の子と撮ったことあるんだ」

「中学の時は、友達多かったのになぁ……」

 

 しみじみとそんなことを言ってると、美波が俺の腕に飛びついた。むぎゅっと胸が腕に当たってるものの、一切気にした様子なくカメラの方を見た。

 

「ほら、ポーズ取って」

「ポーズ?」

 

 言われて、とりあえずスペシウム光線のポーズを取ろうとした。それを先読みしたのか、美波は俺の腕を引っ張って頬にキスをして来た。

 

「っ⁉︎」

 

 そのままカシャっとシャッター音が響き、美波は離れた。

 

「なっ、いきなり何すんだよ……?」

「……彼女とポーズしてるのにウルトラマンはないでしょ」

「だからってな……」

「ほら、2枚目!」

 

 言われて慌ててカメラを見た。美波が俺の首の後ろに腕を回して肩を組んだので、俺も慌てて肩を組んだ。

 その後も美波のペースでいろんなポーズを取らされ、たくさん写真を撮った。

 で、最後の一枚。どんなポーズを取るのかと思ったら、美波が声をかけて来た。

 

「最後は遊歩くんの好きなポーズで良いよ」

「え、お、俺?」

「ほら、早く。合わせるから」

 

 そ、そんな急に言われても……。パッと頭に思いついたのは、やはりウルトラマンだった。ワイドショットのポーズを取ると、美波は「仕方ないなぁ」と息を吐いてスペシウム光線のポーズをした。

 

「ふぅ……もう、結局ウルトラマンなの?」

「いや急に振ってくるから……。時間あれば、もっとこう……なんか色々と思い浮かんだんだけど」

「例えば?」

「んー……肩車とか?」

「乗ってる方が映らないよそれじゃあ」

「……」

 

 すみませんね、阿呆で。

 で、落書きコーナーへ。撮影した写真を眺めてると、隣から「あっ」と声が聞こえた。

 

「どうしたの?」

「……ウルトラマン、悪くないね。案外」

 

 言われて見てみると、確かに美波も俺も楽しそうに構えている。

 

「ちなみに知ってるか? 俺のワイドショットはウルトラセブンで一万七千歳、美波のスペシウム光線はウルトラマンで二万歳なんだぜ」

「く、詳しいね……」

「まぁな。中学の時は本気でウルトラマンごっこしてたからな」

「何してるのよ……」

「でもほら、ちょうど17と20、一万七千と二万で俺と美波の年齢差じゃん」

「ごめん、全然ロマンチックに感じない。偶然でしょそれ」

 

 うん、偶然です。今思ったのでテキトーに言いました。

 

「まぁ、良いや。それなら、一万七千歳と二万歳って書いとくね。多分、見ても誰もわからないと思うけど」

「ちなみに、スペシウム光線にも段階があって、ギガスペシウム光線っていうさらに一段階上の……」

「ウルトラマン談義はいいの。今度ね」

「……うぃっす」

 

 まぁ、女の子にする話じゃないよな。少しくらい付き合ってくれても良いじゃん、というかアーニャさんが話したのなら付き合うでしょ? とも思ったが、美波の中で俺という存在は恋人というのを除いても特別だ。暴力振るうの俺だけだし。

 そんなわけで、気にしないことにした。しかし、そう思いながらも今まで散々やられて来た暴力が頭にフラッシュバックし、少しムッとしてしまう。

 

「……」

 

 何となく俺の画面に表示されてる、俺と美波が肩を組んでる写真の美波の頭にツノを生やした。

 で、後で消すつもりで頭上に鬼ババァって書いてみると、唐突に横から首に手を回され、ガッと首を胸と腕に絞められた。

 

「おごっ⁉︎」

「ふーん? 遊歩くんの中で私ってそういう扱いなんだ?」

「あががががっ、す、すみません冗談です本当にごめんなさっ……!」

「でも私は優しいから。遊歩くんの大好きな私のおっぱいで教育してあげるね」

「ああああ! 首折れる、首折れるって……! ごめんなさ……!」

 

 とにかく謝るしかなかった。

 

 

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