新田さんなら、例え暴力系ヒロインでも俺は受け入れる。 作:バナハロ
プリクラの後、ゲーセンを出ようとしたところで、昔よくやってた銃のゲームが目に入り、思わず足を止めてしまった。
「どうしたの?」
「あ、いや。懐かしいもん目に入ったから」
乗り物に乗った定で動く車両の上からゾンビをブチ抜きまくるゲームだ。
昔は中学の時の友達とよくやったが、最近は友達が出来なかったからプレイするってこと自体なくなってた。
久々にやりたい気もするが……。
「やらないからね」
涙目の美波が眉間にしわを寄せて訴えた。まぁ嫌だよね、怖いの苦手らしいし。
でもね? それを俺にやるのは逆効果だと思うんだ。
「やりたい(直球)」
「嫌」
「そんな怖くないから。むしろ怖い奴をブッ殺せるから怖さ克服できるかもよ」
「嫌」
「俺が作ったお化け屋敷のが怖いって」
「嫌」
「俺が絶対守るから」
「っ……嫌」
少し揺らいだな。ほんと、美波って大学生なのにロマンチックというか……二次元ヒーローが言いそうな歯の浮くようなセリフが大好きだからな。
それに、押しにも弱いし攻めてしまおう。
「終わったらクレーンゲームで何か一つ取ってあげるから」
「っ……」
「あと、もし後を引くような怖さがあったら甘えさせてやるから」
「……〜〜〜ッ」
「プレイする時、美波が好きなシチュでやらせ……」
「もう分かったからそこまでにして!」
そんなわけで、200円入れて銃型コントローラを抜いた。足元のペダルを踏み続けながら、手元の引き金を引くことで敵を撃つことが出来て、ペダルから足を離すと、物陰に身を隠して銃弾を装填出来るらしい。
久々なのであまり良いスコアは出せないかもしれないが、まぁこういう時じゃないと美波の前でカッコつけることは出来ない、頑張るとしよう。
「……うん、頑張るから。だから美波、俺の左手から手を離して。メシメシいってる」
「本当に守ってよね⁉︎」
「分かったから手を離して。折れる」
「はっ、ご、ごめんね……!」
あー痛かった。マジで指がまとめ売りされてるネギみたいになるかと思った。
とにかくゲーム開始。ザックリしたストーリーの説明の後、いよいよ銃を撃つ場面になった。
ゾンビ達が襲いかかってきて、早速俺は銃口を向けた。無言で近いやつから順に頭をぶち抜いていく。
一応、気になったので隣を見てみた。
「キャー! キャー! ギャー⁉︎」
動物園の猿の如く悲鳴を上げていた。楽しそうで何よりだ。
「来ないでってば! 齧らないで! 死んじゃう! キャー!」
「ペダルから足離せば隠れられるよ」
「離す! 離すから離して!」
ペダルどころか銃も手放して俺の背中に隠れる美波。うん、なんかここまでとは思わなかったわ。
俺一人でやっちゃ意味ないが、せっかくの二人プレイなので俺が両ペダルと二丁銃を持つ事にした。
「う〜……は、早く終わらせてよぅ……」
背中に美波が隠れて銃握るのって気持ち良いな……少し格好つけるか。
銃を構えて両腕をクロスして画面に向けた後、ニヤリと微笑んで好戦的に言った。
「さぁ、お前の罪を数えろ」
「いいから早く終わらせて」
「……」
……冷たいなぁ、俺の彼女。
なんだか今更になって恥ずかしくなってきたので、マジでさっさと終わらせることにした。
ペダルを両方使うとバランスを崩すので、片方ずつ交互に動かすしかない。そのくらい上等よ。やってやりますわ。
ガンガンガンッとゲームの銃っぽい音をかき鳴らしてゾンビを一掃した。
そこでようやくステージ1が終わり、次のステージに進む。
……なんか、一人でやっちゃって美波は退屈してるかな。ムービーの間にチラッと美波の方を見ると、いつのまにかスマホを構えていた。
「……何してんの」
「……こんなにカッコ良い遊歩くん見れる機会なんてそうそうないと思うから、ムービーに残そうと思って」
「……お前そんな余裕あるなら手伝えよ」
「嫌」
……この女。まぁ、退屈してないなら良いか。
ステージ2が始まったので、さらに快進撃を続けた。ゾンビだけじゃなく虫や犬も出てきたが、気にせずに片付け、ステージ3までいった。
が、3の途中で片方が死に、4の序盤で全滅した。
「あーあ……終わっちゃったね」
「あー……いつもの倍疲れた……」
「でも、カッコよかったよ?」
「そいつはどうも……」
「滅多に見れないから、なんだか得した気分だな」
それひどいこと言ってることに気づいてる? 自分の彼氏を基本的にかっこよくないって言ってるんですからね?
