魔法少女まどかマフィア(まどマギ×リボーン) 作:junior
<sideほむらー回想>
「時間遡行」それが私の祈りから生まれた、この絶望的状況に唯一見いだせる希望の光、魔法少女としての基礎能力が最弱な私はこれ無しではあの異形の魔女やその使い魔には勝てないだろう。
それ故に私はこの固有魔法に絶対の自信を持っていた、もちろんその自信も過去の実績に裏付けられた物であり、ちゃんと自分の得手不得手を熟知していた。それを肝に銘じて状況を理解して使えば「時間停止」能力はあの最悪の魔女以外には無敵と言っても過言ではなかった。
だからこのアクシデントには全く対処出来なかった。
私はまどかをまた守れずにもう何度繰り返したか分からない一ヶ月を最初っからやり直そうとし、ドラえもんに出てくる四次元空間のような異空間を遡っていた。遡ると言ったがあくまでこれは私が勝手にそう比喩解釈して思い込んでいるだけで時間の針が逆回転している訳ではない。流れに沿っているのか、逆走しているのかは私の主観でどっちにも転ぶだろう。
これは結果論なのだが私はもっと注意するべきだった。いくら何度も経験しているからといってもタイムリープという常識的には非常識な行為をしているという自覚を持つべきだった。
「時間遡行」の魔法を誇る私が言うのはなんとも皮肉な事だけれども。嗚呼、出来ることならあの時の自分に忠告してあげたい。
「時間の『遡行』をしている以上『流れに逆らっている』と解釈すべき」と、
そして「『流れに逆らっている』ならばその流れの上流から『何かが流れてくる』かもしれないと、警戒するのが普通なのだ」と。
けれども、この後悔も悔やむだけ無駄だろう。
それに漫画では主人公とヒロインが道端でぶつかってゴッツンコなんて王道中の王道でしょ。あれ?今はそんな展開ないのかしら?でもいつの時代も鉄板って大事し、伝統を守るのは大切な事でしょ?
つまり、何が言いたいかというと。いきなり目の前から男子生徒が飛んでくるなんていくらなんでも、魔法少女を何年も続けてたって一瞬戸惑って当然でしょ?
<sideほむら>
「ううう〜ん」
頭に走る鈍痛により私は目を覚ます。一体どのくらい寝てたのか、ここは何処なのか、この頭の痛み方からするとタンコブが出来ているかもしれない、そもそもなんで気を失っていたのか。
気分はそれほど悪くない、むしろ少し良い方だ。普段は感じないがこんな体でも疲れが溜まっていたのかもしれない、これからはもう少し睡眠時間を取ったほうがいいかもしれない。
そんな事を考えながら辺りを見回したほむらはすぐにそんな甘い考えを改める事となった。
「なっ、まさかここって!」
そこはピンク、オレンジ紫などの蛍光色が目を刺激し、禍々しく不気味な雰囲気をかもちだす場所。ほむらはこの風景は初めて見るが、瞬時にここがどういう場所か理解した。
「この気持ち悪い感じ、間違いなく魔女の結界。でも今までの経験上こんな結界の魔女が現れた事なんてなかったわとなると考えられる可能性は使い魔が成長して魔女になったのか。でもそもそもなんでこんな所に倒れて・・・・・前の時間軸ではちゃんと時間遡行の魔法は発動したはずなのに。ううう、思い出せない」
寝起きの頭では上手く考えがまとまらない、しかしほむらは長年の経験を生かし、瞬時に思考を過去から現在に切り替える。
「色々考えるのはここを出てからね、とりあえずは使い魔が出てくる前に戦闘準備を整えて………あれ?」
あくまでも冷静に異常事態に対処しようと試みたが、その結果虚しくさらに懸案事項を増やしてしまった。
いつも通り魔力を込めて魔法少女の姿に変身しようとしたが何も変化は起きない。慌てて左中指の指輪を確認する。
「ウソ?!そんなまさか!!変身していない時は指輪としてちゃんと指にはめてたのに…。なくなるなんて、こんな事今までなかったのに」
彼女は単に高価な指輪をなくして焦っているわけではない、それは魔法少女の「命」その物なのである。
「いえ、。こんな時ほど、焦った時ほど落ち着くのよ暁美ほむら。」
異形の結界の中ほむらは大きく深呼吸をして動揺を収めた。その姿ははたから見たならば滑稽なものだっただろう、
「(パニックになってはダメ、現状を見極めなさいほむら。)」
「スーーーーハーーー。まず、今動けるからにはソウルジェムは健在なのでしょう、でもあれの効果範囲は100メートル。となるとジェムは現在私から半径100メートル以内にあるという事。初めに倒れていた場所にジェムを落としていたと仮定すると…」
ほむらは今までの行動を逆算し、今は結界内で見えないが、さっき倒れていたであろうポイントを予測した。そしてそこから半径60メートルを目測し、その円の範囲内を一応安全活動範囲と決めた。
「なんとなく安全なんて決めちゃったけど、正直もうあと一歩進んだらソウルジェムの活動範囲外になって倒れるんじゃないかと恐怖してしもうけれども、まあそれもこのまま丸腰で使い魔に食われる可能性と同じくらいかしら」
いくら魔法少女で基礎体力が高く、県のトップ記録を悠々と出してしまう程だといっても変身しないままではその程度、せめて全力で走って逃げきれるかどうか程度だが、今のこの制限の知れぬ卒倒必至のデスマッチ状態ではそれも叶わない。
もし範囲外に出たら最後、無残に使い魔に体を食われて死ぬ。魔法少女としてこれほど屈辱的な事はない
ほむらはパニックに陥った頭を敢えてより厳しい状況に置き、最悪の事態を想定する事で冷まし、感情を深い心の奥へ沈めて人間性を殺した。長い魔法少女歴で身につけた処世術の一つである。
