ソード・メモリーズ──VRMMO復帰勢の戦闘録──   作:流星の瞳

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第八話

 ヘルヘイムへのギルド加入権を賭けた戦いは、対戦相手のプレイヤー都合により、今日の五時に「リーデッタ」のポータル前広間でということになった。

 そして現在、四時五十五分。

 五分前ということで結構噂を聞きつけた観客も集まってきた。当然ながらアカネと罪歌の姿も見える。

 五メートル先には既に対戦相手の男性プレイヤー、タツキがいた。

 観客など目に入っていないと言わんばかりに佇んでいる。

 タツキはまだ武器を出していないため、一体どのように戦うのか想像もつかない。

 ただし、全身衣服という軽装なので、タンクキャラという訳では無いだろう。

 相手のレベルも不明。

 まぁ、現在の最高レベルは七十だ。俺は六十なので例えタツキが最高レベルだとしてもこのゲームの仕様上戦えないことはないだろう。

 ……。

 いつぞやのなぽりたんくらい馬鹿丸出しならやりやすいんだけどなぁ……。

 さすがにエリートギルドに入ろうと考える時点で結構な実力者か。

 まぁこれはこれで燃えるけど。

 さて、こちらは何の武器を使おうか……。

 と言ってもSTR(筋力値)は最小限しか振ってない俺は大剣や槍は持てないし、集めてもないので片手剣や刀やナイフになるのだが。

 けど、刀やナイフだけでも十本以上あるんだよなぁ……。

 相手の出方さえ知っていればこれだっ! ていう武器を選べるのだが。

 

「……」

 

 悩んだ末に、『ヴァジュラソード』を選択した。

 金剛杵の先から某宇宙戦争の武器のように光が刃となった見た目の武器だ。

 これの「武装記憶解放レベルⅡ 『インドラの(いかづち)』」は強いんだよなぁ……。

 前面広範囲に高威力雷を落とすこの技は回避が難しく、ほぼ確実に戦闘開始から高ダメージが見込める。

 MP消費もデカイのが欠点だがそれ相応どころかそれ以上の価値がある。

 敵の出方が分からないなら、先手必勝が基本だろう。

 

「ツバサさん? でしたっけ? すいませんね。このバトルは僕が勝たせてもらいますよ」

 

 そう自信満々にいうタツキ。

 なんだろう。こういうタイプって異様にぶちのめしたくなる。

 

「生憎、そう言われると勝ちたくなるのが俺の性分でね。あとアカネのためにも勝たないといけないしな」

「アカネさんとどういう関係なんですか? 仲が良さそうですが」

「先輩後輩ってところ……かな? しっかしアカネも俺がいない間に、さらに有名になったみたいで」

 

 時刻五時。

 ここで二人の間に、カウントダウンの文字が出現した。

 さぁ、お喋りもここまでだ。

 ヴァジュラソードを構える。

 対するタツキが手に持ったのは拳銃だった。

 

 ……拳銃?

 

 もしかしたらいつの間にか銃が実装されていたのかもしれない。

 ……絶対ファンタジー世界で銃って合わないと俺は思うんだけどなぁ。

 

 ──3……2……1……0!!

 

 カウントがゼロになる。

 

「解放レベルⅡ 『インドラの雷』!!」

 

 先に動いたのは俺だ。

 伊達に軽装して、AGI中心のステ振りをしている訳では無い。

 その瞬間タツキを巻き込む形で、周囲に高威力の雷撃がたくさ……ん……?

 

 ──あれ? なんか少なくね?

 

 明らかに数えられる本数程度しか落ちてないんですけど。

 タツキも余裕でかわしてるし。

 

「知ってますか? 『インドラの雷』って半年以上前に下方修正されたんですよ」

 

 マジで?

 

 ……うん、まぁ、一年前から強すぎって不満の声多かったもんなぁ。

 下方修正も納得の強さだったし。

 けど、できるなら俺がまだゲーム引退する前に下方修正して欲しかった……、

 ──って!!

 

「クソッ!!」

 

 飛んでくる銃弾をかわす。

 まだバトル中だ。考え事は終わってからでいいだろう。

 

「チッ」

 

 弓矢より、弾が小さくてかわしにくい。

 けど、かわせないわけじゃ──

 

「解放レベルⅠ 『ホーミングバレット』」

 

 かわしたはずの銃弾が軌道を曲げてこちらへ向かう。

 しまった!!

 数発が背中に当たる。

 ダメージはたいしたことない。

 けど、恐らくタツキの狙いは撃たれた事での回避モーションキャンセル──!!

 

「解放レベルⅡ 『エクスプロードバレット』!!」

 

 動けない。かわせない。

 

「ぐっ!!」

 

 着弾点の肩から、大爆発が巻き起こる。

 大技をモロに喰らってしまった。

 爆発を利用してあえて距離を取る。

 HPゲージを確認すると、残りあと僅か。赤くなっていた。

 次ダメージを喰らえばアウトだ。

 

「解放レベルⅠ 『ホーミングバレット』」

 

 銃声が聞こえる。

 観客はもう勝敗は決したと言わんばかりの顔でこの戦いを見ている。

 

 けど!! まだ終わらせる気はねぇ!!