……まぁ、でも良いさ。満足そうな美波が見れたし、美波を喜ばせることもできた。
とりあえず、もうゲーセンは出よう……と、思って出口に向かってると、くいっと美波に袖を引かれた。
「クレーンゲームで何か取ってくれるんでしょ?」
「……あー」
そういやそんな約束を……と思ってたら、掴んだ袖にすり寄ってきて、そのまま腕にしがみつかれた。
「っ、み、美波?」
「それから、甘えさせてくれるんでしょ?」
「や、それは後を引くような怖さだった時の話で……」
「怖くて今日眠れそうにないなー」
くっ、白々しい……! いや、でも言ったのは俺だ。従うとしよう。それに、俺も悪い気がするわけじゃないし。
「ふふ、遊歩くんに甘えられるなんて新鮮だなー。普段、私の方が甘えさせてあげてるから」
「……部屋の掃除させられたり、試験勉強という名の監禁させられてるだけだけどな」
「……何か言った?」
「何でもないです」
甘えて来る子はしがみついてる腕をキメたりしないと思うんだよね。
とりあえず、欲しいというのでグレイシアのぬいぐるみを取って美波にプレゼントしてからゲーセンを出た。
その後はまた街をのんびりと巡る。本当は遊園地なり連れて行ってやれれば良かったんだけどな。今度は打ち上げの時はもう少し計画を練ろう。
「……ねぇ、遊歩くん」
「なに?」
二人で歩いてると、唐突に声をかけてきた。
「あそこ行きたい」
美波の指差す先には服屋があった。まぁ女だからな、服とか大好きなんだろう。
「おk、行くか」
「うん」
「どんな服欲しいの?」
「私のじゃないよ」
「は?」
「遊歩くんのに決まってるでしょ? 遊歩くんを着せ替え人形してあげる」
「えっ……いや、そんな……」
「甘えさせてくれるんでしょ?」
「いやそれ甘えるって言うのか……?」
……や、まぁ良いけどよ美波の打ち上げだし、俺がどうこう言うのはおかしいからな。
そんなわけで、服屋に入った。50枚近く写真を撮られ、軽く引くことになったのは言うまでもない。
×××
服屋を出てからはさらに色々とお店を回り、気が付けば夕方になっていた。
なので、とりあえず夕食を食べることにした。たまには外で外食……かと思ったが、俺の手料理が食べたいと言われてしまったので、部屋に戻ってきた。
ぶっちゃけ、今日のデートは全部俺の奢りだったし、財布的には助かったといえば助かった。
……まぁ、現状はほとんど同棲状態だし、ほとんど共用の財布になっちゃってるわけだが。そう考えると、俺って美波のヒモみたいになってるんだよなぁ……。
「……いつもありがとうな、美波」
「な、何よいきなり?」
思わず口から漏れたお礼に、気味悪そうに引く美波だったが、俺も逆の立場から気味が悪いと思いそうだったので、ここは何も言わないでおいた。
「何でもない。それより、晩飯何が良い?」
「何でも良いよ」
「それ一番困るから。たまにはリクエストしろよ。特に今日は美波の打ち上げなんだし」
「じゃあ、私をあっと驚かせる料理」
「いやリクエストっつーかお題だろそれ……」
この人、日本語の意味を正しく理解出来ないの? まぁ、美波がそう言うならそれでも良いけどよ……。
「じゃあ待ってて。お湯沸かしてくるから」
「カップ麺にしたら見損なうからね」
「……」
……よく分かったよ、俺の考えが読まれてることは。
まぁ、本気でカップ麺にするつもりはなかったし、本気でやろうか。
まずは食材の確認。元々、美波は小まめに食材とか買いそろえて置くタイプだし、最近の買い出しは全部俺がやってるのでそこは問題ない。
冷蔵庫の中を確認し、大体作る品目が決まった。あっと驚かせるような内容らしいし、ガッツリ作るか。
一時間ほどかけて「海南鶏飯」を完成させた。鶏肉を主体とした料理で、美波が撮影で忙しい中、料理して覚えた技だ。いつか美波に振る舞える事があればと思っていたが、まさかこんなに早く来るとはな。
「出来たよ」
「やっと? もー、お腹空いちゃったよー」
「悪かったよ。それなりに美味いもん作ったから怒るな」
