ソード・メモリーズ──VRMMO復帰勢の戦闘録── 作:流星の瞳
「……ん」
どうやら気絶していたらしい。
と言っても数分程だろうが。
この気絶はほぼイベントとして強制的に発生する仕様と知っているので気にしない。何故か流されてこの「スキュラの海底遺跡」にたどり着くという設定らしいのだ。
ゆっくりと、立ち上がるとタツキも同じく立ち上がるところだった。
タツキは起き上がるなり、下水に飛び込んだ汚れや臭いを気にしているようだが、そんなものは一切ない。
流されできたはずなのに衣服や髪はカラッと乾いている。
ここら辺はゲームの良いところだと思う。
「なんとか間に合ったみたいだな」
「そのようですね。ここがそのダンジョンですか?」
「あぁ」
「随分と七面倒臭い道でしたね。僕一人なら絶対たどり着けませんでしたよ」
そう言いながら、タツキは辺りをキョロキョロとする。
辺りは、遺跡らしい石でできたブロックでできた道が先まで続いている。ただ、ただの石という訳ではなくところどころ仄かに青く光る石のブロックがある。さらには何かの紋様が書かれたブロックもあり、まさに遺跡と言った感じだ。
この光る石のおかげで先程と違い松明などの光源を自前で用意しなくてもいいのは助かる。
「まぁ、もし次来たいというなら俺が案内してやるさ。──さて、行こうかと言いたいところだが」
後ろを見るとあの二人のプレイヤーが倒れていた。
どうやら二人もちゃんと逃げきれたらしい。
「おーい、大丈夫か?」
軽く近づいて声をかけると二人とも意識が戻ってきたのかまぶたが動く。
「あ──!!」
そして、俺らに気づいたのか跳ね起きた。
「あなた達はさっきの──」
「そうだ。無事なようで何より」
「さ、先程は助けいただきありがとうございました」
「ありがとうございました」
二人とも頭を下げた。
なんだろう。普段頭を下げられるくらい感謝されることなんてないから少しむず痒いというか。
「別にそんな堅苦しくしなくていいぞ。助けたのもついでみたいなもんだから気にすんな」
「でも……」
「まぁ気にすんなって。俺はツバサ。で、こっちの男がタツキ。よろしく」
タツキの方を指さす。
タツキはと言うと、完全に壁に寄りかかってリラックスしてこちらを見ていた。
俺にこの二人の扱いを全部任せるつもりだったのだろうか……。
後で文句言ってやろうか。こんにゃろ。
「タツキです。よろしくお願いしますね」
指を指されると改まり笑顔で挨拶する。
「あ、えっと……私はシエルといいます。その……よろしくお願いします」
俺らに釣られるように名乗った。
その機会に観察する。
シエルは、白いローブを来た中学生くらいの少女のプレイヤーだ。
印象としては大人しそうと言ったところか。
顔は、美人というよりはあどけなさが残る可愛い感じ。
手には、木の枝をそのまま杖にしましたと言わんばかりの葉っぱなどが先に付いた杖を持っている。見た目からして植物系の地属性か回復系の技が使えそうだ。
恐らく、ジョブがないこのゲームにおける魔法職もしくは回復職に近い担当をしているのだろう。
そして、何より目立つ特徴のは、猫らしきケモ耳だろうか。
別にこのゲームは、種族は人間しかないため獣人という訳ではなく、そういった装備だ。確か俺のピアスと同様聴覚アップとかそういった効果があった気がする。
まぁ、効果以上に現実ではできない可愛い格好と一部で人気があったはずだ。
「俺はテル!! よろしくっ!!」
シエルに続いて元気よく挨拶したのはシエルと歳の変わらなさそうな少年だった。
笑顔が明るく、なんというか、学校のクラスとかでクラスの中心的なグループとかに入ってそうな感じがする。リアルだと人付き合いの少ない俺と関わらないタイプの人種というか。
格好は、俺のレザーアーマーより防御力のありそうな何らかモンスターの鱗を利用したスケイルアーマー。さらに背中には大きな剣を背負っている。
装備がフルプレートじゃないが恐らくタンク系だろう。
ちなみにだが、こっちにはネコミミはついてなかった。……いや、男に付いていても可愛くないが。
「えっと、二人の関係って……」
「あ……えっと、私達は姉弟です」
なるほど。
道理で顔がところどころ似てると思った。
一人っ子だったので、少し兄弟や姉妹と言うものが羨ましい。
「で、ツバサさんだっけ? 助けてくれたのは助かるんだけど、どうやって戻るんだ?」
あっ……。
テルの質問で気づく。
そういや、戻ること考えてなかったな。
先程は逃げることに精一杯でそこまで頭が回らかった。
このダンジョンは、流されてたどり着く設定故か来た道を戻ろうとしても戻れないのだ(というか、途中で道がなくなるはず)。しかもダンジョンの仕様上死んだらスタート地点であるこの場所に戻されるオマケ付き。
一応、俺とタツキの分は来る前に帰還アイテムを用意したが、当然ながらこの姉弟の分はない。
となると帰還は、ボス撃破して帰るくらいなんだが──
「えっ……マジで?」
テルの声で我に返る。というかどうやら一部口に出てたらしい。
テルの驚きと絶望が微妙に混じった顔で固まってるしシエルに至っては微妙に泣きそうな顔してるんだが……。
しまった。
どうしようか。
……おい、タツキ。そんな顔でこっち見るな。
何がなんとかしてくださいだ、おい。
「んなこと言ったって、あそこから逃げるには仕方なかっ──。あぁ、分かった、分かった。さっさとここのボス撃破するぞ。どうせ俺の用も最終層だ」
さらに泣きそうになる顔を見て、半場やけ気味に二人のパーティ申請を送る。
ボス撃破は今回予定してなかったんだけどなぁ。
まぁ、急ごしらえのパーティだが、ここのボスくらいはなんとかなるはずだ。
たぶん。
・片手剣
片手で持てる剣。威力はあまり高くないが、片手で扱える性能上汎用性が高い。両手に持ち双剣として扱うか、盾を持ち防御もこなせるようにするのが基本。希にもう片手に飛び道具を持つ変わり者もいる。
「ソード・メモリーズ」を開始した時プレイヤーの初期装備がこれなのでそのまま片手剣に愛着を持つものも多い。
余談だが、現時点で片手剣を使うプレイヤーは登場していない。