 

「『風刃 鎌鼬(ふうじん かまいたち)』解放レベルⅡ 『神風』!!」

 

 素早くアイテムポーチに左手を突っ込み、鎌鼬を取り出すと、そのまま空を切る。

 瞬間に暴風が巻き起こり、こちらへ飛んできた弾丸をあらぬ方向へ飛ばした。

 

「なっ!?」

 

 驚くタツキを横目にヴァジュラソードをしまい込み、鎌鼬を右手でだらりと構える。

 鎌鼬は、製作者曰く、「遠距離から近距離武器をぶちのめすチキンを逆に一泡吹かせる」というコンセプトで作ったらしい。

 そのため、解放レベルⅠの技は刀とは思えないほど射程の長い技が多く、解放レベルⅡの技『神風』は発動中に斬るモーションをするだけで風を巻き起こし遠距離攻撃の軌道を曲げるという強力な効果を持つ。

 その当時は、銃なんて存在しなかったため、銃弾にも効くか不安だったが、どうやら弓矢などと同じ判定のようで助かった。

 

 ……けど、まだこちらが劣勢と言ったところか。

 

 タツキが再び撃ってくる銃弾を『神風』で再び逸らす。

 タツキの顔には、もう驚きも焦りも浮かんでいなかった。

 ……やはり手慣れている。

 心の中で舌打ちをした。

 

 ジリ貧。

 

 そんな言葉が脳裏に浮かぶ。

 『神風』は常時発動型の技で、発動中ずっとMPを消費するのだ。

 普段ならそれくらいの消費は問題じゃないが、『インドラの雷』で序盤からMPを使いすぎた。

 このままだとMP切れで負ける。

 こちらから攻めないと勝機はない。

 

「くらえ!」

 

 左手で、アイテムポーチからナイフを三本取り出すとタツキに向かって投げつける。

 当たれば超ラッキー、当たらなくても気を逸らせたならそれでいい。

 投げると同時にタツキに向かって駆ける。

 生憎タツキは、冷静だった。

 三本の飛んでくるナイフを銃で撃ち落とすという離れ業を披露したあと、こちらへ向かって威嚇射撃をする。

 俺は威嚇射撃を『神風』で吹き飛ばす。

 俺からしてもタツキからしても予想通りの動きだろう。

 熟練したプレイヤーのバトルは、まるで演舞の様なものだ。

 と、誰かが言ってた気がする。実際タツキと俺も互いの戦闘スタイルがわかってしまった以上、互いが互いの手をほとんど読めてしまっている。

 よほど変人なステ振りやネタ武器でも使わない限り取れる手など限られるからだ。

 こちらが『神風』を使う間に、タツキはきっと距離を取るだろう。

 そして、また膠着(こうちゃく)状態になる。

 結果、ジリ貧。こちらの負け。そうなる未来がどちらも見えている。

 

 ──まぁ、当然この演舞を演じ続ける気は無いが!!

 

「解放レベルⅡ『ポルターガイスト』!!」

 

 武装記憶解放を、()()()()()()()()()()に使う。

 

「はっ?」

 

 タツキは驚いただろう。

 突如一本のナイフが刺さったのだから。

 誰も触ってない武器が動くとは思うまい。

 ダメージは大したことは無い。

 けど狙いはダメージじゃない。あちらの『ホーミングバレット』と同じく少しでも相手が動きを止めてくれればそれでいい!!

 

「解放レベルⅠ 『野分』!!」

 

 残りわずかなMPを全て使って、鎌鼬の記憶解放を使う。

 

 くらえ!

 

 風を纏った鎌鼬でタツキを斬る。

 斬った瞬間爆風が巻き起こった。

 そして、爆風が止んだ時には、倒れたタツキに俺は鎌鼬の先を向けて立っていた。

 

「これで勝ちだ」

「……そのようですね。まさか、妖刀騒霊(ネタ武器)を使うとは思いませんでした。てっきり適当にアイテムポーチから投げナイフを取り出したとばかり……」

 

 妖刀騒霊(ようとう そうれい)──何年か前のハロウィンイベントで手に入った解放レベルⅡで手で持たなくても思考で飛ばせるという特殊なナイフだ。

 ただし、今回はうまく使えたがタツキの言った通りネタ武器だ。というのもそもそもMPをかなり消費する割には威力がお粗末すぎるのだ。

 しかし、だからこそ、タツキの意表を突つけると踏んだ。

 閃いたのは、タツキの戦い方を見てから。

 突発的な思いつきだし、HPもMPもギリギリだが、これ以上戦いを引き伸ばさずに懸けるしかないと思った。

 結果的には上手くいったので良かっただろう。

 

「リタイアしますよ。ギルドはまたの機会としましょう」

 

 タツキがリタイアする。

 俺の上には本日二度目となる「Winner ツバサ」の文字。

 こうして、俺の「ソード・メモリーズ」復帰初日が終わった。

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