しかし、その為かいつか友人から「全てを諦めた目をしている」と指摘され動揺してしまった経験があった。だが今のほむらはそんな事を思い出す余裕はない
魔女は結界の最奥に隠れているし、まだ使い魔が現れる様子はない、今は戦闘よりも敵から隠れて探索が優先である。そう判断し周囲を警戒しつつ、デッドラインを超えないように足元を探していくほむらだった。
ここでほむらはあろうことか主たる関心を敵からの危険から探し物へと変えてしまった。ここはまだ魔女は出てこないという、自分勝手な予測を元に。油断しないようにソウルジェムを探しているつもりではあったが、そこに「油断してはいないから大丈夫」という無意識の油断が生まれていた。
何故ここを結界の表層と決めつけ魔女はまだ現れないと考えたのか、何故前後左右下を警戒してまだ敵は現れてないと判断してしまったのか。
とどのつまり、ほむらは「慢心」していたのだ。
長い魔法少女歴の中で幾つもの修羅場を駆け抜けてきた強者であるには違いないが、それも同じ場所、同じ敵に限られた経験なのだ。知らない事が多くて当然である。
だからここがグリーフシードから羽化したばかりの魔女の結界の最深部で、魔女が頭上から虎視眈々とほむらの様子を観察し、初めての狩りを成功させるべくそのチャンスを伺っているなどとは考えもしなかった。
「…ん?、あっ!あった!!」
物陰にリング状の光る物を見つけて駆け寄ったその時
右肩に透明な異臭を放つ粘り気にある液体が垂れてきた。触れてみると手にベットリと糸を引いた。
「……!?、マズイ!!」
ここでようやくこの液体が魔女、もしくは使い魔によるものだと理解した。幸これはヨダレであったが、もしこの液が強酸性の溶解液だったらほむらはもうアウトだったであろう。
ほむらが頭上に目をやるとそこには大きい犬のような姿の獣が鋭い爪を立て、今にもこちらに飛びかかってこんとばかりに睨んでいた。
まず、ほむらは足に力を込め全速力でダッシュした。敵のリーチ内にいる以上ひとまずは回避行動を取らねばならない。それにソウルジェムも今しがた回収したのでもう不本意なデスマッチルールを自分に課す必要も無くなった。
そうなれば変身して時間停止を使い魔女を蜂の巣にするのも、爆炎で灰に消すのも慣れたものである。
であるが、出来なかった。
「そんな、どうして魔法が発動しないの?こんな事今までなか……」
今日3度目の文句を口にし、右手に掴んだリングを確認した瞬間思考が止まってしまった。
「これって、違うリングじゃない...」
焦っていたため気づかなかったが拾ったリングは自分のそれとは別物、他人のリングだったのだ。
「形もこんなに大きくないし、ゴテゴテとした装飾もないし、真ん中の石もこんなデカくない。何よ!!この変なリング!!!」
自分の不甲斐なさを指輪に八つ当たりするほむらだったが、その元気もすぐに無くなってしまった。
急に体が重くなり、視界がかすみ、息苦しくなったり、ダッシュもジョギング程度の速さに落ちた。
振り向くと魔女と思われる獣はこちらに近づいてくる。
「なんなの?急に体が・・・・でもあの魔女は多分近距離タイプ、とにかく距離をとらなきゃ」
ほむらは必死に走るが、魔女側も相手の急な弱体化に気付いたのか、それまでの慎重なスタンスを変えこちらに牙を向け走ってきた。その様子は狩りを楽しむ
ほむらも魔女の襲撃に気付き、破裂しそうな胸を抑えて死にもの狂いで走った。
そんな中でもほむらは先ほどの半径60メートル円内を意識してにげていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ(私は・・・まどかとの約束を果たさなきゃならない)」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ(こんな所でヤられる訳にはいかない)」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ(絶対・・・・・諦めない!!)
挫けそうな心を自ら鼓舞して今一度強い「覚悟」をした。
だがどんなに強い思いがあろうと叶わないのは世の常である。
強く右足を踏ん張った瞬間、「ブチッ」と切れる音が聞こえた途端、ふくらはぎの激痛と共に姿勢を崩し顔面から転けてしまった。
「くっ、まさか肉離れ?ホントにどうしちゃったの私の体!」
額から血を流しながら振り向くと獣型の魔女が爪を立てた前足で殴りかかってくる、ほむらは咄嗟に両手で防御したが、5メートル程突き飛ばされた。
頭部への直撃は回避したが衝撃で左手が脱臼してしまい、力なくダランと垂れている。
体中に激しい痛みが走り目の前が霞む。
「(死ぬ・・・のは恐くない。だけど・・・悔しい)」
「(こんなに・・・弱い事が悔しいなんて)」
ほむらは自身の無力さに唇を噛み締め涙する。
目の前には獲物に最後のとどめを刺すべく勢いよく迫る魔女の牙が迫る。
「(助けて・・・・・まどか)」
走馬灯のように最愛の友達の顔を思い浮かべた、その刹那目前まで迫った魔女が突如として消えた。
いや消えてはいない、正確には横に勢いよく吹っ飛んでいったのだ。
「ぁ、……ぁ………」
何故?瞬く間に変わる状況について行けずに目を点にしているほむらの目に飛び込んできたのは同い年くらいの少年だった。
その少年が魔女の顔面をめり込む程殴っていた。
ここら辺では見ないクリーム色のブレザー制服を着たパッと見どこにでもいるルックスだったが、少年の頭と両手は何故か燃えていた。なのに当の本人は涼しい顔をしてこちらに話しかけてきた。
「危ないところだったな、怪我はないか?」