ソード・メモリーズ──VRMMO復帰勢の戦闘録── 作:流星の瞳
「懐かしいな」
「ツバサはさっきからそればっかりだね」
人混みを抜けた俺たちは、第三の街「ネロシュタット」へ来ていた。
街から街はへの移動は、どの街も中央にポータルが設置されているので一度行った街なら行くことは容易い。
ちなみに第二の街「ライブリフィア」は、中世ヨーロッパ風でまさにファンタジーって感じの街だが、第三の街「ネロシュタット」はイタリアのヴェネツィアを彷彿させる水の街だ。
その綺麗さから始めて街を訪れた人を中心に人気が高いが、実際にこの街に住むとなるとかなり移動が不便らしい。
余談だが、第一の街「始まりの街」はヨーロッパのどこかにありそうなのどかな田舎みたいな感じの街である。
街と言えば……
「そう言えば、新しい街とかエリアって来てるんだっけ?」
「そうだよ。ツバサがいない間にも二つの街といくつかのエリアが追加されたよ」
「やっぱりか」
「今から行く? ……あっボス」
アカネはハッとした顔をした。
「そうだな。まぁボス攻略はあとでゆっくりとやるさ」
新しい街のある次のエリアへ行くにはその一つ前のエリアのボスを倒す必要がある。
街ごとに第一の街、第二の街と付いているのはそういう訳である。最初はこの順にしか街へ訪れれないのだ。
道中はなんてことないと思うが、ボスは今日行ってあっさりクリア出来るほど優しくはないだろう。
まぁ、ボス攻略がこのゲームの醍醐味の一つだし楽しんでやるのがいいか。
「にしても……」
フレンド欄を眺める。
上から下へとスクロールするが、見事にみんな非ログイン状態になっていた。
「やっぱり俺と同じように引退した人多いのかなぁ……」
「イデアさんやBOSSも引退しちゃったもんね。結果的に
「あぁ、symphony解散は知ってる。なんか家を失った気分。……いや、実際ギルドホール消えたからマイルーム消えたのは事実なんだけど」
symphonyは俺がいたギルドだ。
人数は中規模だが、とにかくやり込んで楽しむがモットーでイベントでは毎回大手ギルドに並んでよくランクインしていた。
本来ならありえないくらいの人数ぎりぎりでレイドボス撃破とかも一回や二回じゃなかったはずだ。
よく、周囲から狂人や変人の集まりみたいな目で見られてた気がする。まぁ、俺も狂戦士とか呼ばれてたし、狂戦士と並べたらむしろこちらが見劣りするような変人達が何人かいたので、そこは否定出来ない。
「まぁ、まだ時間が時間だし夜になればもう少しログインする人いるかもよ?」
アカネにそう言われ、時間を確認すればまだ、昼の一時だった。
まぁ、社会人なら今頃昼休みが終わって働き出す時間か。
「それもそうか」
とりあえずそう納得する。
さすがにアカネ以外のフレンドととも出会いたいところだ。
「あ、それでね、ギルドって言ったら私symphonyが解散されたあと新しいギルドに入ったの!!」
「へぇ、どんなギルド?」
「ヘルヘイムって言うんだけどね。人数は少ないけど、居心地のいいギルドだよ」
ヘルヘイムか。北欧神話の地獄だっけ? いや死者の国だったかな? ともかくあまり居心地は良さそうには聞こえない。
まぁ、名前が全てという訳でもないし、実際、少人数ギルドでメンバーが仲良くやれているのなら居心地はいいだろう。
「でね、ツバサが嫌じゃなかったらで良いんだけど、ツバサもヘルヘイムに入ってくれないかなーって。ほら、だって今のツバサは
悲しいかな事実だ。
基本的にログアウトしたら、アバターはデスペナルティと同じく五分間ほどプレイヤーが操作できない状態で放置される。
その間は周囲のプレイヤーから物は取られ放題になるし、モンスターが出てきても対応できないしで、良い事は一つもない。
故にログアウトするならちゃんと安心できる場所で行う必要がある。
それが部屋になる。部屋は入って内側から鍵をかければシステム上、内側から解錠するまで何者にも入ることができない。
だから、ログアウトするなら部屋で、ということになるのだが、そんな部屋の入手方は三つある。
一つ目は、街にあるNPC経営の宿屋で部屋を取ることだ。ソロプレイヤーが良くやるやつで確実に部屋が取れる。ただし部屋はそれなりに高いため、毎日かなりのお金を稼がないといけない。
二つ目は、プレイヤーハウスを購入する事だ。街中にある家一軒をまるまる購入することで、自身の拠点とする。こちらは一度買えば永続だが、とにかく高い。この高さ故に、店を持ちたい生産職プレイヤー以外で購入するプレイヤーは少数派だろう。
そして、最後の三つ目こそ、今まで俺が選んできたギルドホールに泊まるという選択肢だ。ギルドは必ずどこかにギルドホールと呼ばれる拠点を持つが、このギルドホールには一つ一つ小部屋付きの場合が多く、人数が少ないギルドだと一人一人にマイルームとしてあてがわれる場合も多い。ギルドホールも維持費がかかるため無料とはいかないが、宿より安くそこまで痛い出費にならない。
ギルドに加入するメリットの一つだ。
「ありがと。確かに入りたいギルドとかがある訳でもないし、その申し出はありがたいんだけど、他のメンバーとかは大丈夫?」
アカネの事だから大丈夫だと思うが、こう言ったことは一応確認しておきたい。
せっかくのゲームなのだ。問題はなるべく起こしたくない。
……いや、昔、歩けば
しかし、やはり杞憂だったらしくアカネは笑顔でVサインをした。
「それなら、大丈夫。さっきチャットの方でリーダーに確認とったから」
「なら安心」
「じゃあ今から登録に行こうよ!! 別に時間もあるでしょ?」
「あぁ」
そう聞くとアカネの顔がパァっと明るくなった。
「じゃあ行こう!! まずはポータルで第七の街へ行かないと」
「はいはい」
俺はそんなアカネの笑顔に釣られ歩き出したのだった。