「はい、こちらが三日分のお薬となっております。お代金は?」
「スキマ払いで。」
「......?...?...」
永遠亭の薬師、八意永琳が呆れたような目で見てくる。
「ちょっと、うどんげを弄るのは私だけで充分よ。」
「お師匠様ぁ!?」
いつ見ても、この二人は仲が良さそうだ。
「ん、それとコレ、頼まれていた奴ね。」
やけに色々入った袋を受け取る。まぁ、頼んだのは私なのだけど。
「失礼ですが、中には何が?」
おどおどした様子で優曇華が聞いてくる。何かを察したらしい。
「あー、睡眠導入剤、鎮静剤、惚れ薬、怪しい薬エトセトラってところかしら。...こんなもん何に使うのよ?」
「ちょっとばかし藍に、ね。」
「あの
「ふふっ、貴女が言えた事ではないと思うのだけど。それじゃ、失礼するわね。」
我ながら珍しく歩いて、永遠亭を後にする。
「全く、後五十年は来て欲しくないものね。」
「嗚呼...また犠牲者が増えていく...」
「おまたせ、橙。じゃあ、何か食べてから帰りましょう。」
橙の耳がピクリと揺れる。
「外食ですか⁈だったら私、『かるぼなあら』っていうのが食べたいです!!!」
突然のがっつく橙とイタリア料理に面食らう。
「えぇと...どこで聞いたの?そんな料理...」
「外の世界の雑誌に載ってました!ほら!美味しそうです!」
...成る程。考えてみればそうだ。確かに以前会った時より背こそ伸びてはいるけれど、あの子はまだ子供なんだ。
橙を一番突き動かしているのは何よりも好奇心ってことね。
「分かったわ。じゃあ人里でどこかしゃれた店を探しましょう。それで駄目だったら、お蕎麦とかうどんで我慢して...............っ!」
急な違和感が私の足を止める。
「紫様、これって...」
「ええ、人間の匂いね。それも大勢の。追うわよ、橙!」
「はいっ!」
普段からこの幻想郷には、様々な「忘れられたモノ」が流れ着く。
それは、人間も例外ではない。
じゃあ、その「人間」がこのような人の寄り付かない竹林に、沢山やってくるだろうか?それもわざわざひとまとまりになって?
...ありえない。これは異変だ。
たどり着いた匂いの元は、人間が積み重なってできた山そのものだった。
「全員、死んでいるわね。」
「......っぅ...っ!」
橙が辛そうに目を逸らす。
「...私は周辺を調べてみるわ。橙、貴女は
「...行けます。」
「分かったわ。もし危なくなったら、私のスキマに隠れなさい。」
「はい!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ローブの男は、強い力で俺の首を締めてきた。
いや、首を握ってきた。殺すのではなく、痛めつけるのを目的としているように。
「アンタってさ、結構長く持つんだな。」
ローブの男は話しかける。
「ぐっ...クソがっ...テメっ...」
「けど、もう大丈夫だわ。もう十分だ。」
握る力が強くなる。
「グッっ"、がぅ"ぁ"あ"っ"!!!」
悲鳴を上げる。思考がぼやける。息が出来ない。足を暴れさせる。何もわからない。苦しい。痛い。やばい。苦しい。
...死ぬ。
「魍魎『二重黒死蝶』!」
突然、吹っ飛ばされる。何が起きているか分からず、転がり倒れる。
「妖怪………者か。仕……ない……かせ…こ…………か」
耳鳴りと嗚咽の中、辛うじてローブの奴が居なくなった事だけがわかる。
息を整える。色々とクリアになってきた。上半身だけ起こして、辺りを見回す。誰か、こちらに駆け寄ってくる。
「あっ! 貴方、大丈夫なの⁉︎」
金髪の女の人が心配そうにこちらを見る。
「良かった。死んではいなさそうね。ええと、貴方、名前は?」
「あ、はい。俺は...俺の...名前が...あれ...?」
「記憶喪失...かしら。まぁいいわ。じゃあ、私の事は知っているかしら?」
「んー、いや、存じ上げないっすね。」
「なるほど。って事は、この世界の事も知らないのね...。ふーん...」
この人はお偉いさんなのかな?何やら不思議な言い方だ。
「うん、丁度良かったわ。とりあえず、私についてきてくれる?色々説明するわ。私は八雲紫、妖怪よ。」
そう名乗った女の人は、こちらに手を差し伸べてくる。
迷いながらも、俺はその手を取って立ち上がった。
質疑応答少ないっすね...