ソード・メモリーズ──VRMMO復帰勢の戦闘録──   作:流星の瞳

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第十話

「で? 何がどうしてこうなったの?」

「何って、まぁボスをハメ殺し?」

 

 俺とアカネは並んで歩いていた。

 周囲は砂漠。

 木の一本も見られず、VR空間だと言うのに歩くだけで、身体が干からびそうだ。

 そう、ここは第八エリア。

 第七ボス「リヴァイアサン」を攻略した俺は、こうして二人で第八の街(アカネ曰く「ルーインタウン」という名前らしい)へ向けて歩いていたのだった。

 

「ハメ殺しって……」

「まぁ、ソード・メモリーズは武器ゲーだから」

「流石に武器ゲーって言葉だけだと無理あるよね!? ソロだよね!?」

「ソロだよ。ソロ。まぁ初回クリアはムリだったけどな」

「ソロ初回クリアとかできたら、もう驚くとかそういうレベルじゃないよ……」

 

 あのリヴァイアサンとかいうボス。HPゲージが残り一本になった時に発狂モードに入ったのだ。

 いや、今までもそういった傾向のボスはいたが、まさかデバフや状態異常を一旦無効化した上で、超高水圧レーザーこちらの浮き島を片っ端から崩してくるとは思わなかった。

 五回挑戦するハメになったが、一回目以外は、ほぼこの発狂モードの攻略のためと行っても過言じゃない。

 

「けど、まぁトメさんとか、イデア辺りでもボスソロとか行けただろ」

「symphonyの狂った人達は例外だって……」

 

 まぁ、あいつらは人間辞めてるからなぁ……。

 てか、アカネもsymphonyの元ギルメンだろうに、狂った人達とか言っていいのだろうか。

 ……。

 ……まぁ、本人達が聞いてるわけじゃないしいいか。

 

「けど、symphonyを除いてもクリアできるヤツいるだろ」

「まぁ、プレイ人口は結構いるし、他にもいるだろうけどね。──あっ!! あの看板!! もうそろそろだよ!」

 

 砂の丘の上に木の看板が立っていた。あの丘を越えると、いよいよ第九の街に到着らしい。

 アカネは看板へと駆けていく。

 

「!!」

 

 先に丘を越えたアカネは何かに気づいたらしく目を見開いて止まった。

 

「ん? どうした? ──!!」

 

 俺も砂の丘をのぼる。

 その先にあったのは死体だった。

 つまりプレイヤーのHPがゼロになり地面に転がっている状況。

 けど、まぁ死体、と言ってもグロいものでは無い。「ソード・メモリーズ」はR-18Gのゲームではなく、血などは出ないのでただプレイヤーが倒れているだけだ。

 ただその数が問題だった。

 数え切れないほどの死体がポツポツと看板から街を繋ぐように転がっているのだ。

 さすがに気味が悪い。

 

「PKギルドでも湧いたか、ギルド戦でもあったのか……?」

「『黒の亡霊騎士』……!!」

 

 アカネの呟きで、気づく。

 倒れ込むプレイヤーの中、一人立っている、(いな)、こちらへ向かってくる鎧を着た何かがいることに。

 助けを求める様子はない。

 何かヤバイ気配を感じ、アイテムポーチから氷属性の刀「雪月花」を取り出し構える。

 あれがプレイヤーか、はたまたNPCか、運営のイベントか知らない。

 けど、助けを求めず、剣を構えて走ってくる以上、この状況を作り出した存在、すなわち(エネミー)

 そう考えることにした。

 

「アカネ!!」

「うん!!」

 

 アカネも、自分の得物である槍を構えていた。

 火属性とひと目でわかる燃え盛るようなデザインの刃を持つ槍だ。

 アカネの赤いヴァルキリー装備とよく似合っている。

 

「一緒に戦うのは久しぶりだな。ところでアレはなにかわかるか? なんか呟いたけど」

「噂話でね、『黒の亡霊騎士』っていう、上にプレイヤー名が表示されない何かが時折現れては周囲のプレイヤーを滅多打ちにするって話があるのよ。たぶんそれだと思う。

 噂がホントなら、逃げた方がいい気もするけど……もう無理っぽいね」

 

 既に、亡霊騎士はかなり迫っていた。

 まぁ俺は逃げるつもりは毛頭も無かったが。

 

