今回でやっと空飛び回でございます。
ここからバトル物になっていく...予定です。
たった三行考えるのに三日使うってお前...
・・・・・午前4時。
影に染まった幻想郷の大地は、燦然たる星たちが、地平に傾こうとしている月が照らしている。
そして
「ゔっ」
布団にくるまる俺を、藍さんは容赦なく蹴ってくる。
「ほら、時間だ。さっさと起きないか。」
三回目くらいの蹴りで、ようやく身体を起こす。
・・・・・これが俺の、幻想郷に来てからの日課である。
まず起きてから、自分の布団を干す。
次に、昨日の洗濯物も洗って干す。
この家、ほとんど女性なので、扱いには細心の注意が必要だ。
それが終わると、朝食の下ごしらえをする。
冬がもうすぐ終わり、春になる季節。蛇口からの水はまだ冷たい。
米は基本鍋で炊く。そっちの方が美味いらしい。
橙は朝の6時くらいに起きてくる。えらい。
彼女の寝癖を直したら、今度は橙の部屋の布団を干す。
そんな事をしていると一通り朝飯が出来上がるので、おかずと飯を適当な量盛り付ける。
食器を洗う役目は大体俺である。
1時間程経ったら、藍さんは橙を寺子屋へ送って行き、ついでに買い物をする。
その間、俺は家の廊下の掃除をし、洗濯物を取り込んでたたみ、布団を定位置に戻し、何か冷蔵庫の余り物で料理を作り、風呂を綺麗にしないといけない。
これで午前は終わり。
紫さんの朝は遅い。
腹ペコで起きてくるので、何か食べさせる。
その隙に、布団を(省略。
すると藍さんが帰ってくるので、玄関に直行。
重い買い物袋を担ぎ、仕分けして冷蔵庫に入れる。これが三往復くらい。
夕方まで、俺は紫さんの小間使いとして過ごす。
茶を淹れ、菓子を用意し、奥にある部屋から書籍を引っ張り出し...
その他色々だ。
橙が帰ってくる4時半くらいから、夕食の準備。
料理は、少し手間がかかる奴になる。
食器はまた俺が。
風呂は、食後に準備し始めるのがベスト。
紫さんの布団は、ここで回収。
風呂の順番は
紫さん→藍さん&橙→俺
なので、着替えはその順番に用意する。
皆が風呂に入っている間、各部屋の布団をセッティングしておく。
最後に湯にからあがる時には蓋を閉め、換気をして、桶などはすべて整列させておくのが役目だ。
橙が眠れない時には、向こうの世界の話をしたりする。
よって、話し方も試行錯誤しなくてはならない。
午後11時、全員が床についたので改めて戸締りを確認。
変な奴がいないか、家を探索してから就寝。
これが、俺の生活である。
客観的に見れば、労働時間は約19時間。
労働条件をまとめると、
家賃ゼロ円、風呂付、トイレ付、三食飯つき、ロリ付、巨乳の美女付、
このような感じだ。
で、
給料、ゼロ円!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「不当労働行為だぁぁ...」
「あら、相当ここが気に入ったようね。それは良かったわ。」
我が魂の叫び、紫さんに届かず。俺が疲れている七割はこの人の注文の多さにあるというのに。
「腑に落ちないなぁ...」
気を取直したかのように、紫さんは話しかける。
「さて、本題に移りましょうか。」
確かにそうだ。今話をしている場所は紫さんの部屋。何の理由があってこんな所で会話するのか、気にはする。
「少し、伝えるのが遅かったかもしれないわね。
貴方には...強くなってもらうわ。それこそ、この世界で生き残れる程に。」
「やっぱり一番の理由は、貴方が弱いからよ。橙の方がまだ何倍も強いって感じね。」
手厳しい。
弱いという響きは、幻想郷に来た日の事を思い出させる。
「当然弱い人間は、淘汰されるのが此処の常識よ。
貴方もこのままだと、藍にいつか殺されてしまうかもね。」
ここに来て一週間、藍さんはずっと俺に冷たい視線を送ってきた。そしてその目には、確かに殺意がこもっていたように感じる。
「それで朱、貴方は、どうしたいのかしら?」
何も踏み込まず、あっさりと殺されて終わるか。
この厳しい世界に、しがみついて生き残るか。
「やりますよ、俺は。」
この家に来たのだって、元はただ生きる為だ。ここまで来て殺されるなんて事、受け入れてたまるか。
「決まりね。じゃあ、明日から修行をはじめましょう。今日はもう寝て、英気を養っておきなさい。」
そうこなくちゃ。 そのような言い方だった。
「了解です。では、おやすみなさい。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「う、うぉぉぉお...」
このフワフワとした感覚が、俺にはものすっごい感動だ。
「すげぇ...俺、俺...浮いてる...。」
朝から霊力のコントロールを練習し、今に至るのだが、
人間、やれば何でもできるんだなって。
「紫さん、どうですか!何とか達成できましたよ!ゆかりさ...紫さん...?」
なんか、頭抱えてるんですけど。
「何か...言いたいことがあるんですか?」
「ええ。朱、貴方どれくらいで飛べるようになった?」
「半日くらいですかね。てか、紫さんずっと俺にレクチャーしてくれてましたよね?何でそんな事...
「......普通の人間だったら、飛行を身につけるのには30分もかからないわ。」
はい?
「例え上手くいかなくても、2時間もあれば飛べるようにはなれるのよ...。朱、ちょっと霊力を放出してみて。」
「はぁ、了解です...」
目を閉じ、己の内側に意識を向ける。
力は入れず、何か流れるようなものをイメージする。
そして、心臓の鼓動とともに、その流れを限界まで速くする。
全身が熱い。オーラ的な物が俺の身体を包む。
かなり手こずっていた最初の頃に比べると、かなりの進歩を遂げたと思「発生が遅いわね。」
「それに、霊力の絶対量はそんなに少なくはないのだけれど、それを完全に出し切れてはいないって感じかしら。」
「って事は、やっぱ俺は...」
「ええ、そうね。
貴方に、霊力の才能があるとは言えないわ。」
呆然とする。ここまでの決断が全部無駄になると思うと、どうしても理不尽に思えてしまう。
「俺は...強くなれないんですか?」
落胆から、思わず弱音が出る。別に此処で愚痴を吐いた所で強くなるわけでもないのに。
たが、紫さんは応える。
「それは貴方次第よ、朱。」
俺の目を見て。優しく、だが、それ以上に強く。
「これから私は貴方に技術の全てを教える。けどね、私はそれしか出来ないの。いい?自分の強さは、霊力なんかじゃない、自分が決めていくの。覚えておいて。」
返事の代わりに、俺は俯いていた顔を上げる。
その目には、もう悲しみの色は無かった。
「そう。 じゃあ、修行の続きを始めましょう。」
名言を作ろうとして、失敗する男の図。
あとタイトルで作者がホモガキだとバレましたね。お恥ずかしい。