「ホント? …て、何それ?」
「ん、海南鶏飯」
「……え、何それ?」
「食戟のソーマで叡山先輩が神と対決して負けた料理」
「負けた料理にしたの⁉︎」
良いだろ、俺割と叡山先輩好きなんだよ。
「なんだよ、不服か?」
「いや、そういうわけじゃ……というか、驚きが少ないなぁって」
「おいおい、審査するなら味を見てからにしろよ」
「セリフだけは一流の料理人ね……」
そう言いながらも「味を見てから」ということ自体に不服はないようで、箸を握って手を合わせた。
「いただきます」
「おあがりよっ!」
「……負かした人のセリフを負かされた人の料理作って言うかな」
良いんだよ、作品は一緒なんだから。
そんなわけで、早速一口食べた。直後、美波は口を押さえて頬を赤くしながら咀嚼した。
「……んっ、お、おいひい……! ……ごくっ、何これ、超美味しい⁉︎」
「ジンジャーソースも用意したから、それつけて食べてみ」
「んっ……あ、本当だ。味が変わった……!」
絶賛してくれてる美波のお向かいで、俺も一口食べていた。うん、確かに美味い。前作った時よりも美味いわ。
「……うん、美味み」
「遊歩くん、料理上手になったよね本当に」
「誰かさんのおかげでな」
「私?」
「当たり前でしょ。というか、アレだけ人に料理作ってれば上手くなるよ」
まぁ、正直に言えば美波がちょくちょく教えてくれたからなんだけどな。
「……そうだ。今度、アーニャさんにも食べさせてあげよう」
「ダメです。アーニャちゃんには食べさせません」
「なんで? 美味いもん作ってあげるくらい良いだろ」
「ダーメ。絶対に」
「麻薬の広告か」
「ある意味間違ってない。とにかくダメだからね」
めっ、と可愛く言ってきたが、表情がマジなので全然可愛くない。美波がダメと言うならやめておこうかな。俺も美波の言うこと無視するほど命知らずじゃないし。
食事が終わり、俺と美波はコーヒーを飲みながらソファーに座った。もうあとはのんびりするだけだ。
テレビを見ながらぼんやりしてると、美波が俺の肩に頭を置いた。
「遊歩くん」
「何?」
「今日はありがとうね」
「ああ、いいんだよ」
「たくさん、私のわがまま聞いてもらっちゃったから」
「気にしなくて良いから。俺もやりたくてやったことだし」
甘える、と言ってすり寄ってきた美波も、あれはあれで可愛いもんだ。少し照れてるあたりが尚更。
「だから、私からお礼しても良いかな?」
「は? お、お礼?」
唐突にそんなこと言われた。なんだよ、お礼って。それやられたら打ち上げの意味がない気が……。
と、思ってる間に、美波は自分の横に置いてあった紙袋の中をごそごそといじった後、俺の首の後ろに手を回してきた。
チャリっと音がした辺り、おそらくネックレスなのだろう。それが俺の首に繋がれていた。
「ね、ネックレス……?」
「そう。遊歩くん、私服はそれなりに気を使ってるのに、アクセサリーは全然付けてなかったから、たまにはこんなのどうかなって」
「あー確かにアクセサリーはあんま……って、違うわ! なんでお礼なんて……! プレゼントとかは今日は俺からしないと……!」
「気にしなくて良いの。今日は、もうたくさんもらっちゃったから」
「え、あげたって……プリクラとぬいぐるみと海南鶏飯くらいしか……」
「ううん、たくさんもらったの。だから、素直に受け取ってくれると嬉しいな」
……くっ、そんな風にお願いするように言われたらこっちは何も言えないだろ……。絶対わかっててやってるからタチが悪いんだ、うちの彼女は。
「……はぁ、分かったよ。ありがとう」
「ふふ、どういたしまして。さ、そろそろ寝る準備しようか」
そう言って立ち上がる美波。俺も小さく頷き、ソファーから立ち上がった。
……はぁ、なんか美波が俺からたくさんもらってるって事は、俺も美波から色々もらってることになるんだけどな……。
ダメだ、もう考えても仕方ない。この手の事で美波には敵わないし、素直に喜ぶことにしよう。
そう頭で言い聞かせながら、美波が風呂に入ってる間、歯磨きをした。