「そうか。とりあえず倒していいってだけ分かればそれでいい」

「相変わらずだね」

「まぁな」

 

 自然と口元が緩む。

 俺はこうして強者と戦う興奮を味わうために「ソード・メモリーズ」をやっているのだ。

 強いのなら、ボスであれプレイヤーであれ、はたまた亡霊であれなんでもいい。

 こういう状況は願ったり叶ったりだ。

 亡霊騎士との距離は既にわずかまで迫っていた。もうどんな姿かも良く見える。

 亡霊騎士は、騎士というだけあって漆黒の鎧を着ていた。顔までしっかりヘルムで覆われてるためどんな顔か確認できない。

 背中には、そんな漆黒の鎧に映える真っ赤なマント。

 そして、何より目立つのは片手で持つ大剣。鎧と同じく刀身まで真っ黒である。

 もしプレイヤーとするなら、恐らくSTR(筋力値)中心に振ったパワーファイターだろうか。

 全体としては、暗黒騎士、または魔王。

 そんな表現がしっくりときた。

 

「記憶解放レベルⅠ 『細雪』!!」

 

 戦闘は俺の武装記憶解放から始まった。

 刀に強い冷気を纏わせると、亡霊騎士と真っ向から斬り合う。

 大剣と刀が凌ぎを削る。

 が、すぐに俺の方が押され始めた。

 ちっ。

 やはりSTRの数値がかなり違う。

 勢いに負けないうちに、自分から下がる。

 すると、後ろからアカネが飛び出した。

 相変わらずナイスタイミングだ。

 

「記憶解放レベルⅠ『ファイヤースラスト』!!」

 

 炎を纏った槍と大剣が撃ち合う。

 そんな様子を横目に、俺は、一歩引くと雪月花を鞘にしまった。

 腰を少し落とし、抜刀術の構えをとる。

 

「アカネ!!」

「わかってる」

 

 さすがアカネだ。

 こちらがやりたいことをこれだけで読んでくれたらしい。

 相手は未知の敵。だから長期戦をさせて未知の技を使われる前に一気に決める!!

 

「ふー」

 

 大きく息を吐く。

 視界の右端には、武装記憶解放のカウントダウン。

 これの技はタイミングが大事だ。

 落ち着け、集中しろ。

 

 ──3……2……1……0!!

 

 そして、同時にアカネが騎士から離れた。

 

「解放レベルⅡ 『雪月風花(せつげつふうか)』!!」

 

 そして、氷属性刀最速最強の技を繰り出す。

 刀を抜く、踏み込む、斬り込む。

 モーションアシストに任せ、流れるように切りかかる。

 『雪月風花』は出すためのキャストタイムがかなり長いが、その分決まった時の威力は折り紙つきである。

 

 これで決め──

 

「なっ!?」

 

 神速の抜刀で抜き放たれた雪月花は、亡霊騎士の大剣によって止められていた。

 まさか『雪月風花』を見切って止めただと!?

 

 ──いや、まだモーションは続いている。

 終わっていない。

 なら、このまま『雪月風花』で押し切る!!

 

「うぉぉ!!」

 

 両手両足に更に力を入れる。

 『雪月風花』ならこのまま押し切れる。

 

 ──はずなのにっ!!

 

 ズリズリと砂に足を取られ、俺の足が下がる。

 最初は、足場の砂が原因かと思った。

 けど違う!!

 視界の左端でMPゲージがガリガリと削れていた。

 現在進行形で減り続ける。

 そして、亡霊騎士は青い回復エフェクト。

 

 MPが吸収されてる!!

 

 MPを大量に消費すると、軽い脱力感に襲われる。

 つまり現在刀を合わせているだけでMPが吸い取られ、こちらの力が抜けていた。

 

 ヤバッ!!

 

 そう思った時にはもう遅かった。

 

 キンッ!!

 

 そんな甲高い音を響かせながら、凌ぎ合いに負けた雪月花が遠くへ飛ぶ。

 

 しまった!!

 

「ツバサ!!」

 

 後ろへ跳んでアカネと入れ替わる。

 ──が、亡霊騎士はそんな暇を許されなかった。

 

「!!」

 

 目の前には、こちらが跳ぶのと同じタイミングで飛び込んで着た漆黒の鎧。

 眼前には迫るのは漆黒の大剣。

 

 ──そして、俺の意識は途絶えた。

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